Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

2012-02-24 00:49:33 | 映画
映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を観てきました。

父親ととても仲の良い利発な少年が、911テロによってその父親を失う。
父親の遺品からふと出てきた一つの鍵を手に入れた少年は、その鍵で開く何かを探し始める。
その鍵で開くものが見つかった時に、父親を亡くした喪失感をくつがえす何かがあるのではと期待して...。

主人公の少年、オスカーはとても利口な子なのですが、繊細で神経が細いところがある。
「おかしな子」と言われることにもなれているように、その弱弱しさをカバーするべき、
過剰な手段をしばしば行使します。たとえば、地下鉄車内で防毒マスクを装着したり、
平常心を保つためにタンバリンを携帯したり。
それは、小さな、狭い世界で生きながら、その中で完璧たろうとする姿勢の表れでもあります。
狭い世界、小さな世界を広げようとはしません。ただ、その狭い世界の中でやれることの精度を
高めていこうとしている。
それをトム・ハンクス演じる父親はわかっていて、少年の世界観を広げさせようと、
無理やりにではなく、少年の好奇心に添う形で導いたり歩かせたりしようとしている。
父親の存命中にはかなわなかった、「少年の世界を広げること」は、
父の死と、遺品の鍵によって、なされることになります。
472人もの人を訪ねることで、彼らにもそれぞれの問題と個性と考え方があることを知り、
少年の心は少しづつ広くなっていたことでしょう。

小さな世界にいるのに、さらに、頭だけを使ってわかろうとすること。
それが子どもの拙い部分。

理解に間違いがなければ、少年は軽度の自傷行為もあったようです。
心が未発達だからこういうことになります。
そして頭だけで処理しようとしている。

911テロの衝撃は、当時24歳だった僕にとっても、
大きな衝撃でした。それを、当事者として、10歳の少年が受けたダメージははかりしれないと思います。
きっと、この映画の描き方でも、まだ、単純なんだと思います。
現実だったらもっと複雑ですね。
僕が書いたような「狭い世界を広げようとせずに、その世界での完成度だけを高める子ども」
というのも、テロ後の現実だったらただの一面にすぎないかもしれない。
もっと、なぜテロは起きたのかとか、敵は誰なのか、とか、何を憎むべきなのかとか、
いろいろと悩むと思います。

狭い世界に安住し、そこでの完成度だけに力を注ぐとどうなるか。
心が発達しないし、人を知らないので、無駄に誰かを憎んだり傷つけたり誤解したり、
そういうことが多くなります。
そして、自傷行為もあるでしょうし、パニックも起こすことになるでしょう。

そんなことでは、この世界は生きづらくてしょうがない。

世界を広げることは、時として大変です。
僕だって、こんなことを書いていますが、それほど広い世界を持っているわけじゃない。
でも、何か、カルチャーショックのような、価値観や世界観や感覚面での良い意味でのショックを、
できれば大きく深いものを一つでも二つでも経験していれば違うと思います。
これを読む、若い人がいたならば、そういう意味で、自分の世界を広げるように
してみると良いかもしれないですよ。

僕には子どもはありませんが、従姉に男の子が二人いる。
彼らと接するときに、彼らの世界をちょっとでも広げられれば、
値千金のこの世への貢献となるでしょうね。

学校の勉強でも、そういう価値観への衝撃がびしびしあれば面白いんですけれどねぇ。

というように、僕なりの見方というよりか、そう描かれているのでそのまま書きましたが、
それを読み解くのは少し難しい映画だったかなと思います。
それでも、観て、考えてみるっていうことが好きな方にぜひ観てほしいです。
そうそう、主人公の少年はかわいくも美少年な感じなので、
女子はメロメロになるかもしれないですよ(なんという誘い文句)。


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