栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第91回日本ダービー回顧~エピファとキズナの叩き合い、今年も「父中距離質×母マイラー質」

2024-05-28 21:13:17 | 血統予想

東京11R日本ダービー
◎2.レガレイラ
○15.ジャスティンミラノ
▲5.ダノンデサイル
△4.ビザンチンドリーム
△8.アーバンシック
×13.シンエンペラー
×18.エコロヴァルツ
初年度産駒からレガレイラ、コラソンビート、アドマイヤベル、スウィープフィート、アーバンシックなどが出て大成功をおさめている種牡馬スワーヴリチャード。レガレイラとアーバンシックの母はハービンジャー×ダンスインザダークで、コラソンビートの母はオルフェーヴル×ロージズインメイ。スウィープフィートの母はディープスカイ×スイープトウショウと、中長距離質の繁殖との配合で代表産駒を出しており、産駒は2歳早期のマイル戦から動いている。
ここから考察されるのは「種牡馬スワーヴリチャードはハーツクライよりもマイラー質な要素を伝えているのではないか」ということ。母ピラミマがマイラー質と考えられるのだ。ピラミマの母キャリアコレクションはBCJフィリーズ2着で、ナスルーラ血脈の塊の早熟マイラーだった。
レガレイラは父父ハーツクライ、母父ハービンジャー、母母父ダンスインザダークで牝系がウインドインハーヘア。この字面だけなら完全にTT長距離血統なのだが、ピラミマが1/4マイラーかつ1/4非ノーザンダンサーとして機能しているがゆえに、3歳春に芝中距離で爆発できるのだと考えたい。
ディープインパクトやハーツクライの直仔がもうクラシックレースを走ることはないが、アンブライドルズソングやデインヒルを媒介として、ディープとハーツの美点を受け継ぐことに成功した紅一点のレガレイラが、ルメールを背にドウデュースやコントレイルのような末脚を爆発させる。2024年日本ダービーはそんなレースになると予想します。
ジャスティンミラノは2400に延びてプラスはないが東京に替わるのは大きなプラスで、どう見ても皐月賞より共同通信のほうが強かった。こういうレースでエポカドーロやダノンキングリーのようにフワリと先行して後続を封じ込めてしまうのは戸崎さんのオハコだし、19年はスローならダノンキングリーが勝っていたかもしれない。
今年の牡馬クラシックはとにかく大箱向きの重厚な中距離馬が多くて、皐月賞の4角で加速できたのはジャンタルマンタルとコスモキュランダだけだった。他はみんな東京替りがプラスと考えられるが、中でもレガレイラと同血でこちらのほうがハービンジャーが強いが中山のコーナーで全く加速できないアーバンシック、エピファネイア×ジャングルポケットできさらぎの豪脚がまだ鮮烈なビザンチンドリーム。そしてシアトルスルーをクロスする父母相似配合のエピファネイア産駒ダノンデサイルも明らかに大箱向きで、京成杯も京都2歳も内回りでは差しにくそうなのにアーバンシックやシンエンペラーと五分以上の脚力を見せつけている。ノリの継続騎乗だからここ一番ハナもありそうだし、ノリが逃げるならばユタカも戸崎も任せて安心で、喜んで番手でカベになるだろう。
ダノンエアズロックも明らかに東京向きの全身運動だが、全身運動すぎて長い距離がどうなのか。前々で運ぶ脚質だけに2400をごまかしにくいのではないかと考える。シュガークンは本来は前で受けて味がある血統だが、青葉賞馬は上がり11秒前半連発で3馬身ぐらい離して勝たないと通用しない。シックスペンスはスローで上がりだけのレースになると怖い面はあるが、母がダンジグ4×4であからさまにピッチが速すぎるのが東京でどうだろうかと思う。エコロヴァルツは馬群に入るとパニックになってしまうので極端なレースしかできないが、コスモス賞のように大外からハナに立ってしまえば見せ場はあるかも。

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例によってNETKEIBAの全頭血統解説より導入文と1~3着を

昨年はサトノクラウン×マイラー牝馬
「父2400質、母マイラー質」が勝つレース
近5年の日本ダービー馬の父は、ディープインパクト(シャフリヤール、コントレイル、ロジャーバローズ)とハーツクライ(ドウデュース)とサトノクラウン(タスティエーラ)。いずれも現役時は中長距離、2000よりも2400を得意とした馬だ。いっぽうシャフリヤールの母ドバイマジェスティはBCフィリー&メアスプリント(米G1・ダ7F)勝ち。コントレイルの母母FolkloreはBCJフィリーズ(米G1・ダ8.5F)に勝った北米2歳女王。ロジャーバローズの母父Librettistはジャックルマロウ賞などに勝った欧一流マイラー。ドウデュースの母ダストアンドダイヤモンズは北米ダ短距離重賞を2勝。タスティエーラの母パルティトゥーラは全3勝が芝マイル。父2400質×母マイラー質の配合が勝ちやすいのが近年の日本ダービーといえる。

ダノンデサイル
スタティスティクスやトップザビルの半弟で、母トップデサイルはBCジュヴェナイルフィリーズ2着。牝祖Barefoot DyanaはゴールデンロッドS(米G3・ダ8.5F)2着。母父CongratsはサンパスカルH(米G2・ダ8.5F)に勝ったA.P.Indy系でフォーエバーヤングやハートレーの母父。密な父母相似配合で、Seattle Slewをクロスするエピファネイア産駒らしい大きなストライド。京成杯を差し切ったが、本質的には大箱向きなのでここも侮れない。(距離○スピード○底力◎コース◎)



ジャスティンミラノ
ベルモントオークス招待S(米G1・芝10F)勝ちマジックアティテュードやサンドリンガム賞(仏G2・芝1600m)勝ちMission Impassibleの半弟。母マーゴットディドはナンソープS(英G1・芝5F)勝ち馬。母がDanzig系スプリンターなのでフワッと先行する脚質に出たが、DarshaanやSir Gaylordのナスキロ柔さが強い体質で、皐月賞も直線半ばから加速しストライドで差し切った。本来は断然東京向きで、ダービーでもダノンキングリーのように立ち回りそう。(距離○スピード◎底力◎コース◎)



シンエンペラー
仏ダービーと凱旋門賞を制したSottsassの全弟で、BCフィリー&メアターフのSistercharlieの半弟。母Starlet's SisterはMiswaki3×3をもつ名繁殖。父SiyouniはNureyev直系の名種牡馬で、Siyouni×Galileoは名馬St Mark's Basilicaと同じ。見た目はデインヒルが強く、走るとナスキロ+Tom Fool的にしなやかなのは全兄と似る。オールラウンドな中距離馬で、まだ本気で走っていない感もあり奥は深そう。東京のほうがいいだろう。(距離○スピード○底力◎コース◎)



メイショウタバルが回避して逃げ馬がいなくなり、ユタカが行くのか戸崎が行くのかとみなさん喧々諤々でしたが、予想コメントにも書いたように私は岩田父かノリが行くのではないかとみていたし、このどちらかが行ったならばユタカと戸崎は喜んで番手で壁になるだろうし、ベテランジョッキーたちが然るべきペースでレースをつくれば後続は何もできないのでは…というような絵を描いてましたね

やはり大外からエコロヴァルツがハナへ、この馬は馬群に入るとエキサイトしてしまうタイプのAureole魂ですから、先頭に立った時点で平静を取り戻し、最初の1000mは62.2とまんまとペースダウン

シュガークンとジャスティンミラノがそれにつづいたのも予想どおりで、ノリのダノンデサイルが気合いをつけて出していって、イン3番手をとったのが今年のダービーのハイライトやったかもしれないです

出していったのでちょっとかかり気味になるのをなだめて、デビューからずっとコンビを組んできて、ダービーを見据えてレースを教えてきたから、この大一番で勝負を賭けて好位を取りにいける

まさにあのワンアンドオンリーのダービーを思わせる会心の好位抜け出しで、インタビューで「ダービー3勝(ダノンデサイル、ワンアンドオンリー、ロジユニヴァース)は全部同じ乗り方で勝ってますよ」と平然と言ってのけた横山典弘

ダノンデサイルは予想コメントにも書いたとおり、ストライドで走るエピファネイア産駒で明らかに大箱向きなのに、京成杯や京都2歳のゴール前でアーバンシックやシンエンペラーと互角以上の脚力を見せていて(まあアーバンやシンも大箱ベターではありますが)、この戦績だけでも一発の魅力に溢れていました

ジャスティンミラノはプランAどおりのレース運びも、4角の手応えが渋いのは皐月賞と同じで、この馬はほんとに直線追われてからストライドが大きくなってジワジワ脚を伸ばすストレッチランナーなんやなあ~と、そんなナスキロ的ストライドが皐月賞1着ダービー2着というのも面白い

シンエンペラーは直線しぶとく脚を伸ばしてきたのは東京が合っていたのだろうし、馬そのものも皐月賞よりかなり良くなってましたが、それでもどんな条件が最も合うのかまだ判然としないところはあり、海外遠征のプランも発表されましたが楽しみですね

「皐月賞のパトロール見たらわかるけど、ゴール板通過後に最も元気なのがサンライズアースで、この馬スタミナだけはすごいよ」という話をしていたんですが、それだけにすみれSの再現のような捲りでレースを動かし、上がり3Fのヨーイドンではなく上がり5Fのロンスパにした池添はさすが

ナスキロ会でMahmoudさんとも言ってたんですが、一足先に捲ったミルコのコスモキュランダが先頭まで行かずに4番手で諦めてしまったので、3~4角で更にその外を回ることになったのが誤算で、しかしレイデオロ産駒はゆったり流れるレースでのスタミナはあるんですよね

久々の現地観戦となったダービーですが、パドックを何周も見た後、ラインで一斉配信した感想は一言だけ「レガレイラはTTやな」

出走馬中最も軽い体重(458キロ)の牝馬ですが、その数字以上に無駄肉がなさすぎるというか、思った以上に長距離を走るのに適した体質に見えたんですよね

「父2400×母マイラー」で2000ベストの馬が弾けて勝つのが近年の日本ダービーだとするならば、レガレイラは東京2400のスローなら好走は間違いないのだけれど、2000ベストの弾ける馬ではないだろうなあ…と

実際の馬券が前日予想と違う買い目になることはちょくちょくあって、でもそれを公表するのははばかられるのでだいたい黙ってるんですが、今年のダービーは直前になって、◎はレガレイラに打ったけれど、勝つのはジャスティンミラノかダノンデサイルじゃないか…という買い方になってしまったんですよね

そんなわけで夜のナスキロ会の勘定は私がもつことになったんですが、レガレイラとアーバンシックは同血の間柄ではあっても、間近で実馬を見るとかなりタイプが異なるんやなあ~と実感しました

ダノンデサイルは母トップデサイルがBCジュヴェナイルフィリーズ2着で、2歳早期から走ったマイラーですから、終わってみれば今年も「父中距離質×母マイラー質」の勝利

これまでJRA重賞を勝ったエピファネイア産駒は、下記のようにほとんどがサンデーサイレンス(SS)のクロスをもっていますが、SSクロスをもたないダノンデサイルとイズジョーノキセキはSeattle Slewのクロスをもつという共通点があります

エフフォーリア:SS4×3
デアリングタクト:SS4×3
ダノンデサイル:Seattle Slew5×4
ステレンボッシュ:SS4×4
テンハッピーローズ:SS4×3
サークルオブライフ:SS4×3
ブローザホーン:SS4×3
アリストテレス:SS4×3
モリアーナ:SS4×3
イズジョーノキセキ:Seattle Slew5×5
ジャスティンカフェ:SS4×3
ビザンチンドリーム:SS4×4
セルバーグ:SS4×4
エピファニー:SS4×3
イフェイオン:SS4×3

母父Congratsはフォーエバーヤングの母父でもあり、この3歳世代で俄かに脚光を浴びることとなりましたが、ダノンデサイルは
Roberto4×5
Seattle Slew5×4
Sadler's Wells≒Wild Applause4×4
ときれいな父母相似配合になっています



Wild ApplauseはHero's Honor(北米芝G1を2勝)の全妹でダイアナH(米G2・芝9F)の勝ち馬で、Sadler's WellsとはNorthern DancerとBold Reason≒Admirimgが共通し、ForliとFlower Bowlがともにハイインロー血脈というニアリーな関係

パッと思いつくところではタワーオブロンドンがHero's Honor≒Sadler's Wells4×3、ユニコーンライオンがHero's Honor≒Sadler's Wells5×3、あと女傑Rachel AlexandraがSadler's Wells≒Wild Applause3×3ですかね

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