栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

兎追いし宝塚

2015-06-23 11:40:11 | 配合論

鳴尾記念のラブリーデイはエアソミュールを直後でマークし、4角を回りながらこれに並びかけて抜け出すという阪神内2000mの教科書的勝ち方で、同じ内2000mの中山金杯でロゴタイプのスパートに呼応して捲り差したリプレイを見ているかのようで、一言でいうと内2000mのG3なら格が上だという勝ち方

一方で外2200mの京都記念では、超スローの番手でスズカデヴィアスを可愛がってチョイ差しという実にソツのないレース運びで、キズナの追い込みを封じ込めてみせました
http://db.netkeiba.com/horse/ped/2010104298/

キングカメハメハ×ダンスインザダークというのはNijinskyとGraustarkとTom FoolとRaise a Nativeのクロスになり、胴伸びのある体型と持続力がONになりやすいので東京外回り向きのジワジワ差しになりやすい→獲得賞金ベスト3はショウリュウムーン、アルディエス、キングカラカウア

母系にトニービンを引くキングカメハメハ産駒はHornbeamのクロスになるので、「HyperionとNasrullah」的なナタの斬れがONになりやすく、長い直線を持続力ある斬れでズドーンズドーンと差してくるような脚質になりやすい→ドゥラメンテ、ルーラーシップ、ミッキードリーム

一方母系にRobertoが入るキングカメハメハ産駒はGold Digger≒Bramaleaのニアリークロスになるので、Kingmambo(Nashua≒Nantallah3×5)とRoberto(Royal Charger≒NasrullahとSir Gallahad=Bull DogとBlue Larkspurを使った強力な父母相似)のパワーや機動力をONにする仕掛けとなり、どちらかというと小回りコース向きの小脚で走るタイプが出やすい→ハタノヴァンクール、グランドシチー、ケイアイエレガント(レッツゴードンキやフィフスペトルなどもこのカテゴリ)

ラブリーデイの場合は、母がサンデー父系×ペルースポート牝系でHalo≒Red God3×6なのもポイントで、これはアロマティコと似た配合形といえ、つまり母からはアロマティコ的な軽い機動力を、小回り1800mをビュンと捲り差すような脚をも受け継いでいると考えられるのです

ラブリーデイは脚が短くて飛節のつくりなどは明らかにRobertoの影響が強く、しかし体質は意外なほどしなやかで、これは「ミスプロ×サンデー」の組み合わせやHornbeamのクロスや母方のHaloのニアリークロスの影響もあるでしょう

脚捌きはRoberto的なので内回りコースの4角でのスピードの乗りがよく鳴尾記念のような捲りはお手のもの、一方で東京や外回りでもスローの上がりの競馬になるとしなやかさとピッチで絶妙のタイミングで抜け出せる

戦績を見てのとおり、2500mを超える距離で本質的なスタミナを要求されるレースにならなければ、つまり2000m級のレースではほとんど崩れたことがない、非常に弱点の少ない中距離馬です

キンカメ産駒で二兎も三兎も追う配合をやると、ソルレヴァンテのようにコース馬場不問で2着を重ねる準オープン馬になってしまうのだろう…ということは下記エントリで書きましたが、ラブリーデイの場合は機動力と斬れの二兎を追った配合で、その両方を重賞レベルで兼備したなかなか稀有な例と言っていいでしょう

しかし「特化していない」ということは、レースレベルが上がるにつれ「どっちつかず」という弱点にもなりうる

レッツゴードンキの配合のいいところは、ナスキロとかHornbeamとか、柔らかくストライドを伸ばすような血をあまり増幅していない点で、Kingmambo≒ジェイドロバリーの必殺ニアリークロスにRobertoとSticky Case(HyperionとFair Trial)を絡め、またTom Foolを薄くクロスすることで、全体として機動力特化でまとめているところだろうと考えていて、スーパースローの桜花賞の逃げ切りは、Mahmoudさんに言わせると「先頭に立って差しの競馬をした」、私に言わせると「逃げて捲った」、機動力特化の勝利なのだと思うのです

ドゥラメンテのいいところは、Hornbeam≒パロクサイドにNureyevを絡めることで「HyperionとNasrullah(とNorthern Dancer)」的斬れでまとめている点で、全体としてしなやかにストライドを伸ばす方向に特化している点で、だからこの場合はRobertoやFair Trialを入れてピッチを上げたり掻き込んだりする必要は一切なかった

“機動力の兎”で走るレッツゴードンキが外回りの桜花賞を逃げ切り、“斬れの兎”で走るドゥラメンテが内回りの皐月賞をぶち抜いたというのは驚きの結果でしたが、それはつまり、究極に近いところまで特化した能力だからこそ、規格外の大仕事を成し遂げることができたのだという言い方もできるわけで、そこは特化することの大事さを噛みしめるべきではないかと思うのです

ケイアイエレガントは母がA.P.Indy産駒でSecretariat≒Sir Gaylord3×6、そして自身はNijinskyのクロスなので東京をストライドで走るタイプに出たのは順当なのですが、一方で母母父にRobertoが入るので小回りコースを上手いこと先行できる兎も追っかけていて、ここにRobertoがなかったら福島牝馬Sは勝てなかったでしょうがヴィクトリアマイルはギリギリ逃げ切れたかもしれません

宝塚の予習はこんなもんで、今日は昼飯食ったらビッグレッド系クラブの一口ピックに取りかかり、夜はMahmoudさんとのラッ血対談をという一日

ソルレヴァンテの欲深い配合から学ぶべきこと
http://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/ce6d87c64420ea2b684a30e0a44f1e33

コメント (12)
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