その手をつかんでいいですか【下】
「トイレットペーパーの原料は中国から輸入されるから生産されなくなる」「27度のお湯を飲むとウィルスを殺すことができる」「ウォッカは消毒液の代わりになる」情報の渦にのまれ、人々は右往左往。全てデマであるということはネットでもテレビでも伝えられている。それでも、空になった棚を目にしてしまえば、不安になる。その情報が誤りだったとしても、実際に物がなくなっている現実を目の当たりにすれば動かずにはおれない。私自身はマスクや紙類を購入しようと駆け回らなかったが、それでも不安にはなった。自分のことだけではなく、遠くに住む家族のことを考えると、確保しておいた方がいいのかもしれないと思った。人々を動かすのは、情報ではなく不安感ではないかと。情報がなくても不安、ありすぎても何を信じていいのかわからなくて不安。だから少しでも自分の不安を救ってくれるかもしれないものにすがる。それにかこつけて金儲けをしようとする人間は論外だが、情報によって動いてしまう人々は責められようか。私も情報にすがる人間の一人だ。
情報というたくさんの手が伸びるこの世界で、どの手をつかむか。私たちはほんの少し立ち止まる時間を持つ時がきたのかもしれない。少しだけ考える。身近な人と話をしてみる。それだけで不安感は和らぐこともあるかもと。モヤモヤする前に、できることをまずはと思う。(終わり)
【波風立男氏談】奥さんがドラッグストアーに勤めている方から、「なんでマスク置いて無いのよ」の非難はまだしも、「マスク売らないで、お前がマスクしているのはおかしいだろう」と怒鳴る客が一人や二人で無いと言っていた。情報混乱の時、それまで身につけた品性や知性が試される。不安を共有出来る人がいてくれたら救われる・・・・。