俺の明日はどっちだ

50歳を迎えてなお、クルマ、映画、小説、コンサート、酒、興味は尽きない。そんな日常をほぼ日替わりで描写

「おくりびと」

2008年09月18日 10時25分12秒 | 時系列でご覧ください
納棺の際の死化粧と納棺の儀式を行なう「納棺師」という人の死にまつわる職業に焦点を当て、ともすれば美化しすぎたりネガティヴになりがちな題材を、ユーモアを交えつつ普遍的に描いた滝田洋二郎監督作品。

まずはともあれチェロ奏者の夢を捨てて納棺師となった主人公大悟に扮する本木雅弘の見事な演技にすっかり目を奪われてしまった。
北上の豊かな自然を背景にヨーヨ・マばりにチェロを弾く姿はさておき、顔の表情ひとつでもこれだけ演技ができるとは、本当に失礼ながら嬉しい驚きであったし、コミカルな面を含めて彼の等身大の演技が暗く重くなりがちな内容を良い意味で「楽しい」映画に転化させてくれていたと思う。

そして相変わらずぶっちぎりの存在感ある演技を見せてくれる山崎努は言うに及ばず、余貴美子、笹野高史、吉行和子、杉本哲太等々、思い切り癖のある役者を集めた絶妙なキャスティングも結果それぞれの特性を見事に発揮して見応え十分。
また随所随所で描かれる納棺師たちが行う所作が流れるように美しい伝統的儀式の中での死者に向ける静謐ながらも死の尊厳を演出するシーンには、その存在すら知らなかったこともあって思わず息を呑んでしまった。



人の数だけそれぞれの「死」があり、さまざまな別れがさまざまな形で待っている。
そうしたさまざまな遺族とさまざまな哀しみと立ち会うことによって、改めて「死」とは、「生」とは、そして「家族」とは何かを改めて感じさせてくれ、終盤、火葬場の焼却員である笹野高史が語る新たなる旅立ちへの門番の話を含め、劇場映画に初挑戦の小山薫堂の脚本のうまさもにも思わず感心。

それにしてもピンク映画監督時代から同世代としてその活躍を見続けてきた滝田洋二郎がこうした役者さんたちを使いこなしながらこうした内容の作品を撮ることにある種の感慨を感じざるを得なかったりしたのだ。

加えてこの映画の中で一番ぐっと来たのが、これまた同世代である山田・狂い咲きサンダーロード・辰夫が妻の死化粧の美しさに号泣したシーンであったりして、とにもかくにもそうした世代にいつの間にか突入したんだなと改めて感じさせられたのでありました。



まあそんな年寄りの勝手な思い入れはさておき、とにかく良い意味でとても敷居が低いというか、間口の広い映画なので、普通に大いに楽しめ、かつ大いに感じ入ること出来るので、かなりかなり、「パコ…」と違った意味でこれまた相当にオススメです。
機会を設けてでも是非!


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