写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

日帰り避暑

2012年08月02日 | 旅・スポット・行事

 当たり前のことながら、夏は暑い。午前9時なのに、開けっぱなした部屋の温度はすでに31度。安普請のせいもあるだろうが、暑い。家自体が熱中症にかかっているみたいだ。こんな時にはエアコンに頼るのではなく、涼しいところへ出かけるしかない。10時半、家を飛び出し、一路錦川をさかのぼって走った。

 川を左に見ながら、くねくねとした道を走る。カーブを曲がるたびに、鮎掛けをしている姿が見える。涼しげないい景色だ。「そうだ、今日はどこかで鮎を食べてみよう」、すぐに意見は一致した。50km 走ると雙津峡温泉に着いた。レストランで「香り魚 鮎定食」というものを頼んだ。中型の塩焼きであったが、近くの川でとれた地鮎だという。それを信じて頂いた。サイズがちょっともの足りないが、香り高い鮎であることに違いはない。

 ひと休みした後、そこから10kmさらに走ると、当初の目的地である寂地峡に着いた。駐車場の前にある小さな道の駅風の店には、トマト・ナスビ・ピーマン・ジャガイモなど、地元の野菜が1袋100円で売られている。何れもの色が濃く、おいしそうに見えたのだろう、奥さんは段ボール箱に買い込んだ。

 木陰のなだらかな坂道を少し登ると、辺りは急にひんやりとしてくる。日本の滝百選に選ばれている五竜の滝が大きな音を立てている。いつ来てみても相変わらず水量は豊富だ。そばを流れる寂地川の石に腰をおろし流れに足を浸けて休んだ。数分経つと、冷たさで足がしびれてくる。滝の水しぶきのせいだろうか、辺りの空気も一段と冷たい。

 平日だからだろう、キャンプ場はテント1張りが、ひっそりとあるだけ。盆休みを前に静かな佇まいである。足先だけでなく、身も冷たく感じるまでになった頃、川から上がった。「こんな所がもっと近くにあればいいね」、同じ感想を言いながら帰路に着いた。冬場の足湯ならぬ夏場の足水? これはこれで気持ちがいい。この夏初めての日帰り避暑。年金の範囲で出来るささやかな避暑である。