市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

大同有毒スラグ問題を斬る!・・渋川スカイランドパーク隣接の産廃処分場排水ピットの水質検査を群馬県知事に要請

2017-05-24 23:44:00 | スラグ不法投棄問題
■大同スラグ問題では、群馬県の廃棄物・リサイクル課が外圧に屈し、有害スラグの撤去作業が全く進んでいません。かわりに舗装で蓋をすればいいとか、周辺の地下水が汚染されていなければいいというふうに、逆にサンパイの有害スラグを残置する方針を推奨する始末です。
 そうしたなか、先日、当会事務局に次の情報提供がありました。

渋川スカイランドパークに隣接した小林製工運送名義のサンパイ最終処分場。ここの排水ピットに溜まった滲出水の水質がハンパでないらしい。

 「スカイランドパーク地面から湧き出た水を汲み取って大同に運んでいる。この水は一見透明だが汚水に間違いない。その水をタンクローリーで大同に運び、大同で処理して利根川に垂れ流しています。処理しているかどうかも疑わしい」

 このため、群馬県が主張する周辺の地下水が汚染されている可能性が高いと考えた当会では、次の内容の要請書を群馬県知事に送りました。

*****要請書*****PDF ⇒ qnmv20170522.pdf
                      2017年5月22日
〒371-8570 前橋市大手町1-1-1
群馬県知事 大澤正明 様
電話番号(代表):027-223-1111

                 〒371-0801前橋市文京町一丁目15-10
                 市民オンブズマン群馬
                 代表 小川 賢
                 事務局長 鈴木 庸
                 電話027-224-8567
                 FAX 027-224-6624

            要 請 書
件名:渋川市内のスカイランドパークに隣接する小林製工運送の産業廃棄物最終処分場にある排水ピットの水質検査の必要性

 平素より、県民の環境面、保健衛生面でご尽力を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて先日、当会事務局に次の情報提供がありました。
「スカイランドパーク地面から湧き出た水を汲み取って大同に運んでいる。この水は一見透明だが汚水に間違いない。その水をタンクローリーで大同に運び、大同で処理して利根川に垂れ流しています。処理しているかどうかも疑わしい」
 これは、おそらくスカイランドパークの隣にある小林製工運送㈱の処分場から、有害物質を含む水が出て問題となっている件のことだと思われます。
 この処分場では、天地返しをして、さらに多くの大同スラグを処分できるようにするため、長期間改修工事が続いていますが、大量のスラグが長年にわたりいい加減に処分されてきたため、かなり掘削してもまだ土中からスラグが出ており、いまだに改修工事が終わっていない様子です。
 改修工事中も、有毒スラグから滲出した汚染水が出ているため、大同特殊鋼のタンクローリーで、大同特殊鋼渋川工場に運搬している有様です。
 本来は、処分場にきちんと排水処理施設を設置しなければならないはずですが、なぜか大同特殊鋼はこうしたイレギュラーな方法を採用しています。


【写真】2016年5月撮影。スカイランドパーク脇の処分場のピットの汚染水を運んで大同特殊鋼渋川工場に搬入している最中のタンクローリー。

 この処分場の周辺や下流にはたくさんの住宅が存在しており、水質汚染により、周辺や下流の表流水や地下水の汚染が懸念されます。とりわけ大同特殊鋼渋川工場から長年排出されたスラグが搬入され大量に埋め込まれた処分場であるだけに、滲出水には六価クロムやフッ素などの有害物質が高レベルで含まれている可能性があります。
 つきましては、すみやかに、当該処分場にある排水ピットの滲出水の水質の分析を賜りますようお願い申し上げます。
 また、このように処分場の滲出水をタンクローリーで運搬して別の施設で処理する方法について、制度上あるいは関係法令に照らして問題はあるのかないのか、あるとすればどのようなことが問題なのか、お調べくださるようお願い申し上げます。
 なお、結果については逐次、下記の連絡先にお願いいたします。
                 記
        〒371-0801前橋市文京町一丁目15-10
        市民オンブズマン群馬 事務局長 鈴木庸
         電話027-224-8567 FAX 027-224-6624
                           以上
**********

 また、同じ内容の要請書を、地元を管轄する渋川保健福祉事務所宛に発送しました。※PDF ⇒ av20170522.pdf

 今のところ、群馬県からなんの反応もありませんが、もし何らかの連絡や通知があった場合、皆様にご報告することにしております。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東電の毒牙から赤城山と県土を守れ!…前橋バイオマス発電補助金訴訟をよそに着々と進む発電施設建設

2017-05-23 22:53:00 | 前橋Biomass発電問題・東電福一事故・東日本大震災
■先日5月10日(水)午前10時30分から前橋地裁で開かれた第2回口頭弁論の結果、争点整理のための受任裁判として、本日5月22日(月)午前10時から前橋地裁3階の31号ラウンドテーブルで弁論準備が行われました。左陪席の佐藤裁判官の指揮で、被告群馬県訴訟代理人の石原栄一弁護士と織田直樹弁護士、さらに指定代理人の県職員ら数名、そして原告2名(小川、羽鳥)が出席して、協議が行われました。

電中研の敷地にある亡国事業の施設建設現場入口ゲートの様子。

 内容は、原告が出した補助金交付決定通知について、要綱等に基づく補助金交付は贈与の一種とみなされ行政処分性が疑われるため、既に支払われた補助金に対しては返還請求、まだ支出していない補助金に対しては差止請求にするほうが、無用な疎明をせずに済むのではないか、というのが受命裁判官の佐藤陪席裁判官の説明でした。

 もちろん渋川森林事務所が2016年7月4日に出して補助金交付決定通知を行政処分性のあるものだとして争うことも可能だそうですが、これまでの判例からするとかなり困難な疎明が求められるということのようです。

 これについてはどの法的手段の選択肢を選ぶか、オンブズマン関係の弁護士の意見も聞いたうえで、6月9日(金)までに原告において方針を整理して準備書面にまとめたものを提出し、それを踏まえて通常の口頭弁論形式に戻すことになりました。そのため、次回口頭弁論準備手続きは6月15日(木)16:00から前橋地裁3階のおそらく今日と同じラウンドテーブル会議室で開催されることになりました。

 弁論準備のなかで、原告は現在の関電工の前橋バイオマス発電事業にかかる現場写真を受命裁判官や被告らに提示して、このような講学的なやりとりも必要なのだろうが、実際の工事は補助金交付中止を求める裁判をそっちのけにして、どんどん進捗していることの問題点をアピールしました。
※現場状況写真(2017年5月20日現在)PDF ⇒ genba_jokyo_shasin.pdf

 この写真を受命裁判官と被告らに配布したのですが、一読後こちらの原告側に返そうとするので、「皆さんは忙しいので現地に足を運ぶ時間がないでしょうから、参考用に差し上げます。追って、準備書面の書証として提出することも考えております」と述べて、受け取ってもらいました。原告からうかつに資料を受け取ると後で何を言われるかわからないと恐れているのであれば、それは被告らの誤解です。

■さて、参考用に提出した写真資料を見ればお分かりのとおり、最初の写真では、前橋バイオマス燃料が建築主となっているチップ工場の「建築計画のお知らせ」ですが、連絡先の電話番号がなぜか空欄のままとなっています。


連絡先不明の建築主。
○建築主
住所:群馬県前橋市苗ヶ島町2550番2
氏名:前橋バイオマス燃料株式会社
電話:????
○設計者
住所:栃木県那須塩原市南郷屋4-16-8
氏名:有限会社彩設計企画
電話:0287-36-4275
○施行者
住所:群馬県藤岡市鬼石573-3  
氏名:株式会社イノウエ建設工業
電話:0274-52-2352    


 これはおそらくペーパー会社のため、連絡先を記載できないものと見られます。このようなペーパー会社でも建築主として行政に認められるのですから困ったものです。

 そもそもこの前橋バイオマス燃料株式会社というのは、トーセンが安中市松井田町で当初計画していたバイオマス発電施設計画のために設立した株式会社松井田バイオマスが母体となっており、その出所からしていかがわしさを発揮しているのです。

 ネットで「前橋バイオマス発電」を検索すると次の会社情報が見つかります。

*****前橋バイオマス燃料株式会社の情報*****
https://www.houjin.info/detail/7070001029257/
項目      内容
商号又は名称  前橋バイオマス燃料株式会社
法人番号    7070001029257
法人種別    株式会社
郵便番号    〒371-0241
国内所在地(都道府県)  群馬県
国内所在地(市区町村)  前橋市
国内所在地(丁目番地等) 苗ヶ島町2550番地2
国内所在地(1行表示)  群馬県前橋市苗ヶ島町2550番地2
国内所在地(読み仮名)  -
更新年月日      2015年10月30日
変更年月日      2015年10月05日
法人番号指定年月日  2015年10月05日
国税庁法人番号公表サイトで確認

*****㈱前橋バイオマス(前橋バイオマス発電㈱の前身)*****
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/img/1459507270.jpg
<履歴事項全部証明書>
群馬県藤岡市浄法寺511番地1
株式会社前橋バイオマス
会社法人等番号 0700-01-029257
商号: 株式会社松井田バイオマス⇒株式会社前橋バイオマス ※平成26年10月27日変更、平成26年10月30日登記
本店:群馬県藤岡市浄法寺511番地1
公告をする方法:官報に掲載する方法により行う。
会社成立の年月日:平成26年2月28日
目的:1.バイオマス発電および売電事業
   2.労働者派遣事業
   3.間伐材・廃材等の森林資源を有効活用してのバイオマス発電用燃料チップへの加工業
   4.前各号に附帯する一切の業務
発行可能株式総数:1000株
発行済株の総数並びに種類及び数:発行済株式の総数200株
資本金の額:金1000万円
株式の譲渡制限に関する規定:当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を要する。
役員に関する事項:取締役 東泉清壽
         取締役 東泉則行
         取締役 東泉敦仁
         ■■■■■■■■■代表取締役 東泉清壽
         監査役 江連敏夫

*****前橋バイオマス燃料㈱*****
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/img/1459507374.jpg
<履歴事項全部証明書>
群馬県前橋市苗ヶ島町2550番地2
前橋バイオマス燃料株式会社
会社法人等番号 0700-01-029257
商号: 株式会社松井田バイオマス⇒株式会社前橋バイオマス※平成26年10月27日変更、平成26年10月30日登記⇒前橋バイオマス燃料株式会社※平成27年9月25日変更、平成27年9月28日登記
本店:群馬県藤岡市浄法寺511番地1⇒群馬県前橋市苗ケ島町2550番地2※平成27年9月25日移転、平成27年9月28日登記
公告をする方法:官報に掲載する方法により行う。
会社成立の年月日:平成26年2月28日
目的:1.バイオマス発電および売電事業
   2.労働者派遣事業
   3.間伐材・廃材等の森林資源を有効活用してのバイオマス発電用燃料チップへの加工業
   4.前各号に附帯する一切の業務
    ↓↓↓
1. 間伐材等の森林資源を有効活用してのバイオマス発電用燃料チップへの加工業、供給業
2. 前号に附帯する一切の業務

※平成27年9月25日変更、平成27年9月28日登記
発行可能株式総数:1000株
発行済株の総数並びに種類及び数:発行済の総数200株⇒発行済株式の総数304株※平成27年9月25日変更、平成27年9月28日登記
資本金の額:金1000万円⇒金1520万円※平成27年9月25日変更、平成27年9月28日登記
株式の譲渡制限に関する規定:当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を要する。
役員に関する事項:取締役 東泉清壽
         取締役 東泉則行
         取締役 東泉敦仁
         取締役 石塚浩基※平成27年9月25日就任、平成27年9月28日登記
         取締役 八木原勇治※平成27年9月25日就任、平成27年9月28日登記
         取締役 内山右之助※平成27年9月25日就任、平成27年9月28日登記
         ■■■■■■■■■代表取締役 東泉清壽
         監査役 江連敏夫※平成27年9月24日辞任、平成27年9月28日登記
         監査役 鴻田通雄※平成27年9月25日就任、平成27年9月28日登記
         監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある※平成27年9月28日登記
取締役会議設置会社に関する事項:取締役会設置会社
監査役設置会社に関する事項:監査役設置会社
登記記録に関する事項:設立※平成26年2月28日登記


ボイラー鉄骨構造組立中。

 タービンは一括ユニットで納入されることから、現地での組み立て・据え付け工事は割合容易ですが、ボイラーはヘッダー等各構成部品やそれらを結ぶ水管の取り付け、流動床部分の構造、耐火れんが工事のあと、全体調整工事が必要なので、かなり工数を要します。

 当初の予定では6月末あたりに完成する計画でしたが、現時点で運開(運転開始)時期は10月末にずれ込むという情報もあります。しかし、試運転を経て本格的に稼働するのは年末になるのではないかと当会では予想しております。

 現状から推測すると、裁判所がそれまでに判決を出すことは困難でしょう。一方、環境アセスを実施しないまま、関電工はこの亡国事業設備を稼働させるつもりなのでしょうか。東電グループの企業であることから、おそらく行政が指導しない限り、平気で稼働させることでしょう。だからこそ、裁判所の判断が、何の権限も持たない我々住民にとって、唯一のよりどころなのです。


ほぼ完成の貯木場。

 この貯木場も当初は計画にありませんでした。突然このような広大な施設が完成したのです。この貯木場は一体何のために必要なのでしょうか。

 そもそも、関電工のバイオマス発電のための燃焼用原料として放射能汚染木材が大量にここに集積されるわけですが、生木でも、トーセン独自(?)開発という油圧プレスで木質チップを圧縮し搾汁することで水分量を減らし、直ちにボーラーに投入できるようにする計画だったはずです。このシステムの場合、セシウム等放射性物質が搾り取った水分の中に混じり、それを地下浸透させたり、側溝を通じて河川に放流したりして放射能の拡散の懸念が高いとして周辺住民らは反対の声を上げています。

 ところが、貯木場がすぐ近くに作られたということは、ここに放射報汚染木材を集積しておいて、ある程度自然乾燥させた後、チップに加工してボイラーに投入することができます。そうすると、搾り取った水分の処理の問題も解消し、油圧プレスそのものが不要になったり、もしくは能力を少なくしたりすることができるはずです。

 ところが、そのような場合でも補助金が投入されるとなると完全な税金の無駄遣いとなります。

 こうした観点からも、前橋バイオマス訴訟を通じて、関電工やトーセンの陰謀をひとつひとつ明らかにしてその矛盾点を追及してゆく所存です。

【5月24日追記】
 前橋バイオマス発電施設設置計画で排ガス量4万ノルマル立米を超えるにもかかわらず環境アセスメントを不要とした群馬県の判断をしめす公文書の開示請求について、当該公文書不存在として不開示とされた処分に関し、群馬県を被告として相手取り係争中の事件番号「平成28年(行ウ)第24号 公文書不存在決定処分取消請求事件」の次回口頭弁論期日は、7月5日(水)午前10時30分と決まった旨、前橋地裁民事第1部合議係から告知されました。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専・・・オンブズマンが東京地裁に原告準備書面(3)を提出

2017-05-22 23:05:00 | 群馬高専アカハラ問題
■今週5月26日(金)午後1時45分から東京地裁5階522号法廷で開かれる第4回口頭弁論を控えて、市民オンブズマン群馬では被告国立高等専門学校機構に対して、反論の準備書面の送付が遅れていることから、5月17日付で被告にFAXで督促確認の質問書を送っていました。ところが、この返事代わりに、5月19日(金)の昼過ぎに被告訴訟代理人弁護士から2回目の準備書面が送られてきました。そのため、本日5月22日に、次の内容の原告準備書面(3)の正本を東京地裁に、副本を被告訴訟代理人弁護士事務所宛てに簡易書留で郵送しました。

*****送付書兼受領書*****PDF ⇒ tei3j2017.5.22.pdf
           送付書・受領書

〒104-0061
東京都中央区銀座5丁目7番1号 江島屋ビル7階
被告訴訟代理人 
弁護士 木 村 美 隆 殿
                      平成29年5月22日

                〒371-0801
                  前橋市文京町一丁目15-10
                  原 告  市民オンブズマン群馬
                       代表 小川 賢
                  TEL 027-224-8567 / FAX 027-224-6624

            送  付  書

 事件の表示 : 御 庁  平成28年(行ウ)第499号
 当 事 者 : 原 告  市民オンブズマン群馬
         被 告  独立行政法人 国立高等専門学校機構

 次回期日  : 平成29年5月26日(金)午後1時45分

   下記書類を送付致します。
       1 原告準備書面(3)          1通

                          以 上

--------------------切らずにこのままでお送り下さい--------------------

            受  領  書

上記書類、本日受領致しました。
                       平成29年 月  日

              被 告  独立行政法人 国立高等専門学校機構
     被告訴訟代理人
                     弁護士

東京地方裁判所民事第3部B2係(佐藤春徳書記官殿)御中 :FAX 03-3580-5706
市民オンブズマン群馬事務局(事務局長 鈴木庸)あて :FAX 027-224-6624

*****原告準備書面(3)*****PDF ⇒ i3j.pdf
事件番号 平成28年(行ウ)第499号 法人文書不開示処分取消請求事件
原告  市民オンブズマン群馬
被告  独立行政法人国立高等専門学校機構

                          平成29年5月22日
東京地方裁判所民事第3部B2係 御中

              原告準備書面(3)

                        原告  市民オンブズマン群馬
                            代表 小川 賢   

 平成29年4月7日付の被告の準備書面に対する反論のうち、4月14日の第3回口頭弁論に基づき、被告からの「公務の遂行に係る情報」についての追加反論を踏まえたうえで、反論すべく、二重線処理を施した箇所について、5月19日付で被告の準備書面を受け取ったことにより、二重線処理を解除し、次のとおり反論する。

第2 被告の「準備書面」の中の「2 法第5条1号ハについて」について

 被告は、「しかし、開示請求の対象文書が公務員が職務上作成したものであり、その内容が公務員の公務に関連する情報であったとしても、当該情報の内容によっては、『個人に関する情報』に該当することは、前期裁判例のとおりであり(乙4)、この裁判例の判断は独立行政法人の職員が職務上作成した文書についてもそのまま当てはまるものである。開示請求①から③にかかる文書が、個人に関する情報としての不開示情報(法5条1号柱書)が記載されたものであり、被告がこれを理由として不開示決定処分をしたことは前記のとおりである。原告は開示請求①から③にかかる文書が、公務員が職務上作成した文書であることを主張するが、公務員が職務上作成した文書であることと、当該文書に個人に関する情報としての不開示情報が含まれることは両立しうるのであり、原告の主張は失当と言うほかない。」と主張する。

 原告は次の通り反論する。

 公務員あるいはそれに準ずる立場の者が公務中になした行為について、公務員のプライバシーとして不開示が認められるのは、プライバシーの保護の必要性が開示することによる公益上の必要性を上回る場合のみである。被告の提示した乙4号証においても、東京地裁は「したがって、本件条例九条二号本文の定める個人情報が同号ただし書ハに該当するか否かについては、個人のプライバシー保護の必要性と当該情報が記録された公文書を開示する公益上の必要性を比較衡量することによって、これを決すべきものである。」(乙4号証13頁)としている。そして、東京地裁がこの事件に関して当時不開示という判決を下したのは、かかる非違行為を行った者に関する情報を開示することによる明白な公共的利益が認められなかったためである。
 しかし本事件の場合、明白な被害者が存在し、事件については一切の実効的解決をみておらず、上述の通り被害者の権利・利益は今も侵害され続けているという点において、水道局職員による談合などとは明らかに性質が異なる。
 被告は、「ハラスメントの事実の有無の調査等は人事管理に関する事項として被告ないし群馬高専が対応すべき事柄である」と繰り返し主張している。一次的には被告の言う通り、調査から対応、処分までを被告ないし群馬高専が対応すべきであるかもしれないが、一連の対応は被告ないし群馬高専の良心に委ねられているということを忘れてはならない。
 被告ないし群馬高専の良心に任せた結果、明らかに間違った裁定がなされ、特定個人らの人権が蹂躙されているのであり、さらに、「群馬高専と被害者」という二項対立の図式のままでは事態の解決が一切見込めないのであるから、二次的な対応として第三者の目が入れられなければならないことは自明の理である。前述の第1の2に次いで繰り返すが、被害者に関しては重大な精神的苦痛・経済的損害が生じていたし、生じているのであり、これらは直ちに回復されなければならない。
 回復されるためには、被告ないし群馬高専がその自浄作用によってかつての対応や処分を再検討せねばならないが、その自浄作用の発動が現時点で認められず、期待されない以上、第三者により問題点が把握され、整理された上で、被害者の同意のもと世間一般に広く事件の問題点が認知され、被告ないし群馬高専に働きかけが行われなければならない。そして、それを行うにあたって、被告の情報開示が必要とされるのである。
 さらにハラスメントの加害者は、極めて悪質な非行行為のみならず、重大な違法行為にまで手を染め、さらに一切の処罰を受けていないのであるから、この事件に関してはすでに群馬高専という一機関が対応できる範囲を大きく逸脱しており、場合によってはしかるべき法務機関が対応する必要があるのは明らかである。しかるに被告ないし群馬高専が、事件に関する情報の一切を不開示とし、事件の存在自体を公的に認めないことにより、市民の手による刑事告訴が困難となっているのであるから、隠された犯罪の追及という面でも、開示の公益上の必要性は明らかである。
 また、重大な非違行為をなし、しかも何ら処罰を受けなかった人間が教鞭を取り、学生たちを教え導く立場にあるという今の状況自体が、それこそ青少年の育成に極めて有害であると言わざるをえず、この状況を是正することが、公益にかなっているのは言うまでもない。
 加えて言えば、被告ないし群馬高専は、そもそも日本全国から来た15歳の少年・少女たちが5年、あるいは7年もの期間、人生を預けることとなる「教育機関」であることを忘れてはならない。その公共性およびそれに要求されるハラスメント事案への厳しさは、公務員である職員しか所属し得ない水道局などとは比較にならないほど異なるのであって、ゆえに決して他の公共機関や行政法人と同列にその性質が語られ得るものではない。
 ハラスメントなどの存在を一切外部に見せない上に改善もなく、一方で「綺麗な群馬高専」しか見せずに入学を促すというのは、15歳の中学生たちやその保護者たちをあまりに愚弄しているというほかない。
 被告ないしは群馬高専のハラスメント問題が何一つ解決をみておらず、再発防止が一切保証されていないこの状況下では、何も判断の機会が与えられないまま入学した新入生が次なるアカデミックハラスメントの被害に遭う可能性は十二分に想定され得ることである(この「可能性」は、特定人物を対象とするものではないが、「公益性の証明」という点では十分である)。
 そのような悲劇が起こらないようにするためにも、最低限ハラスメントの実態が開示され、入学を検討している中学生とその保護者、あるいは進学指導を行う学校関係者・塾関係者の判断材料とされなければならない。この観点からも、開示は公益にかなっているとみることができる。

 また、被告は平成29年5月19日付の準備書面において、「法5条1号ハは、『当該個人が公務員等である場合において』として、対象が公務員にかかる情報である場合に限定しており、開示請求①から③にかかる文書のうち、学生に関する個人情報が記載された部分については、同号ハの公務員等情報に該当しない(乙6、長崎地裁裁判例)。」と主張するが、公務員でない学生らの情報が公務員等情報に該当しないのは証拠を提示するまでもなく自明の理であり、原告として被告の主張の意図をはかりかねるものである。
 独立行政法人の職員たる加害教員が学生にハラスメント行為を含む非違行為をなした事実は、特に被害対象の記述が特定的である場合に、加害教員および学生側の個人情報となり得る。しかし第3において後述する通り、かかる被害者側の同意があれば、あとは法5条1号ハより、当該加害教員の意思に関係なく、そのプライバシー保護の必要性が開示への公益上の必要性を上回るかどうかのみが問題点となるのであるから、学生に関する個人情報が含まれているかどうかを法5条1号ハの不適用事由とし、全面不開示に直結させる被告の主張は失当である。
 そもそも、被告の主張は開示請求対象文書中のうち、「加害教員が学生になした行為」が記述され、さらにその記述が「被害対象の記述が特定的である場合」についてのみ成立するものである。つまり、加害教員の職務遂行における素行や、教員間で行った行為、不特定ないしや多数、あるいは両方の対象者について行った行為については被告の主張をもって不開示とすることは失当ということになる。
 また、被告はハラスメント行為が職務中に教員間で行われていた場合にも、職務遂行の内容とは成り得ない旨主張するが、検証あるいは論証がないため、原告としては無効な主張であると判断せざるを得ない。

第3 被告の「準備書面」の中の「2(ママ) 部分開示について」について

1 被告準備書面2の(2)について

(1)開示請求①に係る文書についての全面不開示処分についての妥当性の検討
 被告は、「他方、開示請求①にかかる文書には、ハラスメントの加害者及び被害者とされる者の属性(所属)や、群馬高専において行った調査の機関及び概要と、学校としての対象者への対応状況が明記されているが、他に一般論として、学校としてのハラスメントに対する対応方針が記載された部分もある。後者については、個人に関する情報に関わらないものと解されるものの、『アカデミックハラスメント事件の存在及び経緯に関する情報』に関する情報公開という、原告の開示請求の趣旨からすれば、上記の後者の部分のみの開示で有意性(法6条1項但書)があるか疑問であるが、念のため不開示情報に該当する部分を抹消して、書証として提出する(乙5の1から3)。」と主張する。

 原告は次の通り反論する。

 被告は開示請求①に係る文書の内容を分析したうえで、不開示情報となるべき情報とそうでない情報を恣意的に区分し、さらに書証として提出することでその分類を既成事実としようとしている。しかし、まず、「群馬高専において行った調査の期間及び概要」が特定個人のプライバシーに関わるとは解されないのは明らかである。そもそも、アカデミックハラスメントないしはそうと見做され得る行為が被告ないしは群馬高専内にて行われ、それに対しての何らかの告発がなされたという事実はすでに存否応答から公的に明らかであり、何らかの調査が行われたという事実の存在も当然そこから判明し得るものであり、実際に被告ないしは群馬高専が「調査」と認識している行為が行われた事実自体は存否応答より公的に明らかである。そして具体的な聞き取り内容、聞き取り対象者の具体的氏名や所属はともかく、まず調査がいつからいつまで行われたかという情報は誰のプライバシーでもないし、さらに調査の概要についても、教員・学生何名に聞き取りを行ったか、どのような手法で聞き取りを行ったかという情報は本事件に対する極めて一般的な話であり、特定個人のプライバシーであるとは到底解されない。
 さらに、「学校としての対象者への対応状況」についても同様に不開示情報とは解されない。「対象者」が加害教員と被害者のどちらを指しているのか、あるいは両方を指しているのかについては判然としないため、以下両方の場合について検討を加えることとする。
 まず、加害教員への対応についてであるが、被告自身が説明した通り、これまでに懲戒処分は一切行われていないことから、かかる文書には人事にかかる重要情報は特に記載などされていないことになる。とすればそれ以外の非公式な形で対応がなされたことになるが、その対応の内容自体から特定の個人を識別することなど不可能であり、そもそも対応の内容自体が被告ないしは群馬高専に通う学生およびその保護者には文書配布という形ですでに認知されているのだから、その対応の内容を開示したところで、かかる人物に特段の不利益が生じるとは認められない。
 また、被害者についての対応についても、例えば「被害者らに学生相談室を用いたメンタルケアを行った」程度の内容であれば、本事件について行われた学校の対応の中でも極めて一般的な話をしているに過ぎず、開示することにより特定個人を識別可能にしたり、あるいは特定個人に特段の不利益が生じる性質の情報であるとは解されない。あるいは、特定人物に対し特別な対応が行われ、それが開示請求①対象文書に記載されているのであれば話は別であるのかもしれないが、原告が認知している限りでは、準備書面(1)に示した通り特定個人のプライバシーと見做され得るほどの特別な対応が行われたという事実はないし、ましてそのことが保護者に通知されたという事実もない。
 このように、被告が一方的かつ恣意的に行った開示請求①対象文書についての分析は明らかに当を得ておらず、したがって被告の主張は失当であるというほかない。
 また、原告の請求の趣旨は原告が提出した訴状あるいは準備書面(1)によって示されたものであり、甲1に示す情報公開請求によってはもちろん原告の請求の趣旨は示されていないわけだから、つまりそもそもの全面不開示処分に原告の請求の趣旨は加味されていないのであり、そこに今回被告が自ら乙5号証1から3を提出したことで、少なくとも情報公開請求に対し「全面」不開示が妥当であるとした被告の判断は失当であったことがすでに被告自らの手によって証明されたのである。一方で、原告は第一に全面不開示処分自体が不服であるとしていたのだから、この時点で原告がその訴えを提起したことに対して全面的に被告に対して責任を負わなければならない可能性は無くなったのであり、よって原告が被告の訴訟費用を負担せねばならない理由はすでに無くなっているとみることができる。よって、被告の答弁書における「請求の趣旨に対する答弁」の2について、却下を求める。

 また、このことに関連して平成29年5月19日付の準備書面にて被告が行った反論(準備書面の2)については、以前の答弁書及び準備書面と比べ、その主張に新規性が認められないため、改めて原告として反論は行わない。

                           以上
**********

■これで5月26日(金)の第4回口頭弁論期日に向けた双方の主張が裁判所に提出されました。裁判での弁論内容は追って報告します。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高崎市のデタラメ行政・・・偽造ケアプランに関しオンブズマン会員が高崎市外部監査人に公開監査要請

2017-05-21 23:47:00 | 高崎市の行政問題
■介護サービスを巡るケアプラン偽造疑惑による若宮苑への不正給付事件を追及している当会会員は、現在この問題で高崎市を相手取り前橋地裁で法的対応中(次回公判は7月5日)ですが、別途、こうした介護保険制度に補助金を支出している都道府県に対してこの事件の背景や制度上の問題点、そして不正に直面した時の公務員の告発義務の履行に関する見解を求め、数々の公開質問状等を提出してきました。その結果、群馬県の介護保険の担当者から返事がきたため、あらためて群馬県知事大澤正明に対して公開質問状を出しました。ところが群馬県の担当者の回答は、不正行為を認識していても、行動に移すかどうかは、「個別の事案に応じて異なり、都度判断する」という姿勢をとっています。

一般棟「若宮苑」定員50床。症状が安定し在宅での生活を目指している方々の健康管理や日常生活に即したリハビリ、介護等を提供しております。また、病気があるから、年齢を重ねたから限られた生活を送るのではなく、やりたいこと、したい生活を大切に最大限の支援を行います。(同苑HPから)

 本来公務員には不正行為を見つけたら告発する義務があるのですが、それを行使しなければ何の意味もありません。そこで当会会員は、こうした実態に頬かむりをしている高崎市監査委員に愛想を尽かせて、高崎市の外部監査人にこの問題にメスを入れてもらうべく、公開監査要請状を5月20日付で、提出しました。内容は次のとおりです。

*****公開監査要請状*****PDF ⇒ 20170520_request_letter_to_outer_auditor.pdf
                             平成29年5月20日
〒370-8501
高崎市高松町35番地1
高崎市外部監査人 様
                           要介護者の尊厳を守る会
                           副会長    岩崎 優

          公 開 監 査 要 請 状

『市民の血税を喰い潰す腐蝕行政の実態とデタラメ監査委員の実務問題』について

高崎市長が県の財源を不正流用した次の事件に関し、群馬県知事が『告発を行います』と発表しました。
【高崎市職員措置請求 第70-1号 棄却事件】
「判断することは困難であり判断がつかなかった」…これを理由に住民監査請求を棄却し、高崎市民・群馬県民の血税を喰い潰す実態を容認した高崎市監査委員は下記の4人です。
        高崎市監査委員  村上次男  代表監査委員
            同     松本賢一  監査委員
            同     石川 徹  監査委員
            同     有賀義昭  監査委員

前略
 高崎市監査委員は、偽造と鑑定された筆跡鑑定書の証拠が提出されたにもかかわらず、これを無視して、若宮苑が偽造署名のケアプランについて住民監査請求を実施しました。

 しかし、『偽造署名について判断することは困難であり、判断がつかなかった。』との理由で住民監査請求は、棄却とされてしまいました。
 偽造と鑑定された鑑定書を提示されても、この監査結果を出した高崎市の監査委員の体たらくはもはや犯罪的という表現が当てはめられます。
 高崎市では、いかにこの住民監査請求制度が機能不全に陥っていて、住民が悲惨な結果を強いられているかが分かると思います。

 『偽造』と鑑定された筆跡鑑定書が在るにも拘わらずに、法や常識に則って正しく『判断できない』監査委員は、条例に基づき上記の4名で構成されていました。
 これらの監査委員は、人格が高潔で、市の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し、優れた見識を有する者及び議員のうちから、市長が議会の同意を得て選任していたとされています。
 さらに、この4名の中から、委員全員の合議により見識を有する者として、代表として選ばれた者が、村上次男・代表監査委員です。
 しかし、同代表監査委員の見識をもってしても『偽造署名について判断することは困難であり、判断がつかなかった。』との監査結果が出されたわけです。
 しかも、監査の過程で、『東京高等裁判所』『大阪高等裁判所』等から選任鑑定人として指定された筆跡鑑定人により作成された、ケアプランに書かれた署名を『偽造』と鑑定した『筆跡鑑定書』が提示されているにも拘わらず、代表監査委員およびそれ以外の監査委員がそろって『判断がつかなかった』とする監査結果を出したことになります。
 このことは、住民にとって、順法精神に欠ける監査委員の判断は全く信頼に足りず、結果的に偽造ケアプランに血税を支払った高崎市行政の違法行為を見て見ぬふりをしているだけの監査委員と言っても過言ではありません。それこそ、こうした監査員に血税から報酬を与えている高崎市は、二重に血税を喰い潰しているということができると思います。
 冒頭でも述べた通り、この監査委員の選任者は、介護保険者への介護福祉事業を口実に、『若宮苑に係る私文書偽造ケアプラン』を有効な介護報酬の根拠だと見なして、文書偽造を犯した犯罪者を擁する若宮苑に血税を食ませ続けている高崎市長なのです。
 更には、村上次男代表監査委員を、合議により『代表』として選んでしまった他の3名の監査委員は、見識選任委員の税理士の『有賀義昭委員』及び議会から選出された委員2名で構成されていますが、議会選出委員2名は、いずれも議会最大勢力である新風会の『松本賢一委員』『石川徹委員』です。
 しかしながら、税理士の監査委員に加え、議員から選出された監査委員2名も、『偽造署名について判断することは困難であり、判断がつかなかった』とする監査結果に、全員異論を唱えませんでした。
 では何故、偽造と鑑定されている筆跡鑑定書が証拠として存在しているにも拘わらず、『判断がつかなかった』のでしょうか?
 おそらく、高崎市監査委員に対して今後も回答要請を続けていっても、彼ら4名の監査委員は、それこそ住民からの回答要請の意味でさえ『判断することは困難であり、判断がつかない』として無視することが懸念されます。
 村上次男・代表監査委員は、若宮苑に係る偽造ケアプランについて『判断がつかない』として当会の監査請求を棄却しました。市民の権利であり、住民全体の利益に関わる住民監査請求について判断できないとは、まともに監査をしなかったか、あるいは監査のしかたをしらなかったのか、いずれにしても何とも情けない監査委員ですが、この『判断できない』者への報酬は、我々の税金から支払われていることも、重大な問題だと言えるのではないでしょうか。
 『偽造と鑑定された筆跡鑑定書』が証拠として提出されているにも拘わらず『判断ができない』監査委員には、直ちに任を辞していただきたいと思います。
 そもそも、当会が提出した偽造と鑑定された筆跡鑑定書について『判断ができない』或いは、『信用ができない』のであれば、御庁において然るべき『鑑定人』を選任すれば済む話ではありませんか? そして、これを怠った結果、犯罪者を幇助する形となり、その結果、群馬県の税金拠出部分についても、若宮苑に不正流用している実態を招いたのではありませんか?
 現在の4名の高崎市監査委員においては、もはや『見識』はおろか、『常識』さえも微塵も見当たらないと言わざるを得ません。
 いずれにしても、現在の高崎市監査委員の能力は、偽造ケアプランに血税を支出することに案して『判断ができない。』というレベルにあり、その結果、高崎市民及び群馬県民は損害を被ったわけです。
 高崎市監査委員については、現行の委員よりも高い専門性をもった、優れた見識者を配置すべきであるという意見が当会にも多数寄せられています。それが無理なら、せめて『常識人』を選任していただきたいものです。

 このように、現実問題として、高崎市という地方公共団体において、『判断することができない』監査委員が監査を実施しています。高崎市の財務会計等で犯罪行為が為された場合、私たち住民は、どの様な措置を取ればよいのでしょうか?
 このことは、今後の大きな課題となってしまいました。けれども、『これが高崎市監査委員の実態である』と市民として自分に言い聞かせようとしても、とうてい諦めきれるものではありません。
 しかし、『捨てる神あれば拾う神あり』とはよく言ったものです。
 当会が、群馬県知事に対し、『若宮苑に係る偽造ケアプラン』及び『高崎市不正給付隠蔽事件』について、『偽造と鑑定された筆跡鑑定書』及び『不正給付隠蔽に係る証拠』を提示し、公開質問状の形を取り回答要請したところ、群馬県健康福祉部介護課 田村裕課長より、『告発を行います。』と報告があったのでした。

 現行の介護保険法においては、保険者は高崎市であるため、群馬県知事においても対策に行き詰まっていて難儀をしていたのは事実のようです。
 しかし、本事件に関しては介護保険法云々以前の犯罪であり、偽造文書のケアプランのことなど何にも解からない要介護者をターゲットにした悪質な詐欺事件であることを私たちは重大視しなければなりません。その為、群馬県知事及び介護高齢課長が、刑事訴訟法第239条 第2項(告発)に基づき、『告発を行います。』と発表をしたのでした。
 群馬県知事の『告発を行います。』とした発表は当然のことでしょう。なぜなら、群馬県知事の告発行為は、高崎市長が若宮苑に対し、介護報酬と称して与えた『県』の拠出部分についての『税金返還』が目的であるからです。
 繰り返しますが、この事件は私文書偽造という、何ら事情を知らされず、何にも解からない要介護者を騙した悪質な詐欺事件であり、監査委員及び高崎市長は介護報酬を装い、若宮苑の偽造ケアプランに係る私文書偽造の犯罪を幇助しながら群馬県の税金拠出部分を与えている事件です。本事件については、群馬県知事が、『高崎市不正給付事件』について、犯罪があると思料したのです。

 次に、介護保険法第三条(保険者)によれば、次の定めがあります。
『市町村及び特別区は、この法律の定めるところにより、介護保険を行うものとする。』
 この条文こそが、介護保険法の地方分権での制度推進を定めているのです。しかし、中核市である『高崎市』は、保険者であることを理由に、デタラメな介護保険を運営していたのです。
 そのため、上記の条項の定めのとおり、保険者が高崎市であるため、厚生労働省においても、指導権限は皆無であり、対策に行き詰まり難儀をしていました。
しかし、本事件は、介護保険法云々以前の問題です。介護保険法を、隠れみのにし、要介護者を騙した悪質な詐欺事件なのです。
 『偽造ではない』と判断し、介護報酬を与えるのなら理解ができますが、偽造ケアプランについて『判断することは困難であり、判断がつかない』という理由で、税金の支出を許しているのです。この『判断ができない』という監査委員の監査不作為の判断が、結果的に若宮苑を幇助する形となっているのです。
 つまり、高崎市監査委員及び高崎市長は『判断ができない』ことを理由に、更には、保険者の立場であることを盾にして、違法行為者に対し、介護報酬を装い群馬県の税金部分を流出していたのです。
 介護保険の財源構成は、被保険者の方々が納める介護保険料と、国・都道府県・市区町村の税金で構成されています。
 具体的には、国民が納める介護保険料が50%で、税金が50%です。その税金の内訳は、国が20%・都道府県が17.5%・市区町村が12.5%となっています。
 この度の群馬県知事の告発の趣旨は、群馬県民の貴重な資産を返還させることが目的です。
 たとえ、高崎市長といえども介護報酬を装い、若宮苑の私文書偽造という違法行為者に対し、県民の資産を与えることは、立派な犯罪であると思料したわけです。
 さらに、監査委員は『判断することは困難であり、判断がつかなかった。』と住民監査請求を棄却しましたが、この不作為による棄却理由こそ、結果的には若宮苑を幇助するものです。高崎市の監査委員が『判断がつかなかった』とした『判断』は『故意』ではないのでしょうか?

 結果的に、監査委員が為した『判断不作為』により、若宮苑の犯罪を幇助する結果となっています。この大失態について、村上次男代表監査委員においては、普段、ほとんどパフォーマンス的に高崎市が発行している『広報誌』及び全国五大新聞など、マスメディアを通じて広く高崎市の監査機能不全の実態を全国的に公表し謝罪の意を示すべきであると考えます。
 また、議会から選出された新風会の松本賢一委員、石川徹委員においては、普段、都合の悪いことは決して載せない『市議会だより』ですが、このたびの『判断不作為』について、積極的に見解記事を掲載し、有権者市民に対して心から謝罪の意を表すべきだと考えます。
いずれにせよ、判決を待たずに群馬県知事が告発を行なえば、市民・県民の血税を喰い潰している高崎市長及び高崎市監査委員の、『不作為行為の実態』が全国的に露呈することになります。
以上の経緯を踏まえて、このような高崎市監査委員の実態を踏まえると、外部監査委員である貴殿が、この件について監査対象テーマとして取り上げて、徹底的に外部の民間人としての目線で監査をしていただくことが最も高崎市民にとって必要とされるのではないかと考えております。

 この当会の要請に対して、ぜひとも貴殿の見解をご回答くださるよう、宜しくお願い申し上げます。

 このことを要請しますが、貴殿の回答が住民全体の利益について考える際の基として活用されると同時に、高齢者の安心をもたらす介護の実現に寄与することを、当会は心から期待致します。

 なお、本状は貴殿に提出する際に記者会見で明らかにし、また、貴殿の回答を得た上で、あるいは、得られなかったときに、再度記者会見で回答の有無及び内容を明らかにしてまいりたいと考えます。
 つきましては、ご多忙のさなか、誠に恐縮ですが、上記質問事項に対する貴殿の回答を文書にしたためて頂き、平成29年5月27日(土)限り、下記に郵送にて回答頂きますようお願い申し上げます。
                    記
                                       以上
        〒370―0883   高崎市剣崎町906番地
        岩崎 優  携帯:090―9839―8702
              事務局:027-343-2610

 なお、この事件については次の情報を参考にしていただければ幸いです。
 高崎市不正給付隠蔽事件についての記事⇒http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2151.html
  その他の高崎市不正給付についての記事⇒http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2255.html
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2258.html

                           以上
**********

■なお、公開監査を必要とする情報が書かれた根拠文書は次のとおりです。

(1) 2017年4月1日付公開質問状(全国47都道府県知事及び介護保険担当職員あて)
PDF ⇒ 20170401_open_letter_for_47governors.pdf

(2) 上記(1)の添付資料1:2016年3月10日付で高崎市長から若宮苑を経営する医療法人十薬会理事長あて「ケアプラン未作成指摘」公文書
PDF ⇒ 20170401_attachment_no1.pdf

(3) 上記」(1)の添付資料2:2016年2月18日筆跡鑑定結果及び鑑定所見等
PDF ⇒ 20170401_attachment_no2.pdf

(4) 2017年4月13日付回答書(群馬県健康福祉部介護高齢課長から)
PDF ⇒ 20170413_reply_from_gunma_pref_manager.pdf

(5) 2017年4月20日付公開質問状(群馬県知事大澤正明あて)
PDF ⇒ 20170420_open_letter_for_gunma_governor.pdf

(6) 2017年5月2日付回答書(群馬県健康福祉部介護高齢課長から)
PDF ⇒ 20170502_reply_from_gunma_pref_manager.pdf

■高崎市外部監査人は、過去6年間は次の方が携わっていました。3年ごとに交代するようなので、平成29年度は新しい公認会計士の可能性が高いと見られます。
○高崎市監査制度: http://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2014012100946/
○平成23年度包括外部監査契約
http://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2014012100953/
 住所:高崎市飯塚町1115番地2
 氏名:井田 三義
 資格:公認会計士
○平成24年度包括外部監査契約
http://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2014012100960/
 住所:高崎市飯塚町1115番地2
 氏名:井田 三義
 資格:公認会計士
○平成25年度包括外部監査契約
http://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2014012100977/
 住所:高崎市飯塚町1115番地2
 氏名:井田 三義
 資格:公認会計士
○平成26年度包括外部監査契約
http://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2014042300019/
住所:高崎市飯塚町1728番地12
氏名:永井 乙彦
資格:公認会計士
○平成27年度包括外部監査契約
http://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2015041500035/
住所:高崎市飯塚町1728番地12
氏名:永井 乙彦
資格:公認会計士
○平成28年度包括外部監査契約
http://www.city.takasaki.gunma.jp/docs/2016033000045/
住所:高崎市飯塚町1728番地12
氏名:永井 乙彦
資格:公認会計士

【5月22日追記】
当会会員が高崎市監査委員事務局の大谷係長に本日確認したところ、平成29年度の高崎市外部監査人は次の方であることが分かりました。
住所:高崎市江木町221番地15
氏名:鈴木祥浩
資格:公認会計士


【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

議長公用車目的外使用訴訟で前橋地裁が出した県議会と地元代議士との協力関係重視判決

2017-05-20 23:19:00 | 県内の税金無駄使い実態
■当会の副代表が提起した群馬県議会議長公用車の目的外使用に係る公金の無駄遣い事件については、2016年7月25日に前橋地裁に提訴したあと、数度にわたる口頭弁論を経ましたが、前橋地裁は結局証人尋問を認めないまま2017年2月16日に結審し、4月26日に判決公判が開かれました。この件に関するこれまでの経緯については、当会の次のブログを参照ください。
〇2016年5月24日:議長公用車の目的外使用に係る住民監査請求で陳述と追加証拠提出の結果判った監査制度の形骸化の実態
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2011.html#readmore
〇2016年6月22日:議長公用車の目的外使用に係る住民監査請求の監査結果が本日到来か?
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2037.html#readmore
〇2016年7月25日:オブチ「姫」後援会集会参加のために議長公用車を目的外使用してもよいのか?で大澤知事を提訴
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2090.html#readmore
○2017年2月16日:【速報】議長公用車目的外使用訴訟で証人尋問をしないまま前橋地裁が結審!
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2239.html#readmore

判決文の冒頭ページ。

 平成29年4月26日付の判決文は次のとおりです。

*****判決文*****PDF ⇒
20170426_hanketubun.pdf
<P1>
平成29年4月26日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 森山ひとみ
平成28年(行ウ)第15号 議長公用車目的外使用損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 平成29年2月15日
             判          決
   群馬県高崎市片岡町X丁目XXXX-X-XXX
       原       告  大 河 原 宗 平
   前橋市大手町一丁目1番1号
       被       告  群馬県知事大澤正明
       同訴訟代理人弁護士  関   夕 三 郎
       同指定代理人     小  宮   利  支
       同          山 崎 香 代 子
       同          木  暮   和  巳
       同          川  田  純  子
       同          稲  垣  貞  利
             主          文
      1 原告の請求を棄却する。
      2 訴訟費用は原告の負担とする。
             事 実 及 び 理 由
第1 請求の趣旨
 被告は,大澤正明に対し,6万5148円及びこれに対する平成27年10月20日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求をせよ。
第2 事案の概要
 本件は,群馬県の住民である原告が,群馬県議会議長が地元選出の小渕優子衆議院議員(以下「小渕議員」という。)の後援会である政治団体の会合に出席するために議長公用車を使用したことは,議長公用車の使用基準に違背しており,違法な目的外使用に当たるから,予算執行の最終権限者である群馬県知事

<P2>
であった大澤正明(以下「大澤」という。)が上記使用に係る議長公用車のりース料,燃料代,潤滑油等消耗代及び人件費の合計6万5148円を支出したことは違法な公金の支出であり,これにより群馬県は上記金員相当額の損害を被ったにもかかわらず,群馬県の執行機関である被告は,大澤に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を違法に怠っていると主張して,被告に対し,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項4号に基づいて,大澤を相手に上記6万5148円及びこれに対する上記使用の日である平成27年10月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求すべきことの義務付けを求める住民訴訟である。
1 本件に関連する法令等の定め
 群馬県議会において管理する公用車に係る議員の使用については,平成22年3月3日付け群馬県議会公用車使用基準(以下「公用車使用基準」という。)により,以下のとおり定められている(甲3)。
「1 公用車の区分
 (1) 専用車  議長及び副議長用公用車
 ((2)以下略)
  2 使用基準
 (2) 専用車
   議長及び副議長が,議会を代表して各種団体等の会議,諸行事に出席するとき。
 ((2)以下略)」
2 前提事実(証拠を掲げた部分以外は,当事者間に争いがない。)
(1) 当事者等
 ア 原告は,群馬県の住民である。
 イ 被告は,群馬県の執行機関であり,大澤は,平成27年10月20日当時から現在に至るまで群馬県知事の職にある者である(弁論の全趣旨)。

<P3>
(2) 群馬県議会議長による議長公用車の使用等
 平成27年10月20日当時の群馬県議会議長であった岩井均(以下「岩井議長」という。)は,同日午後2時過ぎ,渋川市内にある渋川ホワイトパークで開催された「小渕優子後援会幹部役員県議団合同会議」(以下「本件会合」という。)に出席するため,前橋市大手町所在の議会庁舎から群馬県議会事務局職員が運転する同事務局管理の公用車(レクサス(黒),登録番号330は8138。 以下「本件公用車」という。)に乗って出発しだ(甲2,7)。岩井議長は,同日午後3時から開催された本件会合に出席し,その後,同日午後4時45分頃,本件公用車に乗って本件会合の会場を出発した(以下,岩井議長による本件会合出席のための本件公用車の使用を「本件公用車使用」という。)。
 本件会合は,群馬県選出の衆議院議員である小渕議員の経済産業大臣在任中に発覚した政治資金規正法違反事件に関して,小渕議員の後援会である政治団体が主催した会合である(弁論の全趣旨)。
(3) 本件訴訟に至る経緯等
 ア 原告は,平成28年4月11日,群馬県監査委員に対し,本件公用車使用は,公用車使用基準に違背した目的外使用に当たり,群馬県議会事務局のしかるべき責任者が本件公用車使用に係る本件公用車のリース料,燃料代,潤滑油等消耗代及び人件費の合計6万
5148円を支出したことは違法,不当な財務上の支出であるから,知事はこれらの支出による損害を回収する措置をとる義務があると主張し,知事に対して「本件公用車の目的外使用にともなうリース代,燃料代,消耗代,運転手の人件費を議会事務局のしかるべき責任者に支払を命」ずる措置を講ずるよう勧告することを求めて,住民監査請求をした(甲1)。
 イ 群馬県監査委員は,同年6月24日,岩井議長による本件会合への出席は,公務であるというべきであり,そのための本件公用車使用も公用車

<P4>
を公務に使用したものであって,それが違法又は不当であるということはできないとして,原告の請求を棄却する旨の判断をし,その監査結果は,遅くとも同月26日頃には原告に到達した(甲8,弁論の全趣旨)。
 ウ 原告は,同年7月25日,法242条の2第1項4号の「怠る事実に係る相手方」を「群馬県議会事務局のしかるべき責任者」とした上で,本件訴訟を提起した。その後,原告は,同年8月16日付けで訴状を訂正して,上記「怠る事実に係る相手方」を群馬県議会事務局長とし,更に平成29年2月6日付けで訴状を訂正して,上記「怠る事実に係る相手方」を大澤とした(顕著な事実)。
3 争点
(1) 本件公用車使用は,公用車使用基準に違反する目的外使用に当たるか。
 (原告の主張)
   公用車使用基準によれば,議長公用車である本件公用車は,専用車に区分されており,「議長及び副議長が,議会を代表して各種団体等の会議,諸行事に出席するとき」に使用することができるとされている。
 岩井議長が,一代議士の後援会である政治団体の会合に群馬県議会を代表して出席することはあり得ず,仮に,岩井議長が本件会合に出席することがあり得るとしても,その場合には,岩井議長が所属する自由民主党群馬県支部連合会関係の県議団団長,広報委員長,筆頭政務調査会副会長,政務調査会副会長又は組織副委員長としての肩書や立場で出席するはずである。したがって,岩井議長が本件会合に出席したことは公務とは認められず,本件公用車使用は,公用車使用基準に反する目的外使用に当たることは明らかである。
 (被告の主張)
 普通地方公共団体の議会の議長の交際は,普通地方公共団体の住民の福祉の増進を図ることを基本として地域における行政を自主的かつ総合的に

<P5>
実施するという役割を果たすため相手方との友好,信頼関係の維持増進を図ることを目的とすると客観的にみることができ,かつ,社会通念上儀礼の範囲にとどまる限り,普通地方公共団体の議会の事務に含まれる。
 本件会合は,小渕議員が,経済産業大臣在任中に発覚した政治資金規正法違反事件について自ら報告する場であり,小渕議員の国会議員としての進退をも左右するものであったが,国の行う事務,施策及び事業が,地方公共団体の行い得る施策の内容や社会的及び経済的な環境の整備拡充に多大な影響を及ぼし得るものであることを考慮すれば,地方公共団体の議会の議長が地元選出の国会議員の地位を左右するような重大な問題に関する重要な会合に出席することは,地元選出の国会議員との間に緊密な関係を築き,地方公共団体の円滑な運営や維持発展を期するものであるということができる。そして,群馬県議会としては,小渕議員本人からの報告を正確に把握するとともに,同議員の進退等について確認し,県政に係る県議会と同議員との連携を一層強固にする必要性が客観的にあり,かつ,本件会合に出席することが社会通念上儀礼の範回に止まることは明らかである。
 したがって,岩井議長が本件会合に本件公用車で出席したことは何ら違法ではない。
(2) 被告が,大澤に対し,本件公用車使用に伴う本件公用車のりース料,燃料代,潤滑油等消耗代及び人件費を支出したことについて,不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を違法に怠っているか。
 (原告の主張)
 ア 上記のとおり本件公用車使用は,公用車使用基準に反する目的外使用に当たるところ,法138条の2が,普通地方公共団体の執行機関に対してその事務を誠実に管理し及び執行ずる義務を課し,法2条14項が,地方公共団体に対し,事務処理に当たって最小の経費で最大の効果を挙げるべきことを求め,地方財政法4条1項が,地方公共団体の経費はその目的を

<P6>
達成するための必要且つ最小の限度をこえてこれを支出してはならない旨を定めていることに鑑みれば,本件公用車使用に伴う以下のリース料,燃料代,潤滑油等消耗代及び人件費の各支出は違法・不当な財務上の支出である。
 (ア) リース料             4488円
   本件公用車リース料は,4年間で898万1380円であり,年換算額224万5345円であるところ,1年当たりの平均使用日数を250日,1日当たりの平均使用時間を8時間として計算すると,本件公用車の1時間当たりのリース料は1122円となるから,岩井議長が平成27年10月20日午後2時過ぎに議会庁舎を出発して,同日午後6時頃に県庁に戻るまでの4時間の本件公用車のリース料は4488円となる。
 (イ) 燃料代               600円
   本件公用車使用によりレギュラーガソリン5リットル相当の燃料を使用したとすると,燃料代は600円か相当である。
 (ウ) 潤滑油等消耗代            60円
   潤滑油等消耗代は,燃料代の10%程度と想定するのが相当である。
 (エ) 人件費            6万0000円
   本件公用車の運転手の人件費を1時間当たり1万5000円と想定すると,岩井議長が平成27年10月20日午後2時過ぎに議会庁舎を出発して,同日午後6時頃に県庁に戻るまでの4時間の人件費は6万円となる。
 イ 法149条2号によれば,予算執行の最終権限は知事にあると解されるから,当時の知事であった大澤は,本件公用車使用に伴う上記各支出について,不法行為に基づく損害賠償義務を負い,被告は上記各支出による損害を回収する措置をとる義務がある。したがって,被告が,上記各支出に

<P7>
ついて,大澤に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠っていることは違法である。
(被告の主張)
 否認する。
 本件公用車は,4年間のリース契約により使用しているものであり,リース料は本件公用車の使用の有無にかかわらず固定的に要する経費である(なお,リース料には車検費用,定期点検費用等の維持管理費用を含む。)。したがって,リース料は,本件公用車使用によって発生した経費たり得ない。
 本件公用車使用により発生した経費は,燃料代354円,高速代300円及び人件費3075円(時間外勤務手当を含む。)の合計3729円である。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(本件公用車使用は,公用車使用基準に違反する目的外使用に当たるか。)について
 前提事実(2)のとおり,本件公用車使用は,当時の群馬県議会議長であった岩井議長が,群馬県選出の衆議院議員である小渕議員の経済産業大臣在任中に発覚した政治資金規正法違反事件に関して,小渕議員の後複合である政治団体が主催した会合である本件会合に出席するため本件公用車を使用したというものである。
 原告は,岩井議長が本件会合に出席したことは公務とは認められず,本件公用車使用は,公用車使用基準に反する目的外使用に当たることは明らかであると主張する。
 普通地方公共団体の議会の議長は,議場の秩序を保持し,議事を整理する役割だけでなく,議会の事務を統理し,議会を代表するものとされている(法104条)。普通地方公共団体の議事機関である議会も議会としての活動ないし事務を遂行する過程においては,社会との接触及び交渉を持たざるを得ない。そうである以上,議会の事務を統理し,議会を代表する議長が,社会との接触及

<P8>
び交渉に当たって各種団体等の主催する会合に出席するなどの一定の儀礼や交際をすることも直ちに許されないとすることはできない。
 ところで,国は,地方公共団体が住民の福祉の増進を図ることを基本として,地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を十分に果たすことができるようにするため,全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動又は地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施等を行うものとされており(法1条の2第2項),国の行う上記のような事務,施策及び事業が,地方公共団体の行い得る施策の内容や社会的及び経済的な環境の整備拡充に多大な影響を及ぼし得るものである。したがって,普通地方公共団体の長や執行機関が地元選出の国会議員との間に良好な関係を築き,地方行政の円滑な運営や維持発展を図ろうとすることは,当然,それら普通地方公共団体の事務のうちに含まれ得るということができる。そして,普通地方公共団体の議会は,当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行うことができる(法100条1項)のであるから,上記の普通地方公共団体の長々執行機開かどの地元選出の国会議員と良好な関係を築こうとしているのかやその関係の築き方についても調査を行うことができることとなる。また,普通地方公共団体の議会は,当該普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁に提出することができるものとされている(法99条)。これらのことを考慮すれば,普通地方公共団体の議会は執行機関ではないとはいえ,普通地方公共団体の長や執行機関の活動についての調査に協力してもらうため,または,当該普通地方公共団体の公益に関する意見を国政に反映させるため,普通地方公共団体の議会と地元選出の国会議員との間に情報提供などについての協力的な信頼関係を構築し,その維持を図ることは,なお,議長が代表してなすべき議会の事務に含まれるというべきである。
 本件会合は,地元選出の衆議院議員である小渕議員の経済産業大臣在任中に

<P9>
発覚した政治資金規正法違反事件に関する会合であり,仮に,小渕議員が議員辞職する場合には,群馬県議会は,他の国会議員や新たに選出されるかもしれない議員の中の誰との間で信頼関係の構築等を図ればよいかなど本件会合の内容を踏まえた対応が求められる可能性があったのであるから,議会の代表者で ある議長がこのような会合に出席することは,議会と地元選出の国会議員との間の協力的な信頼関係の構築及びその維持を図る上で必要な活動であるといえる。また,前提事実②記載の岩井議長による本件会合への出席は,その経緯及び態様等に照らし,社会通念上相当性を欠くと認めるに足りる事情はない。
 したがって,岩井議長による本件会合への出席は,群馬県議会の議長がなすべき議会の事務であるというべきであり,そのための本件公用車使用も,公用車を公務に使用したものであって,違法であるということはできない。よって,原告の上記主張は採用することが付きない。
2 結論
 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。

    前橋地方裁判所民事第1部

      裁判長裁判官     塩  田  直  也
         裁判官     佐  藤  秀  海

<P10>
 裁判官後藤英時郎は,転勤のため,署名押印することができない。

      裁判長裁判官     塩  田  直  也

<P11>
 これは正本である。

  平成29年4月26日
   前橋地方裁判所民事第1部
     裁判所書記官 森 山 ひとみ
**********

■この判決文は5月の連休直前に簡易書留で裁判所から郵送されてきましたが、当会の副代表はちょうどしばらくの期間、家を空けていたため、配達されずに郵便局に留め置かれていましたが、取りに行けなかったため、裁判所に返戻しされました。

 そのため、裁判所の書記官から2017年5月8日付で当会の副代表あてに、判決正本が再度簡易書留で郵送されましたが、これに加えて次の通知が副代表に届けられました。どうやら副代表が受取り拒否をするのではないか、と懸念したようです。実際には、当会の副代表にはそのような意思はなく、再送された判決正本は、今度は在宅していたため、円滑に受領できました。

*****通知書*****PDF ⇒ 20170508_tuuchisho_from_maebashichisai.pdf
     〒370-0XXX
     群馬県高崎市片岡町X丁目XXXX-X-XXX

      大河原宗平 様

             P0117001170001361

事件番号 平成28年(行ウ)第15号
議長公用車目的外使用損害賠償請求事件
原告 大河原宗平
被告 群馬県知事 大澤正明

         通    知    書

                      平成29年5月8日
原告 大河原宗平 様

             〒371-8531
             前橋市大手町3-1-34
             前橋地方裁判所民事第1部合議係
               裁判所書記官 森 山 ひ と み
                 電話027-231-4275
                 FAX
 頭書の事件について,下記書類を本日,あなたに宛てて書留郵便で送付しましたので通知します。
 仮に,あなたがこの書類を受領されない場合でも,民事訴訟法107条3項により,本日あなたに対して下記書類が送達されたものとみなされ,手続が進行し不利益を受けることかありますので,必ずお受け取りください。
               記
書類の名称 判決正本
**********

■今回の判決で、裁判所は「群馬県議会を代表する議長が、社会との接触および交渉に当たって各種団体等の主催する会合に出席するなどの一定の儀礼や交際をすることも直ちに許されないとすることはできない」という判断をしました。

 その根拠として、「国は、前項の規定の趣旨を達成するため、国においては国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立つて行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、地方公共団体との間で適切に役割を分担するとともに、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たつて、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない。」とする地方自治法1条の2第2項を引用したうえで、国と群馬県の事務事業の間には多大な影響が及んでおり、だから、群馬県選出の国会議員と、群馬県の知事や市町村長との間には良好な関係が必要で、地方行政の円滑な運営や維持発展を図ることは群馬県内の地方公共団体の事務のひとつだとしました。

 そして、地方自治法100条1項に定めた「普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治事務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により議会の調査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。次項において同じ。)に関する調査を行うことができる。この場合において、当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。」を引用しつつ、群馬県議会は、群馬県の事務について調査ができるのだから、地元選出の国会議員との良好な関係を維持するのは調査の対象であるとしました。

 したがって、小渕優子代議士の政治資金不正使用事件による同後援会への報告会に岩井議長が出席することは、「群馬県議会の代表者として、また(議長と同じ群馬五区選出の)小渕優子代議士が議員辞職するかもしれない重大な会合に出席して、不祥事件の報告について自ら司会をするなど、その場を取り仕切ることは、群馬県議会と地元選出の小渕代議士との協力的な信頼関係の構築と維持を図るうえで必要だ」という理屈で、議長公用車を使って、議会事務局職員に運転させて、小渕優子の後援会に出席したことは、違法ではないから原告の主張は採用できないというのが裁判所の結論というのです。

 これは、今回の住民訴訟に先立ち、行われた住民監査請求における群馬県監査委員の監査結果の判断理由とほぼ一致しています。
○2016年【6月27日】住民監査請求の監査結果について(監査委員事務局)
http://www.pref.gunma.jp/houdou/v0200010.html

 この論理で行くと、議長や副議長や議会関係者が、今後地元選出の代議士の後援会の会合に顔を出す場合には、どんどん公用車を使って、議会事務局の職員に運転させることができることになります。

■このように、議会公用車の使用基準が幅広く解釈できることを裁判所が認めたのですから、今後は公用車の利用率が格段に高まることでしょう。

 こうしたことは税金の無駄遣いを追及するオンブズマンとしては、認めがたいことですが、裁判所が、議会関係者が公用車を使って議会事務局職員に運転させて地元選出の代議士の後援会のイベントにどしどし出席することは税金の無駄遣いではない、とのお墨付きを与えたことから、控訴しても時間と費用の無駄と考えて、5月20日の当会の例会において、本件について控訴しないことに決しました。

 なお、群馬県議会事務局においては、今回の裁判所の判決を受けて、公用車の使用基準を改正しなければなりません。

 ちなみに、当会の副代表はブログで次の記事を掲載しています。こうした住民の常識が、裁判所によって覆されるのですから、やはり裁判所は行政側の目線でものごとを判断していると言わざるを得ません。
○2016年05月10日:群馬県議会議長(岩井均氏)の 公用車使用は適切か??
http://ookawara.doorblog.jp/archives/47531088.html

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする