極端に酸素濃度の低い”死の領域”が発見された、それは西アフリカから数百km沖合いにあるとドイツとカナダの研究者が発表した(5月6日TFSND)
そこで得られた酸素濃度レベルは大西洋のオープン水域で得られた中で最低のもので、そこでは殆どの海洋動物が生存できず、僅かに微生物のみが生きることが出来る。「このわれわれの研究の前には、来た大西洋の海水は最低でも1リットルあたり40マイクロモル、あるいは海水1リットルに1ミリリットルの溶存酸素があると考えられていた」と共著者のJohannes Karstensenはいう。
1リットル当たり40マイクロモル(micromol)は低い数値だがそれでもほとんどの魚は生きることが出来る。ところが今回計測された低酸素濃度の値はそれよりも20分の一も低く、死の領域を形成するそこには殆どm酸素が無いに等しい。死の領域は一般的には人が居住している海岸線でそこに河川が肥料やその他の化学物質を運ぶことで藻類繁殖の引き金となることが知られている。その藻類が死ぬと、それらは海底に沈み、バクテリアにより分解される。その際酸素を消費する。
海流が沿岸から低酸素水を運ぶことはわかるが、開かれた海洋でなぜ”死の領域”が形成されるのかはいまだ解明されてはいない。新たに発見された死の領域は独特なものである。これは渦の中にのみ形成される。大量の海水が渦上を形成する。しかしその渦の周囲の海水は酸素を豊富に含んでいる。「我々が観測した渦のいくつかは直系にして100~150kmのものでその高さは数百m、そのうち死の領域は上部100mくらいまでである。
「高速回転する渦はその回転部と周囲の海との酸素の交換を困難にする」とMr Karstensenは説明する。「われわれの観測結果からは渦の中の酸素消費は通常の海洋のそれよりも数倍高いと推定された」この渦は西アフリカの沿岸に沿った海流が不安定になると形成されるようである。その後西側に移動し、数ヶ月をかけて移動するのは地球の自転による。
この研究者らは西アフリカ沿岸とカポベルデ諸島の沖合いで過去7年間観測を続けた。海洋の酸素濃度のみではなく、かいすいの運動や温度、塩分濃度の計測も行っている。死の領域の研究に彼らは様々な手法を用いている。これには漂流ブイも使われたがしばしば渦の中に取り込まれた。植物の成長を観測するために海表面の色を衛星で観測した。彼らの観測は死の領域の生態系に与える影響の研究も可能にした。
動物プランクトンZooplankton -海洋食物連鎖の中で重要な役割を担う、小動物であるが、これは一般には夜間に植物プランクトンを捕食すべく浮上し、捕食者から逃れるために日中は暗い深みに存在する。しかしながら、動物プランクトンは渦の中では昼間でも沈下せず表層にとどまり、その下にある低酸素環境には沈下しないことを研究者らは発見した。
「生態系への影響に関連する別の態様は社会経済的なものである」とMr Karstensenはいう。「カポベルデ諸島の北部で100km以内で観測された死の領域はオープンな海洋のそれとは違っていた。これは沿岸意低酸素水をもたらし沿岸の生態系の深刻なストレスを与えるとともに魚の死やその他の海洋動物の死をもを引き起こすものである」と。