写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

伊根の舟屋

2020年11月02日 | 旅・スポット・行事

 天橋立は丹後半島の東の付け根にある。そこから車で30分ばかり半島の東海岸を北上すると、伊根町という漁村に着く。言うまでもなく「伊根の舟屋」として知られ、テレビの旅番組などでよく紹介される地域である。

 伊根の家屋は直接海に接していて、1階は船を収蔵するためのガレージ、2階が居住スペースになっている。漁業と生活とが一体となって発展した舟屋の町並みは大変めずらしく「国の重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている。

 約230軒の舟屋に囲まれた伊根湾は
日本海側にありながら南に開けており、三方を山と島で囲われているため波も穏やかで、ゆったりとした情緒ある景観を楽しませてくれる。

 車で伊根町に入った所に「遊覧船乗り場」という看板が目に入る。何台か車が駐車場に止まっているのに誘われて、車を止めた。丁度10分後に、湾内への観光船が出発するという。取り急ぎ乗ってみる。

 30分かけて湾内の舟屋を見ながら、解説付きでゆっくりと遊覧した。乗船客だけでなく、船の周りにはカモメとトンビが客の投げ与えるエサをもらおうと、同じ速度でつきまとう。まさに鳥と一体となっての観光である。

 車社会になったころから、各家には車のガレージが設けられるようになってきた。それと同じ発想で、伊根湾の各家には、間口一杯に舟屋が設けられている。まるで家々が海に浮かんでいるように見える。見たことのない珍しい光景が広がっていた。

 町をゆっくりと歩いてみたい気がしたが、本来の目的地の城崎温泉に向かうため、丹後半島をさらに北上して一周しなければいけない。日本海に沈もうとしている夕日に追い立てられながら旅を急いだ。