ルンルンピアノ

ピアノ教室の子どもたちとの楽しい毎日。。。。。。

522      早朝の電話

2006-12-08 22:05:20 | Weblog
※ AM6:38 湾岸線
  クリック♪



早朝、枕もとの電話の着信音で目覚める。
ネボケマナコの向こうに、受話器を取り上げ 「モシモシ」 と言うNが見えた。

「はい・・はい・・・エッ??」

Nの緊迫した声に、ただならぬ気配を感じる。

「はいっ 分かりました。 今からすぐに行きます」

受話器を置いたNが、 「水津さんの容態が急変したらしい。 今から行こう」

枕もとの時計を見ると5時40分を指していた。

すぐさまリビングへ駆け降りる。
洗面所で身支度をしていると、西宮のYさんに電話を入れるNの声が聞こえてきた。

昨夜買っておいたパンの袋をつかんでクルマに乗り込む。
出発時間はハッキリ覚えていないが6時10分頃だったと思う。

この日はもともと水津さんの病院へ行く予定だった。
まだ暗い明け方の空は、厚い雲でドンヨリとおおわれている。
予報通り、きょうは雨の1日となるのだろうか・・・・・

薄暗い道路はさすがにいつもより空いている。
湾岸線を降りて堺の病院へ到着したのは6時50分頃だった。

Nの後について階段を駆け上がる。
勇気をふりしぼって病室をのぞくと、ベッドに水津さんの姿はなく、キチンとたたまれた衣類だけが置かれていた。

ボンヤリ立ち尽くす私に 「どこへ移ったか聞いてみよう」 とNが声をかける。
ハッと気がつき、(そうか! 水津さんは別の部屋にいるのかも知れない!!) 

「あの・・・水津さんは何処に移ったんでしょうか?」 と、ナースセンターで番をしている看護婦さんにNが尋ねると、「ああ、水津さんなら向こうの部屋・・・・1階の安置室です」

「いま処置をしている最中なので下のロビーでお待ち下さい。 ご家族の方もそちらにいらっしゃいますので・・・」


声もなく階段をおりた。

電気のついていない薄暗いロビーの中で、水津さんの弟のSさん御夫妻と初めて対面。
自分でも驚くほど、まったく言葉が出ない。
心の準備が全然出来ていなかったせいだろうか・・・・

機械浴室の前を通り、コインランドリーのすぐ隣りの小部屋が安置室になっていた。
そっと中へ入ると、小さな祭壇の前で、白い布団に包まれ顔に白布をかぶせられた水津さんがいた。
Sさんが顔の白布をそっと取ると、想像以上にずっと穏やかな顔つきで目を閉じている水津さんの顔があった。
ヒゲもきれいに剃られ、普通にスヤスヤと気持ちよさそうに眠っているかのようだ。
「水津さん」 と声をかけると、目をパチッと開けて 「やあ!」 と言ってくれそうな、ごく普通の寝顔だった。
ただどうしても不自然に感じたのは、驚くほど小さくなってしまった水津さんの体と、手の甲で触れたときのホッペタの冷たい感触だった。

Sさん御夫妻と話している最中に西宮のYさんが到着。
その後事務所が開くまでのあいだ、『喫茶あじさい』 へ行き、Sさんからモーニングを御馳走になる。
皆がそれぞれ、水津さんとの楽しかった思い出をポツポツと語り出す。
今までまったく知らなかったエピソードもあり、今更ながら、自慢話など興味のかけらもなく飄々と生きてきた仙人の素顔に接し、自分の俗っぽさに頭が下がる思いがした。

病院へ戻り、Sさんと市役所へ行って事務的な手続きをしたあと、紹介された葬儀屋さんへ行く。
先導車について10分ほど走って街中を抜けた頃、どこか見覚えのある景色になった。

せまい路地を通り抜けて停まった場所は、以前フラッと訪れたことのある 『龍女神像』 が建つすぐそばの 「北波止 (きたはと)」 だった。

民家のように目立たない小さな建物の中に入る。
真新しい白木の棺に水津さんの小さな体が納められ、係りの人が慣れた手つきで綿を裂きながら体の周囲を飾っていく。

ひと通り打ち合わせをした後、NとYさんと3人で病院へ戻り、水津さんの荷物を引き上げる。
帰り際、元同室の患者さんのご家族で、いつも水津さんの様子を気遣って下さっていた方から声をかけられる。
「きのうは1日中しずかに眠っておられたんですよ。 調子がよくなって来られたのかなぁと喜んでいたのに・・・」
短いあいさつの言葉を交わして別れる。
ほんの小さな縁だったが、大きな温かさを感じた。
配膳やお掃除の係りの方からもあいさつされる。
水津さんの人柄のよさと人間的魅力の賜物なのだろう。

病院の出口で、院長先生と数名の看護婦さんに見送られる。
「お世話になりました・・」 とだけ言うのがやっとだった。
私達の知らないところで、水津さんに心やさしく接して頂いた方々に心からの感謝を申し上げます。

龍女神像そばの葬儀屋さんへ戻ると、読経の声が聞こえてきた。
ドアを開けると、棺の前でお坊さんが 「枕経」 をあげている最中だった。

その後、用意して下さっていたお昼を頂き、簡単に明日の打ち合わせをして外へ出る。
私達は宝塚へ、YさんとSさん御夫妻は水津さんの団地へと向かった。


夜ごはんの用意をしていなかったので、サイゼリアで食事をした。
明日は早起きだ。


おわり
コメント (10)
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