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映画「天才作家の妻/40年目の真実(The Wife)」ノーベル賞作家の虚像

2019-09-01 20:30:44 | 映画

                 

 真夜中にスウェーデンのストックホルムからの電話で叩き起こされたジョセフ・キャッスルマン(ジョナサン・プライス)とジョーン(グレン・クローズ)は、やや腹立たしい気分で受話器を取った。相手の言葉を聞くうちに眠気は吹っ飛び満面の笑みが浮かぶ。その電話は「ノーベル文学賞に決まりました」だった。ベッドに立ってぴょんぴょんと年甲斐もなく小躍りする二人。

 映画は、この二人の過去にさかのぼり夫婦の実態を暴き出す。1958年スミス・カレッジの若きジョセフ・キャッスルマン教授(ハリー・ロイド)の部屋に若きジョーン(アニー・スターク)を招き入れた時から始まる。創作意欲に燃えているジョーンを、ジョセフは下心があってのことだった。しかもジョセフは結婚していて子供まである身だが、夫婦仲は最悪という状態。そんな男に惚れたのがジョーンだった。

 この時代、女流作家が陽の目を見ることは殆どない。ある女流作家が「母校の図書館に飾られるのが落ちよ」となる。ジョーンは出版社で働いているとき、編集長の何気ない言葉「才能のあるやつはいないかなあ」を小耳にはさみ編集長に「いますわ」

 夫ジョセフの作品を読んだジョーン「人物造形に力強さがない。例えばこの会話……」高慢なジョセフは、気色ばむがジョーンの泣き落としで文章が改変される。その作品が見事採用になる。以後、部分的なジョーンの加筆訂正がつづくが、子育てをジョセフ、執筆をジョーンという形に変わっていく。

 ノーベル賞受賞作品は、ほとんどジョーンの執筆だった。それを一切表に出さないようにするジョーンでもあった。授賞式のスピーチにクライマックスが訪れる。前もってジョーンは、スピーチには私のことを一切出さないでほしいと懇願していた。ところが、ジョセフは長々とわが妻に感謝の言葉を連ねた。

 みるみるジョーンの表情が変わっていく。(この時のグレン・クローズの表情の演技は素晴らしかった)あれほど頼んだのに人の心を読めない高慢な男、なんども浮気で泣かされた。妻の心の傷を思いやる心のない人。スピーチが終わるとそそくさと式場を後にした。ホテルので犬も食わない夫婦喧嘩。激高したジョセフが心臓発作で他界するという結末で終わる。

 この映画は、グレン・クローズに注目。グレン・クローズは、1987年のマイケル・ダグラスをストーカーする女を鬼気迫る演技で好評を博した。テレビ・ドラマでは2007年~2012年の「ダメージ」がある。敏腕で冷血な弁護士パティ・ヒューズの存在感が強烈だった。

 ちなみに、若きジョーンを演じたアニタ・スタークは、グレン・クローズの娘なのだ。観ていてグレン・クローズの面影があるなあと思っていたら娘だったとは、当然面影を受け継いでいる。2017年制作 劇場公開2019年1月

            
    
            
            
    

監督
ビョルン・ルンゲ1961年6月スウェーデン生まれ。

キャスト
グレン・クローズ1947年3月コネチカット州グリニッチ生まれ。

ジョナサン・プライス1947年6月イギリス、ウェールズ生まれ。

クリスチャン・スレイター1969年8月ニューヨーク州ニューヨーク市生まれ。

マックス・アイアンズ1985年10月イギリス、ロンドン生まれ。

アニー・スターク1988年4月コネチカット州生まれ。

ハリー・ロイド1983年11月イギリス、ロンドン生まれ。


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