波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

言葉のケイコ【その参拾捌】(さんじゅうはち)

2020年06月16日 | 【保管】言葉のケイコ


人間は楽園に帰ることができるのか (上)


芥川作家・村田沙耶香さんの小説を読むようになった。もともとは、受賞作の『コンビニ人間』がスタート。波風食堂の読書交流会でも一大ブームとなった『コンビニ人間』。それ以外の作品も読んでみようと思い、まず『星が吸う水』を手に取る。『コンビニ人間』のイメージで読むと、少し戸惑う。男女の性について、独特な視点から描かれ、過激な言葉の使い方はあるもののするすると読めてしまう。ただ、正直理解が追いつかないところもある。それもあり、しばらく村田さんの本はいいやと思って時間を空けたら無性にその世界観に触れたくなり、『地球星人』を読む。ヒトの営みを超えた世界がそこには広がっており、感想としては「気持ち悪い」。それでも村田さんの世界の構築の仕方は見事としか言いようがない。いつまでも頭のどこかに残り続け、しばらく時間を空けるとまた読みたくなる。そこでいつか読もうと思っていた『殺人出産』と、2月発売の『丸の内魔法少女ミラクリーナ』を読む。どちらも頭の先から足の先まで突き抜けるような感覚。特に『殺人出産』の衝撃は凄まじかった。10人産めば1人殺せるというシステムが構築された世界。生と死、愛と性、正常と異常、そういった概念が根本から覆される。理解などできなくてもいい。脳を揺さぶられるこの感じこそ、読書の醍醐味だと教えてくれる。

もっ村田さんの世界を感じたい。そう思って間を置かずに手に取った『消滅世界』。人間は楽園に帰ることができるのか。(次回に続く)


【波風氏談】このケイコさんの書評を読み、「そうだ、村田沙耶香を読もうと思っていたんだ。」と思い出した。新聞書評(小野正嗣)『村田沙耶香が書いているいるのは〈偉大なる世界文学だ〉』で、衝撃的な『コンビニ人間』で何かわかったような気になっている場合ではない。

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