俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン 」

2007年04月17日 23時49分56秒 | 時系列でご覧ください
リリー・フランキー自身の実体験に基づく自伝的家族小説であり、内容的にはまさに <かつて何かを目指して上京し、弾き飛ばされ故郷に戻っていったオトンと、同じようにやって来て、帰る場所を失くしてしまったボクと、そして、一度もそんな幻想を抱いたこともなかったのに東京に連れて来られて、戻ることも、帰ることもできず、東京タワーの麓で眠りについたオカンの物語>だった原作をほぼ忠実に映画化した作品。

原作同様、映画の中でもオカンの息子に対する無償の想い、そしてそれに対して30歳を過ぎて気付く息子のオカンへの切ない想い、さらにアクセントのように登場するオトンの所在のなさが、内田也哉子&樹木希林、オダギリ・ジョー、そして小林薫らの想像以上に真っ当で本当に見事な演技によって描かれていて、大いに感心させられたし、少なからずも心打たれもした。



また「マイナスのままで終わってしまう奴も多い」東京で、ようやく“幸せ”を掴みかけ、これからというときに「まるで鈴が坂を転げるようににぎやかな音だけが残った」という印象的なナレーションも巧いなと思った。

そして、きっと多くの人の心に響くであろうこうしたさまざまなエピソードのひとつひとつに、それぞれの人たちが自分を投影させて思わず感情移入してしまうのもよくわかる気がする。



ただそうは言いつつも、個人的には何故だか物足りなさも同時に感じてしまった。
演技にしろ美術にしろ、撮影だって、エンディングの興醒めな福山の歌を除けば音楽だって、それぞれ素晴しいのにだ。

そしてそれは映画そのものというよりも、原作を読んだときにかすかながらに感じた「違和感」がどうにもこうにも払拭できていないからだと思う。
確かに心にぐっとくる話なんだろうし、素直に心染み入ればいいのだろうけれど、原作に比べ多少薄まっているとは言え、何だか気恥ずかしいというか、どこか居心地の悪さを感じてしまい、つい努めて冷静さを装ってしまい、感心こそすれ大きな感動を得るにまで至らないのだ。

ったく、素直じゃないッス。我ながらウームであります。



今日の1曲 “キサス・キサス” : ザ・ピーナッツ

ウォン・カーウァイの手による'60年代の香港を舞台にした、隣に住む男と女の秘められた大人のラブストーリー「花様年華(In The Mood For Love)」でも流れていたご存知“ Quizás Quizás Quizás ”。
もともとはキューバのオスパルド・ファレスが1947年に発表したボレロであるこの曲、世界中のさまざまな人がカヴァーしている中、映画の中ではラジオからザ・ピーナッツの歌声が流れていましたが、オカンは誰のヴァージョンを聞いていたのでしょうか?
いろんな人の動画がある中、中国・湖南衛星テレビが全国放送しているスター誕生番組「超級女声」で見事優勝し、一躍、国民的アイドルとなったた李宇春(クリス・リー)が何故かこの歌を唄っているのを見つけ、ちょいと心惹かれたのですが。
興味ある人は、あまり期待せずにコチラを。


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7 コメント

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こんにちは (噂のブログ)
2007-04-18 10:15:12
はじめまして^

噂のブログと言います。。
こちらの記事を紹介させて頂きましたので
ご連絡させて頂きました。
スタートしたばかりなのでよかったらご訪問くださいね。

紹介記事は
http://blog.livedoor.jp/ko72092/archives/50118148.html
です。

これからもよろしくお願いいたします^^
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こんにちは♪ (ミチ)
2007-04-18 17:17:07
nikidasuさんの「うーむ」が出ましたね!(笑)
私は原作の中のあまり好きではなかったシーンが映画ではカットされていてホッとしました。
映画として大絶賛というよりも、映画を媒体として視聴者各々の親子関係に思いを馳せる作業を促すような作品だったと思います。
あとは、珍しくオダジョーが普通の役だったのも良かった(笑)
日本映画はどうして有名歌手の歌をエンディングに持ってくるのでしょうかねぇ。
いつもそれが気になります。
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うーむ (シャーロット)
2007-04-19 15:24:05
こんにちは。
うーむ・・・。です。笑
やっぱり反則ネタには涙が絶対でちゃいますってねー。気恥ずかしくもなりながら、おもいっきり泣いてましたよ、自分。笑
感動というより、共鳴はしました。
なんかこう、目の前で起っていることが自分の中の細胞に伝わってきて震えて鳴ってるような、音叉になった気分で。大笑
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◇ミチさん (nikidasu)
2007-04-20 02:04:07
コメントありがとうございます。
原作の持っているクセの強さは、いろんな意味で薄められ、普遍性をもったものになっていました。
それでもなお、やはり「ウーム」だったりするんですよね(苦笑)。
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◇シャーロットさん (nikidasu)
2007-04-20 02:19:13
コメントありがとうございます。
共感はできないけど、音叉になった気分でどこか共鳴したというシャーロットさんの言い方に座布団3枚(笑)。
ともあれ、絶賛の嵐の中で淋しい思いをしていたので、一歩引いたその捉え方に思わず共感してしまいました。
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こんにちは! (由香)
2007-04-22 11:51:29
お邪魔します^^・
私は原作が未読なんです。
映画が良かったので、原作も読もうと思っているのですが、なかなかページを進めずに別の本を読んだりしています(笑)
この映画は、オダギリ&樹木さんの演技が素晴らしかったのかなぁ~と思います。
物語り自体は、それ程特別。。。という印象は受けなかったので。
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◇由香さん (nikidasu)
2007-04-23 01:09:23
改めて思うに、エキセントリックな演技をすることが多い主役の二人の
極めて真っ当な演技というのも、ある意味見応え充分でした。
ちなみにオダジョーだったら、「ゆれる」も強く強く是非であります。
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