市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

大同スラグ控訴審…10月31日の第2回口頭弁論に向けて控訴人準備書面(1)を提出!(後編)

2018-10-03 23:53:00 | スラグ不法投棄問題
■前編に引き続き10月2日に当会が提出した控訴審での準備書面(1)を紹介してまいります。

*****控訴人準備書面(1)P18中段以降*****PDF ⇒ 20181002tilipjmn.pdf
3 (3)について
(1)第1段落及び第2段落について
【控訴理由書】
(3)判決文P29の(3)「イ 本件再生砕石の撤去の必要性について」の(ア)およびP30 の(イ)について
 判決文によれば、吾妻農業事務所は、本件農道整備工事に「スラグ混合再生路盤材(RC40)」(判決文P29最下段)につき、「『鉄鋼スラグ製品の管理に関するガイドライン』、『再生資源の利用に関する実施要領』及び本件監理課通知所定の基準を全て充たすものであることを確認した上で使用を承認し、更にプロファ設計による調査結果に基づく環境品質基準を充たすことを確認したのち本件舗装工事契約を締結したことが認められる。」(判決文P30上から10行目)とある。
 このことについて、今回説明のために添付した甲76号証は「鉄鋼スラグ製品の管理に関するガイドライン」が改正されたことによる新旧比較であるが、その13頁の「3.粉じん特性 (1)留意点」に示されている表中に、路盤材欄に、「・路盤材の上層は舗装を実施してください」とある。

【控訴答弁書】
 概ね認める。
 控訴人が引用する「鉄鋼スラグ製品の管理に関するガイドライン新旧対照表」(甲77)*2)控訴理由書3頁下から3行目の「甲76号証」は,正しくは「甲77号証」である。は,2014(平成25)年6月1日改正のものと2015(平成27)年1月14日改正のものの新旧対照表であり,いずれも,被控訴人が平成25年2月19日に南波建設に対して本件農道整備工事を発注した後のガイドラインである。本件農道整備工事を発注した当時のガイドラインは,乙1である。


(2)第3段落について
【控訴理由書】
 この意味するところは、「舗装を実施する」こと、つまり「敷砂利のまま放置しない」ことである。吾妻農業事務所の本件農道整備工事は、このガイドラインの基準を全て充たすものであることを確認したとは言えない。

【控訴答弁書】
 「舗装を実施」するとは敷砂利のままにしないことを意味することは認め,その余は否認する。
 本件農道整備工事を発注した当時,被控訴人は,ステージコンストラクションを前提とする下層路盤材として使用するものであるから「鉄鋼スラグ製品の管理に関するガイドライン」(乙1)に抵触することはないものと認識していた。

【控訴人の反論】
 控訴人は、東吾妻町萩生地区で、産業廃棄物として群馬県が認めた大同特殊鋼渋川工場由来の有害スラグが混入され、無許可処理された偽装再生砕石が敷砂利として使われていることを住民監査請求で指摘した。ところが、吾妻農業事務所は「下層路盤工として使用した」と反論した。しかし、監査委員は「路面敷砂利として積算しているので、農村整備課及び吾妻農業事務所の説明は一貫性の低いものである」と指摘しており、控訴人は「敷砂利」ということで間違いはないと考えている。このことは判決文でも本件農道整備工事(敷砂利工)は,被告が主張するようなステージコンストラクションの第1段階の工事であったとは認められず(判決文28ページ上から4行目)、吾妻農業事務所が「鉄鋼スラグ製品の管理に関するガイドライン」(乙1)に抵触することはないものと認識していたとは考えらない。


(3)第4段落ないし第8段落について
【控訴理由書】
 「再生資源の利用に関する実施要領」は判決文P30上から2行目にもあるとおり「建設副産物から生産した再生材の使用に関する仕様書」であるが、スラグは建設副産物ではなく、一民間工場から排出される廃棄物である。道路用鉄鋼スラグとして設計図書により指定されることがあるが、本件農道整備工事に指定されたのは再生砕石である。
 控訴人が原告準備書面(11)で述べた通り、群馬県土木工事標準仕様書では、粒状路盤材としてクラッシャラン・砂利・砂(天然のもの)と、再生クラッシャラン(再生砕石)、そして高炉徐冷スラグと製鋼スラグ(道路用鉄鋼スラグ)の3種類が指定されている。
 本件裁判でスラグが使用されたことは争いがなく、吾妻農業事務所は群馬県土木工事標準仕様書において、再生砕石と道路用鉄鋼スラグとの区別を十分に認識していなければならない。なのに、この区別を無視して「再生資源の利用に関する実施要領」所定の基準を全て充たすものであることを確認している、などとは到底言えない。
 本件監理課通知(判決文P5下から10行目)には、「路床工、路面敷砂利には使用しない」との記述がある。これは、路床と接する工事および敷砂利工事には使用しない事を条件・基礎的基準に、群馬県県土整備部監理課政策室長がスラグ混合再生路盤材の取扱いを定めた通知である。
 控訴人はこの通知は違法なものであると考えているが、通知の違法性にかかわらず、判決文P27 (イ) について控訴人の「設計図書上『敷砂利』と表記」された現場は敷砂利工であるとする主張は認められたことから、敷砂利工にスラグ混合再生路盤材の使用が認められた吾妻農業事務所の設計は、本件監理課通知の基準を全て充たすものであることを確認した、などとは到底言えない。

【控訴答弁書】
 控訴人の主張は,要するに,群馬県土木工事標準仕様書が規定している路盤材は①「クラッシャラン,砂利,砂,再生クラッシャラン」,②「クラッシャラン鉄鋼スラグ(高炉徐冷スラグ)」,③「クラッシャラン鉄鋼スラグ(製鋼スラグ)」の3種類であるところ(乙12・7-233頁の表3-2-17参照),本件農道整備工事で指定された路盤材は「再生砕石」であり,上記②や③の鉄鋼スラグは指定されていないから,①「クラッシャラン,砂利,砂,再生クラッシャラン」が使用されなければならなかったのであって,それにも関わらずクラッシャラン鉄鋼スラグがブレンドされていた本件再生砕石を使用したのは不適切であり,他方,ブレンド骨材の取扱に係る県土整備部監理課通知(甲9)では,ブレンド骨材を路床工や路面敷砂利に使用することは禁じているのであり,本件農道整備工事では敷砂利として使用されていたのであるから,本件農道整備工事に本件再生砕石を使用したのは上記管理課通知にも抵触するのであるから,結局,本件農道整備工事における本件再生砕石の使用は,所定の各種基準や通知に適合していないという趣旨と解される。
 しかし,本件の争点は,本件舗装工事に係る支出負担行為及び支出命令に関する違法の有無であるところ,控訴人の上記主張は,専ら本件農道整備工事の違法ないし不当を主張するものであり,本件の争点との関連性がない。仮に本件農道整備工事に本件再生砕石の使用を認めたことに不適切な点があったとしても,本件訴訟で判断されるのは,当時の状況で、本件舗装工事を行ったことについての違法性の有無である。

【控訴人の反論】
 控訴人や県会議員が平成26年6月に、本件農道に敷設されたスラグが廃棄物であることを指摘したが、当時の状況は本件農道舗装工事を一時中止できる状況であった(甲43号証の写真にはまだ舗装施工前の本件農道が映っており、舗装工事を一時中止できる状況であった)。本件農道舗装工事では敷砂利であるスラグを舗装の路盤に変用・現場内利用することが予定されていた(判決文32頁下から3行目)。この際には、土壌・水質等の環境に影響を及ぼさない性質であるかどうか、の調査を行わなければならず(甲80号証)、吾妻農場事務所はこの調査を怠り、本件舗装工事を実施したことは違法性があると言わざるを得ない。


(4)第9段落ないし第10段落について
【控訴理由書】
 次に判決文P30 の(イ)のプロファ設計による調査結果について控訴人は次のとおり主張する。
 プロファ設計による調査は、鉄鋼スラグのみを取り出して検査していない(後述)。

【控訴答弁書】
 認める。


(5)第11段落について
【控訴理由書】
 このことに加え、吾妻農業事務所が本来遵守すべき道路用鉄鋼スラグの日本工業規格JIS A 5015(甲50号証)が、2013年(平成25年)に改正され、環境安全品質が追加された。

【控訴答弁書】
 JIS-A5015が平成25年に改正されたことは認め,その余は否認する。
 上記改正でJIS-A5015に追加されたのは,抽象的な「環境安全品質」*3)なお,「環境安全品質」とは,「道路用鉄鋼スラグの出荷から,道路の施工時及び利用時だけでなく,その利用が終了し,解体後の再利用時又は最終処分時も含めたライフサイクルの合理的に想定し得る範囲において,道路用鉄鋼スラグから影響を受ける土壌,地下水などの環境媒体が,各々の環境基準などを満足できるように,道路用鉄鋼スラグが確保すベき品質」を言うものとされる(JIS-A5015の3.3。甲78の4枚目)。なるものではなく,環境安全品質に関わる多くの規定が追加されている。

【控訴人の反論】
 そもそも、今回スラグ=鉱さいが投棄された場所は農業地帯であり、被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所は、安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出せる営農環境を担保することが、「環境安全品質」そのものであることを認識しなければならない。


(6)第12段落について
【控訴理由書】
 こうした背景から、被控訴人は、プロファ設計による人任せの調査ではなく、吾妻農業事務所に自ら本件農道整備工事に使用されるスラグ混合再生路盤材の環境安全品質基準適合性を検査させるべきであったのに、それを怠った。(JISについてはあらためて甲77号証を添付するのでそれを参照されたい)

【控訴答弁書】
 否認する。*4)控訴理由書5頁2行目の「甲77号証」は,正しくは「甲78号証」である。
 被控訴人が検査を外部の専門業者に委託してはならない理由は全くない。

【控訴人の反論】
 被控訴人の答弁は、反論する価値もない愚論である。プロファ設計のような県と癒着した検査会社に公平性、透明性は望むべくもない。
 そもそも、今回スラグ=鉱さいが投棄された場所は農業地帯であり、被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所は、安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出せる営農環境を担保することが最重要課題の筈。環境安全品質基準適合性は、自ら主体的に検査するものであり、プロファ設計のような土木系の商業的な会社でなく、非商業的な群馬県農業技術センターなどの機関に検査を委託すべきだ。


(7)第13段落について
【控訴理由書】
 なお、勘違いしやすいので追加で説明するが、本件監理課通知に明記されているとおり、スラグ混合再生路盤材は道路用鉄鋼スラグに天然石を混合したものである。このため、スラグ混合再生路盤材も道路用鉄鋼スラグであるかのように混同しやすいが、JIS A 5015の序文につづく「1 適用範囲 注記 2」 には、「道路用鉄鋼スラグには,高炉スラグ及び製鋼スラグを素材とし,これらの素材を単独又は組み合わせて路盤材として製造したもの,並びに製鋼スラグを素材とし,加熱アスファルト混合物及びれき(瀝)青安定処理(加熱混合)に用いる骨材として製造したものとがある。」とされており、天然石と混合されたスラグ混合再生路盤材は、道路用鉄鋼スラグそのものではなく、道路用鉄鋼スラグと天然石で構成されていることに注意しなければならない。

【控訴答弁書】
 概ね認める。
 控訴人は,県土整備部監理課通知(甲9)が「スラグ混合再生路盤材は道路用鉄鋼スラグに天然石を混合したもの」であると明記している旨主張するが,正しくはブレンドの主従が逆であり,上記通知では,ブレンド骨材は「砕石骨材(クラッシャラン)にクラッシャラン鉄鋼スラグをブレンドした骨材」という記載をしている。

【控訴人の反論】
 被控訴人は、佐藤建設工業がブレンドをしていた実態を知らないらしい。いや、知っていても認めたくないから、建前しか言わない。佐藤建設工業も、出来る限りスラグの混合率を高めたほうが、大同特殊鋼からのスラグの受入れ量を稼げるので、実際にはスラグの10倍の量の砕石と混合させるところ、実際には目分量で混ぜており、挙句の果てにはスラグ100%で施工する始末だった。


(8)第14段落ないし第15段落について
【控訴理由書】
 さらに判決文P30上から11行目には「これらの事情に渋川工場スラグについて、六価クロムまたはフッ素の溶出量及び含有量が、その発生若しくは加工の時期又は加工の前後にかかわらず、常に同程度であると認めるに足る的確な証拠はないことを総合すれば」とある。
 本件舗装工事契約締結前に発出された廃棄物処理に関する指示書(甲5号証)によると「3.鉱さいであるスラグの再生処理を行っていた『中央混合所』について、生活環境の保全上のおそれの有無を確認するため、土壌汚染の調査を行い、その結果を報告すること。」とされているが、「渋川工場スラグ」に六価クロムやフッ素が常に同程度含まれているおそれがあり、その結果土壌を汚染するおそれがあるから、被控訴人は土壌の調査を大同ら事業者らに指示したのであり、判決文P30上から13行目の「常に同程度であると認めるにたる的確な証拠はない」と判断した判決には不服がある。

【控訴答弁書】
 原判決及び廃棄物処理に関する指示書(甲5)の引用部分は認め,その余は否認する。
 被控訴人が上記指示書(甲5)において大同エコメットに対して「中央橋混合場」の土壊汚染の調査を指示したのは渋川工場スラグには六価クロムやふっ素が常に同程度含まれている恐れがあるからである旨の主張は,控訴人の推測であり,合理性がない。「中央橋混合場」は,鉱さいである渋川工場スラグの再生処理を行っていた場所であることから,土壌汚染の調査を指示したのである。渋川工場スラグに六価クロムやふっ素が常に同程度含まれている恐れがあったために指示したものではない。

【控訴人の反論】
 被控訴人の『「中央橋混合場」は,鉱さいである渋川工場スラグの再生処理を行っていた場所であることから,土壌汚染の調査を指示した』旨の主張であるが、「鉱さいである渋川工場スラグの再生処理を行っていた場所」と「土壌汚染の調査を指示」の関連性が説明
されていない。そこには、「渋川工場スラグには六価クロムやふっ素が常に同程度含まれている恐れがあるから」スラグを混合していた「中央橋混合所」の「土壌汚染の調査を指示した」と考えるほかはない。
 甲第89号証は大同特殊鋼(株)が作成し、鉄鋼スラグ協会に提出していた、スラグ混合路盤材の製造および販売管理に関するマニュアルであるが、路盤材原料に適用する品質規格が示されている(甲89号証7頁上から10行目)、なお路盤材原料とは天然石と混合する前の製鋼スラグのことである(甲89号証6ページ上から18行目)。そこには含有量試験のフッ素の自主管理値として40,000mg/kgまで含有することが記述されている。フッ素の環境基準値は4,000mg/kgであるので(甲89号証11頁上から23行目)渋川工場のスラグには「ふっ素が常に同程度含まれている恐れが」がマニュアルに示されていることになる。


(9)第16段落について
【控訴理由書】
 よって上記(1)~(3)を考慮することで、さらに「平成26年1月28日に報道されて以降、渋川工場スラグの有害性が吾妻農業事務所の職員においても認識され、又は認識し得たという事情を考慮しても」(判決文P30下から10行目)、吾妻農業事務所長整備課長片山は、同年6月12日の本舗装工事契約の締結に先立って、または本件舗装工事を一時中止してでも、本件再生砕石を撤去すべきであった。

【控訴答弁書】
 否認する。

【控訴人の反論】
 反論するにも値しない被控訴人の愚論である。


(10)第17段落について
【控訴理由書】
 ところで、判決文P30 (イ)のプロファ設計による調査結果に限らずスラグ混合再生路盤材について、「鉄鋼スラグのみをとりだし取り出して環境安全品質基準適合性を検査すべき理由」について追加で説明する。
・ 道路用鉄鋼スラグとは、スラグのみで構成されている。スラグ混合再生路盤材は道路用鉄鋼スラグと天然石で構成されているので、道路用鉄鋼スラグのみを取り出して環境安全品質基準適合性を検査しなければならない。(甲77号証JIS A 5015:2013)

【控訴答弁書】
ア 1つ目の中黒は,JIS-A5015が定める「道路用鉄鋼スラグ」はスラグのみで構成されているものを指すこと,本件再生砕石は砕石骨材と'鉄鋼スラグがブレンドされたものであることは認め,その余は否認する。
 上記の事実は,当然に検査方法を帰結するものではない。

【控訴人の反論】
 そもそも、今回スラグ=鉱さいが投棄された場所は農業地帯であり、被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所は、安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出せる営農環境を担保することが最重要課題の筈。

【控訴理由書】
・ 平成26年10月27日、国土交通省が鉄鋼スラグを含む砕石の分析試験を実施している。その記者発表資料(甲78号証)には参考資料が添付されているが、そこには鉄鋼スラグを含む砕石の分析過程が示されている。それによると鉄鋼スラグと類似する材料の有無を判定する調査として、目視による採取・破砕し破断面を観察・フェノールフタレイン液を噴霧・蛍光X線分析試験による成分分析が記載されている。これは鉄鋼スラグを含む砕石、つまりスラグと天然石の混合物の内、鉄鋼スラグのみを取り出し、次の段階として有害物質の含有量等を確認する調査として、JIS A 5015に準じた調査を行うこととされている。これはJIS A 5015道路用鉄鋼スラグがスラグのみの規格であることから、至極当然のことである。

【控訴答弁書】
イ 2つ目の中黒は,国土交通省の発表資料の引用部分(甲79*5)控訴理由書6頁3行目の「甲78号証」は,正しくは「甲79号証」である。・14頁)は概ね認め,その余は否認する。
 控訴人は国土交通省が鉄鋼スラグのみを抽出して有害物質の含有量等を調査する旨公表したかのように恣意的に引用するが,国土交通省が抽出して検査したのは「鉄鋼スラグと類似する材料の有無を判定する調査」,すなわち,鉄鋼スラグ“のような”骨材が使用されていた場合に“その”骨材が鉄鋼スラグか否かを判別するための調査であり,これは抽出して検査するのが当然である。その後に行われる「有害物質の含有量等を確認する調査」については,国土交通省は,「・・・群馬県環境森林部からの助言等を踏まえ,有害物質の含有量等について,分析試験等を実腕することとしております。」(甲79・3頁)としているとおり,実際,被控訴人と同様,混合した状態で試験を行った。

【控訴人の反論】
 何度も同じようなことを述べざるを得ないが、国土交通省は甲79号証14頁で国土交通省は、「目視による採取・破砕し破断面を観察・フェノールフタレイン液を噴霧・蛍光X線分析試験による成分分析」を実施し、「有害物質の含有量等を確認する調査」として今後、「JIS A5015に準じた調査」を行うと記載しているが、JIS A5015は道路用鉄鋼スラグの規格であり、スラグと天然石を混合した物の規格ではないので、スラグのみを取り出し調査を実施することになる。甲79号証4頁下から4行目でも「有害物質の含有量等を確認するため、JIS A5015に準じた調査を実施」「材料の使用箇所によってJIS A5015に準じた調査が実施できない工事の施工箇所については、調査方法を群馬県環境森林部へ確認を行い、適切に実施する。」と国土交通省は説明しており、控訴人には、原則として「有害物質の含有量等を確認するため、JIS A5015に準じた調査を実施」をおこない、例外として「材料の使用箇所によってJIS A5015に準じた調査が実施できない工事の施工箇所については、調査方法を群馬県環境森林部へ確認を行い、適切に実施する。」と記載されているとしか読めない。まさか国土交通省という国の機関が、被控訴人と同様にJIS A5015が道路用鉄鋼スラグと天然石が混ざった物の規格と勘違い・混同しているなどとは到底思えない。被控訴人が「実際,被控訴人と同様,混合した状態で試験を行った。」と述べているのは被控訴人の推測に過ぎない。

【控訴答弁書】
 なお,控訴人は,JIS-A5015に準ずる試験を行うのであれば鉄鋼スラグのみを抽出して実施するのが当然である旨主張するが,JIS-A5015の付属書D「道路用鉄鋼スラグの環境安全品質試験方法」には,
    D.3 試験の採取及び縮分
     試料の採取及び縮分は,7.1による。
   との規定があり,JIS-A5015の本文には,
    7.1 試料の採取
     試料は,全体を代表するように採取し,合理的な方法で縮分して供試試料とする。
 との規定があるのであって,これに準じて試験を行うのであれば,むしろ,ブレンドされている本件再生砕石については,ブレンドされた状態のまま試料を採取するのが合理的である。

【控訴人の反論】
 JIS A 5015の序文につづく「1 適用範囲 注記 2」 には、「道路用鉄鋼スラグには,高炉スラグ及び製鋼スラグを素材とし,これらの素材を単独又は組み合わせて路盤材として製造したもの,並びに製鋼スラグを素材とし,加熱アスファルト混合物及びれき(瀝)青安定処理(加熱混合)に用いる骨材として製造したものとがある。」と記載されており(甲77号証)、JIS A 5015の適用範囲にスラグのみ並びにスラグを組み合わせて製造したものとがあるとしていることから、試料を、「全体を代表するように採取し,合理的な方法で縮分して供試試料とする。」とする場合にもスラグのみ並びにスラグを組み合わせたものとなるはずである。なぜ被控訴人が「ブレンドされている本件再生砕石については,ブレンドされた状態のまま試料を採取するのが合理的である。」と主張するのか理由が分からない。何度も申し上げるがJIS A 5015h道路用鉄鋼スラグの規格であり、スラグと天然石とを混合した物の規格ではない。

【控訴理由書】
・常温では固体同士は薄まらない、という自然法則から考えても、有毒性が疑われるスラグと天然石とを混合した状態で、しかも多数の場所を均等混合した土壌の環境基準適合性試験の方法であるプロファ設計の分析調査(原告準備書面(11)および乙14)では、路盤材の分析調査はできない。スラグ混合再生路盤材は、土壌の上に路盤材として使用されるもので、土壌ではないので、けだし当然である

【控訴答弁書】
ウ 3つ目の中黒は,砕石骨材と鉄鋼スラグが常温で溶融して一体化することがないのは認め,その余は否認する。
 検査方法は,土壌汚染対策法に準拠し,①土壌に含まれる有害物質が地下水に溶出し,その有害物質を含んだ地下水を経口摂取するリスク,及び②有害物質を含む土壌を直接的に経口で摂取し,又は,その土壌が皮膚に接触することで皮膚から有害物質が摂取するリスクに着目して,安全性を確認・維持するために必要かつ合理的な方法によって行われるべきものであり,対象物質の形状から導かれるわけではない。

【控訴人の反論】
 被控訴人は地下水や土壌の分析の話をしている。検査するのは土壌ではなく土壌の上にある渋川工場のスラグである。


(11)第18段落について
【控訴理由書】
 以上により吾妻農業事務所は、そもそも本件農道整備工事の際に、道路用鉄鋼スラグJIS A 5015の規格にスラグ混合再生路盤材が適合するか分析調査しなければならなかった。なのに、それを怠り、プロファ設計の道路用鉄鋼スラグのみしか調査していない結果に基づいて、本件再生砕石の撤去をしないまま本件舗装工事を実施した。

【控訴答弁書】
 否認する。

【控訴人の反論】
 そもそも、今回スラグ=鉱さいが投棄された場所は農業地帯であり、被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所は、安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出せる営農環境を担保することが最重要課題の筈。


4 (4)について
(1)第1段落ないし第2段落について
【控訴理由書】
(4)判決文P31の(3)「イ 本件再生砕石の撤去の必要性について」の(ウ)について
 被控訴人群馬県は、平成26年4月22日、廃棄物処理に関する指示書(甲5号証)を発出している。この日付は本件舗装工事契約日(判決文P6下から9行目)平成26年6月12日付よりも前である。
 また控訴人は本件舗装工事(判決文P6下から8行目)の施工が始まる前の平成26年6月16日に吾妻農業事務所に電話をしたほか、平成26年6月24日に群馬県農村整備課をたずね、この指示書の発出を基に、スラグ混合路盤材は「廃棄物」の看板がスラグ混合路盤材の製造・置場に掲げられたことを伝えた。

【控訴答弁書】
 概ね認める。


(2)第4段段落ないし第5段落について
【控訴理由書】
 判決文P31最下段からP32にかけて、「渋川工場のスラグ及び本件再生砕石が特別管理産業廃棄物以外の産業廃棄物に該当し得るものとして改善命令の要否について検討」や「措置命令の要否が問題」と記述されているが、廃棄物処理に関する指示書(甲5号証)の存在について触れられていない。
 この指示書は平成26年1月31日に行われた廃棄物処理法に基づく立入調査の結果である。被控訴人のこの法に基づく立入調査の結果、改善が指示されたため、廃棄物を無許可で処理していた大同エコメットが、この指示を率直に受け止めたからこそ、「廃棄物」の看板をスラグ混合路盤材の製造・置場の「中央混合所」に掲げることで「スラグ」を「鉱さい」という分類の廃棄物と認めたのである。その結果、大同エコメットは、中央混合所の「スラグ」を撤去して「適正に処分」している(甲74号証)が、こうした被控訴人による改善の指示に素直に従ったから、当時、改善命令や措置命令が発出されなかったと考えられる。
 被控訴人群馬県により「鉱さい」という分類の廃棄物として認められた大同特殊鋼渋川工場のスラグ、及びスラグ混合路盤材について、被控訴人の対応が「改善を指示」するという方針である以上、吾妻農業事務所に対してもスラグ混合路盤材を「適切に処理」するよう、原因者である大同らに改善を指示すべきで、または、被控訴人の廃棄物・リサイクル課に相談するべきであった。

【控訴答弁書】
 被控訴人が平成26年1月31日に,廃棄物処理法に基づいて大同エコメットに対する立入調査を実施し,その調査結果を踏まえて廃棄物処理に関する指示書(甲5)を発出したこと,大同エコメットが上記指示に従ったことは認め,その余は否認する。
 改善命令や措置命令は,改善の指示に従わなければ当然に発令されるものではなく,それぞれの要件(例えば,措置命令については,既に行われた産業廃棄物の基準に適合しない処理に起因して.生活環境保全上の支障が生じ,又は生ずるおそれがあること等)を充たした場合に初めて発令されるものである。

【控訴人の反論】
 控訴人が、吾妻農業事務所にスラグ混合路盤材は「廃棄物」と指摘した時点で、吾妻農業事務所が群馬県環境部局に本件農道のスラグについて相談していれば、措置命令が発せされた可能性がある。現実には、中央混合所のスラグは直下の土壌を含め撤去され、萩生農道のスラグにはアスファルトで蓋をされてしまった。


(3)第6段落ないし第9段落について
【控訴理由書】
 個別具体的には、吾妻農業事務所農村整備課長片山は、本件舗装工事契約締結前に「廃棄物処理に関する指示書」が発出されたことを知りうる立場であったので、本件農道舗装工事を施工する前に大同特殊鋼や本件再生砕石を詐欺的に販売した佐藤建設工業に「適正に処理」させるべく、撤去・かたづけを指示するべきであった。
 ちなみに、国の機関である(独法)水資源機構は、きちんと原因者に有害スラグを撤去させて、原状回復を実践した(甲63号証)。
 加えて、南波建設は、本件農道整備工事の設計図書で指示された、建設副産物から生産した再生材である正規の再生砕石を使用せず、また本件監理課通知にも違反して、敷砂利にスラグ混合再生路盤材を使用しているので、被控訴人は吾妻農業事務所に対して、瑕疵担保責任の関係から工事のやり直しを指示させるべきであった。
 本件農道整備工事は、敷砂利工であるので、敷砂利に関する工事費がその工事内容のほとんどを占めていることから、本来こうした工事のやり直しが検討されるべきものである。南波建設に工事のやり直しが問えないとすれば、スラグ混合再生路盤材なる怪しい材料の承認を許した吾妻農業事務所が撤去の責任を負うべきである。

【控訴答弁書】
 独立行政法人水資源機構(以下「水資源機構」という。)が渋川工場スラグを撤去したことは認め,その余は否認ないし争う。
 水資源機構が渋川工場スラグを撤去したのは,水道用水等の水源として利用される用水路等の直近の管理用道路等だったからである(甲63)。
 吾妻農業事務所農村整備課長,南波建設及び吾妻農業事務所が取り得た対応等については,本件の争点と関連性がない。

【控訴人の反論】
 萩生川西地区は、耕作放棄にならぬよう補助金を利用して守っている群馬県が誇る田園である。本件農道は畑のすぐ直近にあり、水資源機構の水道用水等の水源として利用される用水路等の直近の管理用道路等となぜ区別するのか。「吾妻農業事務所農村整備課長,南波建設及び吾妻農業事務所が取り得た対応等については,本件の争点と関連性がない。」などと主張すること自体、農政をあずかる公務員とは到底思えない。
 そもそも被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所は、安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出す営農環境の保全について何よりも重視しなければならない立場であるのに、県土整備部と同じ立場で主張することは、自らの責務を放棄したと同然である。


(4)第10段落ないし第13段落について
【控訴理由書】
 「改善命令の要否について検討」や「措置命令の要否が問題」などの行政処分について、控訴人として更に付け加えたい。
 本件再生砕石は、(株)佐藤建設工業により、その試験成績表の表題を正規の再生砕石であるかのように偽装されて、本件農道整備工事に搬入されたものである。
 この佐藤建設工業については、群馬県廃棄物リサイクル課により、産業廃棄物処理業・収集運搬の許可を取り消される行政処分を受けている(甲73号証)。
 この違法な業者のせいで、群馬県中にばら撒かれたスラグの適正処分が今後問題となるが、本件舗装工事契約時点で、廃棄物に関する指示書(甲5号証)を勘案し、被控訴人が水資源機構のように、「鉱さい」という分類の廃棄物として認められたスラグ入りの本件再生砕石の撤去と原状回復を行っていれば、萩生川西地区は、佐藤建設工業が違法にばら撒いたスラグの適正処理問題に巻き込まれることはなかった。

【控訴答弁書】
 被控訴人が佐藤建設工業に対して産業廃棄物収集運搬業等の許可の取消処分を行ったことは認め,その余は否認する。
 控訴人は,渋川工場スラグの適正処分が今後問題になる旨主張するが,この問題の対応方針については,平成27年11月13日,国土交通省関東地方整備局,被控訴人及び渋川市において一定の方針が確認されており(乙31),他の自治体・及び民間も基本的にこれに添って対応しており,適切な対応が行われていくことが見込まれる状況となっている。

【控訴人の反論】
 廃棄物行政に専門的知識を有さない国土交通省関東地方整備局,被控訴人県土整備部及び廃棄物の監督官庁でない渋川市という工事実施主体が集まり出した一定の方針(乙31)など、産業廃棄物処理業・収集運搬の許可を取り消す行政処分と(甲73号証)と何の関係があるのか?被控訴人が技術的指導を仰ぐ環境省の「行政処分の指針」(乙26号証6頁上から2行目)では「躊躇することなく取消処分を行った上で、原状回復については措置命令により対応すること。」となっている。産業廃棄物処理業・収集運搬の許可を取り消す行政処分を行ったら、原状回復措置つまり土壌など生活環境の支障を起こさないよう撤去片づけなければならない。
被控訴人は乙31号証の一定の方針に、「他の自治体・及び民間も基本的にこれに添って対応しており」と主張するが、国土交通省は八ッ場ダム関連工事で使用されたスラグを撤去片づけているし、水資源機構もスラグを撤去かたづけている、また民間は基本的に大同特殊鋼(株)により撤去片づけが行われている。


5 (5)について
(1)第1段落について
【控訴理由書】
(5)判決文P32の(3)「イ 本件再生砕石の撤去の必要性について」の(エ)及び(オ)について
 はじめに(エ)の本件再生砕石として使用されたスラグ混合再生路盤材の有害性について、被控訴人に次の点を指摘しておきたい。

【控訴答弁書】
 認否の必要を認めない

【控訴人の反論】
 そもそも、今回スラグ=鉱さいが投棄された場所は農業地帯であり、被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所は、安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出せる営農環境を担保することが最重要課題の筈。


(2)第2段落について
【控訴理由書】
 平成25年改正に基づいたJIS A 5015:2013に定める環境安全品質基準適合性の確認のための分析調査が、吾妻農業事務所により実施されていない。そのため、群馬県土木工事標準仕様書に「受注者は路盤の施工に先立って路盤面又は下層路盤面の浮石その他の有害物を撤去しなければならない」と定められているところ、「撤去を要するような有害物」であったかどうかについては、吾妻農業事務所の環境安全品質基準適合性確認の懈怠により、分からない状況となってしまっている。

【控訴答弁書】
 吾妻農業事務所が環境安全品質試験(JIS-A5015の7.9及び付属書D)を実施していないこと,及び群馬県土木工事様準仕様書の引用部分(乙12・7-231頁)は認め,その余は否認する。
 本件舗装工事を施工した各農道に「撤去を要するような有害物質」がないことは,被控訴人がプロファ設計株式会社に委託した試験によって確認済みである(乙14)。

【控訴人の反論】
 群馬県土木工事様準仕様書は、群馬県内で行われる工事についての仕様書であり、環境安全品質試験(JIS-A5015)は、行われる工事契約ごとに実施しなければならない(甲91号証)。被控訴人がプロファ設計株式会社に委託した試験は工事契約ごとに実施されていない。


(3)第3段落について
【控訴理由書】
 道路用鉄鋼スラグのみを拾い出し分析調査を行った国土交通省の調査結果などにより(甲78号証・甲7号証)、大同特殊鋼渋川工場由来のスラグはフッ素や六価クロムが基準値を超えて検出されているのは確実な状況であり(大同自ら環境基準値の10倍のフッ素含有量を社内の上限値の目安にしており、これを10倍の天然砕石で薄めるというのが彼らの作戦であった)、「撤去を要するような有害物」であった可能性は極めて高い。

【控訴答弁書】
 大同特殊鋼が環境基準値の10倍のふっ素含有量を社内の上限値の目安にしていた旨の主張は不知,その余は否認する。

【控訴人の反論】
 甲89号証で提出した大同特殊鋼(株)のスラグ混合路盤材の製造および販売管理に関するマニュアルでは 環境基準値の10倍のふっ素含有量を社内の上限値の目安にしていた旨が記述されている(甲89号証7頁上から15行目)


(4)第4段落について
【控訴理由書】
 次に(オ)について、判決文P32下から5行目に「仮に、敷砂利として本件再生砕石を用いたことが本件監理課通知の趣旨に反するとしても、本件舗装工事により、本件再生砕石の敷砂利の機能としての性質または機能は変容し、路床又は路盤材の一部を構成することとなったと認められる」とある。

【控訴答弁書】
 認める。


(5)第5段落ないし第6段落について
【控訴理由書】
 まず確認しておかねばらないことは、取付舗装工標準構造図が設計図書で指示されており(甲8号証)、これが敷砂利部を舗装する場合の基本設計であるので、敷砂利およびその下部の軟弱土壌を掘削・転圧を伴わない舗装工事(甲23号証)は、甲8号証の取付舗装工標準構造図に準じたものではない、ということである。
 甲8号証の取付舗装工標準構造図による舗装工事は、敷砂利およびその下部の軟弱土壌を掘削するので、この場合、敷砂利の機能としての性質または機能は変容せず、撤去・運搬されるものである。

【控訴答弁書】
 本件の争点との関連性が不明であるが,全て否認する。

【控訴人の反論】
 そもそも、今回スラグ=鉱さいが投棄された場所は農業地帯であり、被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所は、安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出せる営農環境を担保することが最重要課題の筈。


(6)第7段落ないし第11段落について
【控訴理由書】
 加えて、判決文P32下から3行目の「本件再生砕石の敷砂利の機能としての性質または機能は変容し、路床又は路盤材の一部を構成することとなったと認められる」とする場合には、循環型社会推進基本法第2条2項に「一度使用された物品」は「廃棄物等」に当たるとされていることとの関係が問題となる。
 本件再生砕石は敷砂利工に伴い一度使用されており、甲8号証の取付舗装工標準構造図による舗装工事を実施する場合には、本来撤去されるべきものであるので「廃棄物等」にあたる。(だが、本件舗装工事においては撤去を怠った)。
 もっとも循環型社会推進基本法第2条では「製品等が廃棄物等となることが抑制され」ることも記述されているが、この抑制について群馬県土木工事標準仕様書では、「建設工事で発生する建設副産物の現場内利用の取扱いについて」を遵守するよう求めており(今回添付した甲79号証参照)、現場内で利用する場合、「性状は市場に出回っている資材と同等の性能を有し、土壌・水質等の環境に影響を及ぼさない性質であること。」とされている(同じく甲80号証参照)。
 市場に出回っている資材とは、本件舗装工事の場合、農道整備工事の設計図書で指示された建設副産物からなる正規の再生砕石のことである。吾妻農業事務所は、本件再生砕石が正規の再生砕石に当たらないことを知っていたので、被控訴人が管轄する吾妻農業事務所は、特に「土壌・水質等の環境に影響を及ぼさない性質であること。」に留意しなければならなかった。
 具体的には、判決文P32下から3行目に示された「本件再生砕石の敷砂利の機能としての性質または機能は変容し、路床又は路盤材の一部を構成」させる場合には、土壌・水質等の環境に影響を及ぼさない性質であるかどうか、吾妻農業事務所自ら分析調査しなければならなかった。

【控訴答弁書】
 原判決の引用部分は認め,その余は本件の争点との関連性が不明であり否認の必要を認めない。

【控訴人の反論】
 反論するにも値しない被控訴人の愚論である。


(7)第12段落について
【控訴理由書】
 本件農道舗装工事にあたり、吾妻農業事務所は敷砂利された本件再生砕石の土壌環境基準適合性の確認のための分析調査を怠っているので、本件舗装工事契約又は本件舗装工事の違法性が基礎付けられる。

【控訴答弁書】
 争う。

【控訴人の反論】
 そもそも、今回スラグ=鉱さいが投棄された場所は農業地帯であり、被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所は、安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出せる営農環境を担保することが最重要課題の筈。


6 (6)について
【控訴理由書】
(6)判決文P33の(3)「ウ 本件舗装工事契約の目的について」について
 判決文P33上から10行目には「本件舗装工事の目的が、本件再生砕石を隠ぺいする点にあるという原告らの主張を採用することはできない。」と記述されている。
 控訴人は原審の訴状において「(9)産業廃棄物が農道に大量に不法投棄されているにもかかわらず、それを撤去しないまま、本件舗装工事により、産業廃棄物の上部に蓋をしたことは、不法投棄という違法行為を隠ぺいする目的で為されたものであるから、本件契約にかかる支出もまた違法である。」と吾妻農業事務所の違法行為を隠ぺいする目的と主張したのであり、本件再生砕石そのものを隠ぺいする目的としてのみ主張したものではない。
 加えて本件農道整備工事が敷砂利であったことが認定され、本件監理課通知に違反していることが原審判決で認められたので、本件舗装工事の目的について、ここにあらためて、本件監理課通知に違反していることを隠すための舗装であったことを付記する。
 甲76号証でも道路用鉄鋼スラグの留意点として、「粉じん対策として上部を舗装する」とあり、なんとしてでも舗装を施し、ステージコンストラクションの第1段階だと嘘の口実を付けるために、吾妻農業事務所は舗装によってフタをしたかったのである。

【控訴答弁書】
 原判決の引用部分は認め,その余は否認する。
 なお,被控訴人は,本件舗装工事を発注した当時,本体農道整備工事における本件再生砕石の敷設は県土整備部監理課通知(甲9)に抵触するものではないと認識していたから,これを隠蔽する目的で本件舗装工事を行ったということは論理的にあり得ない。

【控訴人の反論】
 そもそも、今回スラグ=鉱さいが投棄された場所は農業地帯であり、被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所は、安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出せる営農環境を担保することが最重要課題の筈。


7 (7)について
【控訴理由書】
(7)判決文P33の(3)「エ 地域公共事業調整費について」について
 判決文によれば「本件舗装工事は、本件ほ場整備事業の一環として行われたものとして認められ」るとされている。であれば、当然、舗装工事の原資は、当該整備事業の一環として準備され支出されるはずである。
 だが実際には、県民局が所管する地域調整費(地域振興調整費と地域公共事業調整費)のうちの、地域公共事業調整費から、本件舗装工事に係る費用が支出された。
 そもそも、地域振興調整費事務取扱要領によれば、この地域公共事業調整費の使途は、
① 環境森林事務所、農業事務所及び土木事務所が事業主体となって実施する公共事業で次の経費
ア 地域総合行政及び地域振興行政の推進に資する公共事業に要する経費
イ 地域において実施する公共事業のうち、複数分野にかかわるもの、早期に完成させる必要があるもの、緊急に実施する必要があるもの、その他事業効果の高いものに要する経費
② その他、第1の目的を達成するために県民局長が特に必要と認めた事業に要する経費となっているが、どうやらイの「緊急に実施する必要があるもの」に該当するようである。そして、②では県民局長が特に必要と認めた事業の経費とあるとおり、正に有害物の不法投棄という違法行為を隠蔽するために被控訴人が組織的に予算を流用した証左と言える。
 よって、原審での控訴人の主張には正当性がある。

【控訴答弁書】
 原判決の引用部分は認め,その余は否認する。
 控訴人は,「地域“振興”調整費事務取扱要領」(傍点“”は引用者)を引用しているところ,これは,群馬県のホームページのうち,桐生行政県税事務所のページに掲載されていたものを参照したものと思われる。*6)今般,桐生行政県税事務所に問い合わせたところ,古い要領が更新されないまま掲載されていることが確認され,可及的速やかに対応を検討するとのことであった。しかし,この要領は,平成16年4月1日に策定された後,数次の改正が行われているところ,平成26年4月1日までのいずれかの改正*7)今般,いずれの改正の際に名称が変更されたのか調査したが,文書の保存期間(5年間)が経過している関係もあり,いずれの改正で変更されたか特定するに至らなかった。の際に名称が「地域調整費事務取扱要領」に改正されており,本件舗装工事が締結された平成26年6月12日(甲21・7頁)当時に適用されていたのは,乙第4号証で提出したものである。

【控訴人の反論】
 これこそ、被控訴人が血税を原資とする公金の支出に無頓着なことを示す証左の一つである。


8 (8)について
【控訴理由書】
(8)判決文P33の(4)について
 以上によれば、どうみても本件舗装工事は必要なものとは認められず、渋川工場スラグの有害性や撤去の必要性、契約締結の目的等、諸般の観点から検討すると、本件舗装工事に係る支出負担行為について、専決した吾妻農業事務所農村整備課長片山が、その裁量権の範囲を逸脱または濫用したものとして、地方自治法2条14項に反する違反があったと認められる。
 したがって吾妻農業事務所農村整備課長片山が専決した本件舗装工事に係る支出負担行為の違法を前提とする狩野の指揮監督義務に関する違反も認められることから、狩野は地方自治法243条の2に基づく損害賠償責任を負う。

【控訴答弁書】
 否認ないし争う。

【控訴人の反論】
 そもそも、今回スラグ=鉱さいが投棄された場所は農業地帯であり、被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所は、安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出せる営農環境を担保することが最重要課題の筈。


9 「第3 群馬県内で渋川工場スラグが使用された地点の対処の状況」について
【控訴答弁書】
第3 群馬県内で渋川工場スラグが使用された地点の対処の状況
1 渋川工場スラグが社会問題化したことを受け,国土交通省関東地方整備局.被控訴人及び渋川市は,その対応方針を協議するため,「鉄鋼スラグに関する連絡会議」を開催し,平成27年11月13日開催の第3回会議において,概要,以下の対応方針を確認した(乙31・2頁及び3頁)。
   ①鉄鋼スラグを含む材料が環境基準値を超過している施工箇所の対策
    ・管理者において将来にわたり管理できない施工箇所等については撤去を行う。
    ・前記以外の箇所については,県環境部局の助言を得ながら表面被覆等を行う。
   ②鉄鋼スラグを含む材料が環境基準値を満足している施工箇所の対策
    ・環境基準値を満足しているものの,スラグへの経口・接触リスクが高いと考えられる小・中学校等の箇所については,県環境部局の助言を得ながら必要に応じて鉄鋼スラグを含む材料が表面に出ている施工箇所の表面被覆等を行う。
   ③鉄鋼スラグを含む材料を存置する場合の対応
    ・存置する工事の施工箇所については,県環境部局がリスト化し地下水の常時監視等を通じて,引き続き,環境への影響等について監視を行う。
    ・公共工事事業者としても,存置する施工箇所については,将来,修繕工事や占用工事等で該当箇所を掘削する場合は,県環境部局の助言を得ながら廃棄物処理法等の関係法令への適用状況を踏まえ適切に対応していく。
  本体舗装工事は,上記の方針に沿うものであり,この点からも,本件舗装工事に係る支出負担行為を専決したことについて吾妻農業事務所農村整備課片山に裁量権の範囲を逸脱又は濫用がなかったことは明らかというべきであり,地方自治法2条14項に違反する違法はなく,また,これに引き続いて行われた支出命令も違法ではないから,控訴人の楕求に理由はなく,本件控訴は棄却されるべきである。
2 なお,その後,上記方針は,他の自治体や民間にも概ね受け入れられ,被控訴人は, 渋川工場スラグの使用筒所のリスト化を進めるとともに,地下水の常時監視等を通じて環境等への影響について監視を行っている。平成29年12月末現在,被控訴人がリスト化した施工筒所は,公共工事が合計347か所,民間工事が112か所であり,そのうち地下水の汚染が確認された地点は1か所もない(乙32)。

【控訴人の反論】
 (鉄鋼スラグ連絡会議は、国土交通省関東地方整備局、被控訴人群馬県県土整備部、渋川市などの各公共工事事業者で組織され(甲90号証1頁上から15行目)ており、廃棄物行政の専門家ではない工事実施主体で構成されている。およそ廃棄物処理法上の措置命令(法第19条の5)や排出事業者等に対する措置命令(法第19条の6)そして生活環境の保全上の支障の除去等の措置(法第19条の8)など廃棄物の適正な処理や生活環境の保全を検討すべき者ではない。
 群馬県内の廃棄物の監督官庁である被控訴人の環境森林部が平成27年9月11日に当該スラグを廃棄物と認定した以上(甲57号証)、被控訴人の環境森林部が廃棄物処理法に基づいて対策を検討しなければならないところ、環境森林部を差し置いて、工事実施主体である鉄鋼スラグ連絡会議が平成27年11月13日に鉄鋼スラグを含む材料の対応方針(案)を出すなどは、本来の廃棄物処理法の対応を抑え込み、工事実施主体に都合のよい対策を考えだしたと考えざるを得ない。
 土壌は環境基本法が予定する生活環境(環境基本法第16条)の一つであり、被控訴人の環境森林部がスラグを「土壌と接する方法で使用した場合、ふっ素による土壌汚染の可能性があり」と指摘している以上(甲57号証)、生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるのであるから、廃棄物処理法に基づいて生活環境の保全上のスラグ対処を実施しなければならないが、鉄鋼スラグ連絡会議の鉄鋼スラグを含む材料の対応方針(案)には、廃棄物処理法の条文には一文字も触れていないので、廃棄物処理法によらない対策を取ったと思わざるを得ない。スラグが廃棄物に認定された時点で(平成27年9月11日)、鉄鋼スラグ連絡会議がせめて環境省や大学教授などの専門家をオブザーバーとして招いて検討を重ねれば、廃棄物処理法を念頭に置いた対策が検討されたであろうと考えると残念でならない。
 具体的に鉄鋼スラグを含む材料に対する被控訴人らの対応方針(案)を見ていく。
 はじめに①の「鉄鋼スラグを含む材料が環境基準値を超過している施工箇所の対策」の「・管理者において将来にわたり管理できない施工箇所等については撤去を行う。」および「・前記以外の箇所については,県環境部局の助言を得ながら表面被覆等を行う。」について反論する。
 まず鉄鋼スラグを含む材料が環境基準値を超過しているとは、大同特殊鋼(株)渋川工場から排出されるスラグと(株)佐藤建設工業の天然石を混合した状態で環境分析調査を行った結果、環境基準値を超過したケースであるが、まず「管理者において将来にわたり管理できない施工箇所等については撤去を行う」と県環境部局を差し置いて、工事実施主体が勝手に対策を決めてしまっていることが分かる。そして「前記以外の箇所については,県環境部局の助言を得ながら表面被覆等を行う」と本来、廃棄物処理法に基づき生活環境の保全を前面に建って担うべき県環境部局を従属的に利用して対策を考えていることが分かる。ちなみに「管理」とは定義が示されておらず、何を指す言葉なのかよく分からない。また廃棄物処理法に基づく措置命令(法第19条の5)や排出事業者等に対する措置命令(法第19条の6)が発出されることなく、生活環境の保全上の支障の除去等の措置(法第19条の8)で検討されることがある「表面被覆」という文言が記述されているが、「土壌と接する方法で使用した場合、ふっ素による土壌汚染の可能性」(甲57号証)がある大同特殊鋼(株)由来のスラグの場合には、土壌とスラグの間に遮水層を設け、更に廃棄物最終処分場の許可を得なければできない措置であることから、廃棄物処理法を無視した対策であり容認できない(行政処分の指針・乙26号証27頁上から32行目)。
 次に、②の「鉄鋼スラグを含む材料が環境基準値を満足している施工箇所の対策」の「・環境基準値を満足しているものの,スラグへの経口・接触リスクが高いと考えられる小・中学校等の箇所については,県環境部局の助言を得ながら必要に応じて鉄鋼スラグを含む材料が表面に出ている施工箇所の表面被覆等を行う。」について反論する。
 鉄鋼スラグを含む材料が環境基準値を満足している施工箇所とは、鉄鋼スラグと天然石が混合された状態で環境分析調査した結果、環境基準を下回っている施工箇所のことであるが、不思議なのは「材料が環境基準値を満足している」状況であるのに「スラグへの経口・接触リスクが高い」と判断していることである。被控訴人を含む工事実施主体が鉄鋼スラグを含む材料のうち、スラグのみを環境分析調査すれば、環境基準を満足しないと考えている証拠である。
 また「経口・接触リスクが高い」とは被控訴人が土壌汚染ガイドラインを引用して説明した土壌汚染対策上の言葉である(被告第8準備書面5頁上から2行目など)。スラグは土壌ではなく、廃棄物に認定されたので廃棄物処理法に基づいてまずは措置命令(法第19条の5)や排出事業者等に対する措置命令(法第19条の6)によるスラグ撤去が検討されなければならない。
 さらに、③の「鉄鋼スラグを含む材料を存置する場合の対応」の最初の「・存置する工事の施工箇所については,県環境部局がリスト化し地下水の常時監視等を通じて,引き続き,環境への影響等について監視を行う。」について反論する。
 ここでも被控訴人を含む工事実施主体は、県環境部局を従属的に利用しており、「県環境部局がリスト化し地下水の常時監視等を通じて、引き続き、環境への影響等について監視を行う」となどと、工事実施主体が、環境基本法の生活環境のうち、「地下水のみ」を「環境」と捉えるように指示し、生活環境の一つである土壌への影響を無視している。まさかスラグを廃棄物に認定した県環境部局が、認定する際に考慮した土壌への影響(甲57号証(7))を自らの考えで無視するとは考えられないものの、県土整備部を頂点とする被控訴人の組織内部の力関係から、控訴人としてはそうした懸念を払しょくしきれない
 続いて、③の「・公共工事事業者としても,存置する施工箇所については,将来,修繕工事や占用工事等で該当箇所を掘削する場合は,県環境部局の助言を得ながら廃棄物処理法等の関係法令への適用状況を踏まえ適切に対応していく。」について、反論する。
 鉄鋼スラグ連絡会議を組織する公共工事事業者などの工事実施主体は、「将来,修繕工事や占用工事等で該当箇所を掘削する場合」に、それまで無視し続けていた「廃棄物処理法等の関係法令への適用状況を踏まえ適切に対応していく。」との文章をここで初めて記述することにより、あたかも廃棄物処理法による対応も検討しているかのような錯覚を与えるカモフラージュを意図した演出を施している。
 しかしこの記述は、廃棄物処理法を無視し続け、廃棄物であるスラグをあたかも有価物であるかのように存置し、該当箇所を掘削する場合に、循環型社会形成推進基本法第2条第2項第2号の「一度使用され、若しくは使用されずに収集され、若しくは廃棄された物品」として「廃棄物等」にあたることから、廃棄物処理法が適用されることになることを表しているにすぎず、何のことはない「廃棄物」と認定されたスラグ(甲57号証)を有価物のように取り扱い存置することをほのめかしているにすぎない。
 加えて、被控訴人は「本体舗装工事は,上記の方針に沿うものであり,この点からも,本件舗装工事に係る支出負担行為を専決したことについて吾妻農業事務所農村整備課片山に裁量権の範囲を逸脱又は濫用がなかったことは明らかというべきであり,地方自治法2条14項に違反する違法はなく,また,これに引き続いて行われた支出命令も違法ではないから,控訴人の楕求に理由はなく,本件控訴は棄却されるべきである。」などと、自らの行政組織の無責任体制を恥ずかしげもなくひけらかしている。
 控訴人が平成26年6月にスラグが廃棄物であることを吾妻農業事務所に指摘した時点で、①吾妻農業事務所が、本件農道整備工事が群馬土木工事標準仕様書に準拠せず道路用鉄鋼スラグの環境基準適合性の分析(甲78号証)を怠っていたことに気付けば、事後的に環境基準適合性を分析することも可能であったはずである、②また判決文32頁下から3行目に示された「本件再生砕石の敷砂利の機能としての性質または機能が変容し路床又は路盤材の一部を構成」していることから土壌・水質等の環境に影響を及ぼさない性質であるどうか本件舗装整備工事にあたり吾妻農業事務所自ら環境分析調査(甲79号証)をしなければならなかったが、これを怠っている。
 被控訴人は「本体舗装工事は」鉄鋼スラグ連絡会議の「方針に沿うものであり」などと被控訴人は主張するが、スラグの環境分析調査を怠っていることに気付くべきであったこと(上記①)や本件舗装工事に環境分析調査を怠っていること(上記②)をごまかすためには、廃棄物処理法を無視し、地下水のみを監視し、土壌やその上にあるスラグを現場ごとに環境分析調査する必要の無い、鉄鋼スラグ連絡会議の対応方針は都合の良い方針と言えよう。

 最後に重ねて被控訴人に指摘しておきたい。
 今回、スラグ=鉱さいが投棄された場所は、ひとびとの食料となる農作物を栽培する農業地帯の真っただ中にある。被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所は、何よりもスラグが安心・安全な営農環境の保全にとって脅威となるという認識のもとに、行政判断をしなければならない。

                              以上

*****証拠説明書(甲81~91)*****PDF ⇒ b8191181002.pdf
甲81 不法投棄防止及び原状回復に関する懇談会報告書PDF ⇒ b81shyk14n71402.pdf
甲82 岐阜市産業廃棄物不法投棄対策検討委員会PDF ⇒ b82syps.pdf
甲83 第7回技術部会概要:岐阜市産業廃棄物不法投棄対策検討委員会委員名簿PDF ⇒ b83s.pdf
甲84 第7回技術部会概要PDF ⇒ b847zptv.pdf
甲85 技術部会委員名簿PDF ⇒ b85zp.pdf
甲86 第7回技術部会参考資料PDF ⇒ b86sxxu.pdf
甲87 岐阜市産業廃棄物不法投棄対策検討委員会報告書PDF ⇒ b871stv.pdf
b872stv.pdf
b873stv.pdf
甲88 石原産業フェロシルト不正処理事件PDF ⇒ b88ytfvg.pdf
甲89 スラグ混合路盤材の製造および販売管理に関するマニュアルPDF ⇒ b89xohja.pdf
甲90 鉄鋼スラグに関する連絡会議規約PDF ⇒ b90sxoack.pdf
甲91 群馬県土木工事標準仕様書PDF ⇒ b91wdl_.pdf
**********

■準備書面(1)の中でも強調したとおり、現在、群馬県内では、大同特殊鋼渋川工場の鉄鋼スラグ問題に加えて、東邦亜鉛安中製錬所の非鉄スラグ、そしてJFE千葉製鉄所の溶融スラグの不法投棄問題が取りざたされています。

 フッ素・六価クロム入りの大同スラグの場合は蓋をして、鉛・ヒ素入りの東邦亜鉛スラグの場合は高渋バイパスでは撤去させて、ゴミの焼却灰を高温で溶かしたJFEの溶融スラグはそのまま農地に放置するなど、群馬県行政のやり方はバラバラです。一貫して言えるのは、事業者への配慮であり、県民生活・営農環境や県土自然環境への無配慮です。

 東京高裁では、即日結審するかと思いきや、少なくとも3~4回程度の口頭弁論は開かれる見込みです。

 県土がスラグだらけになっている現状を、東京高裁がどのように判断するのか、注目されます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・この項おわり】

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大同スラグ控訴審…10月31日の第2回口頭弁論に向けて控訴人準備書面(1)を提出!(前編)

2018-10-03 21:58:00 | スラグ不法投棄問題

■当会が東吾妻町萩生地区の圃場整備事業で、農道に大同のフッ素・六価クロム入り有毒生スラグが敷砂利として投棄されていた現場をはじめて2014年6月1日に確認して以来、4年4カ月が経過しました。「臭いものに蓋をしないでほしい」と農道舗装工事施工主体である吾妻農業所長に電話で懇願したにもかかわらず、その直後、有害スラグを撤去せずに舗装工事が行われたため、住民監査請求を2015年1月30日に提出しました。しかし、棄却されたため、2015年4月30日に住民訴訟を提起しました。以来ほぼ3年が経過しようとしていた2018年3月16日(金)午後1時10分に前橋地裁21号法廷で開かれた判決言渡弁論において、裁判長の「主文 原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする」という発生が法廷に響き渡りました。この判決を確定させてしまうと、さまざまな方面で収拾のつかない事態が発生し、我が国の土木建設業界のみならず、生活及び営農環境面に甚大な影響を及ぼしかねないため、当会は2018年3月26日(月)に、前橋地裁で控訴手続きをとり、第1回口頭弁論が、同8月15日(水)午後2時から東京高裁第22民事部424号法廷で開かれました。
 その結果、10月1日(月)までに控訴人から答弁書に対する反論を提出し、それを被控訴人群馬県がみて、次回10月31日(水)10時30分から東京高裁424号法廷で開かれる第2回控訴審口頭弁論で、再反論の要否について、裁判長が意見を群馬県に聞くことになっており、県の回答内容次第で、もう一度今度は被控訴人群馬県側に主張させるかどうかを見極めたいと裁判長が訴訟指揮をしました。

10月2日の朝、東京高裁と被控訴人訴訟代理人弁護士あてに簡易書留で郵送した領収書等。
 一審敗訴以降のこの件に関する情報は、次の当会のブログ記事を参照ください。
○2018年3月27日:大同スラグ裁判・・・3月16日に前橋地裁が言渡した判決を不服としてオンブズマンが3月27日に控訴状提出!
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2604.html
○2018年5月15日:大同スラグ裁判・・・3月16日の前橋地裁での敗訴判決を受けて、東京高裁に控訴理由書を提出!
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2640.html
○2018年5月26日:大同スラグ裁判・・・控訴審の第1回口頭弁論が8月15日に東京高裁で開廷が決定!
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2648.html
○2018年8月3日:大同スラグ控訴審…8月15日の第1回口頭弁論が迫り、被控訴人群馬県から控訴答弁書が到来!(前編)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2714.html
○2018年8月3日:大同スラグ控訴審…8月15日の第1回口頭弁論が迫り、被控訴人群馬県から控訴答弁書が到来!(後編)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2715.html

 それでは控訴人当会が10月2日に東京高裁と被控訴人訴訟代理人弁護士事務所に送付した控訴人準備書面(1)を以下に示します。

*****控訴人準備書面(1)P18中段まで*****PDF ⇒ 20181002tilipjmn.pdf
平成30年(行コ)第139号 住民訴訟控訴事件
控 訴 人 小川賢
被控訴人 群馬県
                         平成30年10月2日
東京高等裁判所第22民事部 御中
                        控訴人 小川 賢  印

            控訴人準備書面(1)

 頭書事件について、8月15日の口頭弁論における裁判所の訴訟指揮に基づき、次のとおり陳述する。

第1 スラグを撤去しなければならない理由

1 平成26年6月には大同特殊鋼由来のスラグと天然石とを違法に混合していた中央混合所に、廃棄物(鉱さい)の看板が掲げられており、本件舗装工事を実施する前に控訴人は被控訴人にスラグは廃棄物であることを指摘した。この指摘は被控訴人も認めているところである(控訴答弁書8頁下から6行目「(1) 第1段落ないし第3段落について」参照)。

2 産業廃棄物は、生活環境を保全するため、廃棄物処理法(以下法と呼ぶ)が定めたルールに則り適正に処理しなければならない(法第1条)。
  具体的には法施行令第7条に規定されている産業廃棄物処理施設において処理されるのが、その適正な処理のため法が定めたルールであると思われる。ただし、「鉱さい」という分類の廃棄物には破砕施設の規定はなく、いわゆる再生処理(リサイクル)することはできない。加えて、大同特殊鋼由来のスラグにはフッ素などが環境基準を超えて含まれているおそれがあることから、同第14号のいずれかの最終処分場に埋め立て処分しなければならないと考える。
  最終処分場以外に投棄された状況は、廃棄物が適正に処理されたとはいえないので、撤去した上、法が定めたルールに則り適正に処理しなければならない。法第16条では「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。」と定めているが、「みだりに」とは法律用語ではなく「正当な理由なく」を意味する言葉とする記述をよく見かける。廃棄物は法が定めたルールつまり正当な理由なく投棄してはならない。

3 平成26年4月22日に発出された「廃棄物に関する指示書」(甲5号証)により被控訴人の廃棄物・リサイクル課は、法に基づく立入り調査の結果、スラグを廃棄物の分類である「鉱さい」と指摘し全量を適正に処理するよう改善を指示した。その結果、大同特殊鋼グループはスラグを最終処分場に最終処分した(甲74・75号証)。法に基づく立入り調査は、法第1条の目的である生活環境の保全を目的としたものに他ならない。よって、被控訴人の廃棄物・リサイクル課が行った立入り調査は、生活環境の保全の観点から支障があると判断したことによる調査という事ができる。
  しかも今回、スラグ=鉱さいが投棄された場所は、食料となる農作物を栽培する農業地帯の真っただ中にある。被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所は、廃棄物・リサイクル課の立入り調査結果を踏まえるまでもなく、率先して安心・安全な営農環境の保全に努めなければならないはずである。

4 その後、被控訴人は平成27年9月11日にスラグを「鉱さい」という分類の廃棄物と広く公表する形で認定を行っている(甲57号証)(以下スラグ廃棄物認定と呼ぶ)。
(1)その廃棄物処理法第18条第1項および同第19条第1項に基づく調査の結果報告のなかで、被控訴人は次のように述べている。
          (引用はじめ)
    (2) 平成13年にふっ素の土壌環境基準が設定され、平成15年にふっ素の溶出量及び含有量に係る指定基準を設定した土壌汚染対策法が施行された。
これにより、路盤材など土壌と接する方法で鉄鋼スラグを使用する場合、周辺土壌や地下水を汚染しないよう、土壌環境基準等と同等の基準を満たすことが求められ、鉄鋼業界では、ふっ化物(蛍石)を使用しない操業への移行や、鉄鋼スラグに含まれる有害物質の検査を行い、環境安全性を確認して路盤材等に再生利用する方法がとられてきた。
しかし、大同特殊鋼(株)渋川工場は、その後もふっ化物(蛍石)の添加を止めることなく、また、鉄鋼スラグの大半がふっ素の土壌環境基準等を超過していることを承知したうえで出荷を続け、当該スラグが使用された施工箇所の一部で基準を超える土壌汚染を生じさせた。

          (引用終わり)
   この中で、被控訴人は「路盤材など土壌と接する方法で鉄鋼スラグを使用する場合、周辺土壌や地下水を汚染しないよう、土壌環境基準等と同等の基準を満たすことが求められ」と述べていることから、鉄鋼スラグにより周辺土壌が汚染され、やがては地下水が汚染されることは生活環境の保全上、問題となることを被控訴人は認識していることが分かる。
   被控訴人には釈迦に説法かもしれないが、環境基本法第16条には次のような規定がある。
          (引用はじめ)
    政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。
          (引用終わり)
   被控訴人は環境基本法に基づく土壌環境基準に触れ、周辺土壌や地下水を汚染しないようにと考えていることから、環境基本法にいう生活環境の保全のためには、少なくとも「土壌」と「地下水」を要素と認識している。
   今回スラグ=鉱さいが投棄された場所は農業地帯であるから、被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所はなによりも安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出すのに必須な「土壌」と「地下水」が営農環境の保全の観点から重要であることを認識しなければならないはずである。

(2)また被控訴人は、甲57号証の(7)で次のように述べている。
          (引用はじめ)
   (7)
    ふっ素の土壌環境基準等が設定されて以降、大同特殊鋼(株)渋川工場から製鋼過程の副産物として排出された鉄鋼スラグは、土壌と接する方法で使用した場合、ふっ素による土壌汚染の可能性があり、また、平成14年4月から平成26年1月までの間、関係者の間で逆有償取引等が行われていたことなどから、当該スラグは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案し、廃棄物と認定される。

          (引用終わり)
   被控訴人は、廃棄物に該当するか否かの認定について「その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案し」と環境省の地方自治法に基づく技術的指導である「行政処分の指針」(乙26号証3頁21行目(2)廃棄物該当性の判断について①)と同様の判断基準を採用したり、被告準備書面で環境省の行政処分に触れたり(被告第10準備書面2頁上から25行目)していることから、環境省が示した「行政処分の指針」に沿った廃棄物行政を行っていることが分かる。しかし遺憾ながら、そして不可思議なことに、大同特殊鋼由来のスラグの撤去については、なぜか不十分である。
   今回、スラグ=鉱さいが投棄された場所は、食料となる農作物を栽培する農業地帯の真っただ中にある。被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所は、何よりもスラグが安心・安全な営農環境の保全にとって脅威となるという認識のもとに、行政判断をしなければならないはずである。

5 「おそれ」の認定
  上記4の(1)で引用したとおり、被控訴人は、大同特殊鋼由来のスラグを廃棄物に認定している中で、「鉄鋼スラグの大半がふっ素の土壌環境基準等を超過していることを承知したうえで出荷を続け、当該スラグが使用された施工箇所の一部で基準を超える土壌汚染を生じさせた。」と述べている。
  また同じく、4の(2)で引用したとおり、被控訴人は「スラグは、土壌と接する方法で使用した場合、ふっ素による土壌汚染の可能性があり」と述べている。
  この二つを要約すれば、スラグの大半がフッ素を「土壌環境基準等を超過」して含んでおり、土壌と接する方法で使用した場合「フッ素による土壌汚染の可能性」がある、ということになる。
  被控訴人が行政を行う上で技術的な指導を仰いでいる「行政処分の指針」(乙26号証25頁上から18行目)に次の記述がある。
          (引用はじめ)
  2 要件
   (1) 生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるとき
   ① 「生活環境」とは、環境基本法(平成5年法律第91号)第2条第3項に規定する「生活環境」と同義であり、社会通念に従って一般的に理解される生活環境に加え、人の生活に密接な関係のある財産又は人の生活に密接な関係のある動植物若しくはその生育環境を含むものであること。また、「生活環境の保全」には当然に人の健康の保護も含まれること。
   ② 「おそれ」とは「危険」と同意義で、実害としての支障の生ずる可能性ないし蓋然性のある状態をいうこと。しかし、高度の蓋然性や切迫性までは要求されておらず、通常人をして支障の生ずるおそれがあると思わせるに相当な状態をもって足りること。
   ③ このように「生活環境の保全上支障が生じ、又は生ずるおそれがある」とは、人の生活に密接な関係がある環境に何らかの支障が現実に生じ、又は通常人をしてそのおそれがあると思わせるに相当な状態が生ずることをいい、例えば、安定型産業廃棄物が道路、鉄道など公共用の区域や他人の所有地に飛散、流出するおそれがある場合、最終処分場以外の場所に埋め立てられた場合なども当然に対象となること。

          (引用終わり)
  この「行政処分の指針」の記述と被控訴人のスラグ廃棄物認定を照らし合わせると
① 「生活環境」とは環境基本法に規定する土壌さらに汚染が進むと地下水であり、
② 「おそれ」とは実害として土壌と接する方法で使用した場合、フッ素による土壌汚染の可能性があることであり、
③ 人の生活に密着な関係がある環境である土壌さらには地下水に支障が生じまたは通常人をしてその恐れがあると思わせるに相当な状態が生ずることであり、被控訴人である群馬県が「生活環境の保全上支障が生じ、または生ずるおそれがある」と認定したことになる。
  このような廃棄物であるスラグが最終処分場以外の本件萩生川西地区の農道に埋め立てられた本事件は当然「生活環境の保全上支障が生じ、または生ずるおそれがある」の対象となる。
  しかも、今回スラグ=鉱さいが投棄された場所は農業地帯であるから、被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所は、安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出す営農環境の保全の観点が何にも増して重要であることを認識しなければならないはずである。

6 「生活環境の保全上支障が生じ、または生ずるおそれがある」スラグを法に従い適正に処理させる方法として法が予定している方法には次の3つがある。
・措置命令(法第19条の5)
・排出事業者等に対する措置命令(法第19条の6)
・生活環境の保全上の支障の除去等の措置(法第19条の8)

7 措置命令(法第19条の5)について
  被控訴人が技術的な指導を受ける「行政処分の指針」(乙26号証25頁上から2行目)では措置命令につき次の記述がある。
          (引用はじめ)
   1 趣旨
   (1) 都道府県知事は、処理基準又は保管基準(以下「処理基準等」という。)に適合しない産業廃棄物の処理が行われた場合において、生活環境の保全上の支障を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、必要な限度においてその支障の除去又は発生の防止のために必要な措置を講ずるように命ずることができることから、これらの者による不適正な処分を把握した場合には、速やかに命令を行い、生活環境の保全上の支障の発生を防止し、又は除去されたいこと。なお、この場合において、処理基準等に違反する状態が継続している(不法投棄の場合であれば、廃棄物が投棄されたままの状態が継続している。)以上、いつでも必要に応じ命令を発出することができること。
   (2) 法第19条の5は、「命ずることができる」と規定されているところ、同条は生活環境の保全を図るため都道府県知事に与えられた権限を定める趣旨であるから、不適正処理された産業廃棄物の種類、数量、それによる生活環境の保全上の支障の程度、その発生の危険性など客観的事情から都道府県知事による命令の発出が必要であるにも関わらず、合理的な根拠がなく権限の行使を怠っている場合には、違法とされる余地があること。

          (引用終わり)
  萩生川西地区にスラグが投棄されている状況は、上記5で述べたように「生活環境の保全上支障が生じ、または生ずるおそれがある」状況であるから、措置命令を発出する権限を有する被控訴人の群馬県知事は、その技術的指導「行政処分の指針」(乙26号証)に従うなら、速やかに生活環境の支障の発生を防止し、又は除去しなければならないはずである。
  まして、今回スラグ=鉱さいが投棄された場所は農業地帯であるから、被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所はなによりも安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出す営農環境の保全が重要であることを認識しなければならないはずである。
  また措置命令は「必要な限度においてその支障の除去又は発生の防止のために必要な措置を講ずるように命ずることができる」となっているが、「必要な限度において」について被控訴人が仰ぐ技術的指導「行政処分の指針」(乙26号証27頁上から32行目)では次のような記述がある。
          (引用はじめ)
   (1) 命令は「必要な限度において」とされており、支障の程度及び状況に応じ、その支障を除去し又は発生を防止するために必要であり、かつ経済的にも技術的にも最も合理的な手段を選択して措置を講ずるように命じなくてはならないこと。具体的には、例えば、最終処分場において、浸出液により公共の水域を汚染するおそれが生じている場合には、遮蔽工事や浸出液処理施設の維持管理によって支障の発生を防止できるときは、まずその措置を講ずるように命ずるべきであって、これらの方法によっては支障の発生を防止できないときに初めて、処分された廃棄物の撤去を命ずるべきであること。
          (引用終わり)
  萩生川西地区の農道にスラグが埋設されていることには争いはない。このスラグは土壌と接しており被控訴人自ら、土壌と接している状況は「生活環境の保全上支障が生じ、または生ずるおそれがある」状況と認定している。
  「必要な限度において」については、廃棄物であるスラグを撤去し、最終処分場に運搬する手段と、スラグと土壌の間に遮蔽工事を行い尚且つ浸出液処理施設を設ける手段が考えられるが、後者の方法は「行政処分の指針」にも例示があるとおり産業廃棄物最終処分場の設置許可を得なければならず、農地に隣接する萩生川西地区農道が最終処分場となる可能性は極めて低く、経済的にも技術的にも合理的な手段とはいえない措置である。
  法は鉱さいという分類のスラグを法施行令第7条第14号に規定する最終処分場に埋立処分することを規定している。つまり萩生川西地区の農道に埋め立てられたスラグは撤去することが、「その支障を除去し又は発生を防止するために必要であり、かつ経済的にも技術的にも最も合理的な手段」である。
  撤去について古市徹北海道大学大学院工学研究科教授を座長とする不法投棄防止及び原状回復に関する懇談会報告書(甲81号証10頁1行目)では次のように述べている。
          (引用はじめ)
   ○不法投棄の防止及び原状回復は、不法投棄の規模が小さな段階で措置命令を発出するとともに、行為者が産業廃棄物処理業者の場合には業の許可を取り消すなどして新たな搬入を停止させ、原因者等の責任で撤去等させることが原則である。
          (引用終わり)
  措置命令の「命令」の対象について、「行政処分の指針」(乙26号証25頁上から35行目)では、「現に処理基準に適合しない廃棄物の保管、収集、運搬又は処分を行った者(以下「処分者」という。)」となっており、萩生川西地区にスラグを持ち込んだ建設資材メーカーの(株)佐藤建設工業が該当すると考えられる。
  なお、萩生川西地区にスラグを持ち込んだ(株)佐藤建設工業は、被控訴人群馬県により廃棄物の許可を取り消される行政処分を受けているが撤去の措置命令は発出されていない(甲73号証)。処分者が産業廃棄物の許可を取り消される行政処分を受けた場合には「行政処分の指針」(乙26号証6頁上から2行目)では「躊躇することなく取消処分を行った上で、原状回復については措置命令により対応すること。」と述べている。

8 排出事業者等の措置命令((法第19条の6)
  被控訴人は、措置命令(法第19条の5)に加え、排出事業者がその事業活動に伴って生じた廃棄物を自ら適正に処理するものとする「排出者の処理責任」を負っている(法第3条第1項及び第11条第1項)ことから、排出事業者等にも措置命令を発出することができる。

9 生活環境の保全上の支障の除去等の措置(法第19条の8)
  法第19条の8について、被控訴人が技術的指導を仰ぐ「行政処分の指針」(乙26号証32頁22行目)では次の記述がある。
          (引用はじめ)
   第10 生活環境の保全上の支障の除去等の措置(法第19条の8)
   1 趣旨
   処理基準等に適合しない産業廃棄物の処理が行われた場合に速やかな代執行の実施による生活環境の保全を図るため、措置命令を受けた処分者等がこれを履行しないときのほか、措置命令を行うべき処分者等を確知することができないとき又は措置命令を行ういとまがないときに、行政代執行法(昭和23年法律第43号)の特例として、簡易迅速な手続により代執行を行うことを可能とするものであり、積極的に活用されたいこと。なお、「都道府県知事は、自らその支障の除去等の措置の全部又は一部を講ずることができる。」と規定されているとおり、不適正処理の原因者等に対して命じられる支障の除去等の措置の内容と、公費を投入して行われる代執行における支障の除去等の措置の内容とでは自ずから差異があり得るのであり、措置命令を発出した事案において代執行をどこまで実施するかは、不適正処理された産業廃棄物の種類、数量、これに起因する生活環境の保全上の支障の程度、その発生の危険性等の客観的事情を総合勘案し、都道府県知事の判断により決定されるものであること。

          (引用終わり)
  生活環境の保全上の支障の除去等の措置(法第19条の8)とは、次のとおり。
・ 措置命令を受けた処分者等がこれを履行しないときに都道府県知事が自らその支障の除去等を行う措置であること
・ そして不適正処理の原因者等に対して命じられる支障の除去等の措置の内容と、広く税金として国民県民から徴収した公費を投入して行われる代執行における支障の除去等の措置の内容とで差異があり得る措置であること。
  生活環境の保全上の支障があるとき、まず措置命令(法第19条の5)及び排出事業者等に対する措置命令(法第19条の6)により廃棄物は原則撤去する。措置命令を受けた処分者等がこれを履行しないときには、生活環境の保全上の支障の除去等の措置(法第19条の8)により都道府県知事が、不適正処理された産業廃棄物の種類、数量、これに起因する生活環境の保全上の支障の程度、その発生の危険性等の客観的事情を総合勘案し、支障の除去等の措置の内容を決定する。この時廃棄物は原則撤去であるが、被覆等の措置が考えられる。

10 まとめ
  萩生川西地区の農道には、土壌と接する方法で使用された大同特殊鋼由来のスラグが埋設されており、被控訴人がその状況を「生活環境の保全上支障が生じ、または生ずるおそれがある」状況と認定していることから、被控訴人により速やかに生活環境 の保全上の支障を除去するため、スラグ撤去の措置命令が発出されることが望ましい。
  ちなみに萩生にスラグを搬入した(株)佐藤建設工業もスラグ排出事業者の大同特殊鋼(株)も、共に現在も企業経営を継続している。
  控訴人が平成26年6月に、本件農道に敷設されたスラグが廃棄物であることを指摘した時点で、吾妻農業事務所長が、本件農道舗装工事を一時中止し、本件農道整備工事の際に、群馬県土木工事標準仕様書が準拠する道路用鉄鋼スラグのJIS規格に則り、環境安全性の検討を実施していたかどうかを確認することを怠らなければ、平成26年6月にスラグ撤去が検討されていたはずである。
  また、吾妻農業事務所長が本件農道舗装工事に際し、敷砂利であるスラグを舗装の路盤に変用・現場内利用する際(判決文32頁下から3行目)に、土壌・水質等の環境に影響を及ぼさない性質であるかどうか、の調査を怠らなければ(甲80号証)、平成26年6月にスラグ撤去が検討されていたはずである。
  時は流れ平成27年9月には、スラグは正式に廃棄物認定され(甲57号証)、スラグについて、ふっ素による土壌汚染の可能性・おそれが認定され、もはやスラグを原則撤去しなければならない状況となった。
  控訴人は一審でスラグの環境分析調査をするべく主張したが(原告準備書面(9))、そもそも、吾妻農業事務所長が本来、スラグの環境分析調査を行うべきである。
  まして、今回スラグ=鉱さいが投棄された場所は農業地帯であるから、被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所はなによりも安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出す営農環境の保全を担保するために、率先してそうした行動をとらなければならないはずである。

第2 他県の類似事例

1 岐阜市の不法投棄事件
 この事件では、専門家や環境省を招き検討を加えた岐阜市の取り組みが大変参考になる(甲82~87号証)。
(1)この事件に対する岐阜市の対応(甲87号証1ページ上から1行目参照)
          (引用はじめ)
    この委員会は平成 16 年 3 月 10 日、警察当局による強制捜査により、本市において全国有数の産業廃棄物の大量不法投棄事案が発覚した。これを受けて、平成 16 年 5 月 27 日、岐阜市産業廃棄物不法投棄対策検討委員会(以下「検 討委員会」という。)が設置され、今後の対策や現地の再生などについて、部会も含めて延べ 27 回にわたって 会議を開催した。
          (引用終わり)
(2)この事件の廃棄物の性状(甲87号証3頁上から9行目参照)
          (引用はじめ)
    埋められた廃棄物は、土砂、コンクリートガラ、木くずが主体であり、そのほとんどが建設系の混合 廃棄物であった。現場最上部では木くず類、中段部ではコンクリートガラが多く確認され、低地部では 陶器・石・コンクリートガラを主体にスポット的に木くずが確認された。
          (引用終わり)
(3)この事件の生活環境への影響(甲87号証8ページ上から12行目)
          (引用はじめ)
    今後の対策を検討するにあたっては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)上、埋立廃棄物に起因する生活環境保全上の支障、又は生じるおそれがあることを明らかにする必要がある。
    このため、詳細調査結果を踏まえ、第 7回及び第 8 回技術部会において、支障のおそれの内容と生活 環境の保全上達成すべき目標について、事務局案に基づき技体拍甘・科学的見地から検討を行い、その結果、以下のような結論に至った。
    詳細調査の結果、廃棄物層の一部で六価クロムが土壌環境基準を、鉛が土壌含有量基準をそれぞれ超 過していたが、全体としては有害物質によるリスクは小さいと判断できる。また、周辺部におけるモニタリング調査では、廃棄物層由来と考えられる有機物及びイオン類の影響が地下水及び河川水に認められたものの、大気、地下水、河川、土壌等の周辺環境への有害物質による汚染は認められていない。 従って、技術部会で、は、現時点において生活環境の保全土の支障が生じているとは認められないものの、 下表に示す事項について、将来支障を生じるおそれが全くないとは言えないとした(表 1)。

          (引用終わり)
   この委員会では、岐阜市不法投棄事件につき、廃棄物の極一部で六価クロムが土壌環境基準を、鉛が土壌含有量基準をそれぞれ超過していたが、地下水・土壌等の周辺環境への有害物質による汚染は認められていないとしており、控訴人群馬県が、大同特殊鋼由来のスラグが土壌と接する方法により使用するとフッ素により土壌が汚染されるおそれがあるとしているのと対照的となっている(甲57号証(7)参照)
(4)この事件の廃棄物処理の方策について(甲87号証18ページ下から9行目)
          (引用はじめ)
   (3) 現地の廃棄物処理方策について|
    技術部会からの報告をもとに処理方策について検討を重ねた。その過程では、「再発防止のためにも土砂・コンクリートがらも含めて全量撤去すべき」とする考え方、「全量撤去を前提に段階的に対策を実施するのが適当である」とする考え方、あるいは、「財政等も考慮し、実現可能な範囲で最大限必要な対策を施すのが適当である」とする考え方などが示されたが、検討の結果、以下のように提言するものである。
   ①今後の対策について
   1)不法投棄行為者及排出事業者等に対し責任に応じて全量撤去を求めること。
   2)代執行も止むを得ない状況が見込まれる場合、当委員会における検討結果や調査結果などを総合的に勘案し、できるだけ速やかに、まず混合物主体層全量を掘削・選別し、将来的に支障を及ぼすおそれがないとは言えない木くず、紙、布、プラスチック類の撤去を進め、金属類などそれ以外の廃棄物については、選別状況、モニタリング調査結果や地元の意見などを踏まえて判断すること。
   3)今後実施するモニタリング調査等において生活環境保全上の支障が認められた場合は、速やか に周知するとともに、緊急に措置を講じること。
   4)選別・撤去にあたっては、資源としてのリサイクルの可能性も考慮すること。
   5)地権者及び地元等の理解を得られれば、現場での廃棄物焼却施設の設置も考えられること。
   ②責任追及について
   不法投棄行為者及及び排出事業者等の責任追及を徹底し、極力事業者による撤去を図ること。
   ③費用負担について
   1)代執行が見込まれる場合は、事業者、職員等からの拠出による基金の設置などを検討すること。
   2)引き続き園、県へ財政支援を求めること。
   3)対策の実施にあたっては、市の施設の活用や最新技術の導入など、費用の低減に極力努めること。

          (引用終わり)
   この委員会では、「不法投棄行為者及排出事業者等に対し責任に応じて全量撤去を求めること。」を原則とすることを記述している。また岐阜市のケースでは土壌が汚染されるおそれが認められないことから、代執行による場合には撤去以外の方法も検討されている。これは、廃棄物処理法が、まず廃棄物の処分者等に対する措置命令(法第19条の5)、次に排出事業者等に対する措置命令(法第19条の6)、そして行政代執行など生活環境の保全上の支障の除去等の措置(法第19条の8)と3類型で生活環境の支障の除去を規定していることから当然の帰着ということができる。まずは廃棄物の処分者等や排出事業者等に全量撤去を命じ、その後行政代執行により行政が生活環境の支障を除去する場合には、全量撤去によらない方法も検討するという考え方である。
 ひるがえって、群馬県東吾妻町萩生川西地区の農道整備工事にスラグが持ち込まれた本事件では、スラグが土壌と接する方法で使用されており、土壌をフッ素汚染するおそれがあることから、本来検討されるべき対処として、スラグを萩生川西地区の農道に搬入した(株)佐藤建設工業に措置命令を発出し、全量撤去させるべきであった。
 (株)佐藤建設工業が命令を実行しないときには、スラグの排出事業者である大同特殊鋼(株)に措置命令を発出し、大同特殊鋼(株)までもがスラグの全量撤去を実行しないときには、群馬県等の公共団体による廃棄物処理法に基づいた行政代執行が検討されるべきであった。
 被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所はなによりも安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出す営農環境の保全を担保するために、率先してそうした行動をとらなければならないはずであったが、それを怠っている。ならば、吾妻農業事務所長にせめて財務会計上の支出行為の責任として、違法不当な公金の支出による損害を賠償させなければならない。

2 4都道府県にわたるフェロシルト事件
 この事件は、石原産業が酸化チタンの廃液を再利用した土壌埋め戻し材「フェロシルト」の不正製造に関する産業廃棄物不法投棄事件である。(甲88号証2頁上から20行目)
 埋設地で有害物質(6価クロムとフッ素)が検出され(甲88号証4頁上から3行目)、また逆有償取引であることから(甲88号証4頁上から10行目)、廃棄物に認定され、愛知県・岐阜県・岐阜市・京都府から廃棄物処理法第19条の5に基づく回収措置命令が発でされている(甲88号証12頁上から14行目)。また三重県では石原産業が自主的に全量回収する方針を打ち出している(甲88号証11頁上から9行目)。
 このように、この事件では、4県にまたがり投棄された有害な埋戻材について、全量回収撤去する対処がなされている。

第3 控訴答弁書に対する反論

 被控訴人は、控訴答弁書11頁上から8行目で「第3群馬県内で渋川工場スラグが使用された地点の対処の状況」なる廃棄物処理法を無視した対処の状況を答弁として主張している。
 鉄鋼スラグ連絡会議は、国土交通省関東地方整備局、被控訴人群馬県県土整備部、渋川市により構成され廃棄物行政の専門家ではない工事実施主体で構成されており、およそ生活環境の保全上の支障の除去等の措置(法第19条の8)を検討するべき者ではない。
 また、「表面被覆等」などの対策を実施することを決定した際に県環境部局の助言を求めるという、本来廃棄物対策について主体になって対策を検討すべき県環境部局を、工事実施主体が自分達に都合が良いように従属的に利用していることがわかる。
 その結果、鉄鋼スラグ連絡会議なる会議体は、環境基本法や廃棄物処理法を顧みることなく、生活環境について土壌を無視し、地下水への影響のみ監視することしか考えておらず(控訴答弁書11頁上から8行目24行目)、また廃棄物処理法等の環境法令への適用状況は、「将来、修繕工事や占用工事等で当該箇所を掘削場合」(控訴答弁書12頁上から1行目)に検討するなど、工事の知識しか無い者による、廃棄物対策を先送りしたあきれははてた対応方針を表明している。環境の専門家によらない環境対策など愚の骨頂である。
 それでは、被控訴人の答弁書の項目ごとに、控訴人は必要な反論をする。なお、分かりやすいように、【控訴理由書】【控訴答弁書】【控訴人の反論】の形で示す。

1 (1)について
(1)第1段落及び第2段落について
【控訴理由書】
1.「2 本案の争点(本件舗装工事に係る支出負担行為及び支出命令に関する狩野の行為につき、狩野が故意又は重大な過失により法令の規定に違反して当該行為をしたことにより群馬県に損害を与えたと認められるか否か(特に当該行為の違法性の有無))について

(1)判決文P27の(3)「ア 本件舗装工事の必要性について」の(ア)について
 ここで、「①吾妻農業事務所が・・・優先度、予算の状況等を踏まえ、順次舗装をする方針を採っていたこと、②本件農道については、それぞれ舗装の必要性があり、地元関係者からも勾配の急な支道6号、耕道7号及び耕道8号の舗装を要望される等、優先度も比較的上位にあったことが認められる。」とある。
 しかし、乙第3号証を見ると

2)関係者からの要望
①用水路の落差工区間において、玉石で施工されているが、通水の際に水が跳ねて水路脇を洗屈してしまう。
  県:施工業者へ手直しをさせる。
②農地への進入路の位置変更
 支道6号の計画高が変更(高く)となり、農地との高低差が少なくなったため支道側からの進入路を要望。
  県:工事委員の承諾が得られれば、対応可能である。
支線農道等の舗装要望
勾配の急な路線が5工事内にあるが、舗装することを要望する。
  県:今回舗装を行う箇所もある。5工事に限らず、急勾配の路線、維持管理上必要な路線、営農上利用状況の多い路線については、優先度、予算の状況等を考え、舗装していきたい。

となっている。

【控訴答弁書】
 認める。


(2)第3段落について
【控訴理由書】
 乙2号証の支道6号については、舗装の要望ではなく「支道側からの進入路を要望」されているという状況である。

【控訴答弁書】
 否認する。*1)冒頭の「乙2号証」は,正しくは「乙3号証」である。
 たしかに,平成25年4月23日に開催された平成25年県営萩生川西土地改良事業推進協議会第24回工事委員会(以下,「第24回工事委員会」という。)において,関係者から,支道6号に関連して,支道側からの進入路の要望は出されており,支道6号を舗装して欲しい旨の要望は出ていない。しかし.支道6号を舗装しないで欲しい旨の要望が出たわけでもない。

【控訴人の反論】
 関係者が「支道6号を舗装しないで欲しい旨の要望」をすることがあるのだろうか?関係者の支線農道等の「勾配の急な路線が5工事内にあるが、舗装することを」要望に対し、県は「今回舗装を行う箇所もある。5工事に限らず、急勾配の路線、維持管理上必要な路線、営農上利用状況の多い路線については、優先度、予算の状況等を考え、舗装していきたい。」と回答している状況から考えるに、関係者は農道の未舗装路の舗装を要望しており「優先度、予算の状況等を考え、舗装」を我慢している状況にある。とても関係者が「支道6号を舗装しないで欲しい旨の要望」をするとは思えない。被控訴人の詭弁である。


(3)第4段落について
【控訴理由書】また、確かに「勾配な急な路線が5工事内にあるが、舗装することを要望する」との記述があるが、その回答として県は「5工事に限らず」として広く5工事以外の場所を含め舗装の必要性を説明している。
【控訴答弁書】
 認める。


(4)第5段落について
【控訴理由書】
 控訴人は準備書面(3)で述べた通り、萩生地区にはたくさんの敷砂利が施された道があるなか、なぜか、スラグ混合再生路盤材(RC40)(判決文P5下から12行目)が敷砂利されている道のみが舗装されている。

【控訴答弁書】
 否認する。
 控訴人は,本件再生砕石が使用されていた農道以外は舗装工事が全く行われていないかのような主張をするが,被控訴人は,平成26年度の地域公共事業調盤費によって本件舗装工事を行った後も,更に本件は場整備事業の施工地域内において,以下のとおり,5つの路線について舗装工事を施工しており(乙33の1,2参照),本件舗装工事を、行った5路線のみ殊更に舗装工事を実施したわけではない。
  ① 支道6-1号
    平成28年度の地域公共事業調整費として舗装工事を実施。
    急勾配を理由とし,幅員4.0m×長さ180.52mを舗装。
  ② 支道18号
    平成28年度の地域公共事業調整費として舗装工事を実施。
    急勾配を理由とし,幅員4.0m×長さ125.50mを舗装。
  ③ 支道22号線
    平成27年度の地域公共事業調整費により実施。
    急勾配を理由とし,幅員4.0m×長さ141.55mを舗装。
  ④ 支道24-1号線
    平成27年度の地域公共事業調整費により実施。
    維持管理上の必要及び営農上利用が多いことを理由とし,幅員4.0m×長さ138.12m舗装。
  ⑤ 支道24-2号線
    平成27年度の地域公共事業調整費により実施。
    急勾配を理由とし,幅員4.0m×長さ203.44mを舗装。

【控訴人の反論】
 控訴人が「スラグ混合再生路盤材(RC40)(判決文P5下から12行目)が敷砂利されている道のみが舗装されている。」と主張するのは、平成26年度の地域公共事業調整費により実施された本件農道整備工事が、全てスラグ混合再生路盤材が敷砂利されている道のみが舗装されている、と主張しているのであり。その後の平成27年及び平成28年の地域公共事業調整費により実施された舗装工事を指しているのではない。被控訴人がステージコンストラクション中の下層路盤に舗装を施すというなら、舗装工事を地域公共事業調整により実施するのではなく、本来予定された予算で実施するべきである。被控訴人の平成27年度及び平成28年度の地域公共事業調整費による舗装工事は、本件農道舗装工事を正当化するためのつじつま合わせの工事に過ぎない。
 そもそも、今回スラグ=鉱さいが投棄された場所は農業地帯であり、被控訴人の農政部農村整備課や吾妻農業事務所は、安心・安全な食のみなもととなる農作物を生み出す営農環境の保全の観点が何にも増して重要であることを認識しなければならないはずであるから、フッ素や六価クロムなどの有害物質を含む資材を使って舗装する公共工事など存在し得ない。


(5)第6段落について
【控訴理由書】
 また、少なくとも支道6号及び支道27号は急勾配な道ではないので、乙2号証の内容とは異なる(甲33・34号証参照)。

【控訴答弁書】
 支道27号が急勾配の農道でないことは認め,その余は否認する。
 支道6号は,縦断勾配が8パーセントを越える地点が含まれており(甲10・17頁エ(ア)参照。12.550パーセントの勾配の地点が含まれていることについて,乙1・3頁。),舗装することが望ましい急勾配の農道である。
 また,第24回工事委員会における被控訴人担当者の説明は,「急勾配の路線,維持管理上必要な路線,営農上利用状況の多い路線」について舗装を検討して行くという内容であり(乙3),将来的な舗装の検討対象を急勾配の路線には限定しておらず,支道27号を舗装したことは第24回工事委員会における説明と何ら矛盾しない。

【控訴人の反論】
 そもそも交通量や大型車通行が極めて制限的な農道において縦断面の「急勾配」の定義が何%以上なのか、また勾配のある農道の場合、何%以上の購買の場合、舗装をしなければならない規則などあるのか、被控訴人の答弁は、極めて根拠が薄弱だ。誰が見ても完全にフラットな支道27号に舗装をかけること自体、スラグに蓋をするのが目的であることは歴然である。また、支道6号にしても、勾配8%以上の個所が含まれるとあるが、それは道路全面が急勾配というわけではあるまい。にもかかわらず、一部が急勾配だから全部舗装をするというのは、論理に矛盾と無理がある。


(6)第7段落について
【控訴理由書】
 さらに被控訴人は、「本件舗装工事において舗装した5つの路線の舗装理由」を縷々説明するが、スラグ混合再生路盤材が敷砂利のみ舗装した理由を説明していない。

【控訴答弁書】
 否認する。
 本件農道舗装工事において5つの路線の舗装工事を行った目的ないし理由は,被控訴人の平成28年3月15日付け第2準備書面の第2の2項(1)ないし(2)(6ないし7頁),平成29年3月7日付け第9準備書面の第1・1項ないし2項(2頁)で述べたとおりである。

【控訴人の反論】
 被控訴人の答弁は、反論に値するほどもない愚論である。スラグを撤去せず舗装で蓋をするのが目的であると認めたくない一心で、このような愚論を展開しているに過ぎない。


(7)第8段落について
【控訴理由書】
 広く5工事以外の場所においても急勾配な場所が多数ある中(甲30号証参照)、本件舗装工事のみ舗装した“優先度”について、被控訴人の主張は大変疑わしく、スラグ混合再生路盤材が敷砂利された場所のみの本件舗装工事は、そもそも必要がなかったと考えられる。

【控訴答弁書】
 否認する。

【控訴人の反論】
 被控訴人の答弁は、反論に値するほどもない愚論である。スラグを撤去せず舗装で蓋をするのが目的であると認めたくない一心で、このような愚論を展開しているに過ぎない。


2 (2)について
【控訴理由書】
(2)判決文P27の(3)「ア 本件舗装工事の必要性について」の(ウ)について
 本件補完工事(判決文P29上から10行目)に関連して、「道路構造令ではなく」「下層路盤工、上層路盤工及び表層工に3区分して施工する方法」と「路盤工及び表層工に2区分して施工する方法」の2種類の舗装方法があるとの記述がある。
 これは本件農道整備工事において舗装工事をする場合に、吾妻農業事務所が自ら設計図書で指定した特別な仕様を意味し、本件農道整備工事が行われた区画整理5工事における舗装の基本設計に他ならない。
 判決文では「(路盤を15センチメートル、表層を3センチメートルとする方法であり、甲8記載の取付舗装工標準構造図に準じたものと推認される。)」とあるが、「甲8記載の取付舗装工標準構造図」に準じた方法で舗装するのではなく、吾妻農業事務所が自ら設計図書で指定した特別な仕様により舗装しなければならないのである。
 しかも、「甲8記載の取付舗装工標準構造図に準じたものと推認される」とあるが、甲23号証の本件農道舗装工事の断面図とは似て非なる物である。
 今回、説明のために添付した甲75号証は、甲23号証に控訴人が説明を加えたものである。
 まず指摘しておきたいことは、敷砂利工は掘削を伴わない、ということである。ところが甲75に示す通り、被控訴人は、点線で示す部分があたかも本件農道整備工事で掘削されているかのような嘘をほのめかしている。
 また、当初計画仕上がり面が甲8記載の取付舗装工標準構造図のものとは全く異なる。甲35号証で実際の現場写真と甲8記載の取付舗装工標準構造図を重ねて表示したが、アスファルト舗装の取付舗装工が、当初計画仕上がり面から土壌を15cm掘削・転圧してから路盤材・アスファルトと施工されている。
 仮に本件農道に甲8記載の取付舗装工標準構造図の舗装を施すのであれば、本件農道整備工事で施工されたスラグ混合砕石の敷砂利10cmとその下の土壌5cmを一緒に掘削・運搬してから路盤材・アスファルト舗装を施すことになる。
 よって、本件農道舗装工事は“似て非なる物”であり、甲8記載の取付舗装工標準構造図に準じたものとは推認されず、本件農道整備工事(敷砂利工)については自己完結的な工事であったことに加え、吾妻農業事務所が自ら指定した舗装設計を破ってまで本件舗装工事を行ったことがわかる。本件舗装工事の必要性はスラグ隠しのために行われたものであり、本来の目的を逸脱していると言わざるを得ない。

【控訴答弁書】
 原判決の引用部分は認め,その余は全て否認する。
 控訴人は,原判決が本件舗装工事の仕様について「(・・・・甲8記載の取付舗装工事標準構造図に準じたものと推認される。)」と認定したことを捉え,本件舗装工事の実際の施工と甲8の仕様が異なっている点など論(あげつら)って種々論難するが,本件舗装工事の仕様は,標準断面図(甲23)のとおりであり,本件再生砕石とは全く無関係に設計された甲8と比較して,表層工が3センチメートル,下層路盤厚が15センチメートルとなる点で基本的に同等の仕様となっている。
 なお,標準断面図(甲23)に破線で表示されているのは既設路盤材の厚さであり,掘削を意味しているわけではない(なお,図面の一般的な標記方法として,破線が掘削を意味するわけではない。乙23号証では,引き出し破線の部分に「既設路盤材」と明記しており,掘削を意味しないことが明確になっている。)。

【控訴人の反論】
 被控訴人の答弁は、反論に値するほどもない愚論である。スラグを撤去せず舗装で蓋をするのが目的であると認めたくない一心で、このような愚論を展開しているに過ぎない。

**********

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・この項続く】

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