かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

日本発祥の地を求めて、横浜② 馬車道に残る近代日本の足跡

2022-06-23 02:36:58 | * 東京とその周辺の散策
 *すべては「関内」から始まった

 江戸末期、幕府はアメリカに、それまでの下田・箱館に加え、「神奈川」他の開港を迫られる。幕府は東海道の宿場町「神奈川」に外国人を入れたくなかったので、隣の小さな漁村の「横浜」を神奈川の一部だといって開港する。
 この日米修好通商条約によって、1859(安政6)年に開港された横浜に外国人居留地が設置された。その区域は掘割で仕切られ、入口の橋に関門(関所)が設けられた。このことから関門の内側である区域は関内居留地とも呼ばれ、その通称が今も残る「関内」である。

 そのとき、神奈川宿から横浜村へ道が作られ(横浜道)、大岡川の分流「派大岡川」(現在は消滅している)に架けられた「吉田橋」に関門が置かれた。吉田橋から旧居留地に至る道が「馬車道」である。
 江戸末期の開港当時は、日本人の乗り物は駕籠(かご)であって、外国人が乗る馬車は珍しかった。1969(明治2)年には、吉田橋から横浜-東京間の日本初の乗合馬車の営業が始まった。
 明治に入り近代化が進むにつれ存在意義がなくなった関門は、1871(明治4)年に廃止された。
 しかし、関内という呼称は駅名をはじめ建物などに残り続ける。馬車道の東側の、現在の中華街も県庁のある日本大通りも関内である。
 近代横浜は、ここから始まった。
 この当時、外国の玄関口でもあった「馬車道」には、いくつかの近代化日本の発祥の記念碑を見つけることができる。

 *ガス灯がともる「馬車道」

 横浜事始めの散策は、日本大通りから、本町通りに繋がる「馬車道」にやって来た。
 モダンな街並についた古風な通りの名の両サイドには、街路樹とともにガス灯が連なっている。モダンとレトロが混在している通りである。
 通りを歩いていて、まず目に入ったのは、大砲の弾の先に四角いボックスを置いたような碑。
 ⑥「日本写真の開祖 写真師・下岡蓮杖 顕彰碑」(馬車道)
 下田に生まれた下岡蓮杖は、1862(文久2)年に野毛で開業した横浜初の日本人写真家。のちに馬車道に写真館を開いた。
 馬車道から東京に向けての乗合馬車の事業を始めた人でもある。

 馬車道の通りを歩いていると、裸の女性が子どもを抱いて座っているブロンズ像に出くわす。日本アイスクリーム協会がアイスクリーム発祥記念として、寄贈した「太陽の母子像」である。
 ⑦「アイスクリーム発祥の地」(馬車道)
 幕末の1860(万延元)年)、咸臨丸による遣米使節がアメリカに派遣された。その使節団が訪問先のアメリカで口にしたのが、日本最初のアイスクリームと言われている。
 その時随行した町田房蔵は、その後再度渡米し、1869(明治2)年に横浜の馬車道通りに「氷水屋」を開いた。そのとき販売した「あいすくりん」が日本アイスクリームの事始めとなった。

 ⑧「日本で最初のガス灯」(馬車道)
 馬車道を歩いた車道側に並んだガス灯とは別に、建物側に特別に建てられたガス灯と碑がある。(写真)
 1872(明治5)年、 高島易断で知られる高島嘉右衛門によって設立された「日本ガス社中」により、 馬車道・本町通り等にガス灯が十数基設置された。これが日本での街灯として最初のガス灯である。
 当時、柱部は英国グラスゴー市から輸入し、灯具は日本人職人により製造された。それを復元したガス灯と記念の碑である。

 これより以前に、幕末に薩摩藩で、その後1871(明治4)年に大阪造幣局の周りでガス灯が灯されているが、街灯として利用されたのは横浜の馬車道が最初であった。
 東京では2年後の1874(明治7)年に、芝金杉橋から京橋までの銀座通りに85基のガス灯が灯った。これが、東京での初めてのガス灯である。

 JR桜木町駅近くにある横浜市立本町小学校の正門前に、さりげなくガス灯と碑が建っている。
 ⑨「日本ガス事業発祥の地」(横浜市中区花咲町)
 1872(明治5)年に馬車道に最初のガス灯が灯るが、それに伴い、伊勢山下石炭蔵跡(現・横浜市中区花咲町、本町小学校)に「日本ガス社中」(横浜瓦斯会社)が造られた。ここで、横浜のガス灯は造られた。
 横浜瓦斯会社はのちに、横浜瓦斯局、横浜市瓦斯局となり、さらにその後、東京ガス株式会社となる。

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