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パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

ブルックナー 5 映像のヨッフム「ブルックナー7番」

2009-02-01 | music/classic/Bruckner
ブルックナーの大家として、名をはせたオイゲン・ヨッフムの第7交響曲。

1986年9月、東京でのロイヤル(アムステルダム)・コンセルトヘボウ管弦楽団のライブ映像を見た。
ヨッフムは1902年にドイツに生まれ1950年からドイツ・ブルックナー協会の総裁をつとめるなど、まさにブルックナーの権威。87年3月になくなるわけであるから、このライブはまさに晩年、亡くなる半年前の遺言状だ。

式台にすがりながらも、かくしゃくと優雅にタクトを振り、スコアをめくる姿は、聞く側も背筋を伸ばさずにはいられない。

美しく流麗なブル7は、まさに精神の宇宙だ。
特典のインタビューで、ヨッフムは、ブルックナーを好む理由を「すばらしく美しいからだ」と語る。
そして、その曲風を「ワーグナー風の語法ににているが、その語法で表現しようとした思想は独自だ」という。
また、このブル7について、第2楽章のシンバルがこの曲のクライマックスなのだ、音響的にも形式的にも頂点なのだと語る。ブルックナーは、当時登用がまれなシンバルを、半分が過ぎたこの中間点のクライマックスにもってきた。それもただ1回のシンバルなのだと。
このような斬新なブルックナーの手法は、第8交響曲ではハープに現れる。

一年の計 ブルックナー 4 シンフォニー第8番

2009-01-03 | music/classic/Bruckner
せっかくのお正月です。皆と語らう、映画を見る、読書をするのもよし、体を動かすのもよし。1年間の事始めの時です。いい時を過ごしたいものです。今年1年に思いを馳せながら。

恥ずかしながら、この8番を通して聞いたのは50年の人生で今回が初めてです。小説でも映画でも自分なりの旬があります。NHKの連ドラ「だんだん」ではないですが、要は今、80分にもわたるこの名曲とのご「縁」があったということだと思っています。

ホルン8人、トランペット3人、トロンボーン3人、バスチューバ1人という金管の楽器編成。ハープも効果的で、そのすばらしい美しく力強い主題の数々と重厚な和音、そして強弱も魅力です。

1887年、ブルックナーが63歳の時に完成した「わたしが書いた曲の中でもっとも美しい音楽」と自信を持っていたといいます。ベートーベンの第9と肩を並べ、古今東西のシンフォニーの中でも随一といわれます。

初めてこのシンフォニーの世界に触れた私なんぞがコメントするのもおこがましいのですが、狂おしく、耽美な世界が繰り広げられます。

それぞれの楽章で繰り広げられるメロディラインの美しさはとにかく聞くしかないのですが、圧巻は優美な3楽章、アダージョです。
演奏時間は1楽章、2楽章とも15分程度ですが、この3楽章と4楽章とも20分を超えます。

その1楽章は、2楽章で登場するブルックナーがドイツの野人(田舎もん)と呼ぶ主人公の誕生を思わます。
人生の内面を思わせる、おどろおどろしくも悲しき1楽章。ここまで人は堕ちていくのでしょうか。

2楽章は、その田舎者の生き様とでもいいましょうか、生活臭とやすらぎのあるリズミカルな楽章です。

3楽章はこの世に比類なき美しさといわれるひひと時です。悲しくもつらいこの世に、舞い降りた天使、神、救世主か。我々を救いたまえ。

4楽章はテンパニーの効果的な勇壮な雄たけび。この世から昇天するかのごとく、我々を導きたまえ。それぞれの楽章の主題が折り重なっていくクライマックスは壮絶でもあります。計算しつくされた心憎い演出でしょうか。

このブルックナー8番を映像で見ました。
カラヤンが71歳の時、ウィーンフィルを振った1979年6月の映像です。オーストリアの都市、リンツの教会、ブルックナーが眠るザンクト・フローリアンでの収録です。

脊髄をわずらったカラヤンが、少し体に不自由さが見て取れます。
しかし、目をつぶり指揮するカラヤンはまさに巨匠の風格です。そしてときに笑みを浮かべ、体全体でこの長大な曲をあやつります。
まさに圧巻です。

大晦日にブルックナー 3 シンフォニー9番

2008-12-31 | music/classic/Bruckner
大晦日である。今年のリスニングは、ベートーベンの交響曲全曲からはじまり、チャイコフスキー1番と4番・5番、ブラームスの2番をよく聞いた。
今年の年末年始はブルックナーでいこう。

アントン・ブルックナーは、1896年に72歳で死去する。

彼の最後のシンフォニーが第9番である。着手は87年、63歳の頃、完成は94年70歳のときであった。神にささげるつもりで書いたというこの曲は、まさに死を意識した、彼の白鳥の歌である。

この曲は3楽章までしかない。約1時間の曲である。1楽章、3楽章は20分程度、2楽章は10分程度。
それぞれに魅力的だ。激しさあり、優美さあり、金管を強調したブルックナー和音が次々と押し寄せる、まさにブルックナーワールドが構成されている。

1楽章は荘厳に、神秘的にとある。生命の誕生から苦悩は始まり、生きることの激しさと安らぎを歌う。
2楽章はスケルツォ。軽く軽快にとある。躍動感あふれる踊りの場面を思わせる。若さの表現か、願望か。まばゆいばかりの甘美さと生命のほとばしり。
そして3楽章は、ブルックナー自身が、いちばん美しい緩徐楽章だと言ったアダージョ。ゆっくりと荘厳に。最初の不協和音が印象的。全編を覆う暗さは美しい調べとともに人生の末期を思う。エンディングも静にゆったりと消え行く。まさにこの世との別れである。

サー・ゲオルグ・ショルティの1985年、73歳の時のデジタル録音。22年間在籍した手兵のシカゴ・オケを振った。シカゴの重圧な金管群とが圧倒し、弦は詩情豊かに奏でる。
デッカなので録音もよく、クリア。発売当時は究極の9番と言わしめた。

Total 61:06 1楽章23:37、2楽章10:33、3楽章26:56

ブルックナー 2 シンフォニー7番 (2) 荘厳

2008-12-14 | music/classic/Bruckner
北国タクトさんの推薦が ヘルベルト・ブロムシュテット指揮のドレスデン・シュターツカペレである。

そのジャケットの清廉さもあり、早速聞いてみた。1980年録音。ハース版
これが、いい。

ありがちな金管セクションの耳につくアンサンブルがない。全体に途切れることなく、まさにとうとうと流れる大河の如く、その荘厳で堅牢な世界が押し寄せてくる。低音の快い響きの中で管と弦が、まさに渾然一体となったディスク。私にできるのは、、ただ、その流れに身を任せるだけなのだ。

人間味あふれる朝比奈版を動とすれば、ブロムシュテットは静ともいえよう。

Total 67:39 ①21:07 ②24:32 ③9:39 ④12:25

久々のクラシック ブルックナー 1 シンフォニー7番(1)

2008-11-22 | music/classic/Bruckner
今年の6月以降、なかなか聞くことのなかったクラシック音楽。暑さとはそぐわないのか。

新聞の音楽評で、朝比奈隆・新日フィルのブルックナー交響曲7番が紹介されていた。
ヨーゼフ・アントン・ブルックナー(1824年-1896年) は、オーストリアの作曲家。ドイツの作曲家ブラームスと同時代を生きた。
長大なブルックナーの作品の中でも親しみやすいとの評であった。
朝比奈は、カラヤンなどとともに、今年生誕100年を迎える。93歳で亡くなるまで精力的に活動していた。
日本ではブルックナーは、演奏時間も長く、その宗教的色彩の濃いいイメージから敬遠する向きが多いという。
その大指揮者が晩年、ベートーベンとブルックナーを好んで取り上げた。
評は、そこには、豊かな心の糧を求めにはこれらの作品だという思いがあったのではないか、つまり音楽を通じて生き抜く力を受け取る、そこに音楽の存在意義があるという。

実は、ブルックナーのシンフォニーは、志鳥栄八郎チョイスからベーム・ウィーンを20年前に買っていた。当時は肌に合わなかったのか、お蔵入りであった。



しかし、この記事をきっかけに改めて聞くと、これがいい。ウィーンフィルの張り詰めたすばらしいアンサンブルが、ベームの堅固な構成とあいまって、心に染みてくるのである。朝比奈版は起伏とメリハリがある。まさに人間味あふれる渾身のコンタクト。
アンサンブルのシャープさではウィーンかな。

ベーム・ウィーンフィル
1976年原典版
Total 65:56 ①19:35 ②24:02 ③10:17 ④12:02

朝比奈・新日フィル
1992年ハース版 ライブ
Total 65:10 ①21:55 ②23:45 ③8:46 ④12:49

本にしても音楽にしても、人間は不可思議だ。その時の感性で、感じ方が違うのだから。藤沢周平にしても吉村昭にしても、一時は見向きもしなかった。
特にブルックナーのシンフォニーの演奏時間は1時間前後で長い。つまり、この時間を耐えられるかだと思う。若いころは、この時間がもったいなかったのだろうか。

1楽章は、ブルックナー特有のアルプスの山々の靄が晴れていくような、幻想的ですがすがしい感度的な幕開け。そしてこれも特有の和音がすばらしいメロディが迫る。
2楽章は、ワーグナーの死を悼んでつくられたというアダージョ。交互に打ち寄せる2つの旋律に身を任せる時間も至福である。
3楽章は、スケルツォ、非常に早くである。野性的なメロディが包み込む。
4楽章は、第1楽章のメロディも出てくるさわやかでしなやかな楽章。
聞き終えた後で、清廉なひと時が待っている。各楽章とも単独で聞いてもいけます。