Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『フィッシュストーリー』

2018-08-21 20:23:24 | 読書。
読書。
『フィッシュストーリー』 伊坂幸太郎
を読んだ。

人気作家伊坂幸太郎の短・中編集。
「動物園のエンジン」
「サクリファイス」
「フィッシュストーリー」
「ポテチ」
の4つの物語が味わえます。

どれも楽しめる作品でしたが、
僕はなかでも「ポテチ」がよかったです。
ヒロインのさばさばしてユーモラスな物言いが
魅力的なキャラクターにしている。
空き巣という犯罪とヒューマンドラマが重ね合わされていて、
伊坂幸太郎ならではのくだけた感じと相まって、
読む楽しみを十分に感じながら、
引き込まれる読書体験になります。
こういうのを読むと、文章を読んでいても、
漫画を読んでいるかのように文字の存在を忘れながら
ストーリーを追う感じになります。
夢中、という状態ですね。

また、
「フィッシュストーリー」で語られる正義についての哲学は、
僕も何度か「善」については考えていて、
自作短編で編み込んだこともありますから、
目新しい考察とは感じ得ませんでしたが、
当時の伊坂幸太郎の年齢でちゃんと考えて答えを出しているなと
思考力の強さを感じました。
彼は確か法学部卒業でしたから、
余計、正義とか悪とか勉強し、考えてきているのでしょう。

と、まあ、さきほども書きましたが、夢中、という状態になること。
そう読者がなるには、言葉の言い回しや文体など、
どうしたらいいのかを今度書くときにも考えてみようかなあと思います。
言葉で語りすぎず、言葉になっていない状態の語るべきことを想像させる。
そりゃ、ストーリーや描写などは読者の想像にまかせるわけにはいかないでしょうけれども、
うまく読者の頭の中にできあがる言葉未満の空白を操作するというか、
そんな技術も書き手は持てるんだろうなあと思いました。


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