「今日は何の日?」。なんと「シルバーラブの日」だという。こんな艶っぽい日があるなんて、今まで知らずに生きてきた。シルバー世代の人が、伴侶がいるいないにかかわらず、誰はばかることなく恋をしてもよい日のことかと思ったが、どうもそんな節操もない話とは違うようである。
1948年(昭和23年)の11月30日、歌人の川田順(1882~1966年)が弟子の大学教授夫人と共に家出した。当時、川田順は66歳で、3年前から続いていた40歳の教授夫人との恋の行く末を悲観して、死を覚悟しての行動だったが、養子に連れ戻された。その後、2人は結婚した。
川田が「恋の重荷」という詩を詠んだのが11月30日で、この日にちなんで11月30日を「シルバーラブの日」に決めたという。
”若き日の恋は、はにかみて おもて赤らめ
壮子時 (おさかり) の 40歳 (よそじ) の恋は
世の中に かれこれ心くばれども
墓場に近き老いらくの恋は 怖るる何ものもなし”
日本の65歳以上の高齢者は全人口の3割に近く、妻や夫と別れ、1人の時間を過ごす年配者も増えている。そんな時、生きがいを分かち合えるパートナーがいることは貴重だという。そのためには高齢者も「恋」をしようと呼びかけているものである。
結果として、同居したいとか結婚したいとかいうものではなく、「心のつながりを持ちたい」「一緒に食事がしたい」「おしゃべりがしたい」というように、たわいなくも「何気ない会話ができる恋人感覚の友達」が欲しいというところであろう。
高齢者施設の管理者の仕事の一つに、入所者の男女間の恋愛問題を処理することも多々あると聞いたことがあるが、衣食住が足りていても、話し相手のいなくなった高齢者であるからこそのトラブルであることを再認識した。
さて堂々たる高齢者の私は、どうか。幸い元気な奥さんがそばにいる。話し相手に事欠くことはないが、話すことのないのが悩みといえば悩みの種。「何気ない会話」って何だろうと、日向ぼっこをしながら、1人呟いてみた。