俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「ウディ・アレンの 夢と犯罪」  CASSANDRA'S DREAM

2010年06月27日 11時35分45秒 | 時系列でご覧ください


マッチポイント」「タロットカード殺人事件」に続くウディ・アレンによる人間の野心をテーマとしたロンドン三部作の最後を飾るクライム・ムーヴィー。

ビジネス界での成功を夢見る兄とギャンブル好きの弟の兄弟が中古の小型クルーザーを購入し、カサンドラズ・ドリーム号と名付けるところから物語は始まる。
兄は新たな恋人相手に分不相応な見栄を張りながらアメリカでの新生活を思い描くも、ギャンブルで大負けした弟が巨額の借金を背負ってしまい、結果大金持ちの伯父に助けを求めたところ、とんでもない“ 頼みごと ”を持ちかけられるというストーリーそのものは、昔よく観た「青春の夢と挫折」を描いた(例えば「太陽がいっぱい」みたいな)作品と相通じるサスペンス映画そのもの。



オープニングから流れるフィリップ・グラスによる緊張感を高める音楽、そして場当たり的に人生を渡り歩く兄に扮するユアン・マクレガーと小心者のギャンブル中毒者の弟に扮したコリン・ファレル、そして金持ちで頼れる叔父に扮したトム・ウィルキンソンという3人による見事な演技によって、あたかも上質なミステリーを読むがごとくサクサクッと見入ってしまうこの作品、観ていてそれなりに満足度の高い作品だと思う。

ただ敢えて難を言えば、話そのものがあまりにテンポ良く進む分だけ登場人物の感情の背景やディテール描写に欠け、いささか表層部分をなぞっているかのように感じられ、さらに言えば、サスペンス映画としての完成度といった意味では「マッチポイント」ほどでもなく、「タロットカード殺人事件」が持っていた明るさもなく、いささか小粒なシリアス劇に終始したようにも思えてしまったのだ…、なぁ~んて言ってしまうと言い過ぎかなあ。



とにかく、ウディ・アレンファンのみならず多くの人に、決して退屈することなく大いに楽しんで観てもらえると思うので、機会があれば是非!

ちなみに「カサンドラ」とは、その予言を誰からも信じてもらえないという悲劇の預言者でギリシャ神話に登場する王女の名前だそうで、その「カサンドラ」を使ったせっかくの原題からその名前を外し「夢と犯罪」という身の蓋もない邦題としたのは、やはり何とも悲しくなってくるのだよ。ンナロー!





今日の1曲 “ Show Me the Way to Go Home ” :  Craft

映画の初頭のシーンでユアン・マクレガーとコリン・ファレルの兄弟がクルーザーの上で歌っているのが、数多くのミュージシャンがカヴァーしているトラディショナルフォークソングであるこの曲。
改めてタイトルを知ると、なるほど何とも暗示的であります。



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