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読書「ラスト・チャイルド」ジョン・ハート

2012-12-16 11:44:57 | 読書

                
 “ノースカロライナ州レイヴン郡の一部が東部にかかったあたりは、完全な砂丘地帯でもなく完全な丘陵地帯でもなく完全な氾濫原でもない地域のものだ。州都ローリーからは2時間、海岸線からはおそらく1時間ほどの場所。
 郡北部は起伏に富んでいる。森があり沼地があり、30マイルにも及ぶ花崗岩の露出地帯ではかつて、金鉱石を採取するための坑道が掘られたという。
 北を源流とする川が郡を二分し、市街地から数マイルのところをかすめている。西はブドウ園や農場に最適な黒土。東は砂地で高級ゴルフコースの三角地帯となっており、そのさらに東には存続すら危ぶまれる小さく貧しい町がえんえんと連なっている”これが小説の舞台となる背景である。

 アリッサ・メリモン、ジョニー13歳のふたごの妹。行方不明になって1年。地元警察の刑事クライド・ラファイエット・ハントの捜査は行き詰まりを見せていた。
 一方ジョニーは、親友ジャックと妹を探し回っていた。そんなある日、ジョニーが橋のたもとの河原で昼寝をしていて目を覚ましたとき、橋の上でバイクと車の衝突事故で男が欄干から落下した。

 その男が言う「あの子を見つけた」そして「逃げろ」と。ここから事態が動き始め、縦糸と横糸が交錯して、著者の細かい状況描写と共に詩情を残しながら家族の愛や友情、それに男と女の情念がつまびらかにされる。ストーリーに全く瑕疵がなく余情も残り読後感はすこぶる良好だった。

 状況描写と言ったが、こんなのがある。“ヘッドライトを消し、割れたガラス瓶を踏み越えたところで車を止めた”このアンダーラインの部分は、あってもなくても文体の流れに関係ないように思われる。これは著者の癖かもしれない。こういう細部にこだわる描写が随所に現れる。

 そして、この作品を映画化すればいいかもしれないとも思う。クリント・イーストウッドあたりが監督すればいい作品になりそうだ。
 ちなみに、本書はアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞、英国推理作家協会賞最優秀スリラー賞を受賞している。
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