パンダ イン・マイ・ライフ

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死ねない老人

2017-08-11 | book
2017年2月に刊行し、6月には2刷となった「死ねない老人」を読んだ。著者は、1988年生まれ。勤務医から、若くして、2003年に開業し、在宅医療に奮闘する杉浦敏之。

長寿社会の日本。家族や社会の変化、医療の進歩、死というものを大きく変えている。長寿というものがよいのもなのか、悪いものなのか。だれもその先には死が待っている。しかし、長寿により、死への道のりが遠くなった。そこに生きがいを探すのが困難になっている。そして、いざというときは病院という考えが普及し、死が病院という隔絶された空間にあるものとなっている。だから、誰もがいつかは迎える死を避け嫌う風潮が生み出される。

片や治療する方も、延命第一主義にあり、最後は機械的で死を片付けてしまう。しかし、医療は死には勝てない、全敗だ。大学にも死を学ぶ時間はない。医療者こそ自分の死をイメージして向き合う必要がある。台湾韓国にも尊厳死の考えが普及している。

このような実態から、まず、高齢者の視点から、生活を見直す必要性を説く。生きがいづくりである。役に立っているという充実感。さまざまなボランティア、好奇心を持つこと。そして、現役世代から高齢期の生き方を準備することを提唱する。
一方で、尊厳死法案の動向、在宅医療の普及、リビングウィル(尊厳死の宣誓書)の活用、死に向かうための家族と本人の日ごろからの話し合いの大切さと、医療との連携も触れる。

死への道のりを選択できる社会の実現を著者はいう。病院か在宅か。延命か尊厳死か。
国民皆保険制度の中、病院が普及し、身近なものとなり、在宅死から病院死への大きな変化と治療の高度化をもたらした。長寿社会の到来のなか、死からだれも逃れられないという現実はいつの世でも変わらない。そして、人はそれぞれ家族や住環境も異なり、病態もさまざまで、そして、だれも経験はすべて初めてのことである。
そんな中、どんな死が自分の望みなのか。医療者は患者に寄り添い、本人や家族とそのあり方を話し合う環境整備が急務だ。日本人の平均寿命は83.7歳。90代、100歳代のひとたちもいる世の中になった。そんな中で、高齢者の悩みは深い。

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