1月17日(火)
今年もこの日が来た。
朝9時半に清荒神駅集合。
この数年ずっと変わらぬパターンだ。
船越君のお母さんと、お兄さんのT君。
増田六段、野間六段、安用寺六段、大石六段、澤田六段、千田六段、森家の3人、それに今回幹事の竹内四段が集合。
山崎八段と川崎四段は対局や仕事の関係でやむを得ず欠席、糸谷八段は少し遅れますとの連絡が入った。
この日は寒さも緩みホッとするが、対局場や仕事先から駆けつけて来た子、毎回5時台の電車で来る子など様々だ。
取材の方も含め、全員でアパート跡地へ。
今年もいつの間にか、船越君の部屋へ続く辺りの草が刈られている。
毎年ありがたいことだなあと、つくづく思う。
敷地の中ほど、船越君の部屋だった辺りまで進み、小さな三脚を置いていつもの写真を乗せる。
草がフカフカしてなかなかうまくいかないが、なんとか立てた。
持ってきた花束をそっと地面へ置き、ひとりずつ進み出て手を合わせる。
船越君のお母さんが写真の前で、「🔴🔴ちゃん」と、やさしく呼びかける声が小さく聞こえた。
「たかちゃん」か「たかふみちゃん」だったのだろうか。
思わず胸がつまる。
全員が拝み終わり、しばらくしたところへ糸谷八段が到着。
前日対局だったようで、息を切らして走りこんできた。
物も言えないくらい、ひどい息の切れようで心配だったが、すぐにひざまずいて手を合わせる。
そのあと船越君の写真を囲み全員で記念撮影。
お母さんを交えて写るのは6年ぶりだ。
枯れ草に覆われたアパート跡地の向こうには、同じく震災を乗り越えてきた市場の壁が低く連なって見える。
こういう場所も、もうほとんど残っていないだろう。
それからいくつかのグループに分かれ、西宮市との市境近くにある、ゆずり葉緑地公園へ。
お母さんとTさん、森家の3人は、取材スタッフの車に同乗させて頂く。
カブト山を正面に見ながら、逆瀬川沿いのなだらかな坂道をグングン登る。
昔はこの川も水量が豊富で、セリ摘みに来る人の姿もあった。
緑地公園へ着いてすぐ、訓練に来たらしい3匹の犬が目に入る。
何年も前、やはりここで訓練中だった3匹の真っ黒なラブラドールが、丘の上から全速力で駆けおりて来て、
恐怖でかたまるNに飛びついて(じゃれついて)きたことを懐かしく思い出す。
テントで記帳して小さな花束を受け取り、少し上がったところにある鎮魂の碑に供え、手を合わせる。
そばの砂防ダムの天井からは、いつもと同じように、丸く切り取ったような薄いブルーの空が見える。
天気はいいが、ここまで上るとさすがに空気が冷たい。
それから再び下界へ戻り、すっかり恒例となった若水での新年会。
毎年最初に出される、鳥獣戯画の湯のみに入った昆布茶でホッとひと息つく。
この日は、『3年後の自分へ向けて』をテーマに1人ずつ語る。
「地道に努力するのみ」 「結婚して心の支えになる人が欲しい」 「旅行をいっぱいしたい」
「忍耐」 「ちょっとしたことに動じない、ビッグな人間になりたい」 「元気で生きていきたい」
「娘に恥じない父親になりたい」 「今やっている仕事をガンバってつなげていきたい」
「最近小さなことで苛立つことが多いので、もっと泰然としていたい」 「30代の余裕が欲しい」
「もっと仕事をやりたい」 「勇気を持って事にあたりたい」 などなど。
あと、向かい合った人からの質問に答えるというコーナーもあったが、こちらは諸事情により割愛。
食事の途中、船越君のお母さんが安用寺君のことを「アンギョウジさん」と言ってるのが聞こえてきた。
これはずっと以前からのことで、久しぶりに聞いて、微笑ましくなつかしい気持ちになった。
食事のあとは、残った6人(今年は疲れ気味の子が多く、帰宅組が多かった)で、最上階にある温泉へ。
女風呂は入ってから出るまでずっと貸し切り状態で、最後までノビノビできた。
シャンプーして体を洗ったあと頭にタオルを巻くが、不器用な私はこれがとってもニガテ。
苦心しながらなんとか巻き終えるが、鏡にうつるのは「さて~は南京玉すだれ♪」の人みたいだ。
そのあと露天風呂でキモチよく浸かっていると、そばで急にバタバタッと音がする。
(えっ?) (もしかしてチカン??) と身構えるが、犯人は、つがいのハトだった。
温泉を囲う岩のそばの小さな植え込みで、低く鳴きながら、しきりに何かつついている。
驚かせないよう、なるべく体を動かさず浸かっていたのだが、そのうちだんだん熱くてたまらなくなってきた。
(もしここで倒れたらどうなるんだろう)
(巡回の人だって、そうそう来ないだろうし・・・ハトに看取られながら死んでいくのかなあ)
さすがに恐ろしくなってきて湯船から出る。
同時にハトもバサバサと飛び立ってしまった。
しっかり温まったあと5人でS字橋を渡って帰る(K士はラーメン「あ」へ寄り道)。
途中、糸谷八段に、広島でのおススメのお好み焼きの店を聞くと、Rちゃん、Fちゃんの2軒を教えてくれた。
同じく広島出身の竹内四段も何か言っていたが、糸谷君とは好みが合わないようだ。
電車に乗って、金沢の21世紀美術館のことを話す途中、糸谷君に「絵はどんなのが好きなの」と聞くと(千田君は眠っていた)
「うーん・・多すぎて分からない」 「でも、陶器とか好きです」。
陶器にはうといので黙っていると、「金継ぎとか、オモシロいと思うんですが」
やっぱり個性的な子だ。
帰宅後、Tさんから頂いたオミヤゲの包みをあけると、Nの大好きな「あげ潮」だった。
コタツに入ってポリポリ食べながら、「あ~、これで今年の正月も終わったなあ」 とNが小さく伸びをする。
ラクな時代ではないけれど、みんな体だけは大切に、なんとか頑張って生きていきましょう。
夜、
船越君のお母さんから電話。
無事帰りつきましたと、とても元気な声だったらしい。
よかった。
次にお会いできる日を心から楽しみにしております。
そして朝早くから集まってくれた子供たち、および幹事役の竹内四段、みんなみんな、お疲れさまでした
おわり