いずれ自民党に戻る日が来るのだが、当分は、民主党に投票することとした。
こうした時期に総裁となった谷垣さんには、気の毒と言うしかないが、演説の内容が、民主党への批判とあら探しばかりというお粗末さが情けない。たかだか半年あまり政権を担当した民主党の政策や、国会運営を批判すればするほど、「ならば、これまでの自民党はどうだったのか」、という反論が生じてしまう。
そこに気がつかない自民党の議員たちは、それほど国民が愚かだと思っているのだろうか。
過去の反省の上にたち自民党はこうすると、消費税の時みたいに踏み込んだ提案を大胆にやってこそ、新生自民党と思うのだが、与党攻撃だけで参議院の選挙を戦おうとする谷垣さんと、そればかりを言わせている自民党の幹部たちが情けない。
鳩山さんが、基地問題で軽い発言をし、話をこじらせたことを除けば、国家財政の破綻、官僚依存の政治、政治と金、税金の無駄使い、沖縄の基地、杜撰な年金管理など、現在問題となっているのは、すべて自民党の時代に端を発したもので、どれも民主党を責める材料にはならない。
真の保守政治家なら、今は民主党に政治の方向転換を大胆に任せ、時には協力して法案を成立させ、政権党になった時のための、準備をすべきではないのか。
憲法改正や教育改革や経済の活性化は、自民党にしかできないのだし、その時が来れば、組合依存の左翼理想主義が破綻するのは目に見えている。3、4年の野党暮らしが、なぜ腹をくくってやれないのか。
マスコミも評論家も口にしないが、政治を軌道に乗せるキーポイントは、いずれの党が官僚組織をコントロールできるかなのだ。
「大臣の首がいくら短命で変わっても、日本の政治は基本が揺るがない」と、戦後長く語られた話の土台にあるのは、「世界一優秀で清廉な官僚組織」だった。
敗戦後の荒廃した国を再建したのは、自民党の政治家と、役人たちであったという事実を忘れてはなるまい。凡庸な大臣が沢山いても補佐し、身を粉にして働いた官僚たちの、国家への献身と使命感については、歴史の事実として記憶しておくべきだろう。
その官僚たちが金まみれとなり堕落したのは、高度成長期の頃からだ。
自民党の政治家たちがふんだんに金を使うようになり、役人と組み、税金による錬金術を考案したころから、組織の腐敗が生まれた。だから、マスコミや評論家たちが、物知り顔に官僚批判だけをする不公平さについていけない。
賄賂なしでは動かないどこかの国の役人や、私情を隠さず自家の利益を追求する官僚たちのいる、どこかの国を思い出してみれば良い。そんな国に比べたら、わが国の役人がいかに素晴らしい組織集団かと、そういう見方も必要だ。
欠点や悪事をあげつらうだけでなく、善の面にも目を向け、この巨大で強力な官僚機構を如何にすれば駆使できるか。これが、政権の命運を左右する。
高級官僚の天下りや渡りは腹立たしいが、それなら定年前の退職制度を見直すべきだろうし、政治家がやるべきことは残されている。
自民党の政治家なら、マスコミの口車に乗り魔女狩りみたいに大騒ぎするのを止め、官僚組織の活性化策を考える方が先ではないのか。何故と言って、官僚組織を駆使し国を再建したのも自民党なら、官僚たちを堕落させたのも同じ自民党だからだ。
いいも悪いも、そうしなくてならなかった戦後の事情を知っているのは、これもまた自民党の政治家だから、個々の議員の生命には限りがあっても、永遠に存続する国のため気を長く持ち、政治に取り組んでもらいたいものだ。