写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

五橋を渡る

2021年02月08日 | 季節・自然・植物

 2月に入って第1日曜日の7日、日中は16度という3月上旬の陽気に誘われて、久しぶりに錦帯橋へ出かけた。吉香公園の中をゆっくりと車に乗って回ってみるが、どの駐車場も満車状態で止めるところはない。

 錦帯橋の上河原にある広い駐車場もほぼ満車の有り様。少し待って、やっと空いた所に止めることが出来た。下河原の駐車場を見ると、乗用車は日ごろになく多いが、観光バスは1台も止まっていない。コロナ下で不要不急の外出がはばかれ、不本意にも巣ごもり状態を強いられている人が、家族単位で観光に来ているだけであろう。団体客は全くいないようである。

 久しぶりに錦帯橋を渡ってみる。岩国市に住む高齢者に配られている敬老優待券を示せば無料で渡ることが出来る。欄干が思いの外、痛みが進んでいることに気がついた。思えば「平成の架け替え」があったのが、2001年(平成13年)~2004年(平成16年)である。あれからもう16年、過ぎ行く時の速さに少し驚く。

 第2、3、4橋に敷設されている段差の低い階段を1段ずつゆっくりと上り下る。初めて段数を数えてみた。上りと下りで62段、3橋で合計186段ある。5橋の長さは橋面に沿って210mあるので往復して420m。  

 高校時代の3年間、毎日この橋を渡って通学した。特に雪が降って橋の上に積もった日の思い出は強烈である。誰もが一度は滑って転げて笑われたが、笑った者もそのうち転げる。そんなことを思い出して一人密かに笑む。

 車に戻ったときには、陽気のせいもあってか体がポカポカする。今日は夕方の散歩はお休みとしよう。困ったときの錦帯橋。先の見えない長い巣ごもりで鬱積していたものが大分晴れたような気がした。