市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

【速報】若宮苑不正給付事件…11月7日に前橋地裁が言い渡した原告住民全面敗訴判決!!(その2)

2018-11-11 23:28:00 | 高崎市の行政問題
■それでは引き続き判決文全文のうち、20ページの下段の「第3 当裁判所の判断」を示します。

【2019年1月13日追記】
 その後、当会会員は一審の判決内容をすべて不服として、控訴しました。控訴審の第1回弁論は2019年2月14日(木)に東京高裁(第824号法廷)で開かれる予定です。
 偽造書類の存在が認められたのに、それを根拠として支出された公金が有効なはずがありません。東京高裁では、きちんと常識的な審理が行われることを期待したいと思います。


*****判決文(全文つづき)*****PDF ⇒ 201811071_hanketu_bun_p0128.pdf
201811072_hanketu_bun_p2944.pdf
<P20途中>
第3 当裁判所の判断
1 認定事実
  前提事実,証拠(認定に供した証拠は末尾に摘示)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
 (1) 当事者
   原告は,クニ子が若宮苑に入所した際には頻繁に若宮苑を訪れ,クニ子の様子を見たり,若宮苑の職員に対して,しばしばクニ子の生活に関して要望を伝えたりしていた。(原告本人)

<P21>
 (2) 初回入所
   クニ子が若宮苑に初めて入所した経緯,及び若宮苑の職員ら(斯波,児玉及び指出を含む。)のクニ子に対する対応等は,前記第2の2(4)アのとおりであり,斯波は,原告に対し,アセスメントの趣旨を説明した上で,原告から事情を聞いていた。
 (3) 本件入所1
  ア クニ子は,平成27年3月31日,脱水及び食欲不振を原因として,上大類病院に入院し,同年4月4日,退院後に若宮苑に入所することになったことから,原告は同日,プレ・インテーク・シートの家族欄に必要事項を記入した上で,若宮苑に持参し,斯波と面接した。
    プレ・インテーク・シートの冒頭には,初回入所の際のブレ・インテーク・シートと同様に,「これは当施設(介護老人保健施設若宮苑)のご利用を希望される皆さまに,より適切なサービスを提供することができるよう,ご要望などをおうかがいするための用紙です。」と不動文字で記載されているところ,斯波は,上記シートに基づいて,原告及びクニ子との面接を行い,その結果及び上大類病院の看護サマリーの内容等を踏まえて,A-2インテーク:適性アセスメント・シート及びその裏面の暫定ケアプランを作成し,原告にその内容を説明し,原告は,暫定ケアプランの家族同意欄に署名した。
(証人斯波,原告本人,甲30,乙5ないし7,丙8,49)
  イ クニ子は,同月6日,若宮苑に介護保健施設サービスを受けるために入所し,指出ら若宮苑の職員は,同日,若宮苑内でカンファレンスを行い,クニ子の歩行トイレ及び離床等のサービス内容についての方針が確認された。(前提事実(4)イ,丙16)
  ウ 指出は,同月6日,栄養ケア計画を作成し,同月16日,原告に対し,その内容を説明したところ,原告は,説明内容を記載した用紙の「利用者

<P22>
(家族)確認」欄に署名した。(丙35)
  エ 児玉は,同月7日,リハビリテーション実施計画書を作成し,その内容を原告に説明したところ,原告は,リハビリテーション実施計画書の「ご本人・ご家族への説明と同意」欄に署名した。(丙34)
  オ 原告,クニ子,斯波,児玉,じゃんけんぽん地域生活支援室ケアマネージャーの西村澄子(以下[西村」という。)は,同月25日,クニ子が同月28日に若宮苑から退所することに伴い,帰宅後の支援内容について話し合うためにサービス担当者会議を行った。サービス担当者会議では,必要時には若宮苑の短期入所療養介護を利用すること,同年5月21日から同月23日までの期間で若宮苑において短期入所療養介護を利用する予定とすること等が決定された。(丙36)
  カ 斯波は,クニ子の入所後すぐに,施設サービス計画を作成していたが,施設サービス計画書は,施設サービス計画の作成に関与する専門職6名が各専門職記入欄にそれぞれ必要事項を記載しなければならなかったところ,その記載が遅れたため,完成したのは 同年4月25日であった。
    斯波は,施設サービス計画書が完成した後,原告に対してその内容の説明及び同計画書の交付をしていないため,施設サービス計画書の家族同意欄に原告の署名を得ることができなかった。
   (甲2,丙9,36,証人斯波)
  キ クニ子は,同月29日まで,その身体状況に適合したサービスの提供を受けて,同日,若宮苑を退所した。
 (4) 本件入所2
  ア クニ子は,上記(3)オのとおり,平成27年5月21日から短期入所療養介護を受けるため,若宮苑に入所する予定であった。しかし,原告は,同月20日,斯波に対し電話を掛け,クニ子が体調を崩し,転倒し,歩くことが困難になったため,一日早く短期入所療養介護を利用したいと申し入

<P23>
れた。斯波は原告から電話を受けた際クニ子の食事や水分の摂取状況,転倒及び転倒後の症状や行動制限等を確認し,入所する前に医師の診察を受けることを勧めた。もっとも,その際,斯波は,原告に対し,上記のやり取りにおけるクニ子の状況確認がアセスメントであるとは伝えていなかった。
   (丙3,証人斯波,原告本人)
  イ クニ子は,同日,上大類病院を受診した後,若宮苑に短期入所療養介護を受けるために入所した。クニ子が入所するに当たり,A-2インテーク:適性アセスメント・シート裏面の暫定ケアプランは作成されていなかったものの,斯波や児玉,指出等の若宮苑の職員は,同日,カンファレシスを行い,その結果,クニ子について車いすを使用すること等,短期入所療養介護サービスの方針が定まった。(前提事実(4)ウ,丙15,証人斯波)
  ウ 斯波は,同月21日,クニ子の生活機能についてのアセスメントを行い,A-3生活機能(ICF)アセスメントを作成した。(丙24)
  エ 原告,クニ子,斯波,児玉及び西村は,同年6月4日,クニ子の同月5日の退所に向けて,帰宅後の支援内容について話し合うためにサービス担当者会議を行った。サービス担当者会議では,必要時に通所リハビリや若宮苑の短期入所療養介護を利用することが確認された。
    なお,本件入所2に係る短期入所療養介護計画書は既に作成されていたが,上記(3)カと同様の経緯により完成したのが同日であったため,斯波は,原告に対し,短期入所療養介護計画書の完成後,その内容の説明及び同計画書の交付をしておらず,それゆえ,短期入所療養介護計画書の家族同意欄に原告の署名を得ることができなかった。
   (甲22,丙10,37,証人斯波)
  オ クニ子は,同月5日まで,その身体状況に適合したサービスの提供を受

<P24>
けて,同日,若宮苑を退所した。
 (5) 本件入所3
  ア クニ子は,平成27年6月16日,不安定狭心症疑いの診断で,高崎総合医療センターに入院し,同月18日,上記疾患の治療のため,経皮的冠動脈形成術を受けた。(丙50の2,4)
  イ 原告は,同月17日,高崎総合医療センターのソーシャルワーカーである影山美沙子(以下「影山」という。)に対し,クニ子の治療後は,自宅退院ではなく直接若宮苑に入りたいこと,斯波に対しでも既にその旨を伝えて了解を得ていることを伝え,医師と若宮苑との連絡を含めて調整をするように依頼した。影山は,これを受けて,同月18日,斯波に対し,クニ子が高崎総合医療セン夕―から退院した後に若宮苑を利用することについて相談したところ,斯波は,受入れの可否の判断のため,検査結果を踏まえた紹介状を送るよう影山に依頼した。
    影山は,同月19日,斯波に対し,クニ子に関する報告書(お返事),日常生活動作表看護サマリー(退院)を送付した。
    報告書(お返事)にはクニ子の日常生活について「日常生活において,制限は特にありませんので,今まで通りに生活して頂ければと存じます。」と記載されていた。
(甲23,丙50の1ないし4)
  ウ クニ子は,同月20日,高崎総合医療センターを退院し,若宮苑に介護保健施設サービスを受けるために入所した。
    斯波は,同日,クニ子の入所前に,原告と電話で話をし,アセスメントである旨を伝えることなく,クニ子の状況について確認した。また,斯波は,クニ子の入所直前,原告がクニ子を若宮苑に連れてきた際に原告に会って話をし,同日,上記イの書類に記載されていた情報及び原告からの聴取結果などを踏まえ,本件入所2と同じ本ケアプランで介護保健施設サー

<P25>
ビスを提供することとした。
   (前提事実(4)エ,証人斯波,原告本人)
エ 斯波は,同月21日,クニ子の生活機能についてのアセスメントを行い,A-3生活機能(ICF)アセスメントを作成した。(丙25)
  オ 斯波,児玉,指出ら若宮苑の職員は,同年7月15日,カンファレンスを行い, クニ子についてセンサーマットを使用し,センサーが反応したらすぐに訪室する等の対応を協議した。
    なお,上記(3)カと同様の経緯のため,同日,施設サービス計画書が完成したが,斯波は,原告に対してその内容の説明及び同計画書の交付をしていないため,施設サービス計画書の家族同意欄に原告の署名を得ることができなかった。
   (証人斯波,丙11,19)
  カ 原告,クニ子,斯波及び西村は,同月24日,クニ子の同月31日の退所に向けて,帰宅後の支援内容について話し合うためにサービス担当者会議を行った。サービス担当者会議では,同月28日に,クニ子が原告や斯波,児玉と共に自宅に一時帰宅し,自宅での歩行や日常生活動作の確認等をすることが確認された。
    斯波及び児玉は,同月28日,クニ子の一時帰宅に同行し,原告及び西村と共にクニ子の自宅での歩行や日常生活動作の確認等を行った。
    クニ子は,同月31日に若宮苑を退所する予定であったが,一時帰宅による疲労から,帰宅を延期することを希望したため,同年8月12日まで若宮苑に入所することになった。
   (丙39,40)
  キ クニ子は,同年8月12日まで,その身体状況に適合したサービスの提供を受けて,同日,若宮苑を退所した。
 (6) 本件入所4

<P26>
  ア クニ子は,平成27年8月31日,尿閉により高崎総合医療センターに入院した。(甲24,丙51の2)
  イ 原告は,同年9月7日,クニ子の退院調整のため影山と面接した。原告は,面接の際,影山に対し,既に入所相談をしたい施設は決まっており,第1希望が若宮苑,第2希望が通所リハビリ先のケアピースである旨を伝えた。影山は,これを受けて,同月8日,斯波に対し,高崎総合医療センターから退院した後に若宮苑を利用することについて相談したところ,斯波は,受入れは可能と思われるが,紹介状を確認,検討してから正式な返答をする旨を伝えた。
    影山は,同月14日,斯波に対し,クニ子に関する診療情報提供書及び日常生活動作表を,同月18日に,診療情報提供書,検査結果時系列画面,心臓超音波検査報告書,看護サマリー(退院)及びリハビリテーションサマリを送付した。
   (甲24,丙51の1ないし10)
  ウ クニ子は,同月18日,高崎総合医療センターを退院し,若宮苑に介護保健施設サービスを受けるために入所した。
    斯波は,入所の際,原告からクニ子の状況を聴取し,クニ子自身の状況も確認したうえで,本件入所3と同じ本ケアプランで介護保健施設サービスを提供することを決定した。
    また,斯波は,同日,クニ子の生活機能についてのアセスメントを行い,A-3生活機能(ICF)アセスメントを作成した。
   (前提事実(4)オ,丙26,証人斯波)
  エ 原告,クニ子斯波及び西村らは,同年10月14日クニ子の同月15日の退所に向けて,帰宅後の支援内容について話し合うためにサービス担当者会議を行い,クニ子の体調に変化がみられるときなどの必要があれば,原則として若宮苑を利用することなどが確認された。

<P27>
   (丙44)
  オ クニ子は,同月15日まで,その身体状況に適合したサービスの提供を受けて,同日,若宮苑を退所した。
  カ 本件入所4における施設サービス計画書は,「専門職(チーム)アセスメント及び実施計画内容等の要点」の欄のうち,「リハビリ」と「支援相談員」の欄が記載されているだけであり,施設サービス計画書は完成していない。(丙22,証人斯波)
 (7) 栄養ケア計画の署名について
  ア 指出は,平成27年6月22日本件入所3に関するクニ子の栄養ケア計画を作成した。当該栄養ケア計画(丙38)の利用者(家族)同意欄には,同年7月1日付けで原告の氏名が自暑された形跡があるところ,原告の氏名の筆跡について,原告が署名したことに争いのない初回入所の本ケアブランの署名及び本件入所1の暫定ケアプランの署名と比較すると,上記の筆跡は,「岩」の3画目と4画目の筆跡において,上記の各署名との同一性に疑問があるし,「優」についても3画目から14画目までの崩し方の同一性に疑問がある。
    また,署名の筆跡に関する簡易鑑定において,上記氏名の筆跡と原告の筆跡が相異するとの鑑定結果が出ている。
   (甲5,乙7,丙7,8,38,原告本人)
  イ 指出は,同年9月18日,本件入所4に関するクニ子の栄養ケア計画を作成した。当該栄養ケア計画(丙43)の利用者(家族)同意欄には,同月22日付けで原告の氏名が自署された形跡があるところ,原告の氏名の筆跡について,原告が署名したことに争いのない初回入所の本ケアプランの署名及び本件入所1の暫定ケアプランの署名と比較すると,上記の筆跡は,上記アと同様,「優」について,その同一性に疑問があるし,「崎」の字句についても,崩し方の形状の類似性に疑問がある。

<P28>
    また,署名の筆跡に関する簡易鑑定において,当該署名の筆跡と原告の筆跡が相異するとの鑑定結果が出ている。
   (甲5,6,丙7,8,43,原告本人)
2 争点1(高崎市の被告補助参加人に対する不当利得返還請求権の有無)
 (1) 介護報酬の要件及び基準について
  ア 介護保健施設サービスについて
    法97条3項及び4項は,介護老人保健施設の設備や運営に関し,都道府県等の条例に委ねており,条例を定めるに当たっては,従業者及びその員数や入所者のサービスの適切な利用についで厚生労働省令で定める基準に従い定めるものとしている。
    そして,40号省令及び老健施設条例は,施設サービス計画に関する基準を定めており,入所者のサービスの適切な利用についての基準といえるから,40号省令は法8条25項後段及び法施行規則19条の厚生労働省令に該当し,老健施設条例は法8条25項後段の条例に該当するといえ,40号省令及び老健施設条例は施設サービス計画の内容を規律するものである。
    したがって,計画担当介護支援専門員は,施設サービス計画を作成するためのアセスメントを入所者及びその家族に面接の趣旨を十分に説明して理解を得た上で面接を行い(40号省令14条4項,老健施設条例16条4項),施設サービス計画の原案を作成したうえ,その内容について,入所者又はその家族に対して説明し,文書により入所者の同意を得なければならず(同令14条5項,7項,同条例16条5項,7項),施設サービス計画が完成した際には,当該施設サービス計画を入所者に交付しなければならない(同令14条8号同条例16条8項)。
  イ 短期入所療養介護について
    法74条1項ないし3項は,居宅サービスの事業の設備や運営に関し,

<P29>
都道府県等の条例に委ねており,条例を定めるに当たっては,従業者及びその員数や入所者のサービスの適切な利用について厚生労働省令で定める基準に従い定めるものとしている。
    そして,37号省令及び居宅サービス条例は,短期入所療養介護計画に関する基準を定めており,入所者のサービスの適切な利用についての基準といえるから,法が短期入所療養介護計画の定義を定めていないとしても,37号省令及び居宅サービス条例が,居宅サービスの一つである短期入所療養介護計画の内容を規律するものである。
    したがって,介護支援専門員は,相当期間(4日間)以上にわたり継続して入所することが予定される利用者について,短期入所療養介護計画を作成し,その内容について利用者又はその家族に対して説明し,利用者の同意を得なければならず(37号省令147条1項3項居宅サービス条例194条1項,3項),短期入所療養介護計画を作成した際には,当該短期入所療養介護計画を利用者に交付しなければならない(同令147条4項,同条例194条4項)。
 (2) アセスメントについて
  ア 原告は,本件入所2ないし4において,斯波と面接していないこと,本件入所1ないし4の前に斯波と話したことはあったものの, 会話の趣旨がアセスメントであることを全く告げていなかったこと,斯波は,本件入所2ないし4について, A-2インテーク:適性アセスメント・シートを作成せず,R4システムに即したアセスメントを行っていないことから,40号省令の要件を満たさず,本件入所1ないし4に際し,アセスメントが行われたと評価することはできない旨を主張するので以下検討する。
  イ 本件入所1について
    上記1(3)アで認定したとおり,原告は,平成27年4月4日,プレ・インテーク・シートの家族欄に必要事項を記入した上で若宮苑を訪れ,斯波

<P30>
と面接した。この面接の際,斯波は,原告に対し,この面接がアセスメントであると明確に伝えていないものの,原告が必要事項を記載した上で持参したプレ・インテーク・シートの冒頭に,「これは当施設(介護老人保健施設若宮苑)のご利用を希望される皆さまに,より適切なサービスを提供することができるよう,ご要望などをおうかがいするための用紙です。」というアセスメントの趣旨が不動文字で記載されていること,上記1(2)で認定したとおり,原告は,初回入所のプレ・インテーク・シートの作成の際,斯波からアセスメントの趣旨を説明された上で面接した(若宮苑に入所する際には,アセスメントが行われることを認識していたといえる。)ことからすると,原告は,上記面接がアセスメントとして行われていると認識していたと認めるのが相当である。
    そうすると,本件入所1に際してされた面接をもって,実質的には,アセスメントが原告に対して行われたものというべきでありアセスメントがされなかった旨の原告の上記主張は,理由がないから採用できない。
  ワ 本件入所2について
   (ア) 前記イのとおり,原告は,若宮苑に入所する際には,アセスメントが行われることを認識していたこと,原告が,平成27年5月20日にクニ子の入所前に斯波から電話で聴取された内容は,初回入所及び本件入所1のアセスメントの際と同様にクニ子の食事や水分の摂取状況,行動制限の状況等であったことからすれば,斯波の電話での事情聴取がアセスメントの趣旨であると認識していたと認めるのが相当である。
     また,斯波の本件入所2での事情聴取は,電話によるものであり,原告と面接していないものの,アセスメントにおいて面接が要求されているのは,入所者及びその家族にアセスメントの趣旨を理解してもらい,その上で入所者の状態を的確に把握するためであることからすると,上記のとおり,原告は,斯波の電話による事情聴取がアセスメントの趣旨

<P31>
であると認識した上で斯波に対してクニ子の身体状況について説明し,斯波はクニ子の食事や水分の摂取状況,行動制限等,入所者の状態を的確に把握していたのであるから,初回入所の際のアセスメントの実施及び本件入所1の際のアセスメントによる情報取得の経緯を踏まえると,本件入所2における斯波の上記聴取については,面接という方法を講じなかったことのみをもってアセスメントがされなかったものと同視するのは相当ではない。
   (イ) なお,原告の主張するとおり,斯波は,A-2インテーク:適性アセスメント・シートを作成していないものの,R4システムは,ケアマネジメントの段階を4つの段階に分類し,更にアセスメントについても4つの段階に分類し,各段階に応じたアセスメントを行うことを求めるものであるから,上記(ア)のとおり,斯波が,A-2(インテーク:適性アセスメント)に対応するアセスメントを行ったといい得る以上,A-2インテーク:適性アセスメント・シートを作成していないことをもって,アセスメントを行っていないものとするのは相当ではない。
   (ウ) そうすると,本件入所2に際し,アセスメントがされなかった旨の原告の上記主張は,理由がないから採用できない。
  エ 本件入所3について
    上記イのとおり,原告は,若宮苑に入所する際には,アセスメントが行われることを認識していたのであるから,斯波が,初回入所及び本件入所1のアセスメントの際と同様に,平成27年6月20日に原告に対してしたクニ子の入所前の状況についての電話聴取について,それがアセスメントの趣旨であると認識していたと認めるのが相当である。また,斯波は,上記1(5)ウのとおり,原告と直接に会って話をして,面接も行っており,A-2・インテーク:適性アセスメント・シートを作成していないものの,上記ウ(イ)のとおり,A-2(インテーク:適性アセスメント)に対応する

<P32>
アセスメントを行っているのであるから,A-2インテーク:適性アセスメント・シートを作成していないことをもって,アセスメントを行っていないものと評価するのは相当ではない。
    そうすると,本件入所3に際し,アセスメントがされなかった旨の原告の上記主張は,理由がないから採用できない。
  オ 本件入所4について
    前記イのとおり,原告は,若宮苑に入所する際には,アセスメントが行われることを認識していたのであるから,斯波が,初回入所及び本件入所1のアセスメントの際と同様,平成27年9月18日に,原告に対してしたクニ子の入所前の状況についての聴取について,それがアセスメントの趣旨であると認識していたと認めるのが相当である。また,斯波は,A-2インテーク:適性アセスメント・シートを作成していないものの,上記ウ(イ)のとおり,A-2(インテーク:適性アセスメント)に対応するアセスメントを行っているのであるから,A-2インテーク:適性アセスメント・シートを作成していないことをもって,アセスメントを行っていないものとするのは相当ではない。
    そうすると,本件入所4に際し,アセスメントがされなかった旨の原告の上記主張は,理由がないから採用できない。
  カ 以上によれば,本件入所1ないし4の際にアセスメントがされなかったことを理由とする介護報酬の要件不備又は基準違反を認めることはできない。
 (3) 本ケアプランについて
  ア 本件入所1について
   (ア) 原告は,被告補助参加人が,クニ子の入所日である平成27年4月6日から同月25日までの間,クニ子に対する施設サービス計画を作成しておらず,クニ子に対する事実上の世話をしていたにすぎないこと,施

<P33>
設サービス計画が作成された後も,クニ子及び家族で、ある原告への同計画の内容の説明及び文書の交付並びにクニ子及び原告の同計画に対する同意がないことから,介護保険支給の要件を欠き,被告補助参加人が高崎市から本件入所1の介護報酬を取得したことは法律上の原因を欠く旨を主張する。
   (イ) 確かに,上記1(3)カで認定したとおり,斯波は,施設サービス計画書を完成させたものの,原告に対し,施設サービス計画書に関する説明及び交付をしておらず,原告は施設サービス計画書に同意していないことから,40号省令及び老健施設条例の定める施設サービス計画書による利用者の同意及び文書の交付を欠いているということができる。
     しかしながら40号省令及び老健施設条例の趣旨は,入所者に対し,要介護状態の軽減又は悪化の防止に資するよう,その者の心身の状況等を踏まえて,療養を適切妥当に行うといラ介護老人保健施設の義務を全うするところにあると考えられるから,入所者の心身の状況等を踏まえた施設サービス計画が作成され,これに入所者及びその家族が同意し,これに基づいた介.護保健施設サービスが提供されていれば,形式的に施設サービス計画書を示してその内容を説明し,同文書を交付し,文書による同意をしていなかったことをもって,直ちに介護報酬を取得する法律上の原因を欠くとまではいえないというべきである。
   (ウ)a 本件では,前記第2の2(4)ア(キ)のとおり,原告は,クニ子の初回入所時,暫定ケアプランだけではなく,本ケアプランについても説明を受け,その内容に同意した上でクニ子が介護保健施設サービスを受けており,原告は,介護保健施設サービス及び短期入所療養介護サービスを受けるにあたり,暫定ケアプランに加えで本ケアプランの説明を受けるという手続を踏むことを認識していたと認められる。
     b そして,本件入所1において,原告は,若宮苑の職員に対し,しば

<P34>
しばクニ子の生活に関して要望を伝えていたものの,提供されるサ}
ピスの内容について苦情を述べた形跡がないこと,若宮苑の職員に対
し,クニ子の退所時まで施設サービス計画の内容を伝えるように求めたことがうかがわれず,むしろ,クニ子の退所時に,退所後も必要時には若宮苑の短期入所療養介護を利用することが確認されるなど,原告及びクニ子は,若宮苑のサービスに満足していたと認められることからすると,斯波は,クニ子の入所後すぐに原告に対し,本件入所1施設サービス計画の内容を説明していたと認めるのが相当である。
     c その上で,上記1(3)アないしキのとおり,クニ子の心身の状況に応じ,歩行, トイレ及び離床などについて,本人及び家族の日常生活を支援する観点から適切なサービスが行われていたことクニ子が若宮苑から退所する際,クニ子の本件入所2が予定されていたことからすれば,原告は,本件入所1について,施設サービス計画の内容を認識し,その内容に満足してクニ子に介護保健施設サービスを受けさせていたといえ,斯波の説明した施設サービス計画に基づく介護保健施設サービスの提供がなされることについて黙示に同意していたと認めるのが相当である。
   (エ) したがって,クニ子は,施設サービス計画に基づき,入所者に対し,要介護状態の軽減又は悪化の防止に資するよう,その者の心身の状況等を踏まえて,療養を適切妥当に行うという介護老人保健施設の義務を全うする介護保健施設サービスを受けたと認めることができるから,被告補助参加人が高崎市から本件入所1の介護報酬を取得したことが,法律上の原因を欠くものとはいえないというべきである。
  イ 本件入所2について
   (ア) 原告は,被告補助参加入が,クニ子の入所日である平成27年5月20日から同年6月4日までの間,クニ子に対する短期入所療養介護計画

<P35>
を作成しておらず,クニ子に対する事実上の世話をしていたにすぎないこと,短期入所療養介護計画が作成された後も,クニ子及び家族である原告への同計画の内容の説明及び文書の交付並びにクニ子及び原告の同計画に対する同意がないため,短期入所療養介護計画の要件を満たしていないことから,被告補助参加人が本件入所2の介護報酬を取得したことは法律上の原因を欠く旨を主張する。
   (イ) 確かに,上記1(4)エで認定したとおり,斯波は,短期入所療養介護計画書を完成させたものの,原告に対し,短期入所療養介護計画書に関する説明及び交付をしておらず,原告は,同文書に同意していない。
     しかしながら,37号省令及び居宅サービス条例の趣旨は,利用者の心身の状況,病状,希望及びその置かれている環境並びに医師の診療の方針に基づき,指定短期入所療養介護の提供の開始前から終了後に至るまでの利用者が利用するサービスの継続性に配慮して,短期入所療養介護従業者と協議の上サービスの目標,当該目標を達成するための具体的なサービスを提供するという指定短期入所療養介護事業者の義務を全うするところにあると考えられるから,利用者の心身の状況,病状,希望及びその置かれている環境並びに医師の診療の方針に基づき,指定短期入所療養介護の提供の開始前から終了後に至るまでの利用者が利用するサービスの継続性に配慮して,短期入所療養介護従業者と協議の上,サービスの目標,当該目標を達成するための具体的なサービスを提供する短期入所療養介護計画が立てられ,そのサービスが提供されることに入所者及びその家族が同意し,これに基づいた短期入所療養介護サービスが提供されていれば形式的に短期入所療養介護計画書を示してその内容を説明し,同文書を交付し,文書による同意をしなかったことをもって,直ちに介護報酬を取得する法律上の原因を欠くとまではいえないというべきである。

<P36>
   (ウ)a 本件では,原告は,若宮苑で介護保健施設サービス及び短期入所療養介護サービスを受ける場合には,本ケアプランについて説明を受け,その内容に同意するという手続を踏むことを認識していたと認められるところ,本件入所2において,原告は,若宮苑の職員に対し,しばしばクニ子の生活に関して要望を伝えていたものの,提供されるサービスの内容についで苦情を述べた形跡がないこと,若宮苑の職員に対し,クニ子の退所時まで短期入所療養介護計画の内容を伝えるように求めたこともうかがわれず,むしろ,クニ子の退所時に,退所後も必要時には若宮苑の短期入所療養介護を利用することとされ,若宮苑のサービスに満足していたと認められることからすると,斯波は,クニ子の入所後すぐに原告に対し,本件入所2の短期入所療養介護計画の内容を説明していたと認めるのが相当である。
     b そして,上記1(4)アないしオのとおり,クニ子の心身の状況に応じ,車いすを使用するなど,本人及び家族の日常生活を支援する観点から適切なサービスが行われていたこと,クニ子が若宮苑から退所する際,クニ子の本件入所3が予定されていたことからすれば,原告は,本件入所2について,短期入所療養介護計画の内容を認識し,その内容に満足してクニ子に短期入所療養介護を受けさせていたといえ,斯波の説明した短期入所療養介護計画に基づく短期入所療養介護サービスの提供がなされることについて黙示に同意していたと認めるのが相当である。
   (エ) したがって,クニ子は,短期入所療養介護計画に基づき,利用者の心身の状況,病状,希望及びその置かれている環境並びに医師の診療の方針に基づき,指定短期入所療養介護の提供の開始前から終了後に至るまでの利用者が利用するサービスの継続性に配慮して,短期入所療養介護従業者と協議の上,サービスの目標,当該目標を達成するための具体的

<P37>
なサービスを提供するという指定短期入所療養介護事業者の義務を全うする短期入所療養介護を受けたと認めることができるから,被告補助参加人が高崎市から本件入所2の介護報酬を取得したことが,法律上の原因を欠くものとはいえないというべきである。
  ウ 本件入所3について
   (ア) 原告は,被告補助参加人が,クニ子の入所日である平成27年6月20日から同年7月15日までの間,クニ子に対する施設サービス計画を作成しておらず,クニ子に対する事実上の世話をしていたにすぎないこと,施設サービス計画書が作成された後も,クニ子及び家族である原告への同計画の内容の説明及び文書の交付並びにクニ子及び原告の同意がなく施設サービス計画の要件を満たしていないこと,若宮苑の職員がクニ子の栄養ケア計画の利用者(家族)確認欄の原告の署名を偽造したことから,被告補助参加入が本件入所3の介護報酬を取得したことは法律上の原因を欠く旨を主張する。
   (イ) 確かに,上記1(5)オのとおり,斯波は,施設サービス計画書を作成したものの,原告に対じ,施設サービス計画書に関する説明及び交付をしておらず,原告は,施設サービス計画書に同意していないことから,40号省令及び老健施設条例の定める施設サービス計画書による利用者の同意及び文書の交付を欠いているということができる。
     しかしながら,上記ア(イ)のとおり,入所者の心身の状況等を踏まえた施設サービス計画が立てられ,これに入所者及びその家族が同意し,これに基づいた介護保健施設サービスが提供されていれば,形式的に施設サービス計画書を示してその内容を説明し,同文書を交付し,文書による同意をしていなかったことをもって,直ちに介護報酬を取得する法律上の原因を欠くとまではいえないというべきである。
   (ウ)a 本件では,原告は,若宮苑で介護保健施設サービス及び短期入所療

<P38>
養介護サービスを受ける場合には,本ケアプランについて説明を受け,その内容に同意するという手続を踏むことを認識していたと認められるところ,本件入所3において,原告は,若宮苑の職員に対し,しばしばクニ子の生活に関して要望を伝えていたものの,提供されるサービスの内容について苦情を述べた形跡がないこと,若宮苑の職員に対し,クニ子の退所時まで施設サービス計画の内容を伝えるように求めたこともうかがわれず,むしろ,クニ子の退所時に,退所後も必要時には若宮苑の短期入所療養介護を利用することとされ,若宮苑のサービスに満足していたと認められることからすると斯波はクニ子の入所後すぐに原告に対し,本件入所3の施設サービス計画の内容を説明していたと認めるのが相当である。
     b そして,上記1(5)アないしキのとおり,若宮苑において,経皮的冠動脈形成術を受けたクニ子の心身の状況に応じ,本人及び家族の日常生活を支援する観点から適切なサービスが行われていたことからすれば,原告は,本件入所3について,施設サーピス計画の内容を認識し,その内容に満足してクニ子に介護保健施設サービスを受けさせていたといえ,斯波の説明した施設サービス計画に基づく介護保健施設サービスの提供がなされることについて黙示に同意していたと認めるのが相当である。
     c また,原告は,初回入所及び本件入所1の際,指出から栄養ケア計画について説明を受け,栄養ケア計画の利用者(家族)確認欄に署名していたことからすれば,栄養ケアを含む介護保健施設サービスを受ける場合には,栄養ケア計画について説明を受け,その内容に同意するという手続を踏むことを認識しでいたと認められるところ,原告は,栄養ケアマネジメント加算の対象となる栄養ケアをクニ子に受けさせていたことに対して苦情を述べた形跡がない。
     そうすると,原告は,クニ子について栄養ケア計画に基づくサービス

<P38>
の提供がなされることについて黙示に同意していたと認めるのが相当であり,本件入所3について,栄養ケアマネジメント加算の要件を欠くとまではいえないというべきである。
     なお,上記1(7)アのとおり,本件入所3に係る栄養ケア計画の原告の署名が,原告以外の者により偽造された疑いは否定できないものの,前記第2の2(3)のとおり,栄養ケア計画に対する利用者又は家族の同意は,必ずしも栄養ケアマネジメント加算の要件となっていないことからすれば,上記の判断を左右するものではない。
   (エ) したがって,クニ子は,施設サービス計画に基づき,入所者に対し,要介護状態の軽減又は悪化の防止に資するよう,その者の心身の状況等を踏まえて,療養を適切妥当に行うという介護老人保健施設の義務を全うする介護保健施設サービスを受けたと認められるから,被告補助参加人が高崎市から本件入所3の介護報酬を取得したことが,法律上の原因を欠くものとはいえない。
  エ 本件入所4について
   (ア) 原告は,被告補助参加人が,クニ子に対する施設サービス計画を作成しておらず,クニ子に対する事実上の世話をしていたにすぎないこと,若宮苑の職員がクニ子の栄養ケア計画の利用者(家族)確認欄の原告の署名を偽造していることから,被告補助参加入が本件入所4の介護報酬を取得したことは法律上の原因を欠く旨を主張する。
   (イ) 確かに,上記1(6)カで認定したとおり,斯波は,クニ子が若宮苑を退所するまでに施設サービス計画書を完成させていないことから,40号省令及び老健施設条例の定める施設サービス計画書の作成を欠いているということができる。
     しかしながら,上記ア(イ)のとおり,入所者の心身の状況等を踏まえた施設サーピス計画が立てられ,これに入所者及びその家族が同意し,こ

<P40>
れに基づいた介護保健施設サービスが提供されていれば,形式的に施設サービス計画書を示してその内容を説明し,同文書を交付し,文書による同意をしていなかったことをもって,直ちに介護報酬を取得する法律上の原因を欠くとまではいえないというべきである。
   (ウ)a 本件では,原告は,若宮苑で介護保健施設サービス及び短期入所療養介護サービスを受ける場合には,本ケアプランについて説明を受け,その内容に同意するという手続を踏むことを認識していたと認められるところ,本件入所4において,原告は,若宮苑の職員に対し,しばしばクニ子の生活に関して要望を伝えていたものの,提供されるサービスの内容について苦情を述べた形跡がないこと,若宮苑の職員に対し,クニ子の退所時まで施設サ}ピス計画の内容を伝えるように求めたこともうかがわれず,むしろ,クニ子の退所時に,退所後も必要時には若宮苑の短期入所療養介護を利用することが確認され,若宮苑のサービスに満足していたと認められることからすると,斯波は,クニ子の入所後すぐに原告に対し本件入所4の施設サービス計画の内容を説明していたと認めるのが相当である。
     b そして,上記1(6)アないしオのとおり,若宮苑において,尿閉により入院したクニ子の心身の状況に応じ,本人及び家族の日常生活を支援する観点から適切なサ}ピスが行われていたこととからすれば,原告は,本件入所4について,施設サービス計画の内容を認識し,その内容に満足してクニ子に介護保健施設サービスを受けさせていたといえ,斯波の説明した施設サービス計画に基づく介護保健施設サービスの提供がなされることについて黙示に同意していたと認めるのが相当である。
     c また,原告は,初回入所及び本件入所1の際,指出から栄養ケア計画について説明を受け,栄養ケア計画の利用者(家族)確認欄に署名

<P41>
していたことからすれば,栄養ケアを含む介護保健施設サービスを受ける場合には,栄養ケア計画について説明を受け,その内容に同意するという手続を踏むことを認識していたと認められるところ,原告は,栄養ケアマネジメント加算の対象となる栄養ケアをクニ子に受けさせていたことに対して苦情を述べた形跡がない。
     そうすると,クニ子について栄養ケア計画に基づくサーピスの提供がなされることについて黙示に同意していたと認めるのが相当であり,本件入所4について,栄養ケアマネジメント加算の要件を欠くとまではいえないというべきである。
     なお,上記1(7)イのとおり,本件入所4に係る栄養ケア計画の原告の署名が,原告以外の者により偽造された疑いは否定できないものの,前記第2の2(3)のとおり,栄養ケア計画に対する利用者又は家族の同意は,必ずしも栄養ケアマネジメント加算の要件となっていないことからすれば,上記の判断を左右するものではない。
  (エ) したがって,クニ子は,施設サービス計画に基づき,入所者に対し,要介護状態の軽減又は悪化の防止に資するよう,その者の心身の状況等を踏まえて,療養を適切妥当に行うとし寸介護老人保健施設の義務を全うする介護保健施設サービスを受けたと認められるから,被告補助参加人が高崎市から本件入所4の介護報酬を取得したことが,法律上の原因を欠くものとはいえない。
 (4) よって,被告補助参加入が高崎市から本件入所1ないし4の介護報酬の支払を受けたことが法律上の原因を欠くということはできず,高崎市の被告補助参加人に対する不当利得返還請求権は認められない。
3 争点2(被告補助参加人の高崎市に対する介護報酬請求が「偽りその他不正の行為」にあたるか)
  法22条3項は,事業者が介護報酬の支払を受けるに当たり偽りその他不正

<P42>
の行為をした場合における介護報酬の不当利得返還義務についての特則を設けたものと解される。そうすると,事業者が同項に基づき介護報酬の返還義務を負うものと認められるためには,その前提として,事業者が介護報酬の支払を受けたことに法律上の原因がないといえる場合であることを要するというべきである(最高裁判所平成23年7月14日第1小法廷判決・裁判集民事237号247頁)。
  上記2のとおり,被告補助参加人が高崎市から本件入所1ないし4の介護報酬の支払を受けたことについて法律上の原因を欠くということはできないから,被告補助参加人は,高崎市に対し,原告の請求に係る法22条3項に基づく介護報酬の返還義務を負うものではないというべきである。
4 結論
  以上によれば,その余の争点につき判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。

   前橋地方裁判所民事第1部

     裁判長裁判官    渡  遁  和  義

        裁判官    高  橋  治  美

<P43>
        裁判官    浅  川  浩  輝

<P44>
  これは正本である。

   平成30年11月7日
    前橋地方裁判所民事第1部
      裁判所書記官  森 山 ひとみ

前橋 11-026056
**********

■当初、この判決は10月31日(水)の予定でしたが、10月26日(金)に裁判所から、原告の当会会員の訴訟代理人に電話があり、「被告(高崎市長)と補助参加人(若宮苑)の主張をお互いに利用するということを被告らに主張してもらいたいので、月曜日(10月29日)に電話会談の形で弁論準備手続きを行いたい」との連絡があり、実際に、10月29日(月)11時30分から弁論準備が開かれた結果、被告と補助参加人は相互に主張を採用するということになりました。

 このため、この弁論再開を受けて、判決言い渡し期日が、1週間延び、11月7日に変更となりました。こうした判決言渡しの直前の裁判所の動きは、大同スラグの不法投棄の裁判でも発生し、判決日が3週間伸びたことがありました。その際も原告当会の全面敗訴になったため、なにやら予感めいたものを感じておりましたが、遺憾ながら的中してしまったかたちです。
○2018年2月21日:【緊急速報!】大同スラグ訴訟…明後日2月23日予定の判決言渡が突如3週間後の3月16日(金)に変更!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2567.html
○2018年3月16日:【速報】大同スラグ裁判・・・3月16日に前橋地裁が言い渡した原告住民全面敗訴判決!!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2592.html

■驚いたことに、判決は、文書偽造や説明義務不履行を認めたにも関わらず、補助参加人の言い分を全面的に採用し、高崎市が事業者である若宮苑の文書偽造や説明義務不履行に対して介護報酬を支払ったのは問題がないと判断するという、あってはならない行政の二重判断を支持する内容となっています。

 この不当な判決内容は介護保険制度の信頼性を根底から揺るがすことになりかねないため、原告当会会員は控訴も視野に入れ、2週間以内に対応方針を固める意向を明らかにしています。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・この項終わり】

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【速報】若宮苑不正給付事件…11月7日に前橋地裁が言い渡した原告住民全面敗訴判決!!(その1)

2018-11-11 22:11:00 | 高崎市の行政問題
■高崎市の若宮苑を巡る補助金の不正給付を巡り、当会会員が高崎市を相手取って足掛け3年間にわたり係争を続けてきた事件の判決が、11月7日(水)午後1時10分に前橋地裁21号法廷で、渡邉和義裁判長から言い渡されました。判決内容は、原告住民の全面敗訴です。判決文全文をご覧ください。

【2019年1月13日追記】
 その後、当会会員は一審の判決内容をすべて不服として、控訴しました。控訴審の第1回弁論は2019年2月14日(木)に東京高裁(第824号法廷)で開かれる予定です。
 偽造書類の存在が認められたのに、それを根拠として支出された公金が有効なはずがありません。東京高裁では、きちんと常識的な審理が行われることを期待したいと思います。

*****判決文(全文)*****PDF ⇒ 201811071_hanketu_bun_p0128.pdf
201811072_hanketu_bun_p2944.pdf
<P1>
平成30年11月7日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 森山ひとみ
平成28年(行ウ)第7号 不当利得等請求住民訴訟事件
口頭弁論終結日 平成30年10月29日
              判          決
   群馬県高崎市剣崎町906
       原       告     岩  崎     優
       同訴訟代理人弁護士     ■  ■     ■
   群馬県高崎市高松町35番地1
       被       告     高  崎  市  長
                     富  岡  賢  治
       同訴訟代理人弁護士     小  林  優  公
       同             小  島  一  慶
       同             松  村  真  幸
   群馬県高崎市上大類町759番地
       被告訴訟参加人       医 療 法 人 十 薬 会
       同代表者理事長       矢  島  祥  吉
       同訴訟代理人弁護士     大  谷  郁  夫
            主         文
     1 原告の請求をいずれも棄却する。
     2 訴訟費用は原告の負担とする。
            事 実 及 び 理 由
第1 請求
   被告は,被告補助参加人に対し,129万2146円及びこれに対する100分の40を乗じた金員を高崎市に支払うよう請求せよ。
第2 事案の概要
   本件は,高崎市の住民である原告が,介護老人保健施設である若宮苑を経営

<P2>
する被告補助参加入が高崎市から原告の母岩崎クニ子(以下「クニ子Jという。)に係る介護報酬の支払を受けたことについて,上記介護報酬の支払は介護保険法(平成27年法律第31号による改正前のもの。以下「法」という。)22条3項の「偽りその他不正の行為」による,又は法律上の原因がないものであるから違法である旨を主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市の執行機関である被告に対し,被告補助参加人に対して,法22条3項又は不当利得に基づく上記介護報酬129万2146円の返還及びこれに対する100分の40を乗じた金員の支払を請求するように求めた住民訴訟である。
1 関係法令の定め等
 (1) 介護老人保健施設,介護保健施設サービス及び短期入所療養介護の定義
  ア 介護老人保健施設とは,要介護者に対し,施設サービス計画に某づいて,看護, 医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とした施設として,県知事の許可をうけたものである。(法8条27項前段)
  イ 介護保健施設サービスとは,介護老人保健施設に入所する要介護者に対し,施設サービス計画に基づいて行われる看護,医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話をいう。(法8条27項後段)
  ウ 短期入所療養介護とは,居宅サービスのうち,居宅要介護者について,介護老人保健施設その他の厚生労働省令で定める施設に短期間入所させ, 当該施設において看護, 医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことをいう。(法8条1項,10項)
  エ 指定居宅サービスとは,要介護認定を受けた被保険者のうち居宅において介護を受けるものが,都道府県知事が指定する者(指定居宅サービス事業者)から当該指定に係る居宅サービス事業を行う事業者により行

<P3>
われる居宅サービスである。(法41条1項)
  オ 介護老人保健施設の開設許可を得た事業者は短期入所療養介護等につき,指定があったものとみなされる。(法72条1項)
 (2) 施設サービス計画
  ア 法の定め
   (ア) 施設サービスとは,介護保健施設サービス等をいい,施設サービス計画とは,介護老人保健施設等に入所している要介護者について,これらの施設が提供するサービスの内容これを担当する者その他厚生労働省令で定める事項を定めた計画をいう。(法8条25項)
   (イ) 法は,介護老人保健施設の施設従業者及びその員数並びに設備及び運営に関し,都道府県(中核市の場合には市であり(法203条の2),本件では高崎市である。以下,中核市を併せて「都道府県等」という。)の条例に委ねており,条例を定めるに当たっては,従業者及びその員数や入所者のサービスの適切な利用等については厚生労働省令で定める基準に従い定めるものとしている。(法97条3項,4項)
  イ 介護保健法施行規則,厚生省令及び条例の定め
   (ア) 介護保険法施行規則(平成27年9月29日厚生労働省令第150号による改正前のもの。以下同じ。)19条は法8条25項後段の厚生労働省令で定める事項として,当該要介護者及びその家族の生活に対する意向,当該要介護者の総合的な援助の方針並びに健康上及び生活上の問題点及び解決すべき課題並びに提供する施設サービスの目標及びその達成時期並びに施設サービスを提供する上での留意事項とする旨を定めている。
   (イ) 介護老人保健施設の人員,施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年3月31日厚生省令第40号。以下「40号省令」という。)は,以下の内容を定めており,高崎市介護老人保健施設の人員,施設

<P4>
及び設備並びに運営に関する基準を定める条例(以下「老健施設条例」という。)には,40号省令と同趣旨の規定がある。
    a 介護老人保健施設は,施設サービス計画に基づき,入所者の要介護状態の軽減又は悪化の防止に資するよう,その者の心身の状況等を踏まえて,その者の療養を妥当適切に行わなければならない。(40号省令13条1項,老健施設条例15条1項)
    b 介護老人保健施設の管理者は,介護支援専門員に施設サービス計画の作成に関する業務を担当させるものとし,施設サービス計画に関する業務を担当する介護支援専門員(以下「計画担当介護支援専門員」という。)は,施設サービス計画の作成に当たっては,適切な方法により,入所者について,その有する能力,その置かれている環境等の評価を通じて入所者が現に抱える問題点を明らかにし,入所者が自立した日常生活を営むことができるように支援する上で解決すべき課題を把握しなければならない。(4 0号省令14条1項,3項,老健施設条例16条1項,3項)
    c 計画担当介護支援専門員は,入所者の解決すべき課題の把握(以下「アセスメント」という。)に当たっては,入所者及びその家族に面接して行わなければならず,この場合において,計画担当介護支援専門員は,面接の趣旨を入所者及びその家族に対して十分に説明し, 理解を得なければならない。(40号省令14条4項,老健施設条例16条4項)
    d 計画担当介護支援専門員は,入所者の希望,入所者についてのアセスメントの結果及び医師の治療の方針に基づき,入所者の家族の希望を勘案して,入所者及びその家族の生活に対する意向,総合的な援助の方針,生活全般の解決すべき課題,介護保健施設サービスの目標及びその達成時期,介護保健施設サービスの内容,介護保健

<P5>
施設サービスを提供する上での留意事項等を記載した施設サービス計画の原案を作成しなければならず,その内容について,入所者又はその家族に対して説明し,文書により入所者の同意を得なければならない。(4 0号省令14条5項,7項,老健施設条例16条5項,7項)
     また,計画担当介護支援専門員は,施設サービス計画を作成した際には,当該施設サービス計画を入所者に交付しなければならない。(40号省令14条8項,老健施設条例16条8項)
 (3) 短期入所療養介護計画
  ア 法の定め
    法は,指定居宅サービスの事業の設備及び運営に関する基準は,都道府県等の条例に委ねており,条例を定めるに当たっては,従業者及びその員数,入所者のサービスの適切な利用等については厚生労働省令で定める基準に従い定めるものとしている。(法74条1項ないし3項)
  イ 厚生省令及び条例の定め
    指定居宅サービス等の事業の人員,設備及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚生省令第37号。以下「37号省令」という。)は,以下の内容を定めており,高崎市指定居宅サ}ビス等の事業の人員,設備及び運営に関する基準を定める条例(以下「居宅サービス条例」という。)には, 3 7号省令と同趣旨の規定がある。
   (ア) 指定短期入所療養介護事業所の管理者は相当期間以上にわたり継続して入所することが予定される利用者については,利用者の心身の状況,病状,希望及びその置かれている環境並びに医師の診療の方針に基づき,指定短期入所療養介護の提供の開始前から終了後に至るまでの利用者が利用するサービスの継続性に配慮して,短期入所療養介護従業者と協議の上,サービスの目標,当該目標を達成するための具

<P6>
体的なサービスの内容等を記載した短期入所療養介護計画を作成しなければならず,計画の作成に当たっては, その内容について利用者又はその家族に対して説明し,利用者の同意を得なければならない。(37号省令147条1項,3,居宅サービス条例194条1項,3項)
     なお,厚生省老人保健福祉局企画課長通知(老企第25号 平成11年9月17日)では,上記の「相当期間以上」につき,概ね4日以上連続する場合を指すとされる。
   (イ) 指定短期入所療養介護事業所の管理者は,短期入所療養介護計画を作成した際には,当該短期入所療養介護計画を利用者に交付しなければならない。(37号省令147条4項,居宅サービス条例 194条4項)
 (4) 介護報酬
  ア 介護保険の保険者である市町村は,要介護認定を受けた被保険者が介護保健施設サービスを受けたときは, 当該被保険者に対し施設介護サービス費を支給する。(法48条1項2号)
  イ 介護保険の保険者である市町村は,要介護認定を受けた被保険者が指定居宅サービスを受けたときは,当該被保険者に対し居宅介護サービス費を支給する。(法41条1項。以下,施設介護サービス費と居宅介護サービス費を併せて「介護報酬」という。)
  ウ 市町村は,要介護被保険者が,介護保険施設から指定施設サービス等を受けたときは,当該要介護被保険者が当該介護保険施設に支払うべき当該指定施設サービス等に要した費用について,施設介護サービス費として当該要介護被保険者に支給すべき額の限度において,当該要介護被保険者が当該介護保険施設に支払うことができ,居宅要介護被保険者が指定居宅サービス事業者から指定居宅サービスを受けたとき当該居宅要介護被保険者が当該指定居宅サ}ビス事業者に支払うべ

<P7>
き当該指定居宅サービスに要した費用について,居宅介護サービス費として当該居宅要介護被保険者に対し支給すべき額の限度において,当該居宅要介護被保険者に代わり,当該指定居宅サ}ビス事業者に支払うことができる。(法41条6項,48条4項)
  エ 市町村は,介護保険施設又は指定居宅サービス事業者から介護報酬の請求があったときは,施設介護サービス費については法97条3項に規定する介護老人保健施設の設備及び運営に関する基準等に照らして審査した上,支払うものとし,居宅介護サービス費については,法74条2項に規定する指定居宅サービス事業の設備及び運営に関する基準等に照らして審査した上,支払うものとする。(法41条9項,48条6項)
 (5) 不正利得の徴収等
   市町村は,指定居宅サ}ピス事業者又は介護保険施設等の事業者が,偽りその他不正の行為により上記(4)ウによる支払を受けたときは,当該事業者から,その支払った額につき返還させるべき額を徴収するほか,その返還させるべき額に100分の40を乗じて得た額を徴収することができる。(法22条3項)
2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)
 (1) 当事者等
  ア 原告
    高崎市に住所を有し,被告補助参加人の経営する介護老人保健施設である若宮苑(以下「若宮苑」という。)に入所していたクニ子の二男である。
  イ クニ子
    介護保険法上の要介護認定を受けた介護保険被保険者であり,若宮苑に入所していた者である。

<P7>
  ウ 被告
    介護保険法上の保険者である高崎市の執行機関である市長である。(弁論の全趣旨)
  エ 被告補助参加入
    被告補助参加入は,上大類病院及び若宮苑を経営する群馬県高崎市上大類町759番地に主たる事務所を置く医療法人である。
  オ 若宮苑
    若宮苑は,介護保険法上の開設許可を受けた介護老人保健施設である。
    若宮苑では,施設サービス計画及び短期入所療養介護計画(以下,施設サービス計画又は短期入所療養介護計画を,後記(2)イ(イ)の暫定ケアプランに続くものとして「本ケアプラン」ともいう。)の作成について,全て後記(2)のR4システムが利用されていた。(証人斯波,弁論の全趣旨)
 (2) R4システム
  ア R4システムとは,公益社団法人全国老人保健施設協会が厚生労働省との協議を踏まえて開発したケアマネジメントシステムであり,ケアマネジメントをR-1からR-4の4つの段階に分類している。(乙12)
  イ R-1(各種アセスメント)
  (ア) 多職種による各種アセスメントを行う段階である。R-1(各種アセスメント)では,従前,アセスメントとして一括りにされていたものを4つの段階に区分している。具体的には,入所の目的,希望などを聴取するA-1(インテーク:ニーズアセスメント),利用者に介護老人保健施設利用の適性があるかを判断するA-2(インテーク:適性アセスメント),利用者の生活機能を聴取するA-3(生活機能(ICF)アセスメント)及び各種の専門職による調査が行われるA-4(専門職(チーム)アセスメント)に分類され,利用者が施設に

<P9>
入所する前にA-1及びA-2を,入所した後にA-3及びA-4が行われる。
  (イ) 暫定ケアプランがA-2の後に作成される。暫定ケアプランとは,入所後1ないし2週間程度,初回の本ケアプランが立てられるまでの間のサービス提供内容を定めた暫定的なケア計画である。
  ウ R-2(本ケアプランの作成)
    E-1での各種アセスメントの確認を踏まえた上で,介護支援専門員や医師等のスタッフによるケアカンフアレンスの開催と,そこでの方針及び決定事項をまとめた本ケアプランを作成する段階である。
  エ R-3(本ケアプランの実施と確認)
    R-2で作成された本ケアプランを施設内の全ての職員に周知徹底し,本ケアプランに則ったケアの実施と記録をする段階である。
  オ R-4(変化のチェックと評価)
    本ケアプランに基づくケアの実施により,入所者の心身機能などの様子がどのように変化したのかを把握する段階である。
 (3) 栄養ケアマネジメント加算
   介護報酬は,あらかじめ定められた人員や設備等の基準を満たして都道府県知事に届け出た上で,サービスを提供した場合,所定の単位数が加算される。以下の条件を満たした場合には,栄養ケアマネジメント加算として所定の単位数が介護報酬に加算される。(甲11)
  ア 常勤の管理栄養士を1名以上配置していること
  イ 入所者の栄養状態を施設入所時に把握し,医師,管理栄養士,看護師,介護支援専門員その他の職種の者が共同して,入所者ごとの摂食・暗黒下機能及び食形態にも配慮した栄養ケア計画を作成していること。
  ウ 入所者ごとの栄養ケア計画に従い栄養管理を行っているとともに,入所者の栄養状態を定期的に記録していること。

<P10>
  エ 入所者ごとの栄養ケア計画の進捗状況を定期的に評価し,必要に応じてその計画を見直していること。
  オ 厚生労働大臣が定める基準に適合する指定介護老人保健施設であること。
 (4) クニ子の若宮苑への入所の経緯
  ア 平成26年12月2日から同月22日までの入所(以下「初回入所」という。)
   (ア) クニ子は,平成26年11月18日,自宅のトイレの便器から立ち上がれなくなったため,高崎総合医療センターに緊急搬送され,その後,被告補助参加入が経営する上大類病院に搬送され,同病院に入院した。(甲17)
   (イ) クニ子は,同月28日,上大類病院から退院した後,上大類病院に併設されている若宮苑で介護保健施設サービスを受けるために入所することとなった。(甲17)
  (ウ)クニ子の計画担当介護支援専門員の斯波はづき(以下「斯波」という。)は,同年12月2日,若宮苑内で原告と面接し,原告から移乗や歩行状況,食事の摂取等の事情を聞きながらプレ・インテーク・シート及びA-1インテーク:ニーズアセスメント・シートを作成した。
     原告は,同日,プレ・インテーク・シート及びA-2インテーク:適性アセスメント・シート裏面の暫定ケアプランの「本暫定ケアプランについて,その内容の説明を受け,同意致します」欄及び入所等サービス利用時リスク説明書の「御家族」欄に署名した。
     なお,プレ・インテーク・シートの冒頭には,「これは当施設(介護老人保健施設若宮苑)のご利用を希望される皆さまに,より適切なサービスを提供することができるよう,ご要望などをおうかがいするための用紙です。」と不動文字で記載されている。

<P11>
     クニ子は,同日,若宮苑に入所した。
    (丙4,5,6,28)
   (エ) 作業療法士の児玉努(以下「児玉」という。)は,同月4日,若宮苑内で原告と面接し,原告に対し,クニ子のリハビリテーションの実施計画を説明し,説明を受けた原告は, リハビリテーション実施計画書の「ご本人・ご家族への説明と同意」欄に署名した。(丙29)
   (オ) 斯波及び児玉は,同月6日,原告及びクニ子の自宅を訪問し,原告立会いの下,クニ子の住環境評価を行った。(丙30,31)
   (カ) 斯波及び児玉は,同月17日,クニ子の外出帰宅に同行し,原告と共にクニ子の自宅での動作等を確認した。
     また,管理栄養士の指出直美(以下「指出」という。)は,同日,若宮苑内で原告と面接し,栄養ケア計画の内容を説明し,説明を受けた原告は,説明内容を記載した用紙の利用者(家族)確認欄に署名した。
    (丙30,32,33)
   (キ) 斯波は,同月19日,若宮苑内で原告と面接し,施設サービス計画の内容を説明し,説明を受けた原告は,介護老人保健施設ケアプラン(リハビリテーション・ケア・栄養・口腔)総合計画書の「ご家族氏名」欄に署名した。(丙7)
   (ク) クニ子は,同月22日,若宮苑を退所した。
  イ 平成27年4月6日から同月29日までの入所(以下「本件入所1」という。)
    クニ子は,平成27年4月6日,介護保健施設サービスを受けるために若宮苑に入所し,同月29日に退所した。
  ウ 平成27年5月20日から同年6月5日までの入所(以下「本件入所2」という。)

<P12>
    クニ子は,平成27年5月20日,短期入所療養介護を受けるために若宮苑に入所し,同年6月5日に退所した。
  エ 平成27年6月20日から同年8月12日までの入所(以下「本件入所3」という。)
    クニ子は,平成27年6月20日,介護保健施設サービスを受けるために若宮苑に入所し,同年8月12日に退所した。
  オ 平成27年9月18日から同年10月15日までの入所(以下「本件入所4」という。)
    クニ子は,平成27年9月18日,介護保健施設サービスを受けるために若宮苑に入所し同年10月15日に退所した。
 (5) 介護報酬の支払
   被告補助参加入から本件入所1ないし4の介護報酬の請求を受けた高崎市は,被告補助参加人に対し,本件入所1につき26万4090円,本件入所2につき19万8953円,本件入所3につき55万5955円,本件入所4につき27万3148円の介護報酬をそれぞれ支払った。(甲7の1,2)
 (6) 監査請求及び訴えの提起
  ア 原告は,平成28年4月12日,高崎市監査委員に対し,被告補助参加入が「偽りその他不正の行為」(法22条3項)により本件入所1ないし4の介護報酬を請求し,高崎市から介護報酬の支払を受けたのであるから,被告は支払った介護報酬相当額の返還及びこれに100分の40を乗じた額の金員を徴収すべき義務があるのに,これを怠っているなどと主張して,上記徴収請求を求める旨の監査請求をした。
    高崎市監査委員は,同年6月10日,同監査請求には理由がないとしてこれを棄却し,原告は,同月13日,監査請求結果の通知を受領した。
   (甲8)

<P13>
  イ 原告は,平成28年6月22日,本件訴えを提起した。
3 争点
 (1) 高崎市の被告補助参加入に対する不当利得返還請求権の有無(争点1)
 (2) 被告補助参加人の高崎市に対する介護報酬請求が「偽りその他不正の行為」にあたるか(争点2)
 (3) 不当利得返還請求に関する被告の裁量の有無(争点3)
4 争点に対する当事者の主張
 (1) 争点1(高崎市の被告補助参加入に対する不当利得返還請求権の有無)
  ア 原告の主張
   (ア) 介護報酬の要件及び基準について
     法は,法97条3項に規定する介護老人保健施設の設備及び運営に関する基準又は法74条2項に規定する指定居宅サービス事業の設備及び運営に関する基準に照らして審査した上,当該被保険者に代わり,介護報酬を介護保険施設等に支払うことができる旨を規定している(法48条6項,41条9項)。
     法97条3項の規定する基準は40号省令及び老健施設条例であり,法74条2項の規定する基準は37号省令及び居宅サービス条例である。
     そのため,本件入所1,3,4の介護報酬の支払については,40号省令及び老健施設条例の要件を満たす必要があり,本件入所2の介護報酬の支払については,37号省令及び居宅サービス条例の要件を満たす必要がある。
   (イ) アセスメントについて
     介護保険法令の定めるアセスメントは,利用者に対し,面接をすることを要し,その面接をするにあたっては,その趣旨を説明し,理解を得なければならないとされている。

<P14>
     斯波は,本件入所1にあたり,原告と面接しているものの,面接の趣旨がアセスメントであることを全く告げていなかった。
     また,斯波は,本件入所2ないし4をするにあたり,原告やクニ子との面接を行っていないし,原告と電話で話したことはあったものの,会話の趣旨がアセスメントであることを全く告げていなかった。
     さらに,アセスメントは,計画担当介護支援専門員の個人的な考えや手法で、行ってはならず,R4システムを採用している場合にはA-2インテーク:適性アセスメント・シートを活用して行わなければならないところ,斯波は,本件入所2ないし4についてA-2インテーク:適性アセスメント・シートを作成せずR4システムに即したアセスメントを行わなかった。
     以上によれば,本件入所1ないし4について,アセスメントが行われたと評価することはできない。
   (ウ) 本ケアプランについて
     a 本件入所1
      被告補助参加人は,クニ子の入所日である平成27年4月6日から同月25日まで施設サービス計画を作成しておらず,クニ子に対しては事実上の世話を提供したのみで施設サービス計画に基づくサービスの提供を行っていない。
      施設サービス計画書は,同月25日,形式的に作成されているものの,斯波が本人及び家族に,その内容を説明して文書による同意を得たり,本人及び家族に上記計画書を交付したりしていないことから,施設サービス計画の成立要件を満たしていない。
     b 本件入所2
      被告補助参加人は,クニ子の入所日である平成27年5月20日から同年6月4日まで短期入所療養介護計画を作成しておらず,ク

<P15>
ニ子に対しては事実上の世話を提供したのみで,短期入所療養介護計画に基づくサービスの提供を行っていない。
      短期入所療養介護計画書は,同月4日,形式的に作成されているものの,斯波が本人及び家族に,その内容を説明して文書による同意を得たり,本人及び家族に上記計画書を交付したりしていないことから,短期入所療養介護計画の成立要件を満たしていない。
     c 本件入所3
      被告補助参加人は,クニ子の入所日である平成27年6月20日から同年7月15日まで施設サービス計画を作成しておらず,クニ子に対しては事実上の世話を提供したのみで,施設サービス計画に基づくサービスの提供を行っていない。
      また,施設サービス計画書は,同月15日,形式的に作成されているものの,斯波が本人及び家族にその内容を説明して文書による同意を得たり,上記計画書を交付したりしていないことから,施設サービス計画の成立要件を満たしていない。
      さらに,被告補助参加入は,栄養ケア計画の利用者(家族)確認欄について原告の署名を偽造するという不正行為を行っている。
     d 本件入所4
      被告補助参加人は,本件入所4の期間中,施設サービス計画を作成しておらずクニ子に対しては事実上の世話を提供したのみで,施設サービス計画に基づくサービスの提供を行っていない。
      また,被告補助参加人は,栄養ケア計画の利用者(家族)確認欄について原告の署名を偽造するという不正行為を行っている。
   (エ) 上記(イ)及び(ウ)によれば,高崎市の被告補助参加入に対する本件入所1ないし4の介護報酬の支払はいずれも上記(ア)所定の介護保険支給の要件を欠くものであり,法律上の原因がない。

<P16>
  イ 被告及び被告補助参加人の主張
   (ア) 介護報酬の要件及び基準について
     a 介護保健施設サービスについて
      法8条25項は,前記第2の1(2)ア(ア)のとおり定めるところ,ここでいう厚生労働省令は法施行規則19条であって,40号省令は含まれない。
      40号省令は,介護報酬支給審査において考慮されるものではあるものの(法48条6項),これに違反する場合には支給できないというものではない。
     b 短期入所療養介護について
      短期入所療養介護の場合,介護保健施設サービスとは異なり,短期入所療養介護計画の定義規定がないことからすれば,介護報酬支給に際し,37号省令の要件充足は必須の要件ではない。
   (イ) アセスメント及び本ケアプランについて
     以下のとおり本件入所1ないし4の全てで入所前アセスメント及び入所後アセスメントがクニ子について行われ,本ケアプランが作成されている。
     a 本件入所1
      入所前に斯波児玉及び看護師の長谷川によるアセスメントが行われ,斯波と原告が面接をした上で暫定ケアプランが作成された。
      入所後は,R4システムの書面に沿っていないが,平成27年4月6日に専門職によるカンファレンスが行われ,クニ子の身体状況を把握するアセスメントが行われた。
      施設サービス計画自体は入所後すぐに立てられていたが,各専門職が施設サービス計画書の担当欄に順次記載していったため,同書面が完成したのは平成27年4月25日であった。

<P17>
     b 本件入所2
      入所前にアセスメントが行われ,斯波は原告と面接を行った上で原告の希望どおり,初回入所及び本件入所1と同様の目標設定の下,本件入所1のサービス計画と同様の内容でサービス提供を行うことが若宮苑内で協議された。
      そして,本件入所2の直後である平成27年5月21日,クニ子にA-3アセスメントを行い,入所前及び入所後のアセスメントを踏まえた短期入所療養介護計画が完成した。
     c 本件入所3
      入所前にアセスメントが行われ,斯波は原告と面接を行った上で,医師からの報告書などを踏まえて本件入所2の短期入所療養介護計画と同様の内容でサービス提供を行うことが若宮苑内で協議された。
      そして,本件入所3の直後である平成27年6月21日,クニ子にA-3アセスメントを行い,入所前及び入所後のアセスメントを踏まえた施設サービス計画が完成した。
     d 本件入所4
      入所前にアセスメントが行われ,斯波が原告と面接を行った際の原告の希望や,入所判定会議を踏まえ,本件入所3の施設サービス計画と同様の内容でサービス提供を行うことが若宮苑内で協議された。
      そして,本件入所4の直後,クニ子にA-3アセスメントを行い,平成27年9月22日にカシファレンスを行った上で,施設サービス計画が完成した。
   (ウ) 本ケアプランへの同意について
     原告は,クニ子が初回入所前に緊急搬送された高崎総合医療センタ

<P18>
ーのソーシャルワーカーから「ケアに対しての要望が強い」と評価されており,自らの考えと異なる介護保健施設サービス又は短期入所療養介護サービスが提供された場合,少なくとも苦情を申し出ていたはずであるが,本件入所1ないし4を通じて,若宮苑による介護保健施設サービス又は短期入所療養介護サービスに対する苦情を申し出たことはなく,利用料も滞納したことはなかった。
     そして,原告は,本件入所1ないし3における若宮苑からの退所時において,今後も若宮苑を利用することを希望していた。
     以上によれば,原告は,本件入所1ないし4の本ケアプランにつき,実質的に同意していたといえる。
   (エ) 栄養ケア計画の利用者(家族)確認欄の署名偽造について
     栄養ケア計画の利用者(家族)確認欄の署名は,指出が原告に対して栄養ケア計画の内容を説明した上で原告が署名したものであり,偽造されたものではない。
 (2) 争点(2)(被告補助参加人の高崎市に対する介護報酬請求が「偽りその他不正の行為」にあたるか)
  ア 原告の主張
    被告補助参加人が,本ケアプランが作成されず,又は入所当初から作成されないままの状態や,クニ子への本ケアプランの交付及び文書による同意がないままの状態でサービスを提供したことに基づいて,高崎市に対して本件入所1ないし4に係る介護報酬を請求したことは,「偽りその他不正の行為」に当たるから,被告は,被告補助参加入に対し請求の趣旨記載の金員を請求する義務がある。
    仮に本件入所1及び2に関する介護報酬の請求が「偽りその他不正の行為」に当たらないとしても,本件入所3及び4に係る本ケアプランと一体をなす栄養ケア計画の利用者(家族)確認欄の原告の署名を偽造し

<P19>
た上で介護報酬を請求することは「偽りその他不正の行為」に当たるから,被告は,被告補助参加人に対し,本件入所3及び4の介護報酬の合計額である82万91033円及びこれに対する100分の40を乗じた金員を請求する義務がある。
    仮に栄養ケア計画と本ケアプランが一体のものといえないとしても,被告は,被告補助参加入に対し,本件入所3及び4の介護報酬のうち栄養ケア加算分である96400円及びこれに対する100分の40を乗じた金員を請求する義務がある。
  イ 被告及び被告補助参加人の主張
    「偽りその他不正の行為」に基づく介護報酬の請求とは,一般的に,サービスの提供が全くない場合や故意にだまし取ろうとする意図がある場合にされる請求のことを指す。
    本件では,介護サービス自体は行われているものの,本ケアプランを作成するタイミングが遅いなどの形式的な法令違反があるのみであり,「偽りその他不正の行為」に基づく介護報酬の請求とはいえない。
    また,栄養ケア計画の利用者(家族)確認欄の原告の氏名については,指出が原告に対して栄養ケア計画の内容を説明した上で原告が署名したものであり,偽造されたものではないし,そもそも,栄養ケア計画の書面は,栄養ケアマネジメント加算に係るものであるから,本来の介護報酬とは関連性がない。
 (3) 争点(3)(不当利得返還請求に関する被告の裁量の有無)
  ア 被告の主張
    最高裁平成23年7月14日第1小法廷判決(裁判集民事237号247頁)は,「介護報酬は所定の要件と基準を満たす場合に市町村から事業者に対して支払われるものであり(介護保険法41条,46条),これを欠いた支払が事業者に対してされた場合には,市町村は事業者に

<P20>
不当利得の返還を求め得ると解される。」旨を判示するところ,「返還を求め得る」とは,行政庁に不当利得返還請求権を行使するか否かにつき裁量を認めた趣旨である。
    そうすると,被告補助参加入が本件において提供したサービスが所定の要件と基準を満たさなかったとしても被告補助参加人の適切なサービス提供,群馬県内での指導監督の統一及び厚生労働省の見解等の要素のほか,原告及びクニ子の希望に沿う形で継続的にサービス提供がされていたことなど本件に係る個別具体的な事情を考慮して被告が不当利得返還請求を行わないと判断したとしても何ら違法ではない。
  イ 原告の主張
    被告の引用する最高裁判決は,所定の要件と基準を欠く介護報酬の支払について,不当利得法理の適用があるというのみであり,行政庁に広範な裁量が認められるなどの判示は一切されていない。
    地方自治法240条2項は,地方公共団体が有する債権につき,その長は,政令に定めるところにより,その督促,強制執行その保全及び取立に対して必要な措置を取らなければならない旨を定めている。当該規定は,債権の取立等につき,罵束行為である旨を定めたものであり,被告に裁量は認められない。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・その2へ続く】

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