栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第82回日本ダービー回顧~“なのにの名馬”美しいストライドで父のレコードを塗り替える

2015-06-01 11:01:11 | 血統予想

東京10R 日本ダービー
◎11.サトノクラウン
○14.ドゥラメンテ
サトノクラウンは母が強力な父母相似配合で、そこにアウトブリードのマージュが配された緊張と緩和のリズムが良い好配合。母父ロッシーニはイルーシヴクオリティ(ショウナンアデラの母父)の弟で、この兄弟が母系に入って成功している根拠といえる母タッチオブグレートネスの名血を、ラストタイクーンやヴェットーリを使って密に増幅しているのも見事だ。たとえばサトノクラウンを父に置いて、ドゥラメンテとリアルスティールを母に置いて架空の5代血統表をつくってみると、どちらも実に好配合になるので驚かされるが、同世代の良血馬との配合が決まりやすいというのはサトノクラウンの種牡馬としての大きな魅力で、そのあたりまで踏まえた血統屋の目線でいうと、今年のダービーを勝つべき血統はサトノクラウンではないかという、オカルトと言われるかもしれないがそんな◎を打ってみたくなった。もちろん他にも根拠はあって、ナスキロ柔い体質としなやかなストライドは東京向きで、この馬が最も“ハッとする脚”を使ったのは中山の弥生賞ではなく東京の東スポ杯。だから当初から、皐月賞で凡走してもダービーで見直す構えでいた。そして東京でナスキロ柔い馬に乗せたらルメールは名人で、テン乗りの皐月賞は名人にしては下手に乗ってしまったものの、名人が同じ失敗を繰り返すとは思えない。あれぐらい乗り損ねたら却って次は◎を打ちやすい。ドゥラメンテはダービーを獲るために生まれてきたような血統背景で、叔父のルーラーシップより配合は上だと絶賛してきたし、もちろん東京向きだと思うが、サトノクラウンのこの好配合とルメールの手腕をもってすれば、ひと泡吹かせることも十分可能だと思っている。

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東スポ杯は◎サトノクラウン、共同通信は◎ドゥラメンテ、若葉Sは◎アダムスブリッジ、スプリングSは◎リアルスティール、皐月賞は◎リアルスティール、青葉賞は◎レーヴミストラル、そしてダービーは◎サトノクラウン

クラシックに直結するようなレースでは、血統で予想することの面白さ、クラシックロードを展望することの楽しさを伝えたいと思って毎週◎を考えてコメントを書いてきて、もう一回やり直しても上のレースの◎はたぶん変わらないし、最低限の仕事はできたのではないかという小さな自負はあります

サトノクラウンはスプリンターだった全姉とどこが違うのか、ドゥラメンテとルーラーシップの配合の比較、アダムスブリッジのHaloクロスらしさとは、リアルスティールはラングレーというより脚質的にはジェンティルドンナなのではないか、レーヴミストラルは内回りばっかり使ってたらダービー間に合わんぞ、そんなことを書きながらクラシックロードを追いかけてきました

『サラブレ』5月号では桜花賞や皐月賞も終わってない段階でオークスとダービーの本命馬と穴馬を書くことになり、オークスは本命ルージュバックで穴クルミナル、ダービーは本命サトノクラウンで穴ドゥラメンテ

取り上げた馬がみんな馬券になってくれたので結果オーライではありましたが、私はクルミナルはマイラーではないから桜花賞よりオークスのほうが着順は上がると思っていたし、サトノクラウンもドゥラメンテも明らかに東京向きで、サトノは皐月でも3着ぐらいに格好はつけるだろうけどドゥラメンテは大敗まであると考えていて(だから皐月は本命リアルスティール穴アダムスブリッジで書いた)、だからダービーではドゥラメンテのほうが人気を落としているだろうという読みやったのです(^ ^;)

けっきょく直前予想でもそのままの印で貫いたのは、クルミナルとドゥラメンテは思ったより走ったけど、でもルージュバックとサトノクラウンだって絶対あんなもんじゃないという思いがありました

ドゥラメンテについては前エントリ「5/30,31の血統屋コンテンツ推奨馬の結果速報」でも書いたし、この血統については母母エアグルーヴからもう書き尽くしてきた感があるのでここでは深くは掘らないですが、どう見ても東京向きの血統で東京向きのストライドで走るのに皐月賞を破天荒な競馬でぶっこ抜いてしまった時点で、もう私が配合論であれこれ語るレベルではない、“なのにの名馬”の領域に入ってしまった

サトノクラウンは奇数枠でゲート内で待たされるとホンマにジッとしてへんな~と思いながら観ていたら案の定出遅れ、実にしなやかな体質だけとってもナスキロ柔い中距離馬だと確信できますが、まあ本質的には1800~2000mベストで、このペースで2400mを走ったら馬の格だけでなく距離適性やスタミナでもドゥラメンテが上で、おまけにあのポジションでは“なのにの名馬”の影も踏めませんでした

でもパドックを見てもレースを見ても、これやっぱり良い種牡馬になるだろうな~という思いは膨らむばかりで、血統配合については下記エントリ「ライバルの血(2)」を読んでいただきたいですが、種牡馬としては“だからの一流馬”が“なのにの名馬”を凌駕するというのもよくあること

もちろんドゥラメンテも名血名配合ですから名種牡馬になるかもしれませんが、そのドゥラメンテやリアルスティールと配合して、好形になるというのはかなり大きいと思うのですよ

サトノラーゼンは有力馬が外目を回ったのを尻目に内々でロスなく立ち回りましたが、この馬はディープにCaerleonですから京都外回りの重賞を勝つぐらいのナスキロ柔さがある一方で、母父のRoberto系の影響も感じさせる脚捌きで、ようするに斬れと機動力の両刀使いというタイプ

そういう弱点の少ないレース巧者ぶりをテン乗りの岩田が活かしきったのはさすがでしたが、これで10戦[3.4.3.0]、これからも高いレベルで走りつづけることになるでしょうが、更に2着3着が多くなりそうな予感もあります

リアルスティールは位置取り云々でまたあれこれ言われているようですが、直線追い出して前との差を詰めたのならともかく、最後は左手前に替えて伸びあぐんでいたし、東京2400mで今日のペースだとどこにいても末脚がもたなかった、という解釈でいいんじゃないかと

私は皐月賞ではジェンティルドンナの有馬をイメージして◎を打ったんですが、そのイメージどおりにパーフェクトに運んだのにねじ伏せられたのは陣営としては大ショックだっただろうし、だから内心東京ではもう勝ち目はないんじゃないかと祐一も矢作先生も思っていて、「同じ競馬では勝ち目はないから、とにかく何か違うことをやってみよう」というぐらいのドゥラメンテの後ろだったんじゃないかと

スローの共同通信ではドゥラメンテを封じたように、ジェンティルが勝つようなスローの加速勝負では強いタイプで、今日はジェンティルが連覇したJCではなく4着に負けてしまったJCに近いゾーンの競馬になってしまった

でもジェンティル同様、ゾーンから外れたレースでも4着だから、弱い馬のはずがない

人気3頭については「競馬道ONLINE」に書いた血統解説も再掲しておきます

サトノクラウン
母方はマイラーも体質は東京向き
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2012104668/
チェヴァリーパークS(英G1・芝6F)のライトニングパールの全弟で、母ジョコンダはキラヴーランS(愛G3・芝1400m)3着。母父ロッシーニはロベールパパン賞(仏G2・芝1100m)勝ち馬で、母母父ヴェットーリは仏2000ギニー勝ち馬。父マージュはセントジェイムズパレスS(英G1・芝8F)に勝ち英ダービー2着、産駒にアスタルテ賞(仏G1芝1600m)のマルバイユ(マルセリーナやグランデッツァの母)やジャパンC2着のインディジェナスなどがいる。父系は中距離OKで母方はマイラーの血が強い。母ジョコンダはミスタープロスペクター3×4とホープスプリングスエターナル≒サーアイヴァーのニアリークロス3・4×4を持つが、父マージュはあまり強いクロスを持たないので、緊張と緩和のメリハリがきいた好配合となった。弥生賞のように内回りコースでの機動力も兼備してはいるが、ナスキロ柔い体質なのでベストパフォーマンスを出せるのは東京と外回りの2000m前後だろう。皐月賞はスタート後手でいろいろロスや不利が重なったし、東京で好位で流れに乗れれば巻き返しがあっていい。母方の血から2400m大歓迎とまでは言えないのでスローがベターだろう。

ドゥラメンテ
叔父と似た豪快なストライド
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2012104511/
アドマイヤセプターの全妹で、母アドマイヤグルーヴはエリザベス女王杯勝ち馬、母母エアグルーヴは秋天とオークスに勝った女傑。叔父のルーラーシップとは父キングカメハメハも同じなので3/4同血の間柄になるが、母父にサンデーサイレンスが入るぶん配合はこちらのほうが上だ。ホーンビーム≒パロクサイドのニアリークロスがこの配合のキモで、しなやかな体質で脚長で大きなストライドで、スピードに乗ってからのアクションが圧巻。だからルーラーシップもそうだったように、中山内回りの多頭数では器用に立ち回れないのではないかと心配していたが、フタを開けてみればあの破天荒な勝ちっぷり。ベストは2000mだろうがダービーは2000mベストの馬が勝ちやすいレースだし、東京に舞台が替わるのは間違いなくプラスだ。

リアルスティール
ジェンティルのような俊敏加速
http://db.netkeiba.com/horse/2012104889/
ラングレーの全弟。母母モネヴァシアはキングマンボの全妹で産駒に欧2歳牝馬チャンピオンのランプルスティルトスキンがいる。その母ミエスクはマイルの大レースを勝ちまくった名牝。ディープインパクト×ストームキャットはキズナやラキシスやアユサンなどと同じで、サーゲイロード≒セクレタリアトの3/4同血クロスが派生するので柔らかな体質でストライドで走る外回り向きの脚質になりやすい。しかし本馬は母方のマイラー資質も強い体型体質で、肉付きがよくてラングレーの3歳時のような緩さもなく、ディープ産駒にしてはピッチ走法で反応が俊敏で、トップスピードに乗るのが速いのが長所。脚質的にはジェンティルドンナに近いものがある。スローのスプリングSや共同通信杯を俊敏なピッチで差し、皐月賞ではダッシュよく好位に付けて抜け出す完璧な取り口だった。ラングレーもパンとしてきたら1800mがベストにみえるだけに、ここは持続力勝負より加速力勝負、ピッチで抜け出してしまえるようなスローのヨーイドンが希望だろう。

今さらですがキンカメ×サンデーについて
http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/5b1df34c49525541cf9dd2772012142f
ライバルの血(2)~202X年から逆算した、配合史的ダービー予想
http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/182fa417ea5535b5853834df264abff0

コメント (23)
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5/30,31の血統屋コンテンツ推奨馬の結果速報

2015-06-01 09:43:37 | POG

■『望田潤のPOG好配合馬リスト(2014)』で望田潤が推奨したドゥラメンテ(牡2歳)が日曜東京10Rの日本ダービー(G1・芝2400m)を勝ちました。

◎ドゥラメンテ(牡、母アドマイヤグルーヴ)
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2012104511/
アドマイヤセプターとボージェストの全弟で、母アドマイヤグルーヴはエリザベス女王杯勝ち。母母エアグルーヴは名馬名繁殖。キンカメ×エアグルーヴのルーラーシップとは3/4同血で、この組み合わせはHornbeam≒パロクサイドのニアリークロス6×5・5になるのがポイントだ。ボージェストも走る脚はみせていたし、本馬は牡だからルーラーのようなナタ斬れ爆発だろう。

■『一口馬主好配合馬ピックアップ(2013)』で栗山求が取り上げたビットレート(牡3歳)が土曜京都4Rの未勝利戦(芝1400m)を勝ち上がりました。

★キャロットクラブ
父スペシャルウィーク
母スルーレート(フレンチデピュティ)
牝 募集価格:1600万円
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2012104690/
フラワーCで2着に逃げ粘り、ダートでも実績を残した母スルーレート。3番子のハイアーレートは新馬勝ちのあと札幌2歳Sで3着と健闘しました。本馬の父はスペシャルウィーク。2代母スルーオールは「Seattle Slew×Mr.Prospector」で、姉弟で活躍したスぺシャルウィーク産駒クラウンプリンセス(小倉記念3着)とリーチザクラウン(マイラーズC、きさらぎ賞)の母クラウンピースと同じ組み合わせです。母の父がフレンチデピュティでこの血統構成なのでおそらくダート向きだと思われますが、力強い先行力を武器とする好マイラーとなるでしょう。ダート交流重賞の常連となってコンスタントに賞金を稼いでくれることが理想です。(栗山)

■土曜京都9R御池特別 コウエイタケル(POG・望田)
■日曜東京6R500万下 マイアベーア(ディープ・望田&栗山)
■日曜東京10R日本ダービー2着 サトノラーゼン(ディープ・栗山)

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ドゥラメンテの配合については、母父にサンデーが入るぶんルーラーシップより配合は上で、Hornbeam≒パロクサイドのニアリークロスの継続+Specialで、全体に「Northern Dancer+Hyperion+Nasrullah」の組み合わせでまとめていて、キンカメ×サンデーとしてもベストの配合だと書いてきました

「血統屋」のPOG書籍でキングカメハメハ産駒の好配合を12頭選ぶお仕事を一昨年からやってますが、キンカメ×ダイナカール牝系の組み合わせは、ドゥラメンテもボージェストもプリンスダムも全部取り上げているし、これからも取り上げつづけるでしょう

キンカメの一番星だと推奨した馬が、ルーラーシップを更にしなやかにしたような馬が皐月賞をぶっこ抜いたのですから、ダービーも大声で◎を打つべきなのだろうし、実際昨秋に凄い末脚で未勝利を勝ち上がったときからルーラーシップと比較して、「ダービーは◎ドゥラメンテでいきたい」と書いてもきました

そもそもエアグルーヴが競走馬としてブイブイ言わせていた頃から「Hornbeam≒パロクサイドのニアリークロスによって、トニービンの美点が最も表現された配合だ」と書いていたし、もちろんルーラーシップやアドマイヤセプターが出てきたときも同じことを書きつづけて、もう「Hornbeam≒パロクサイド」という文字列を何回タイプしたのか数えるのも恐ろしい(^ ^;)

だからいよいよダービーの予想という段になり、大本命馬に支持されるのが決定的な状況になって、◎の根拠をHornbeam≒パロクサイドで大声で叫ぶのが、ちょっと気恥ずかしくなってしまったというのはありましたね~

各媒体で書かせていただいているレース予想のお仕事は、「血統屋」というよりも「予想芸人」のカテゴリに入るものだと思っていて、もちろん全レース当てようと思って予想しているんですが、私の予想能力でまずやるべきことは、「血統で予想することの楽しさ・面白さ」を伝えることだろう、と思っていつも手の内さらしまくりのコメントを書いているのです

だから晴の大舞台のダービーの予想コメントを読んで、「あれ?このナイツの漫才、こないだNHKで観たやつと同じやん」と思われるのは面白くないと思ったし、「やっぱり◎の根拠はHornbeam≒パロクサイドかいな」と言われるのは、東京2400mにおける血統屋の見解としては首尾一貫でいいんでしょうが、予想芸人としてのエンタテイメントという意味ではちょっとアカンかなあ~と(ナイツの漫才は同じネタを観てもまたオモロイんですけどね)

それと皐月賞で破格の勝ち方をした時点で、もう競走馬としては私なんかが血統論で語るべき存在ではなくなってしまった、完全に“なのにの名馬”の領域に入ってしまったという思いもあって、そりゃまあ何か不利やアクシデントで負けてしまうこともあるだろうけど、この先大レースをいくつも勝つのは間違いないだろうし、そんな“なのに名馬”を、「Hornbeam≒パロクサイドだから」と語るのも失礼だろうというのもありました

でもずっとHornbeam≒パロクサイドを追いかけてきた私としては、そしてセレクトセールで実馬を見てサトノクラウンの配合に魅かれた私としては、この2頭が日本ダービーの直線を美しいストライドで駆け抜けるのを目の当たりにして、残り200mぐらいからずっと幸せな気分でした

ホワ~ンと幸せな気分で、うおおおおおおと唸ることもなかったダービーでした(・∀・)

馬券は大して儲かりませんでしたが、また一年間、競馬の仕事を頑張れると思えた瞬間でした…ありがとうドゥラメンテ

ダービーのレース回顧はこれから書きます

コメント (1)
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