先週 月曜まで行っていたNY中に読み切ろうとして持っていった一冊。
空港でも機中でも、幾らでも時間があるからだ!
ところが・・
密度の濃い内容がずっと続く、666ページ。
帰国後もうんうんいいながら、なんとか読破を目指す状態で、正直 かなり手こずった。
原題のSTRESS TESTもここから取られてるのかな?(笑)
(ストレステストは過酷な景気後退を耐える資本が銀行にあるか調査すること)
ティモシー・ガイトナーは、オバマ政権発足から4年間財務長官。
リーマンショック後のアメリカ経済の立て直しに奔走した人物として知られている一方で、金融に対して甘かったとの批判も多い。
その彼が自分のおいたちから社会人になり、どんな仕事をしてきたか語っていく。
この中で、彼があらゆる金融危機にかかわってきたことがわかる。
メキシコ危機、タイ危機、韓国危機 etc… など、金融危機総舐め状態(笑)
また日本語、中国語がしゃべれるアジア通だということも。
ちなみにアメリカ経済のクレジットの増加チャート(p.138)を彼は「富士山チャート」と読んでいたそう!
痺れるような、決壊直前のアメリカ経済に関する表記がたくさん登場するが例えば、
「加熱したプレミアム市場は、冷却の時期を逃していた」
「衝撃を吸収する能力が低い、リバレッジの多くが移動している」
正に危機に突っ込む直前(ゴクリ)
そして遂にほころびが…
2007年8月 8日 BNPパリバが引き金をひいた…
こうしてキックオフされる金融危機。
「金融危機は全て、信用の危機である」
ベアー・スターンズ救済、リーマン崩壊、AIG救済など、怒濤の日々。
これを彼が生々しく、政権内部の視点から赤裸々に語る。
読んでいて感じたのは この本、リーマンショックの再体験ジェット・コースターだなと!
恐ろしくもあり、懐かしくもあり?なんとも微妙な気持ちにさせられる(笑)
この感覚を、久々にリアルに感じられる点で、この本を読む価値は大きい。
一方で浮かび上がってくるのは、批判されている 彼の弱さ。
ちょっとだけ触れられている2カ所で、それを明確に感じた。
1.危機の真っただ中、救済されたはずのAIGの社員たちが1億6500万ドルのボーナスを受け取った件(p.394)
オバマ大統領が怒り国民の激怒が伝わる一方、彼の姿勢はあくまでニュートラル。
2.銀行の高いボーナスの根拠について数行だけ語るくだり。根拠はあくまでも「有能な人材」の獲得、でしかない
読み終わってみて、その弱さはどこからくるのだろう?と考えた。
ガイトナーは元々金融危機解決のプロ、なので視点はあくまでも経済全体。
そして救済してきたキャリアは海外が中心で、大国アメリカとしては後進国に「責任を取らせよう意識」が元々低かったのでは?
今回の危機は「アメリカ本体」という点で、過去とは明らかに異なるはず。
だが、彼はあくまでも過去のやり方に沿った姿勢で対応したなのでは、と。
アメリカ経済の崩壊を食い止めたことは讃えつつ。
という具合に、読後にいろいろ考えさせられる点で、高く評価していい本だと思う。
そもそも、リーマンショックの再体験ができること自体に価値がある!
結論:今年、有数に面白い本の一つ。年間ベスト5に入りそうな一冊。
(あるいは今年は豊作年なので、ベスト10化させるかも?)
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