〈 額賀福志郎氏の意見 〉
検討作業が進まなくなったのは、森田記者の次の記事です。
・額賀は、これまで歴代の政務調査会長のもとで、財政再建の議論をとりまとめてきた。
・高市に対しても、財政健全化を検討する組織が必要だと訴えたという。
すでに安部派の中心となり「財政政策検討本部」の旗頭となっている高市氏に、額賀氏は何を訴えたと言うのでしょう。
平成5年に無所属で初当選した高市氏に比べると、昭和53年に議員となり防衛大臣、財務大臣を経験している額賀氏は大先輩議員です。訴えると言う言葉の意味が分かりません。
さらに意味不明なのは、次の文章でした。
・結果的に、額賀に「財政健全化本部」の設置と本部長就任を打診したのは、高市ではなく、岸田だった。
茂木氏の提案を受け、「財政健全化本部」の設置と額賀氏の本部長就任を決めたのは岸田氏です。それを記事にしたのも森田氏自身ですが、この文章の背後にはどのような説明が省略されているのでしょうか。
「ねこ庭」の疑問に構わず、森田氏は先へ進み額賀氏の意見を紹介します。
・再び財政再建推進本部が設置されると思っていたが、呼びかけがなかった。
・名称はともかく、健全化本部のようなものを作ってもらえるとありがたい。
・総裁直属の機関となり、重みを増したと思っている。
・岸田政調会長時代から議論しているので、考え方や何を目指すかは互いにわかっている。
・緊急時に再び自信を持って財政出動できるようにするには、累積債務を少しでも減らしたほうが将来の負担にならない。
・「国の借金」にあたる国債の発行残高は、新型コロナ対策などの積極的な財政出動で、今年度末には初めて1000兆円を超える見通しとなり、先進国の中でも突出した金額となっている。
やがて衆議院議長となった額賀氏が、終生「緊縮財政派」の議員だったと教えられましたが、この流れの中で森田記者は読者に何を語ろうとしているのでしょう。
続いて氏は、臨時国会閉会時の12月21日の記者会見での、岸田首相の意見を紹介します。
・政府としてMMTは採用しない考えだ。
・自国通貨建ての国債を発行する国の政府は、いくらでも国債を発行し支出できる、という意見の方もいると承知しているが、政府としてはこうした考え方は取っていない。
・道筋を大事にしながら、財政健全化についても考えていきたい。
二つの本部が並立している現状について、森田記者が自民党内と岸田派内の受け止め方を説明しています。
〈 自民党内の受け止め方について 〉
・総裁選挙以来の岸田と高市の路線の違いが表面化したものだ、という受け止めがもっぱらだ。
〈 岸田派の中堅議員の受け止め方について 〉
・財政について検討するのは1つの組織で十分だが、両方のパワーバランスをとるということだろう。
・それぞれのカラーが分かりやすくチーム分けされていて、『自民党にはいろんな意見がある』という姿を見せるためではないか。
森田記者は「パワーバランス」という言葉に注目し、岸田政権における党内力学を読み解くカギがあると見て、派閥の議員数を紹介します。
現在は自由民主党内から、麻生派以外の派閥は解散し過去の話になっていますが、水面下で生き続けていますので貴重なデータです。
〈 自民党各派閥の所属人数 〉( 令和3年12月23日現在 NHK)
安部派 95人
麻生派 53人
茂木派 53人
二階派 44人
岸田派 43人
森山派 7人
菅グループ 26人
石破グループ 20人 ? ( 議員の脱退が続き、令和4年に解散 )
無所属その他 31人 ?
NHKは少数派の森山派を表示し、菅グループと石破グルーブを省略していますので「ねこ庭」が追加しました。安倍元首相が暗殺されるまでは、菅グループを合わせ安部派が最大派閥だったことがよく分かります。
次回は「パワーバランス」から、党内力学を解くという森田記者の記事を紹介します。回り道のように見えますが、「ねこ庭」にとっては「安倍氏暗殺」を読み解くカギがある気がしてなりません。