栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第65回有馬記念回顧~エヴァーグリーン・ハイペリオン(5)

2020-12-28 17:13:57 | 血統予想

中山11R 有馬記念
◎9.クロノジェネシス
○2.ブラストワンピース
▲14.サラキア
△5.ワールドプレミア
×10.カレンブーケドール
×12.オーソリティ
重厚なナシュワンの血を引く牝馬といえば、ホエールキャプチャもクロコスミアも、2歳時から素質を見せつつ古馬になってグンと成長し大活躍したのがまだ記憶に新しい。クロノジェネシスは秋天と比較しても無駄肉が削ぎ落されてしかし前後駆はバンプアップし、更に上向いて完成形に近づいた印象。古馬になってからは持続戦では宝塚記念も京都記念も完勝で、内回りを立ち回る脚もある。空前絶後の“牝馬の年”を横綱相撲で締めくくる。
ブラストワンピースは中間の追い切りや体つきを見ると仕上がりは今年一番か。一昨年の覇者で、今のタフな馬場はピッタリだし、新進気鋭の関東リーディングジョッキーが最内を立ち回る。
エリ女組では最も母系にスタミナがありデインヒルのパワーも表現されているサラキアをとりたい。馬群にさえ入らなければここも最後まで脚を使うはず。
フィエールマンやラヴズオンリーユーはずっと大箱向きだと書いてきたし印は入れない。ワールドプレミアはひと叩きして明らかに上向いているので押さえる。

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例によってNETKEIBAの全頭血統解説より1~3着馬を

クロノジェネシス
母クロノロジストはビーチサンバと同血の間柄で、本馬の他にもノームコアやハピネスダンサーなどを産んだ名繁殖。母母インディスユニゾンはフサイチエアデールの全妹にあたる。昨秋から馬体充実が顕著で見る見る本格化し、タフな馬場となった宝塚では粘着力とパワーで歴史的な圧勝。秋天は東京のスローで鋭さ勝負になってはカナロア産駒やディープ産駒に分があった。レース上がりが35秒以上かかったときは[3-1-1-0]。タフなレースでの信頼度は群を抜く。(距離○スピード○底力◎コース◎)



サラキア
サリオスの3/4姉で、サンタフェチーフの姪。母サロミナは独オークス(独G1・芝2200m)勝ち。母父Lomitasは独年度代表馬で独リーディングサイアー。この母方が強い体型体質で、ディープ産駒にしては斬れ味は並だが、古馬になってますますハイペリオン的に粘り強い脚質になってきた。気難しいオリオールの血を引くので馬群を嫌がる面はまだあり、最近は外から差すパターンで好走をつづけている。おそらく長距離はOK。気分よく走ればここでも。(距離◎スピード○底力◎コース○)



フィエールマン
母リュヌドールはリディアテシオ賞(伊G1・芝2000m)勝ち馬で、他にルヴォワールやラストヌードルを産んでいる。母父Green Tuneは仏2000ギニー馬。母母父Noir et Orはディクタスと似た仏スタミナ血統で、重厚なフランス牝系のディープ産駒だから大箱向きの斬れが自慢だ。母系にプリンスリーギフトが入って前駆のいい走りで、京都長丁場には確たる自信をもつ。秋天はスローで追走が楽で豪快に追い込んだが、中山内回りはちょっと差しにくい。(距離◎スピード○底力◎コース○)



今年の有馬記念は調教やパドックで目につく馬、好調と思わせる馬がけっこう多くて、内からブラストワンピース、ラヴズオンリーユー、ワールドプレミア、キセキ、クロノジェネシス、オーソリティ、サラキア、ここらは前走以上か今年一番という出来だったのではないかと

フィエールマンはこの馬にしては前捌きが少しゴツゴツして、秋天が東京仕様なら今回は中山仕様につくったのかという言い方もできると思うのですが、いずれにしても中山内回りのコーナーで馬を抜いていくような芸当はできない馬ですから、スローと見るやポジションを押し上げていったルメールはさすがやったし、ブエナビスタやエアグルーヴのようなストライドホースの強い負け方やったと思います

キセキが今回は出遅れてしまい、しかも鼻革の効果かペースが緩んでも後方で我慢して走れていて、そのためバビットの単騎逃げは中盤が緩み、クロノジェネシスがジワジワと動きはじめて残り1000mを60秒で走る争いに

スタミナとパワーで振り落としていくというほどの持続戦にはならなかったので、宝塚のような大きな着差はつきませんでしたが、直線で先頭に並びかけていく時点でこれはもう負けようがないという、横綱が四つに組んで土俵際にジワリジワリと寄り立てていくような、クロノジェネシスは実に凄みのある勝ち方でした

とうとう馬体重を474キロに乗せ、オークス出走時が432キロなのでそこからだと40キロ以上増ですか、ちなみにクロコスミアは16年フローラSが400キロで19年エリ女が448キロ

パドックを見ると、クロノジェネシスだけがこれ中に何か違うものが詰まっとるぞという体で、欧州の一流馬がこんな感じですよね、見た目よりも中身が詰まってて馬体重があるというね

ラッキーライラックなんかは立派な見た目どおりの520キロのアメリカンという感じで、そういう欧米の馬体の実の入り方の違いみたいなことも今日のパドックでは体感できました

サラキアはディープ牝馬ながらデインヒルのパワーとドイツ血脈のスタミナを感じさせる馬で、今あだ名をつけるなら「デインヒル風味のワールドプレミア」でしょうか、タフ馬場の中山2500という舞台ならばエリ女組最有力と考えられました

母母父Tiger Hillの母系にAureoleの血が入るので、馬群を割るようなケイバは今でも得手ではなく、だから少頭数や外枠やハナを切れそうなときはいつも狙ってきましたが、10頭立て以下[2-1-0-0]、7枠に入ったとき[2-3-0-0]、逃げたとき[0-1-1-0]

北村友はサラキアに乗ると必ずどこかで外に出すので[3-2-0-0]とオール好走、夏のコンビ再結成から快進撃ははじまり、今日もテン乗り松山はじっくり構えてみごとな大外一気、後出しといえば後出しなんですが、斬れ味というよりも地力や持続力でグイグイ追い込んだという2着でした

そんなわけで宝塚のようなド圧勝にはなりませんでしたが、有馬を勝った女傑としてはリスグラシューやダイワスカーレットに比肩する“エヴァーグリーン・ハイペリオン”な勝ち方

バゴの娘が、Nashwanの孫娘が、欧州仕様の名馬についに完成したのだから、来年は欧州の大レースを狙ってほしいなあ…とも思います

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第37回ホープフルS回顧~豪快なストライド、体力と脚力でねじ伏せる

2020-12-28 11:04:26 | 血統予想

中山11R ホープフルS
◎11.タイトルホルダー
○9.アオイショー
▲1.オーソクレース
△3.ランドオブリバティ
△10.ダノンザキッド
×2.ヨーホーレイク
×12.アドマイヤザーゲ
注8.バニシングポイント
ダノンザキッドはジャスタウェイ×ダンジリだからヴェロックスに近いイメージのナスペリオン的ストライドでズドーンと差す。中山内回りよりは東京がベターには違いない。コントレイルのようにパフォーマンスを落としながらも元値の違いで勝ちきるケースももちろんあるが、そこまで器が抜けているかどうか。
オーソクレースはG1馬同士の父母相似配合で身のこなしも一流馬の雰囲気があり、トムフール的な脚捌きでダノンより小回りがきくし、アイビーで馬群を割ったのも収穫といえる。それでもエピファ産駒だから多頭数の内枠は歓迎ではないし、ここも出遅れる心配はあるし、しかもスローで馬群が固まりそうだ。ルメールが巧く捌けばアッサリの▲とした。
◎はタイトルホルダー。メロディーレーンの半弟で、母メーヴェはJRA5勝のオープン馬。母父モティヴェイターはモンジュー産駒の英ダービー馬。ヌレイエフ≒サドラーズウェルズの3/4同血クロス5×4が光る配合で、母系にはフェアトライアル血脈が多く斬れよりも粘りを強く感じさせる走り。リアルスティールを重厚で長めにしたようなイメージだ。東スポ杯はスローを先行流れ込んで2着だったが、東京の上がり勝負よりも今の中山のパワー勝負のほうがパフォーマンスは上がる馬だろう。戸崎がスローに持ち込みそうだし前残り十分とみた。

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例によってNETKEIBAの全頭解説より1~3着馬を

ダノンザキッド
ミッキーブリランテやオールザワールドの下で、母エピックラヴはヴァントー賞(仏G3・芝1850m)勝ち。牝祖AlcandoはビヴァリーヒルズH(米G1・芝9F)勝ち。母父Dansiliはハービンジャーの父。デビュー戦でワンダフルタウンを問題にしなかった素質馬で、つづく東スポ杯も完勝で2戦2勝とした。ジャスタウェイ×Dansiliらしいナスペリオン的ストライドはヴェロックスに近いイメージで、大箱ベターではあるだろう。(距離◎スピード○底力◎コース○)



オーソクレース
クリソベリルやリアファルの甥で、母マリアライトは宝塚記念とエリザベス女王杯勝ち。エピファネイア×ディープインパクトはアリストテレスやムジカと同じで、Sadler's Wellsのクロスも同じ。本格的な中長距離血統で完成は菊花賞というイメージだが、父譲りのしなやかな体質と母譲りの手先の強さはさすが良血好配合。意外に実戦では従順で、アイビーで馬群を割って差したのは収穫だった。(距離◎スピード◎底力◎コース○)



ヨーホーレイク
カミノタサハラ、ボレアス、ベルキャニオン、ストーンリッジ、マウントシャスタ、フォックスクリーク、クリアザトラック、ラベンダーヴァレイの全弟でキラウエアの半弟。母母クロカミは府中牝馬SとオータムHに勝った。ディープ×フレンチデピュティはショウナンパンドラ、マカヒキ、アンジュデジールなどが出たニックス。きょうだいの中でも脚長でゆったり走るので中距離が合っているが、内回りの多頭数で器用に立ち回れるかが心配。(距離◎スピード○底力◎コース○)



予想コメントで書いたようにタイトルホルダーがスローで逃げるとみていたんですが、スタートでヨーホーレイクと接触したランドオブリバティが行く気になっているのを見た戸崎は譲って番手に控え、レースラップは前後半61.3-60.9ですからまあ緩めの平均ペース

ランドオブリバティは先頭に立つとモノを見るようで、道中はずっと外に張り気味で、4角で逆手前になってからはもはや制御不能となってしまいました…(カベになっていたバニシングポイントが早々と後退してしまったのも辛かった)

ダノンザキッドは道中は外の4番手、ヴェロックスと似たナスペリオン的ストライドで走る馬で、中山内回りをいかにストライドロスなく回ってこれるかが一つポイントでしたが、外を回したけれど3~4角の手前替えは決してスムーズではなく、直線も右手前のまま豪快なフォームでゴールまで駆け抜けて、体力と脚力でねじ伏せたという勝利でした

「エピックラヴっていい繁殖ですよね(・∀・)子供はみんな“いいハービンジャー”って感じ」とよく言ってるんですが、ハービンジャーよりも整然とした美しい配合で、ハービンジャー以上にDansiliの美点をよく伝える繁殖牝馬やと思ってます

そこにジャスタウェイですから、ハーツクライとWild AgainとFasiliのナスペリオン的美点が表現されることとなり、ディープ系の斬れとはまた違う、一完歩一アクションがズドーンズドーンと形容したくなるストライドで力強く伸びつづける脚質

だからやっぱり中山内回りよりは東京がベターで、東スポ杯よりはパフォーマンスを落とすんじゃないかとみていたんですが、まあオーソクレースもヨーホーレイクもシュヴァリエローズも大箱ベターなタイプではあります

それこそ去年のコントレイルにしても東スポ杯より明らかにパフォーマンスダウンしながら勝ちきったように、東京向きの中距離馬たちが若さをのぞかせながら多少なりともパフォーマンスを落としながら叩き合った結果、現状の元値の順にゴールインしたというべきですかね

オーソクレースは4角でランドが逸走したときに驚いて逆手前になって減速してしまい、でもそこからまた伸びていたし、募集馬ツアーのときはもっと繊細で臆病者に見えたので、いろいろ経験値を積んで気性的にはいいほうに向いているとは思います…血統とか体質は菊花賞って感じしますが

ヨーホーレイクは体型に伸びがあって走りも重厚で、クロウキャニオン仔のなかではカミノタサハラに近いタイプやと思ってますが、友道厩舎ならこのまま重厚な方面に完成するのでしょう


タイトルホルダーはドゥラメンテ産駒らしからぬところを買って中山のここで狙ってみたんですが、さすがに先行マージンを奪えないと上位3頭に先着するのは難しかったですね

そんなわけでまだまだ若い2歳馬たちのレースやったなあ…という感じで、逸走してしまったランドはもちろん、上位入線馬も決してペストパフォーマンスを叩き出したわけではなかったと思うので、ここから来春にどれだけ成長できるか、という目線で追っていきたいです

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