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パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

ブルックナー 15 ブル9好き ヨッフムの激しさと甘美さ

2009-06-14 | music/classic/Bruckner
今年も日本全国梅雨入りした。土日曜日も何かぐずつき、湿度も高く、しゃくぜんとしない。そんな時、ブルックナー第9番で1時間を過ごす。

1902年にドイツに生まれた、ブルックナーの大家オイゲン・ヨッフムが、1978年というから75歳の時、ドイツの名門、ドレスデン国立管弦楽団を指揮したシンフォニー第9番。

ヨッフムらしい解釈に基づき、3つの楽章を、それぞれ際立たせ、全体をまるで大いなる山河を下るように描き出した。

ノヴァーク版 Total 60:29 ①23:00 ②9:50 ③27:39 

1楽章は威風堂々のアップテンポで進む。メリハリもあり快活。ブルックナー開始から始まる冒頭のブルックナー休止が印象的だ。
2楽章はテンポも早く、激しくも狂おしいリズムで突き進む。管の流れるようなアクセントが印象的
3楽章は、物悲しくも気高い、まさに崇高な物語だ。クライマックスへの持って行きかたが凄い。
3楽章のアダージョが、消え行くと、ああこれで終わりでよかったと思う。
仮に、4楽章があったら、などとは思えないほどの、3つの構成がいい。

多少荒削りのドレスデンではあるが、ヨッフムの個性的なタクトにマッチしている。

ブルックナー 14  快活なブル9

2009-06-13 | music/classic/Bruckner
カール・シューリヒト。ドイツ生まれの指揮者。1967年(昭和42年)に86歳で亡くなったというから、今はもうディスクでしかその記録を確認することはできない。

じっくりといどむ、チェリビダッケやジュリーニのブルッナーもいいが、シューリヒトの快活で明晰な解釈は、たまらない魅力である。

ウィーンフィルとの名盤、1961年のステレオ録音は、それぞれ特色のある3つの楽章を、速いテンポのメリハリある、映像美で我々を引き込む。一つ一つのパーツが、ぐいぐいと重なり合い、陰影を帯びながら、なだれ込む。

きらびやかなウィーンフィルの音源が、この陰影をいやがうえにも際立たせる。

Total 56:17①25:34 ②10:27 ③20:16

ブルックナー 13 みどりの日にワルター「ロマンティック」

2009-05-05 | music/classic/Bruckner
昨日は「みどりの日」。朝日新聞の天声人語には、「緑という色は誕生や永遠のイメージと結びつき、心身を癒す効果がある。木々の息吹が体に悪いはずがない。この時期、森にみなぎる「生」の色や香りを浴びれば、日ごろの不養生をいくらか埋め合わせた気になる。自然に寄り添う時間が命を暖め、抵抗力を養ってくれる。」
とある。

新型インフルエンザは目にも見えず、とりあえず一般のインフルエンザと同様の予防しか打つ手はないという。少しでも、体力気力を充実させることが肝要か。

家の前の川には田に水を引くため、満々の水が流れる。黄色い花と綿毛が見えた。多年生のタンポポは、アスファルトの裂け目からその生き様を見せる。なんという生命力の強さか。


また、畑では鳥たちの羽ばたきが聞こえる。どうもサクランボの実をついばみに来るらしい。その花で人を酔わせ、蜜蜂を養い、実は人に鳥にその恵みを分け与える。


ワルターの残したブルックナーの3つの交響曲。録音は、9番が1959年、7番が61年、そして60年がこの第4番シンフォニーの「ロマンテッック」だ。

堅牢にもロマン溢れ、オーケストラの統率の取れた絶品、志鳥栄八郎氏曰く、「オーケストラの響きがやや薄く、音色が明るすぎるのが惜しまれるが」とある。
1楽章のシャープさ、ハープ・ホルン・フルートが印象的な2楽章の叙情さ、管楽器が快活なスケルツォ、華やかなフィナーレは、しっかりとしたアンサンブルが心地よい。

ワルターのブルックナーはすべて原典版 Total 65:18 ①18:45 ②15:40 ③11:03 ④20:48

昔は近くの山に登っていた。このお休みは、ブルックナーで森林浴といきますか。

ブルックナー 12 ワルターの第7番

2009-05-04 | music/classic/Bruckner
引き続きブルーノ・ヴァルターが残した、コロンビア交響楽団とのブルックナー3部作の一つ、第7番シンフォニーを聞く。
なんとロマン溢れる演奏。こんなに感情豊かなブル7はないのではないか。メリハリと優美さ、しなやかさ。各パートが歌う。
アメリカカリフォルニアで1961年3月の録音。翌62年2月に86歳で亡くなる1年前だ。
荒削りともいえる演奏・録音だが、それがまた、たまらない魅力でもある。ワルターらしい人間味あふれる演奏だ。

原典版 Total 54:36 ①20:52 ②19:28 ③10:23 ④13:53

ブルックナー11 ワルターの9番

2009-04-26 | music/classic/Bruckner
ワルターのブル9はロマンティックだ。
ブルーノ・ワルターが、アメリカのカリフォルニア・ハリウッドでコロンビア交響楽団を指揮した。
録音が1959年であるから、今からちょうど半世紀も前、86歳で1962年に亡くなる3年前のものとなる。
1876年にドイツに生まれ、ドイツやオーストリアで活躍していたワルターが故国を追われ、アメリカに移住したヴァルターは、故国の作曲家ブルックナーには特別な思い入れもあったろう。
ワルターは、戦後、アメリカでよくブルックナーを演奏したという。それは故国ドイツで先の大戦中、崇拝的に取り扱われてきたブルックナーの失地回復の巡礼の旅であったのだろうか。

録音も晩年にワルターのために創設されたコロンビア交響楽団との4番、7番、9番があるのに過ぎない。

この9番は、まさに渾身のタクトである。テンポは早く、いつもの美しくも感情を抑えた演奏ではなく、力強くメリハリのある猛々しいブルックナーである。第3楽章のアダージョはその力強さを前面にだしながら、荘厳な重々しい、まさに落ち込んでしまうほどの崇高なやすらぎを演出する。
録音も改善されており、伸びやかで芳醇だ。

原典版 Total 58:43①23:55 ②11:34 ③23:14

ブルックナー 10  ホームレス歌人とヴァント9番

2009-04-25 | music/classic/Bruckner
4月20日の地方紙で竹熊健太郎氏の投稿記事があった。
氏は1960年生まれ、小生よりも少し若い。ブログ「たけくまメモ」もあり、文筆家である。
その氏が2006年に脳梗塞に倒れる。そのことで人生に〆切りがあることを知る。生きてることの証がブログであり、人生は短いのだから文章が書ける喜びを綴り続ける。

また、朝日歌壇で入選を重ねる「ホームレス歌人」の話がある。「百均の「赤いきつね」と迷いつつ月曜日だけ買う朝日新聞」。五七五七七の31文字に込める日々の暮らしがそこにある。過酷な現実の中にある感情表現の力強さ。これもまさに生きる証である。

朝比奈やワルター、ヴァントやヨッフム。80の齢を重ねても、表現したくなるブルックナーの魅力は、生きる力を与えてくれる創造のなせる業なのか。

2002年2月に90歳で亡くなる、ドイツ人の指揮者のギュンター・ヴァント。
そのヴァントが2000年11月に来日し、東京で手兵のハンブルグ、北ドイツ放送交響楽団を指揮したた映像を見た。

曲目は、ブルックナーの第9番。そして、同時演奏が、これも未完成のシューベルト8番「未完成」である。

付き添いに支えられ登場・退場し、楽章の合間には、椅子に腰を下ろす姿が痛々しいが、時折見せる笑顔の中にも、気迫がこもる演奏を見せてもらった。

1楽章の金管の咆哮と優美なメロディ、2楽章の弦のピチカート、躍動的なスケルツォ。3楽章のアダージョも落ち着きの中にしっとりさがある。
概して、激しさやリズム感は影を潜めている。老境に達したヴァントが、気心の知れた仲間と、じっくりと手作業で丁寧に仕上げるブル9というイメージである。

映像ゆえに楽しめるものもある。

原典版 Total 64:30①27:31 ②11:13 ③25:46

わたしのブルックナー好きもいつかは終わりが来るのだろうが、今はとにかく聞いている。4番、7番、8番、9番と指揮者や演奏者によって、その色が変わるが、いずれも魅力的だ。すべての演奏が気持ちよいのだからやめられない。理屈ではなく、感性なのだから、委ねるしかない。

ブルッナー 9 質実剛健 ベームの「ロマンティック」

2009-04-05 | music/classic/Bruckner
カールベームが、蜜月のウィーン・フィルハーモニーをふった1973年のレコードアカデミー大賞受賞の名盤である。

1894年生まれのベーム80歳目前の演奏。81年に86歳でこの世を去る。
ゆったりとした中にも、しっかりとした足取り。あふれるロマン。色彩豊かな威風堂々のブルックナーのシンフォニー第4番だ。

ウィーンフィルの華麗な音色にも魅了される。
ノヴァク版   Total 68:10 ①20:14 ②15:34 ③11:09 ④21:13

ブルックナー 8 ブロムシュテットの第4番

2009-03-28 | music/classic/Bruckner
一日ずつ春の陽気になるにつれ、山々の色も変化していく。
今の愛聴はブルックナーの第4番だ。

ブルックナーの田園交響曲と呼ばれる由縁もあり、ドイツの森や山々への畏敬ともいえる感傷が味わえる。

1927年、アメリカ生まれで、アメリカから北欧などで活躍しているN響の名誉指揮者、ヘルベルト・ブロムシュテットが、1981年にドイツの名門ドレスデン・シュターツカペレを指揮した名盤を聞く。

そのアンサンブルの美しさで有名なオケとその美点をさらに力強く引き出すブロムシュテットのタクト。緩急もあり、さわやかさが際立つ。
演奏時間も65分と1975年のカラヤン・ベルリンフィルに次ぐ短さ。ブルックナーは7番とともにジャケットも神秘的でいい。
ノヴァク版   Total 65:44 ①18:23 ②16:30 ③10:51 ④21:06

ブルックナー 7 チェルビダッケのロマンテック

2009-03-22 | music/classic/Bruckner
セルジュ・チェルビダッケ。ルーマニア生まれの指揮者。主にドイツで活躍した。1912年生まれ~1996年没。

フルトヴェングラーがベルリンフィルを追われ、その後任として支え、フルトヴェングラーの復帰を果たし、カラヤン後は、ヨーロッパをまわり、1971年には、ドイツのシュトゥットガルト放送交響楽団、79年にはミュンヘン・フィルハーモニーとの関係を構築した。
その暴言や厳しさ、録音嫌いや親分肌など、さまざまな逸話を残す。特にテンポの遅さは有名。

そのチェルビダッケが、老境の90年前後に、手兵のミュンヘンフィルと録音したブルックナーチクルスを聞く。

4番「ロマンテック」は予想通りに遅い。特に1楽章は、そのスマートさから、カラヤン・ベルリンフィル((1975)を愛聴していたので、「こりゃなんだ」でした。
しかし、この丁寧さも、しつこさとは異なり、ブルックナーハーモニーをある意味で聞かせていることに気がつくのです。
悠久のアンサンブルとして、聞き手に入ってくるのですから、心地よいのです。

ベーム・ウィーンフィル    (1973) ノヴァク版  Total 68:10 ①20:14 ②15:34 ③11:09 ④21:13
カラヤン・ベルリンフィル   (1975)原典版     Total 62:52 ①18:14 ②14:27 ③10:43 ④20:28
ヴァント・ベルリンフィル   (1998)原典版     Total 68:11 ①19:09 ②15:58 ③11:14 ④21:50
チェリビダケ・ミュンヘンフィル(1988)ハース版   Total 78:07 ①21:38 ②17:34 ③11:03 ④27:52

ブルックナー 6 雪景色とシノポリのロマンティック

2009-03-14 | music/classic/Bruckner
昨日の大嵐から一夜明け、今日、車で山地を走ると粉雪が舞い、銀世界が現れた。
静けさの中、山々が我々に語りかけるように見えた。まるで、ブルックナーのシンフォニー4番「ロマンティック」の1楽章のように。



このシンフォニーは、ブルックナーが50歳の時、1874年に作曲された。
この頃、いわゆるブラームス派からのワーグナー批判にさらされていた、ワーグナー寄りのブルックナーは、執拗な新聞批評などにまいっていたらしい。
そのせいか、完成は1880年、初演は1881年であった。さらに、1936年にはロベルト・ハースが編集したハース版、戦後のレオポルド・ノヴァークによるノヴァーク版がある。

この4番は、ブルックナー自身がつけたその副題のとおり、素敵な曲である。
これを、早世したジュゼッペ・シノーポリで見る。
NHKのDVD、昭和63年(1988)1にサントリーホールでの、イギリスの名門、フィルハーモニア管弦楽団を指揮した映像である。

1楽章の弦楽器のトレモロから始まる原始林の霧から、ホルンの素敵な主題がまさに「ロマンティック」で全編を貫く。この主題がオーケストラ全体で激しくも凛々しく歌われる。
2楽章は、1楽章とは対照的に物悲しくも寂しいさすらいのテーマ。ロマンティックのまた、一つ別の表情を見せる。しかし、ブルックナーの手法は、悲しさの中にきちんとクライマックスを位置づけている。
3楽章は別名「狩のスケルツォ」という。狩の角笛を思わせる有名なホルンの響きでぐいぐい聴衆を引っ張る。1878年に加えられたという。
4楽章は1楽章や3楽章の主題が激しく押し寄せては引いていく。そこに現れる平穏な主題。シノポリの表情も柔らかく、いきいきとしている。3回も改定したという第1主題をモチーフにしたクライマックスもすばらしい。ブルックナー得意な手法が炸裂する。
また、演奏時間も1時間とブルックナーの作品群の中では適当で人気が高い。

シノーポリは1946年から2001年、イタリア生まれの精神科医で作曲家、指揮者でもある。65歳で心筋梗塞でドイツで亡くなる。
この映像は、シノポリ42歳という若々しさの中に、激しさ悲しさ優美さを見ることができる。