田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

鉄くず拾いの物語(Epizoda u zivotu beraca zeljeza)

2014年02月17日 22時36分15秒 | 日記

 

 ボスニア・ヘルツェゴヴィナのロマ民族の村に住むナジフは体に変調をきたした身重の妻セナダを病院に連れてゆく。セナダには至急手術が必要なことがわかるが、保険証を持っていないため、ナジフの鉄くず拾いの仕事では到底払えないような費用を病院側から要求される......。ダニス・タノヴィッチの監督第5作である本作は、実際に起こった事件をその当事者たちを俳優として起用し、9日間という短期間で一気に撮り上げた作品である。ドキュメンタリーと見まがうかのようなリアリズムの中に経済格差、民族差別など東欧が直面する様々な社会問題を浮き彫りにするこの力作は、ベルリン映画祭で審査員グランプリ、男優賞、エキュメニカル賞特別賞の3賞を受賞する栄誉に輝いた。(第14回東京フィルメックス・ホームページより)

 

 

 この映画、とっても評判だったんですね。ベルリン映画祭で三冠とも聞きましたし、上映時間が短い手軽さと、閉館してしまうガーデンシネマの最後の作品になるかもしれないという思いで、つい鑑賞しました。

でもなぁ・・・私って、冷たい人間なのかな。結論から言うと、あんまりどうとも思わなかった。

主人公は、ボスニア・ヘルッツェゴビナの極寒の地に定住しているロマの家族。お父さんは鉄くず拾いで生計を立て、どうやらお母さんは専業主婦の模様。自分の国を持たないロマの人々は、たとえ定住していても選挙権も住民票も、何の権利も持たないらしい。彼らには二人の娘がいますが、二人とも学校にも通っていない様子。

ある日、お母さんは激しい腹痛に見舞われ、それはお腹の中の第3子に起因するものと判明します。実は早くに死んでしまっていて、それが元の出血で、早く手術をしないとお母さんの命も危ないというもの。

しかし、保険証を持たない彼らは、大きな手術費用を払えず、「分割で」と懇願しますが、院長に聞き入れてもらえません。仕方なく帰宅しますが、症状は悪化するばかり。当たり前ですよね。

そこで、親戚の女性が保険証を持っていると聞き、彼女になりすまして病院へ行く、という荒業をやってのけます。保険証を貸す方も「何かあったら、自分で責任とってね」とこわごわです(当然だ)。

そして行った違う病院では、「どうしてここまで放置した!」と、夫は怒られることになります。それでも、他人の保険証で来ている以上、本当のことは言えません。「車がなくて」と見当違いなことを言って謝るしかありません。そして「高価ですが、きちんとお薬を飲ませるように」と何度も念を押されます。

そして帰宅してみると、お金が払えなかったゆえの停電です。止められちゃってるんですね。世の中って、とにかくお金ですね。人がどれだけ窮地に陥ろうと、お金を払わないと誰もなんにもしてくれません。これは先進国だけじゃないんですね。

夫は、元々ポンコツだった自分の車をとうとう解体します。そしてその「鉄くず」を売って電気代と薬代を作るのです。

話はここで終わりです。この主人公は、たまたま映画監督の目に留まり、映画祭で受賞することができたから、職や保険証を得ることができたようですが、彼の後ろにはそうではない人がもっともっといるのでは、と思うと複雑な心境です。

映画は短いし、お話はドキュメンタリーっぽく、演じているのも本人です。ただ、淡々と事実を描写しているだけなので、はっきりいって映画自体にメリハリはなく、少々眠くなりました。

こういう貧困の問題は、今に始まったことではなく、ここ日本でも最近はよくクローズアップされてますよね。医者代が払えないから、妊娠しても一度も診察を受けていなかった女性や、それゆえ飛び込み出産する女性、そんなリスクを負いたくないドクターの気持ちも報じられましたね。今はいろいろ改正されて、妊婦の検診は基本無料になりましたけど、それとて保険を持っている人だけ。そりゃ、保険料をきちんと払っている側からすれば当たり前でしょうし、その言い分も正当ですけど。

それにしても、主人公の奥さんがあまりにパンパンに太っているのでびっくりしました。腕の太さなどは、ちょっと日本人では考えられないほどです。やっぱり、胎児にも悪影響だったんじゃないかなぁ。

二人の子供たちも、せめて識字くらいの教育をと強く思いました。どうにかならないのかな。移動することが人生だった時代のロマなら、それでよかったのかもしれませんが、定住しているのならこの子たちの将来のために、せめて字くらいは習っておくことはできないものかと、心配してしまうわけです。そう考えること自体、先進国の奢りなのかしら。

ともかく、私が院長だったら、相手が真面目な人でさえあれば分割払いを認めるのになぁ、などと思った私は、ぬるま湯に浸かっているのかもしれません。

真面目に生きている人が報われる世の中になりますように・・・。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« さよなら、アドルフ(Lore) | トップ | きみがくれた未来(Charlie S... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事