写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

「母のエッセイ集」

2016年11月07日 | エッセイ・本・映画・音楽・絵画

 中学の同級生で、岩国市議会議員として長年活躍した藤本博君という男がいる。私的な付き合いはしていないが、選挙がある時には必ずやって来て所属する党への 協力の依頼を受けていた。

 半年も前のことである。やはり選挙がある時にやってきた。選挙の話はさておいて、よもやま話をしていた時「茅野君と同じように、私の母もエッセイを書いていた。15年前に84歳で亡くなったが、弟の協力を得て遺稿を整理して、8年前に念願だった『エッセイ集』を出版した」という。「それはいいことをしたね。ぜひ読ませて欲しい」と頼んでいたものを、先日持ってきてくれた。

 働き者だったお母さんは書くことが好きで、時に新聞に投稿していた。同じく書くことの好きな娘に誘われて、70歳を超えてから和木町のエッセイクラブに入会し、月に1度の定例会の時に書いたエッセイ147編を出版したという。

 本の体裁は、A5版、250ページ。タイトルは「藤本静子 エッセイ集」とあり、爽やかな感じがする薄い萌黄色をした表紙である。まずは目次に目を通してみた。家族のこと、子どもの教育、生きて行く上での心構え、礼儀、老いや病気、旅行、などと多岐にわたっている。

 各文字数は700~1100文字程度。大正5年生まれという高齢でありながら、ものの見方や切り込み方は鋭く若い。文章も難しい言葉や漢字は少なく、読みやすい現代文である。エッセイクラブで十数年間勉強したというだけあって、素晴らしいエッセイ集である。

 お母さんが健在であれば、直ぐにでも行ってエッセイに係る話でもしたいと思ったが、残念ながらそれは叶わないが、会うことはなくてもこれを読めばお母さんの人となりや人生が良く分かる。私の母と重なる部分もあり懐かしい気持ちにもなった。それにしても、藤本君はいい親孝行をしたものだ。