栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第19回ヴィクトリアマイル回顧~4年に一度の前傾戦、Robertoパワーで差し切る伏兵

2024-05-14 10:22:26 | 血統予想

東京11Rヴィクトリアマイル
◎13.モリアーナ
○6.マスクトディーヴァ
▲10.ナミュール
△5.ウンブライル
×1.ライラック
×4.コンクシェル
今年のヴィクトリアマイルはマイラーと呼べる馬がほとんどおらず、マイルの阪神牝馬SもターコイズSも後傾ラップだったから、古牝馬戦線は中距離質1800質のレースを一年間やってきたといえる。
ここも1800の中山牝馬Sを逃げ切ったコンクシェルがおそらくハナで、出走馬の中で唯一のピュアマイラーともいえるサウンドビバーチェはこの並びならば番手でOKとなると、コンクシェルが後傾ラップを刻んで1800質のレースにするのだろう。
ナミュールもマスクトディーヴァもピュアマイラーではなく1800ベストだとずっと書いてきたが、前後半47秒-45秒で差すようなケイバではこの人気2頭がやはり強いと言わざるをえない。
もう府中牝馬Sなのだと割り切って人気どおりに印を入れてやりすごしたくなるが、モリアーナもノリが後方で脚をタメるレースを教えて中距離質の差しで開花。阪神牝馬を見てのとおり、この馬もマイルならスローの1800質のレースのほうが斬れるタイプには違いない。
阪神牝馬の1着2着を逆転できるかどうかが問題だが、ハビタット5×5をもつエピファネイア産駒らしい前駆のいいフォームで走るから、直線平坦のほうが斬れを増すタイプだと思う。
東京だと残り300mから平坦だから、そこまで各馬脚を温存して追い出すようなレースになるならば、ラスト300m最速で上がれる目はあるのではないか。他ならぬノリならば、そんな針の穴を通すようなところにハメてくる可能性はある。ハビタットが逆転に一票。

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例によってNETKEIBAの全頭解説から1~3着を

テンハッピーローズ
プリムラブルガリスの姪で、母フェータルローズはJRA3勝(芝1800~2000)。牝祖オエノセラの子孫に英1000ギニー2着Sundrop、サマーセント、サンレーンなどが出る。父エピファネイアは名牝シーザリオの息子で、JCと菊に勝ちエフフォーリアやデアリングタクトなどを出し成功。母父タニノギムレットはダービー馬。血統は中距離だが良績は芝1400に集中。阪神牝馬Sも差のないところにきていたが、マイルG1では強調する材料が…。(距離○スピード○底力○コース○)



フィアスプライド
ソフトフルートの全妹でミッドサマーフェアやメンデンホールの半妹で、パワーホールの叔母でアイスストームのイトコ。母母ストームソングはBCジュヴェナイルフィリーズ(米G1・ダ8.5F)に勝った北米2歳女王。母方のKingmamboやStorm Birdのパワーマイラーっぽさも強い馬で、中山マイルのターコイズSを制覇。ディープインパクト牝駒でも斬れ味抜群というほどではないから、ここもターコイズのように好位で運びたい。(距離◎スピード○底力◎コース○)



マスクトディーヴァ
トゥーフェイスの半妹で、オメガヴェンデッタやマスクトヒーローのイトコ。母マスクオフはJRA1勝。母母ビハインドザマスクはスワンS勝ち馬。コイウタ、アグネスアーク、サンライズソア、レッドアネモスなども近親。ルーラーシップ×ディープインパクトはキセキやドルチェモアなど成功している配合だ。マイラー牝系だが、母母父がホワイトマズルだし1600より1800がベターだろう。マイルだと阪神牝馬のように後傾戦になったほうが差せるタイプ。(距離○スピード○底力◎コース◎)



公式ラップは前後半800mが45.4-46.4、今年で19回を数える東京芝マイルの牝馬G1ですが、これぐらいハッキリ前傾ラップになったのは以下の5回で、ラップだけでみるなら15年とよく似てますかね

24年45.2-46.4
19年44.8-45.7
15年45.5-46.4
11年44.6-47.3
10年45.5-46.9

他では16年が45.7-45.8で、残りの13回は前半より後半のほうが速い後傾戦
この前傾戦5回をかんたんに振り返ってみると

19年…ノームコア(父ハービンジャー)とプリモシーン(母父Fastnet Rock)のデインヒル決戦。1人気4着ラッキーライラックはその後大阪杯とエリ女(2回)を制覇

15年…5人気-12人気-18人気で決まる大波乱。勝ったストレイトガールは母母父デインヒルで短距離路線の主役。3着に逃げ粘ったミナレットは最低人気で、ウォーニングの肌でターコイズSや新潟内1400で勝ち鞍。1人気6着ヌーヴォレコルトはオークス馬。2人気7着ディアデラマドレは1800~2000の重賞を3勝

11年…連覇を狙う単勝150円のブエナビスタの追い込みを封じたのは、非SSで母スプリンターのキンカメ産駒アパパネ。2人気-1人気-3人気で前傾ヴィクトリア唯一の順当決着。ただし短距離路線の常連グランプリエンゼルが14人気4着に食い込んでいたのはうすら寒い

10年…9着までコンマ2秒差の大接戦、中距離女王ブエナビスタが苦しみながらもクビ差で勝ちきる。11人気3着ニシノブルームーンはタニノギムレット産駒

こうしてみると前傾ヴィクトリアにおいては、ブエナビスタ、ラッキーライラック、ヌーヴォレコルト、レッドディザイアといった中距離チャンピオン級が軒並み苦戦し、デインヒルやRobertoのパワーで走っているマイラーが大駆け、という大まかな傾向がみてとれます



Mahmoud校長もよく言及していますが、競馬における距離適性とか、スタミナとか持続力とかマイラーとかステイヤーとかのカテゴリというのは、けっきょくのところ芝1600を92秒ぐらいで、芝2000を117秒ぐらいで走破するのに適しているかどうかということに他ならない

単純な割り算だと、最初の200mを12秒で入るとしたら、残りの1400mを11.4で走りつづけることができるのが優秀なマイラーで、残りの1800mを11.7で走りつづけることができるのが優秀な中距離馬で、でも12.0-11.4-11.4-11.4-11.4-11.4-11.4-11.4(46.2+45.6=91.8)で勝ち馬が走破する芝マイル重賞って滅多にないんですよね

そもそも古牝馬路線においてはヴィクトリアもエリ女も使うという馬が多いので、中距離馬がマイル重賞も走っているということが多々ある

なのでヴィクトリアの前哨戦の阪神牝馬Sも、毎年中距離馬だらけで中距離質1800質のレース、中距離質1800質の牝馬の斬れがモノを言うレースになり、下のようにデゼルがゆっくり48秒で入って44秒台でナデ斬る世界ですわ

阪神牝馬過去5年前後半
24年:47.4-45.6
23年:48.0-45.9
22年:46.8-46.0
21年:47.1-44.9
20年:46.5-46.4

これだけ中距離質になりがちだと(後傾戦が多いとはいえ)本番との関連性は薄くて、近5年の阪神牝馬の1~3着はヴィクトリアマイルで[0-1-1-10]、最も流れた20年の勝ち馬サウンドキアラが次走ヴィクトリアでも2着に頑張っているのは示唆的かと

今年のヴィクトリアマイルの出走馬に、この一年間で芝マイルを46.2-45.6ぐらいのラップで走破した馬は皆無に近くて、たとえばナミュールのマイルCS勝ちは47.8-44.7ぐらいの配分で追い込み、マスクトディーヴァの東京新聞も出遅れのぶんはありますが47.5-45.0ぐらいですか

まあナミュールに関していうと、45.2-46.2の前傾東京新聞杯を46-45.5ぐらいで走破し差し切った履歴があるので、全く反応しなかったのは遠征がつづいた影響なんかがあったのかもしれないです

そういうことを考えるとね、46.8-45.9と阪神牝馬よりは平均的に流れたターコイズで先行したフィアスプライドとフィールシンパシーがここでも先行したのは合点がいくし、45.5-47.1のHペース洛陽Sを46.5-46.1で差し切ったドゥアイズがクビ差4着に好走したのもなるほどというところはある

毎年のこととはいえ、プリプリのマイラー不在のヴィクトリアマイル、だからこそ穴は流れたときのミナレット、ミナレットを探せということなら該当するのはサウンドビバーチェぐらいかなあ…そんなことも3分ぐらい考えました

とはいっても過去18回のうち13回は後傾ですからね、中山牝馬を49.6-11.9-47.5で逃げ切ったコンクシェルがハナなら今年も後傾と読むのが自然で、今年も1800馬の斬れで決まるんやろうなあ~という頭で思考停止(^ ^;) むしろ「府中牝馬と割り切ってデゼルを探せ」というスタンスで◎モリアーナでした

中距離質の馬が思ったほど斬れないなか、残り400~200でギュンと加速して先頭に躍り出たのは、新潟内1400の朱鷺Sを勝ち、阪神牝馬では中距離馬たちに鋭さ負けしていたテンハッピーローズ

エピファネイア×タニノギムレット×サンデーサイレンスですから血統はもうバリバリ中距離で、母フェータルローズも現役時は芝1800~2000で3勝しています

そんな血統背景なのに全5勝のうち4勝を東京&新潟の1400であげている不思議のサウスポー、そんな6歳牝馬がここで大仕事をやってのけるとは

見た目にはRoberto4×4やNight Shiftのパワーが強くて、だから中距離血統なのにマイルに振れたとみるべきでしょうが、配合のポイントとしてはもうひとつ、Aureole≒Electric Flash(Welsh Flameの母)のニアリークロス7×6もあげておきたいところ



この馬、朱鷺Sが典型ですが馬群の外から差すのが勝ちパターンで、ここもそういう展開になったのがよかったかと、マイルドAureole魂のエピファ産駒なので外に出したほうがビュンと反応するタイプなのかもですね(阪神牝馬は内枠で馬場の悪い最内に突っ込んでました)

ちなみにテンハッピーローズと同牝系で父ハービンジャーのサマーセントもAureole≒Electric Flash7×5をもちますが、番手抜け出しで勝ったマーメイドをはじめとてもAureole魂を感じさせる戦績なんですよね



46-45でうなりをあげるプリプリA級マイラーが不在のなか、マイルドAureole魂のパワーマイラーが外に出して追ったら46.4-45.4でビュンと差し切ってしまった

表彰式では天白オーナーと照哉社長となかやまきんに君が並んで力こぶで記念撮影、それを見ながら「ノームコアはRobertoの薄いクロスやったかなあ…プリプリのデインヒルがいないので、Robertoパワーが差し切ったという結末か…」こんなことを呆然と考えるしかなかった

コメント (3)
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