市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

墜落した防災ヘリの原因究明と責任所在を阻む群馬県の情報非開示体質 

2018-10-19 23:42:00 | オンブズマン活動
■搭乗員9人全員が死亡した群馬県の防災ヘリコプター「はるな」(全長17.1m、重さ5.4トン)の墜落事故をめぐり、群馬県は3548万8800円(税込み)を投じ、昨年の長野県消防防災ヘリ墜落事故でも機体を引き上げた航空事業会社の朝日航洋(東京都)の大型ヘリを使って現場から機体を10月15日に回収しました。機体はその日のうちに陸路で群馬ヘリポート(前橋市)の県防災航空隊格納庫に運ばれ、国土交通省運輸安全委員会や県警が調査し、事故原因の解明を進めるものと見られます。
 一方、当会では代表名で、いち早く墜落の原因を究明すべく、群馬県に10件の情報開示を求めていましたが、残念ながら秘密体質の行政だけに、開示されたのは今年の4月から修理や調整をしていた経緯を示す不適合報告書など4件のみで、肝心の運航管理関連情報については5件すべてが開示拒否されてしまい、1件が不存在とされました。
 この他に、当会副代表が、別の視点からこの墜落事故について、真相を探るために情報開示を求めていましたが、群馬県はいずれも不存在処分を通知してきました。

防災ヘリ「はるな」の墜落の5日前に群馬県が大々的に特集記事を組んで県内全戸に新聞折り込みをした「ぐんま広報2018年8月号」(平成30年8月5日発行)の表紙。

 この群馬県防災ヘリ墜落に関するブログ記事は次を参照ください。

〇2018年8月14日:防災ヘリ墜落事故の原因究明を裏付ける情報開示を群馬県に請求
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2726.html
〇2018年8月16日;【速報】防災ヘリ墜落事故で明らかになった群馬県の航空法違反のズサン管理で国交省から厳重指導
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2727.html
〇2018年8月24日:防災ヘリ墜落事故の原因究明を裏付ける情報開示請求に対し県が早くもよこした2か月の開示延長通知
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2736.html
〇2018年10月15日:防災ヘリ墜落事故の情報を2か月ぶりに一部分のみ開示してきた群馬県
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2780.html
〇10月17日:墜落した防災ヘリの残骸回収・・・懸念される原因究明と責任所在明確化及び再発防止策
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2783.html

■当会の大河原副代表が、群馬県に開示請求をしていた情報の項目は次の通りです。

【情報開示請求1件目】
8月10日墜落した「群馬県の防災ヘリ」事故に関して
1 墜落当時のヘリコプターの損害額がわかる文書。
2 死亡した9人の経歴、給料の月額(死亡時)、給料の年間総額(平成29年は全額、平成30年は死亡時まで)、公務災害が認定された場合の補償額がわかる文書。

【情報開示請求2件目】
1 墜落当時のヘリコプターの機体や搭乗者にかけられていた保険の付保条件
2 墜落当日8月10日のヘリコプターの燃料タンクの容量と、実際にヘリコプター離陸時に積んでいた燃料の量

【情報開示請求3件目】
8月10日墜落した「群馬県の防災ヘリ」事故に関して「航空隊員がヘルメットに装着していた小型カメラ2台と、ハンディカメラ1台の映像」(NHKが8月28日報じている。)

 以上3件について情報公開請求していました。ところが先日、群馬県は次の理由でいずれも「不存在」決定処分通知を送り付けてきました。
 ●県の職員ではないので「不存在」
 ●県警が刑事訴訟法に基づいて捜査として持って行ったので、県には「不存在」
 ●機体は航空会社のものなので、県には「不存在」
 ●カメラの映像は運輸安全委員会が群馬県から収去したので、県では保管していないので「不存在」


 このように、群馬県の対応は、行政権限を自分に都合よく解釈しただけの無責任な対応となっています。

■ところで、群馬県は防災ヘリの墜落について、やたらとマスコミを通じて、ヘリの運航を委託している「東邦航空」の責任ばかり追及しています。委託すれば責任が全部委託先にあるかのような無責任ぶりです。しかし、あまりにも自らの管理監督責任を棚に上げていることから、身内の行政関係者からも異論が出てきています。

**********上毛新聞2018年10月19日一面
太田市長「運航管理ずさん」 県防災航空隊への派遣中止意向
 県防災ヘリコプターの墜落事故を受け、太田市の清水聖義市長は18日までに、ヘリを運航する県防災航空隊に派遣している市消防本部職員を引き揚げる意向を示した。26日の県消防長会で表明するという。清水市長は「運航管理がずさんで、大切な職員を預けておくわけにいかない」と話している。
 県消防保安課によると、同隊には本年度、渋川と富岡甘楽を除く県内9消防機関が各1人を派遣。うち多野藤岡と吾妻の職員が事故で亡くなった。
 清水市長は「(派遣職員の配属先の)仲間が亡くなったのに知事から何の説明もない。命というものに対する県の常識は私と違うようだ」と県を批判。日程調整中の合同追悼式をめどに派遣を打ち切る考えだ。
 一方、同課は今月初めに各消防機関に人員確保の協力を呼び掛け、了解を得たと説明。担当者は「正式に聞いていない。今後対応を検討する」とした。
**********

 太田市の清水市長は、8月にも防災ヘリ墜落事故に関連して、苦言を呈していましたが、この時は、発言が過激だとして批判を受け、謝罪に追い込まれてしまいました。

**********産経新聞2018年8月26日 15:40
【防災ヘリ墜落】群馬・太田市長「防災やる者が自爆。全くお粗末」…発言を謝罪
 搭乗員9人が死亡した群馬県の防災ヘリコプター「はるな」の墜落事故について、同県太田市の清水聖義市長が25日に市内で開かれた市総合防災訓練のあいさつで「防災をやる者が自爆してしまった。全くお粗末だと思った」などと話していたことが26日、分かった。
 清水市長は26日、報道各社に向けたコメントで「自分でしゃべったつもりはないが、無意識に言葉に出てしまったのかもしれない。不快に思われた方がいたら大変申し訳ない」と謝罪した。
 市によると、訓練会場には消防、防災などの関係者ら約800人が参加していた。10日に墜落事故が起きるまでは、はるなが訓練に参加予定だったという。
 はるなをめぐっては、県防災航空隊が事実と異なる到着報告をしたり、実際の飛行ルートとは異なる飛行計画を提出したりするなど運航管理のずさんさが明らかになっている。
 清水市長は「『お粗末』ということを思っていて頭に残っていたのだろう。防災ヘリコプターが事故のために、参加できずに残念だったというあいさつの中で、自分はしゃべったつもりはないが、無意識に言葉に出てしまったのかもしれない」と釈明した。
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 今回の太田市長の発言は、そのときの発言を反省にして、自らの思いを伝えるために、前記の意向表明に結び付いたものと思われます、

■確かに群馬県の日ごろからの体質からすれば、ずさんな行政対応は日常茶飯事と言えるでしょう。太田市も行政団体としては、群馬県と目くそ鼻くそのようなものですが、それでも群馬県の無責任な対応と、何でもかんでも防災ヘリ運航委託先の東邦航空に責任を押し付けたがる様は、トップの目に異様に映ったようです。それほど今回の事故に限らず、群馬県の無責任体質は目に余るものがあります。

**********産経新聞2018年8月17日 22:02
【防災ヘリ墜落】ずさん管理常態化か 群馬県、提出ルート確認せず
 搭乗員9人が死亡した群馬県の防災ヘリコプターの墜落事故をめぐり、国土交通省に「(帰投先の)ヘリポートに到着した」と事実と異なる通知をし、さらに実際の飛行ルートと飛行計画が異なっていたことが判明した問題で、運航主体の県側が飛行ルートと国交省に提出する飛行計画に食い違いがないか確認していなかったことが17日、分かった。県は過去にも飛行ルートと異なる計画を提出したことがあるとしており、ずさんな管理体制が常態化していた可能性もある。
 県によると、事故が起きた10日の飛行は、吾妻広域消防本部が県防災航空隊に依頼。7月19日に県に申請書を提出した。本来の計画は、消防隊員5人を乗り降りさせるため稲包(いなつつみ)山付近で折り返す前後に西吾妻福祉病院(同県長野原町)を経由、着陸することを盛り込んでいた。消防本部の意向に沿った形で防災航空隊員が作成し、飛行直前のミーティングでも内容は隊員の間で共有されていた。
 しかし、飛行当日の運航管理者だった委託先の東邦航空(東京都)に所属する60代の男性隊員はヘリポートを離陸し、折り返し後にヘリポートに着陸するという計画を国交省に提出した。
 県は、安全管理に関わる大部分を同社に委託していたとして、提出する計画の二重のチェックを行わず、事故から4日後の今月14日に国交省から食い違いを指摘されるまで把握していなかった。隊員が本来と異なる計画を提出した理由は不明。同社は、計画の変更について「特にメリットはない」としている。
 ヘリが墜落したとみられる時間帯に「ヘリポートに到着した」と事実とは異なる通知を行ったのもこの隊員だった。県と同社によると、隊員は20年以上のベテランで、操縦士の資格を持つ。衛星利用測位システム(GPS)を使用し、ヘリの位置を確認できる「動態管理システム」が作動していないことに気付いたのも、この隊員だった。
 同社は複数回にわたり、飛行ルートと異なる計画を提出していたことを認めている。過去に起きた同様の事例を認識できておらず、「派遣されている社員と本社との間でコミュニケーションが不足していた」との見解を示している。
 一方、総務省消防庁は16日付で全国の自治体に対し、防災ヘリの安全管理の徹底を求める通知を出した。飛行計画に沿った運航が行われているかなど、防災ヘリの運用状況を調べることも検討している。
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■産経新聞の記事にもあるように、全国の防災ヘリの運用状況はどうなっているのでしょうか。ネットで調べたところ、全日本航空事業者連合会の調査データが見つかりました。

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【消防防災ヘリコプターの運行委託状況等について】
  運航委託会社/運航団体数(団体)/ドクターヘリ運航の有無/備考※(主な事業内容)
1 中日本航空/6(青森県・福島県・石川県・愛知県・三重県・広島県)/○/人員輸送・報道取材
2 東邦航空/5(岩手県・群馬県・富山県・奈良県・和歌山県)/○/報道取材・物資輸送
3 朝日航洋/4(北海道・新潟県・鳥取県・山口県)/○/人員輸送・送電線調査
4 セントラルヘリコプターサービス/3(福井県・岐阜県・島根県)/○/人員輸送・操縦訓練
5 四国航空/3(岡山県・徳島県・香川県)/○/送電線調査・建設協力
6 東北エアサービス/2(宮城県・山形県)/×/視察調査(送電線調査含む。)
7 本田航空/2(栃木県・埼玉県)/○/人員輸送
8 鹿児島国際航空/2(宮崎県・鹿児島県)/○/人員輸送・薬剤散布
9 つくば航空/1(茨城県)/×/写真撮影・操縦訓練
10 (株)ジャネット/1(山梨県)/○/人員輸送
11 静岡エアコミューター/1 (静岡県)/×/報道取材・写真撮影
12 大阪航空/1(滋賀県)/×/写真撮影・操縦訓練
13 愛媛航空/1(愛媛県)/×/消防防災ヘリコプター運航のみ
14 オリエンタルエアブリッジ/1(長崎県)/×/消防防災ヘリコプター運航のみ
15 九州航空 /1(大分県)/×/写真撮影・遊覧
16 天草エアライン/1(熊本県)/×/消防防災ヘリコプターの運航のみ
※その他の事業内容ついては、平成26年度において、稼働実績が多いものを抽出した。(全日本航空事業者連合会調べ。)
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 この中には、昨年3月5日に防災ヘリが墜落した長野県は入っていませんが、同県を含め、秋田、高知、岐阜の4件は、運用の形態が「自前」でパイロットやヘリなどすべてを賄う「自主運航」だからです。

 また、防災ヘリの運航は、自主運航にしても民間委託にしても、県内市町村から分担金により運用経費を賄っていると言われています。群馬県の場合は、どうなっているのでしょうか。当会副代表の公文書幹事請求に対して群馬県は、「機体は航空会社のものなので、県には『不存在』である」と回答しています。

■防災ヘリの正式名称は「消防防災ヘリコプター」と言い、防災・消防・救助活動などに用いられます。保有者は東京消防庁・指定都市の消防局、各道県、総務省消防庁などとなっているようです。

 消防は本来市町村の役割ですが、ヘリの運用・維持は費用的に難しいということもあり、多くの自治体では県がヘリを購入し、防災航空隊という組織を設置してその役割を担っているようです。一方、京都や大阪などのように、府県が役割を担っておらず、指定都市や消防庁がその役割を担っているところもあるようです。

 全国消防防災協議会のHPによれば、2018年5月7日現在、全国の防災ヘリの配備状況は以下の通りです。
http://www.habataki.org/information.html

*****消防・防災ヘリコプターの配備状況(平成30年5月7日現在)*****
1 平成30年5月7日現在配備状況   76機(45都道府県、55団体)
 ○消防庁保有ヘリコプター        5機(東京消防庁、京都市消防局、埼玉県、宮城県及び高知県が無償使用)
 ○消防機関保有ヘリコプター      31機(東京消防庁、15政令指定都市)
 ○道県保有ヘリコプター        40機(38道県)

2 未配備県域数  2県域(佐賀県、沖縄県)
 ※千葉県、神奈川県、京都府、大阪府、福岡県は消防機関の保有のみで、府県は保有していない
 ※平成30年5月から長野県ヘリがリース機により運航再開(※救助活動を除く)


**********

■今回の墜落事故の犠牲になった方々は、吾妻広域消防本部に所属する職員の方と、民間航空会社である東邦航空の社員の計9名の皆さんです。

 それでは、群馬県の役割はなんだったのでしょうか。通常であれば、県が防災ヘリを保有してその費用を拠出し、県庁内の組織として設置する防災航空隊の組織の責任を担うことになると思います。

 群馬県の場合、群馬県防災航空隊が防災ヘリの管理をしているようですが、「ヘリの機体は県で保有していない」としていることから、その費用のみを負担しているものと考えられます。また、実際の消防・救助活動は、市町村の消防本部から県に出向している職員が担い、ヘリの操縦や保守・点検などは民間航空会社である東邦航空に委託していることになります。

 なお、群馬県の防災航空隊のHPによれば、その組織体制は、下図の通りです
※参考URL「群馬県防災航空隊」↓
 http://www.pref.gunma.jp/05/a5510030.html
当会注:この中に「平成29年度群馬県防災ヘリコプター『はるな』業務統計」があります。
http://www.pref.gunma.jp/contents/100066214.pdf
 ところが、なぜか現在は平成22~28年度までの業務統計しかダウンロードできません。津最近まで平成29年度の業務統計がダウンロードできたのに、不可思議です。おそらく県では都合が悪いと判断して、リンク機能を外したものとみられます。



 この組織図によると、県職員である危機管理監(部長級)をトップに、消防保安課長をナンバー2(ここまでが責任者)とし、防災航空隊基地内(県庁とは別の場所にある)では消防保安課長補佐(県職員)の下に隊長を含めて15名の隊員(市町村消防本部からの派遣9名、東邦航空6名)が在籍するという構成になっています。

 防消防防災ヘリと言いつつも、火事絡みで出動をするというケースはかなり少なく、救助・救急活動や訓練活動(市町村との合同訓練など)がメインの運航業務となっています。

 群馬県の平成29年度の運航活動状況(訓練は除く)は以下の通りです。

  火災出動:  1件
  救助出動: 61件
  救急出動: 92件
  災害応急:  0件
  広域応援: 36件
  合  計:190件

 活動履歴を見ると、運航活動の7割を占める救助・救急活動においては、山岳救助が殆どです。これは遭難した登山者を救助する仕事です。

 また、急病人を病院に運ぶというドクターヘリ的な運用も行われています。この場合は、ドクターヘリが出動していて不在の時などにこういった運用が行われることになります。群馬県では平成29年度で20件こうした運用が行われていたようです。

 なお、広域応援というのは県をまたいだ活動です。例えば隣県である福島県や長野県の山での遭難者の救助などで、これもまた山絡みが多いようです。

■運用のための経費が高いため県が防災ヘリを保有しているわけですが、具体的にどのくらいの運営費用がかかるのでしょうか。情報開示に消極的な群馬県は公表していないようなので、他県の平成30年度予算を抜粋してみましょう。
  栃木県(1機保有):約1億9000万円
  埼玉県(3機保有):約6億4700万円
  鳥取県(2機保有):約2憶6400万円


 内訳は鳥取県が細かく公表しています。それによれば、
  〇運航管理委託料(朝日航洋へ委託) 1億2600万円
  〇点検検査料              3900万円
  〇燃料費                2500万円
  〇部品・修繕費             2800万円
  〇航空保険料              2000万円

となっています。これらの費用は県と国(総務省)で折半するという形がとられているようです。

■このようにヘリ1機を運用するには、当然経費も大きくなることがわかります。一方、費用対効果の観点からは、例えば地上からのアクセスが困難な山火事や冬山の遭難などが発生した際に、ヘリが無いから手の施しようがないでは済まされません。

 群馬県の平成29年度実績で見れば190件の救命・救助(緊急案件だけで見ても、少なくとも数十名の命を救っている)を行っていることがわかります。ですから、非常に意義のある費用対効果の事業であることは確かです。

 それだけに、今回の事故は、救助する側に尊い人命と高価な機材の損失が発生したわけで、かえすがえすも残念な結果です。

■現在のところ事故の原因はまだ解明されていませんが、事故の原因を構成する2つの要因として、機材トラブルと運航管理問題が想定されます。

 今回ヘリの運航管理業務を委託されていた東邦航空は、2017年11月8日に、同社保有のJA9672号機が群馬県上野村藤沢橋上に墜落して、大破・炎上する事故を起こし操縦士と整備士(計4名)が死亡しました。その後、2018年2月2日には東京航空局が同社に対して、規程に即していない整備の実施や航空日誌に必要事項が記載されていなかったなどとして、業務改善命令が発せられるなど、このところ度々問題を起こしていたのは事実です。

 防災ヘリ「はるな」についても同社が整備を行ってきていたということで、当会の情報公開で得られた不適合報告書などを見ると、今年3月から6月にかけて、エンジンの調整でいろいろとややこしい経緯があった時期が続いただけに気になるところです。

 ですが、業務改善命令後は整備体制を見直し、東邦航空が保有する全ての航空機に関して一斉点検を行ったということなので、原因は、必要性もないのに、悪天候をついて、無理な飛行をなぜしなければならなかったのか、というところにもあるのではないかと考えられます。

 また、東京航空局に通報されていた「はるな」の飛行計画では、群馬ヘリポートを飛び立って、途中で離着陸をせずに約2時間のフライトを実施する計画していました。しかし実際に当日予定していた飛行概要によれば、群馬ヘリポートを飛び立って15分のフライトの後、西吾妻福祉病院に着陸して搭乗者を乗せ、5分後には離陸して、約1時間20分ほど山中をフライトすることを計画し、山中をフライト後、西吾妻福祉病院に着陸し、その後基地である群馬ヘリポートへ帰投する予定でした。すなわち、航空局に通報していた飛行計画にはない、飛行計画以外の場所(西吾妻福祉病院)への離着陸を予定していたことになります。

 こうしたことは事故後に明らかになりましたが、群馬県の姿勢をみていると、委託先の東邦航空が全面的に責任があるような論調となっています。しかし、あくまでも管理責任は発注側の群馬県にあるのではないでしょうか。

■他方、運用面として、例えば、2009年に岐阜県で起きた同様の防災ヘリ墜落事故では、山岳地帯特有の気流の乱れなどが考えられると、国交省が事故後の調査報告で指摘しています。

 今回も同様に気象絡みということであれば、不可抗力ということで、なかなか対応は難しかったかもしれませんが、不要不急でのフライトを誰が判断したのか、というところはきちんと明らかにする必要があるでしょう。

 群馬県が、県警に捜査資料として提供したので不存在として、当会に対して非開示扱いにしていますが、こうした県の姿勢は、きわめて不信感をいだかせるものです。もし改善が可能な原因であれば、次に活かして今後このような事故が起こらないようにしていくという積極的な対応姿勢が最も重要だと思います。

■ここで当会が今回の防災ヘリ墜落の報道に接して、疑問視をした背景についてもう一度整理をしてみたいと思います。
※ぐんま広報P1(稜線トレイル):PDF ⇒
20180805lp1igcj.pdf
※ぐんま広報P2(稜線トレイル):PDF ⇒
20180805lp2igcj.pdf
※ぐんま広報P3(稜線トレイル):PDF ⇒
20180805lp3igcj.pdf

 そもそも「ぐんま県境稜線トレイル」事業に関連づけた今回の防災ヘリ事故については、当初から次の事項が疑問点として浮かんできました。

疑問点その1
県境トレイルの調査になぜ空からの確認が必要だったのか?

疑問点その2
あれだけの長距離のトレイル・ルートを数十分で空から確認することに意味があったのか?

疑問点その3
なぜ、現地を歩いて確認するのが、当然に最優先のことと思わなかったのか?

疑問点その4
誰が立案計画をして誰が承認したのか?

疑問点その5
よもや物見遊山的な発想で誰かが言い出して、それがまかり通ったのではかったのか?

 民間であれば、こうした事故が発生した場合、立案・計画・承認したものが一番の責任を負うべきなのに、群馬県は、現場の東邦航空に責任を転嫁しているようにしか思えません。県には監督責任がありますから、丸投げしておいて知らなかったでは済まされないはずだと思います。

 とくに知事はその最高責任者ですから、事故後に東邦航空を責めるのはみっともない気がします。群馬県の合同葬儀も、パフォーマンスとしか思えません。本当に遺族によりそっているのでしょうか。

■また、「ぐんま県境稜線トレイル」ですが、一体誰が利用するのでしょうか?

 このルートのうち、野反湖から三国峠までの長いトレイルは山中での一泊が必要でしょう。しかし途中に水場がありませんから水を持たなくてはいけません。安易に踏みこむと、とんでもないことになります。

 それにこの辺りは、夏季は雷の発生があるところでもあり、今回のヘリ墜落の要因のひとつとも考えられています。一方、冬季は雪深くアクセス道路も閉ざされてしまいます。

 また、野反湖に車を駐車して縦走した場合、その回収はどうするのでしょうか?利用する人は本当に限られると思います。

 なぜ、県民税でこんなものを作って大々的にPRするのだろうか、という疑問は最初から付きまとっています。


 こうした疑念を晴らそうと当会では事故後、いち早く情報開示に踏み切ったのですが、群馬県が開示に応じたのは、なぜか委託先の東邦航空の整備ミスを示唆する技術情報と、航空法の手続きミスの情報だけで、肝心のなぜ不要不急のフライトが誰によって指示されたのか、について群馬県はまったく開示しようとしません。

 当会の副代表によるヘリ墜落に関する公文書開示請求に対する一連の不開示決定処分を見ても、群馬県がこの事故の真相究明について消極的なことは明らかです。当会は一丸となって、群馬県の秘密体質を改めさせて、この墜落事故の真相を究明し、責任の所在の明確化を図ることで、二度と悲惨な事故が起きないように、微力ながら尽力してまいります。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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