市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

群馬高専アカハラ問題でオンブズマンへの情報不開示処分について内閣府審査会が群馬高専に対して答申!

2016-03-05 12:41:00 | 群馬高専アカハラ問題
■学科長によるアカデミックハラスメントに揺れ続けている群馬高専ですが、2016年3月3日に突然、内閣府の情報開示・個人情報保護審査会から3月2日付で「答申書の写しの送付について」と題する文書が当会に送られてきました。併せて、同審査会から群馬高専の上級機関である国立高等専門学校機構への「情報公開・個人情報保護審査会への諮問について(通知)」と題する文書が同封されていました。これをみると、当会の請求が大幅に認められた答申の内容になっています。さっそく見てみましょう。

 その前に、本件の経緯のあらましは次のとおりです。

①市民オンブズマン群馬が、同校でのアカハラの実態を確認すべく2015年6月26日に同校に対して情報開示請求を行った。

②ところが、同7月23日付で法人文書不開示決定通知書が送られてきたため当会は、8月31日に異議申立書を同校に提出した。

③1カ月以上経過した同10月6日に、同校から国立高等専門学校機構に諮問案が提出され、同機構から内閣府の情報公開・個人情報保護審査会に10月30日で諮問番号「平成27年度(独情)諮問第57号」で諮問が行われた。

④そして、このたび2016年3月5日に、情報公開・個人情報保護審査会から、「情報公開・個人情報保護審査会への諮問について(通知)」と題する文書が当会に送られてきた。


■審査会から送られてきた答申書に係る通知の内容は次のとおりです。

*****写しの送付*****PDF → iqnajnj.pdf
                    府情個第896号
                    平成28年3月2日
 市民オンブズマン群馬
 代表 小 川 賢 様
              情報公開・個人情報保護審査会
          答申書の写しの送付について
 下記の事件については,平成28年3月2日に答申をしたので,情報公開・個人情報保護審査会設置法第16条の規定に基づき,答申書の写しを送付します。
                記
  諮問番号:平成27年(独情)諮問第57号
  事 件 名:特定学校の関係者に対して学内のハラスメント行為に関して発信した文書等の不開示決定(存在応答拒否)に関する件

*****交付通知*****PDF → iqnajnj.pdf
                    府情個第895号
                    平成28年3月2日
 独立行政法人国立高等専門学校機構 御中
               情報公開・個人情報保護審査会
            答申書の交付について
 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律第18条第2項の規定基づく下記の諮問について,別紙答申書を交付します(平成27年(独情)答申第73号)
                記
  諮問番号:平成27年(独情)諮問第57号
  事 件 名:特定学校の関係者に対して学内のハラスメント行為に関して発信した文書等の不開示決定(存在応答拒否)に関する件

*****答申書*****PDF↓
iqnajnj.pdf
iqnajnj.pdf
iqnajnj.pdf
(別紙)
諮問番号:平成27年度(独情)諮問第57号
答申番号:平成27年度(独情)答申第73号
              答 申 書
第1 審査会の結論
 別紙に掲げる文書1ないし文書3(以下「本件対象文書」という。)につき,その存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定は,取り消すべきである。

第2 異議申立人の主張の要旨
1 異議申立ての趣旨
 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく本館対象文書の開示請求に対し,独立行政法人国立高等専門学校機構(以下「機構」,「処分庁」又は「請願庁」という。)が行った平成27年7月23日付け特定文書番号による不開示決定について、その取消しを求める。
2 異議申立ての理由
ア 異議申立人は日本国民として法人文書の開示を求める権利を有している。
イ 貴学は,法律第5条に基づく開示義務を有している。
ウ 貴学は,本件処分理由として,文書1ないし文書3については,その存否を応えることにより,ハラスメント行為に寄せられた申立や相談などがあったという事実の有無を示すこととなり,したがって,その事案の性質に鑑みプライバシー保護の観点から,法8条の規定により,その存否を明らかにすることはできない旨述べている。
 しかし貴学は,法8条の法人文書の存否に関する情報に定める「法人文書が存在しているか否かを答えるだけで,不開示情報を開示することとなるとき」の理由を,「事案の性質に鑑みプライバシー保護の観点から」としているだけで,誰のプライバシーを指すのかよくわからない。被害者のプライバシーであれば申立てがあった事実は公表すべきであろうし,加害者のプライバシーであれば貴学が加害者に配慮しているという見方ができる。いずれにしても貴学には,プライバシー保護の対象が誰なのかを特定する責任があると考える。
エ 法律第5条に記載の開示除外理由,あるいはただし書きに照らして,なぜ貴学が当該法人文書の存否を明らかにしないまま、当該法人文書の開示請求を拒否できるのか,異議申立人として判断できない状況におかれている。
オ よって,本件処分は,原則開示をうたった法律の目的に違背している。
カ 異議申立人は,今回の事案の性質に鑑み,当該法人文書は,ハラスメントを受けた被害者である学生,卒業生,職員らの立場から,法5条第一号のただし書きである「ロ 人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報」に該当すると考える。
キ 異議申立人は,ハラスメントを起こした加害者が公務員であるとの観点から,法5条第1号のただし書きである「ハ 当該個人が公務員等である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」に該当すると考える。
ク 貴学は,プライバシー保護を理由に当該法人文書の存否を明らかにしたくない,として本件処分を行った。貴学が,加害者個人の権利利益を害するおそれがある情報のほうが,ただし書きにある被害者の生命,健康,生活を保護するために公にすることが必要である情報よりも大切だと判断したのであれば,それは失当である。
ケ 貴学は,当該法人情報が法5条2号の「イ 公にすることにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の権利その他正当な利益を害するおそれのあるもの」に該当すると判断している可能性も考えられる。もしこの場合であっても,異議申立人は,事案の性質に鑑み,当該法人情報を開示することにより,貴学の正当な利益を害するおそれはないと考える。
コ 法5条2号のただし書きには,「ただし,人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,公にすることが必要であると認められる情報を除く」と明記されている。異議申立人は,事案の性質に鑑み,当該法人情報はただし書きに該当すると考える。
サ よって,貴学の開かれた教育環境の実態を広く世間に知らしめるためにも,本件処分を取り消し,当該法人情報に含まれる加害者及び被害者らハラスメント関係者の情報のうち,学生と卒業生(もし中途退学者,行方不明者がいればそれらの者も含む)の住所,氏名,年齢及び生年月日,性別を除くすべての情報の開示を求める。
(2)意見書
 諮問庁の理由説明書に関して,次のとおり意見を述べる。
ア 機構による不開示決定の不当性
 機構(貴学)は本件処分の理由として「開示請求された文書は、その存否を答えることにより,ハラスメント行為について申立てや相談などがあったという事実の有無を示すことになる」と主張しているが,ハラスメントが実際にあったことについては、事情を知る匿名の複数の人物から異議申立人に通報があったため,異議申立人は,その事実を踏まえて機構(貴学)がどのような対応措置を講じたのかどうかを確認すべく,今回の申立てを行ったものである。
 そもそも機構(貴学)内でハラスメント行為の発生が認められたことから,必然的に,それに関連して,関係者による申立や相談が機構(貴学)に対して行われ,それを受けて機構(貴学)は何らかの対応措置をとったはずである。
 したがって,機構(貴学)は、ハラスメント行為に係る申立や相談などの有無が外部に伝わるとイメージダウンするのではないかと恐れるあまり,本件処分を行ったものと考えられる。このことは,原則開示が基本の法律の趣旨を,機構(貴学)が誤って解釈したものであり本件処分は取り消されるべきである。また,ハラスメント行為を隠ぺいすることによるイメージダウンは計り知れず,きちんと公表することで最小限に抑えられる。
(2)機構の主張に対する反論
 機構(貴学)は,「一般的に,いわゆるハラスメントに該当する行為があったかどうかについては,当該行為を受けたとする者の受け止めを基本とする」と被害者側の立場を認識しながらも,「その態様等が業務の適正な範囲を超えるのか,指導として許容されるものであったかどうかといった観点を含めて,総合的に判断されるべきものである」として,機構(貴学)側の最終判断でハラスメント行為の有無を査定するとしているが,これには根本的な誤りがある。
 ハラスメント行為の有無は,独立性のある第三者組織が判断すべきであり,それが例えば学校内の学生相談室,あるいはコンプライアンス室のようなかたちや名称であったとしても,その独立性はしっかりと担保されなければならない。すなわち,学校長であっても,その判断の過程や結果に対して尊重しなければならないのである。
 少なくとも,機構(貴学)のホームページを見る限り,「ハラスメントのない高専にするために」と題する記事が掲載されており,これを見て受験生や在学生,および保護者は安心して学生生活が送れる環境が整えられていると判断しているはずである。
 ところが機構(貴学)は,「こうした判断は,事実関係を確定することの困難さもあいまって,極めてむずかしいものとなることも多い」として,事実関係の追及の困難性を理由として強調し,「申立て等がなされたことで直ちにハラスメントに該当する行為の存在が断定される訳ではない」として,すでにこの問題が機構(貴学)内関係者はもとより,同窓会や保護者,そして受験生及びその保護者,中学校や塾の先生にも知られているこの期に及んでも,機構(貴学)内でハラスメント行為があったことを認めたくない意向をあらわにしている。このように「臭いものに蓋」という対応の仕方では,ますます学校内外,とくに学外の関係者らに無用な憶測や不安感,不信感を喚起してしまうことになりかねない。
 しかも機構(貴学)は,「仮に申立て等があったことが明らかになるような事態となれば,これらの点は,十分には考慮されず,また,個人名が示されないとしても,様々な憶測等を呼ぶことで,結果として当該個人の権利利益の侵害につながるおそれは大きい」などとして,被害者からハラスメント行為の申立て等があっても,“これらの点”という意味不明の(おそらく機構(貴学)にとって不都合な事項全般を総称しているものであろうが)理由や,“様々な憶測”,さらには“当該個人の権利利益”が侵害される“おそれ”を理由として列挙し,何が何でも機構(貴学)内部の不祥事を隠そうとしている姿勢をあらわにしている。
 このことは換言すれば,“様々な憶測等”によって侵害される“当該個人の権利利益”というのは加害者側のことを想定していることが窺われる。つまり,加害者側の権利利益のほうが,被害者側のそれよりも重要だという認識を機構(貴学)が持っていることを窺わせている。分かり易く言うと,加害者側をかばいたいという配慮が機構(貴学)に強くはたらいていることを示唆していると言えよう。
 そして,「申立て等がなされただけで,学校の社会的な評価も損なわれる風潮があることも否定できないところであり,これを何らかの目的のために利用しようとする者が出てくることも考えられる」として,機構(貴学)の本音の部分も垣間見られる。とくに「何らかの目的のために利用する者」の出現を懸念しているくだりは,異議申立人のような存在を念頭に置いている可能性が高いとみられる。しかし,異議申立人は,真相究明,責任の所在の明確化なしには,再発防止は困難であるとの考えから,今回の情報公開請求をおこなったものであり,他意はない。また,異議申立人は,申立や相談が気軽に行える雰囲気が醸成されることで,学校の社会的評価がより高まると考えている。
 続けて機構(貴学)は,「こうした懸念も踏まえ,その情報の取扱は,極めて慎重な対応が求められる」と述べている。しかし,過度に慎重な取り扱いを理由に,外部に対して情報を秘匿してしまうことは,むしろ開かれた教育の場をモットーとする機構(貴学)の方針にそぐわない考え方である。ハラスメントについても,せっかく被害者が勇気をもってハラスメント行為を機構(貴学)に申立や相談しても,それを慎重に取り扱うとするあまり学校側の対応が鈍いと,失望してしまうことになりかねない。事実,今回のハラスメント問題では,学校の対応にガッカリして精神的に不安定となった被害者も複数いるようである。
 さらに機構(貴学)は,「ハラスメントに関する申立て等がなされた場合については,その対応の過程で,関係者に守秘義務が厳格に課せられている」と主張しているが,これは言語道断である。なぜなら守秘義務を優先するあまり,ハラスメント行為の存在そのものを隠ぺいすることにつながりかねず,そうなると,被害者側よりも加害者側の立場を優先的に配慮していることになりかねないからである。
 加えて機構(貴学)は,「なお,ハラスメントに関する事案に限らないが,国立高等専門学校機構が公表を義務付けているのは,判断の結果,非違行為の存在が認められ,懲戒処分がなされた場合のみである」として,自らの判断がもっとも重要であり,第三者の判断には耳をかさないのだと主張している。これも言語道断である。なぜなら,機構(貴学)は,加害者側の懲戒処分を回避するあまり,ハラスメントの公表に二の足を踏むという結果を招いているからである。このような自らの判断をもっとも正しいとする独自の教条主義をかざすこと自体,機構(貴学)の管理体制に問題があると言わざるを得ない。
 機構(貴学)は,「以上のような事案の性質にかんがみ,プライバシー保護の観点から,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律第8条の規定により,その存否を明らかにしないことが妥当と判断した」と主張している。法律第8条は,法人文書の存否に関する情報について,「開示請求に対し,当該開示請求に係る法人文書が存在しているか否かを答えるだけで,不開示情報を開示することとなるときは,独立行政法人等は,当該法人文書の存否を明らかにしないで,当該開示請求を拒否することができる」と定めているが,異議申立人には既に同校内におけるアカデミックハラスメント行為に関する情報の確認がなされており,機構(貴学)が「存否を明らかにしたくない」と言えば言うほど,隠ぺい体質を自ら認めるのを示す結果となるのである。
 最後に,ご丁寧にも機構(貴学)は,「なお,(異議申立人が情報公開請求をした)文書1ないし文書3に該当する文書の存在を仮定した場合,これらは,法律第5条第1号に定める不開示情報が記載されているものであり,存否を回答する以前の問題として,そもそも公開の対象外となる」として,自らの隠ぺい体質をさらに追認している。
 法5条1号の規定では,個人情報であっても,加害者側の個人が公務員等である場合には,ただし書きにより,機構(貴学)には開示義務が生じることになり,この観点からも本件処分は取り消されるべきである。
 最後の最後に機構(貴学)は蛇足のように,「『個人に関する情報』であっても当該独立行政法人等の保有する自己を本人とする保有個人情報については,独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律12条に基づき,開示請求の対象となるが,開示請求者は,この権利を有しない」と主張する。この法律12条は開示請求権として「何人も,この法律の定めるところにより,独立行政法人等に対し,当該独立行政法人等の保有する自己を本人とする保有個人情報の開示を請求することができる」と定めているが,学校側はこれを根拠に,「異議申立人はアカデミックハラスメントの被害者ではないから,開示請求の権利そのものがない」として,門前払いを企てようとしていることが窺える。もとより異議申立人は,個人の氏名や生年月日などの公開は求めていない。異議申立人が求めているのは,開かれた機構(貴学)であり,ハラスメントのないキャンパスで職員と学生が悔いのない学校生活を送れるための健全な教育環境である。
ウ 特記事項
 機構(貴学)におけるパワーハラスメント,アカデミックハラスメント等の一連のハラスメントについて,これまで異議申立人が把握した実態は次のとおり。(以下、本答申では記載省略)
エ 結言
 かかる状況を,あらゆる観点から検討,分析,熟慮しても,機構による不開示決定の処分には根拠が無く,本件処分の取消を求める。
オ 提出資料
 (本答申では省略)
第3 諮問庁の説明の要旨
1 開示請求のあった法人文書
 開示請求のあった法人文書(本件対象文書)は,別紙に掲げる文書1ないし文書3である。
2 原処分についての考え方とその理由
 文書1ないし文書3に該当する文書については,その存否を答えることにより,ハラスメント行為について申立てや相談などがあったという事実の有無を示すことになる。一般的に,いわゆるハラスメントに該当する行為があったかどうかについては,当該行為を受けたとする者の受け止めを基本としつつ,その態様等が業務の適正な範囲を超えるのか,指導として許容されるものであったかどうかといった観点を含めて,総合的に判断されるべきものである。こうした判断は,事実関係を特定することの曖昧さもあいまって,極めてむずかしいものとなることも多いが,申立て等がなされたことで直ちにハラスメントに該当する行為の存在が断定される訳ではない。
 しかしながら,仮に申立て等が明らかになるような事態となれば,これらの点は,十分には考慮されず,また,個人名が示されないとしても,さまざまな憶測等を呼ぶことで,結果として当該個人の件利益の侵害につながるおそれは大きい。さらに,申立て等がなされただけで,学校の社会的な評価も損なわれる風潮があることも否定できないところであり,これを何からの目的のために利用しようとする者が出てくることも考えられる。
 こうした懸念も踏まえ,その情報の取扱は,極めて慎重な対応が求められ,晴らすメントに関する申立て等が為された場合については,その対応の過程で,関係者に守秘義務が厳格に課せられている。なお,ハラスメントに関する事案に限らないが,機構が各校に公表を義務付けているのは,判断の結果,非違行為の存在が認められ,懲戒処分がなされた場合のみである。
 以上のような事案の性質にかんがみ,プライバシー保護の観点から,法8条の規定により,その存否を明らかにしないことが妥当と判断した。
 なお,文書1ないし文書3に該当する文書の存在を仮定した場合,これらは,法5条1号に定める不開示情報が記載されているものであり,存否を回答する以前の問題として,そもそも公開の対象外となる。また,「個人に関する情報」であっても当該独立後油性法人等の保有する自己を本人とする保有個人情報については,独紙ル行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律12条に基づき,開示請求の対象となるが,開示請求者は,この権利を有しない。
第4 調査審議の経過
 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
 ① 平成27年10月30日 諮問の受理
 ② 同日          諮問庁から理由説明書を収受
 ③ 同年12月1日     異議申立人から意見書を収受
 ④ 平成28年2月1日   審議
 ⑤ 同月29日       審議
第5 審査会の判断の理由
1 本件対象文書について
 本件開示請求は,文書1ないし文書3(本件対象文書)の開示を求めるものである。
 諮問庁は,本件対象文書については,その存否を答えるだけで法5条1号により不開示とすべき情報を開示することになるため、法8条の規定によりその存否を明らかにしないで開示請求を拒否した原処分は妥当である旨説明しているので,以下,本件対象文書の存否応答拒否の妥当性について検討する。
2 本件対象文書の存否応答拒否の妥当性について
(1)当審査会において本件開示請求書の記載を確認すると,「請求する法人文書の名称等」欄には別紙に掲げる内容が記載されているのみであって,文書の内容等に関する具体的な情報(例を挙げれば,文書1についてはその発信時期や発信者,記載内容等,文書2については,申立てや相談の内容等,文書3については協議を行った者や協議内容等)は何ら記載されていないことが認められる。
 このような開示請求において,該当する文書が存在するか否かを答えることによって明らかになるのは,文書1については,特定高等専門学校が平成26年(2014年)4月1日以降に学内のハラスメント行為に関して学内外の関係者に文書を発出したという事実の有無,文書2については,特定甲東園門学校が同日以降に学内のハラスメント行為に関して申立てや相談を受けたという事実の有無,そして文書3については,文書2の受付後にその対応等について協議が行われたという事実の有無(以下,各文書に係る「事実の有無」を合わせて「本件存否情報」という。)のみであると認められる。
(2)諮問庁は,本件対象文書の存否を答えることは,ハラスメント行為について申立てや相談等があったという事実の有無を明らかにすることとなる旨説明した上で,申立て等がなされたことで直ちにハラスメントに該当する行為の存在が断定されるわけではないが,仮に申立て等があったことがあきらかになるような事態となれば,これらの点は,十分には考慮されず,また,個人名が示されないとしても,様々な憶測等を呼ぶことで,結果として当該個人の権利利益の侵害につながるおそれは大きい等と説明する。
 また,当審査会事務局職員をして諮問庁に確認させたところ,平成26年4月1日以降,特定高等専門学校に係るハラスメント事案に関して公表が行われたという事実はないとのことである。
(3)ハラスメントに関する認知や関心が一定の水準に達している昨今,特定高等専門学校の規模等を勘案しても,1年を超える期間内(平成26年4月1日以降)にハラスメント行為に関する申立てや相談等がなされること自体は特段奇異なことではないと考えられ,「申立てや相談等があったという事実の有無」が、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがああるといてるのは、当該情報が公にされたことによって現に存在するハラスメント申立て又は相談に係る事案の当事者が特定又は推測されるおそれがある場合,あるいはそれを契機として学生を始め関係者が内外からその意に反する働きかけを受けたり好奇の目にさらされたりするといった事態が生じる蓋然性などに限られると思われる。
 そこで,本件存否情報について検討すると,特定高等専門学校において申立てや相談等がない場合はもとより,申立てや相談等があった場合においても,本件存否情報はいずれも申立て又は相談の内容やその処理に関する具体的な情報を含まないのであるから,これを公にすることにより当該事案の当事者が特定又は推測されるおそれは認められず,また,存否応答拒否として場合に比べて内外からの働き掛け等の蓋然性が高まるとも認め難い。
(4)したがって,本件存否情報は,いずれも法5条1号の不開示情報に該当せず,本件対象文書の存否を明らかにしても不開示情報を開示することになるとは認められないので,本件開示請求については本件対象文書の存否を明らかにして開示決定等をすることが相当であり,原処分は取り消すべきである。
3 本件不開示決定の妥当性について
 以上のことから,本件対象文書に着き,その存否を答えるだけで開示することとなる情報は法5条1号に該当するとして,その存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定については,当該情報は同号に該当せず,本件対象文書の存否を明らかにして開示決定等をすべきであることから,取り消すべきであると判断した。
(第5部会)
  委員 南野 聡,委員 椿 愼美,委員 山田 洋
**********

■このように、内閣府の情報開示・個人情報保護審査会では、至極まっとうな判断がなされたことが分かります。

 異議申立てをしてからちょうど6カ月が経過した時点で、審査会から答申書が群馬高専に出されたことは、ハラスメント問題についてあまりズルズルと先送りせずに、もうすぐ新学期を迎えるこのタイミングできちんと対応するように、との指導の意味があるのかもしれません。 

 群馬高専のトップが、この審査会の常識的な判断結果を理解して、その判断の趣旨に基づいて、きちんと対応するのかどうか、それともあくまでもハラスメント事件の発生を外部に知らせたくないがために、新たなバリアーを仕掛けてくるのかどうか、同校の今後の対応に注目していきたいと思います。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする