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映画「シドニー・ホールの失踪」文章の天才と言われた男の生きざま

2018-10-21 14:41:20 | 映画

          
 作文の課題は「人生の意味」。夜、タイプライターを前にして書き出しを思索するシドニー・ホール(ローガン・ラーマン)。ようやく決まった書き出しは、「ヴェローリアには独特の魅力がある」。と言いながら彼女の傲慢さや冷淡さを批判する。

 そして「だが、僕は外見の美しさではなく、内なる少女に欲情した。自慰の時、夢想したのはその少女の姿だ。彼女の太ももや平らなおなかではない。“行かないで”と僕にすがる姿を妄想した。“本当の私を分かるのはあなただけだ”と。果てるとテーブルの上にたまった精液を見て思った。“独りじゃむなしい”」これを教室で読んだ。担任の先生は「不適切」だと指摘する。

 教師の会議でシドニーを擁護したという英語の教師は、「君の作品は天才的だ」と言って君のファンだとも言う。その教師に褒められた小説「郊外の悲劇」はミリオンセラーとなり、新聞等の印刷報道、文学、作曲に与えられるアメリカで最も権威があるピューリッツア賞にノミネートされた。この朗報は出版社からもたらされた。競合する相手は「パリへのプロローグ」を書いたフランシス・ビショップだ。

 順風満帆に見えるシドニーにも幻覚を見るという悩みがある。医師は「脳の右側に瘢痕(はんこん)組織の形跡がある。部分発作だろう」という。天才的なシドニーの家庭環境もやや風変わりで、シドニー自身も変わったところがある。

 シドニーの家の向かいにぜんそく持ちの可愛いメロディ(エル・ファニング)がいる。ちょっと心を動かされる。この子もちょっと風変わり。シドニーが道路を渡ってメロディに近づくと、「道路を渡らないで」と言ってニコンのカメラでシドニーの写真を撮る。

 突然成人して放浪するシドニーが現れる。図書館を回って自作の本をブリキの屑かごに投げ入れライターオイルを振りかけて火をつける。時々時間軸を狂わされる場面は、物語の流れにブレーキをかける印象になる。

 後半はミステリー気味な展開で、シドニーを探している男(カイル・チャンドラー)の正体も明らかになり、シドニーとメロディの安らかな死の寂寥感が残る。
 
 
 この映画を監督したショーン・クリステンセンは、ミュージシャン、映画制作者、アーティスト。 彼はPratt Instituteの卒業生で、イラストレーションとグラフィックデザインの学士号を取得している。 クリステンセンは2000年結成のインディーロックバンドStellastarrのメンバーでもある。クリステンセンは、ヴォーカルとギターを担当。人気の曲は「MY Coco」。

 映画制作関連では2013年に、2012年の短編映画「門限」のためにアカデミー賞最優秀実写短編映画賞を受賞。

 本作の面白いところは、挿入歌が意外だった。1939年のグレン・ミラー・オーケストラの代表曲「In the Mood」が流れ、エンディング・ロールではボブ・ディランの1971年リリース「Tomorrow is a L
ong Time」の趣向となっている。本作は劇場未公開。

 それではクリステンセンの「My Coco」とボブ・ディラン「Tomorrow is a Long Time」をよろしければ聴いてください。

「My Coco」の歌詞を少し。
私の頭脳を冷やして頭を落ち着かせる
私を刺激する、私のco-co-co
私の空のベッドにこっそり入る
そして、私のco-co-co

夏には、春に
公共の場所では、私のco-co-co
遠く離れた島で
私のco-co-coとレモネード

「Tomorrow is a Long Time」の歌詞も少し。
もし、今日がハイウェイでなければ
もし、今夜が曲がった街道でなければ
もし、明日があんなに遠くなければ
孤独なんて怖くないのに

愛しい人が待っていてくれたなら
彼女の優しい鼓動が聞こえたなら
彼女は隣に横たわっていたなら
僕もベッドでもう一度安らげるのに

監督
ショーン・クリステンセン ニューヨーク生まれ。年齢未詳

キャスト
ローガン・ラーマン1992年1月カリフォルニア州ビヴァリーヒルズ生まれ。
エル・ファニング1998年4月ジョージア州生まれ。
カイル・チャンドラー1965年9月ニューヨーク州バッファロー生まれ。
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