「流域面積」とは、「雨水などが川に入ってくる土地の面積を言う」のだと、国土交通省関東地方整備局のホームページに書いてある。「雨水など」とは何だ? 雨水以外に何がある? 湧水があるか。まさか下水はカウントされないのだろうな。などと取り止めもなく考えているのは、中学校の同級会から帰って、脳の働きが中学生に戻っているからかもしれない。新潟と東京の中間の水上温泉に集まって、年寄りが息災を確認し合ったのだ。
水上温泉は利根川上流部を代表する温泉郷だ。群馬県最奥・最北に位置する水上町は、合併して「みなかみ町」と名乗っているけれど、渓谷のわずかな土地に張り付く温泉街の佇まいは、私に残る40年前の微かな記憶とそう変わっていない。利根川は長さでは信濃川に次ぐものの、流域面積は16840平方キロメートルと日本で一番広い。こんな数字を挙げられてもイメージがつかめないが、ホームページには「埼玉県が四つほど入る」とある。
その流れは、みなかみ町の北端・大水上山の標高1831メートル地点に始まり、そこで滴った一滴は、322キロメートルを流れて銚子で太平洋に注ぐ。山国日本で突出した広さである関東平野は、太古からの「造盆地運動」とやらで、巨大なお椀に周囲の山から崩れた土砂が積もって形成されたのだそうだが、その真ん中を悠然と流れ下る利根川は、一帯の雨水を集めて平野を形成し、やがてやってくる人間どもに豊かな大地を準備してくれた。
町で最も名高い谷川岳の高みに立って南方を望むと、山々の尾根がひたすら重なって、温泉郷はもちろん、人の営みはまるで見えない。山を穿ち、鉄橋を架けて、自然を好きなように造り変えていると思い込んでいる人間だけれど、こうやって眺めれば、それは山襞の底に蠢めく蟻のようなものである。「自然に対して傲慢になりがちな人間は、たまにはこうした眺望に身を置いて、己の小ささに謙虚になる必要がある」と思いつつ、眺める。
自然と人間の関係性を思い出させようと、同級会を機に谷川岳に登るコースを加えた幹事は偉い。しかし参加者がいささか高齢過ぎて、謙虚になってももはや手遅れというところに難がある。群馬県は温泉宿泊者の多さは全国6位あたりの湯どころで、草津、伊香保、水上が3大温泉地だ。年寄りにはやはり温泉がお似合いだというわけで、私もゆっくり浸ったはずなのだけれど、さっぱり記憶に残っていない。これは酔ってしまった私が悪い。
草津には湯畑、伊香保には石段街と、それぞれの温泉情緒を盛り上げる名所を大切にしているが、水上のそれは利根の渓流であろう。「大河源流の街」だけあって、四季折々の渓谷美はもちろん、急流を利用してのラフティングなど、アウトドアを楽しめる温泉郷として人気が高まっているらしい。これは私が群馬暮らしをしていた40年前には耳にすることがなかったことで、街をあげての誘客活動は、元気な温泉郷といった心地よい響きがある。
「みなかみ町」は2005年、月夜野町、水上町、新治村が合併、人口23000人で新たに出発した。新町名は若山牧水の『みなかみ紀行』が意識されたのかもしれない。標高300メートルから2000メートルまでの、群馬県で最も面積が広い豪雪の町である。東京からは日立市や静岡市と同じ150キロ圏だそうで、大自然に身を委ね、地球規模の大地生成を考えるに格好の土地だ。まさに「利根流域の元締め」なのである。(2010.10.16-17)
(10年前の同級会を思い出し、書いている。コロナのせいで、ここしばらく開催されていないが、我がトモガキは息災なりや?)
水上温泉は利根川上流部を代表する温泉郷だ。群馬県最奥・最北に位置する水上町は、合併して「みなかみ町」と名乗っているけれど、渓谷のわずかな土地に張り付く温泉街の佇まいは、私に残る40年前の微かな記憶とそう変わっていない。利根川は長さでは信濃川に次ぐものの、流域面積は16840平方キロメートルと日本で一番広い。こんな数字を挙げられてもイメージがつかめないが、ホームページには「埼玉県が四つほど入る」とある。
その流れは、みなかみ町の北端・大水上山の標高1831メートル地点に始まり、そこで滴った一滴は、322キロメートルを流れて銚子で太平洋に注ぐ。山国日本で突出した広さである関東平野は、太古からの「造盆地運動」とやらで、巨大なお椀に周囲の山から崩れた土砂が積もって形成されたのだそうだが、その真ん中を悠然と流れ下る利根川は、一帯の雨水を集めて平野を形成し、やがてやってくる人間どもに豊かな大地を準備してくれた。
町で最も名高い谷川岳の高みに立って南方を望むと、山々の尾根がひたすら重なって、温泉郷はもちろん、人の営みはまるで見えない。山を穿ち、鉄橋を架けて、自然を好きなように造り変えていると思い込んでいる人間だけれど、こうやって眺めれば、それは山襞の底に蠢めく蟻のようなものである。「自然に対して傲慢になりがちな人間は、たまにはこうした眺望に身を置いて、己の小ささに謙虚になる必要がある」と思いつつ、眺める。
自然と人間の関係性を思い出させようと、同級会を機に谷川岳に登るコースを加えた幹事は偉い。しかし参加者がいささか高齢過ぎて、謙虚になってももはや手遅れというところに難がある。群馬県は温泉宿泊者の多さは全国6位あたりの湯どころで、草津、伊香保、水上が3大温泉地だ。年寄りにはやはり温泉がお似合いだというわけで、私もゆっくり浸ったはずなのだけれど、さっぱり記憶に残っていない。これは酔ってしまった私が悪い。
草津には湯畑、伊香保には石段街と、それぞれの温泉情緒を盛り上げる名所を大切にしているが、水上のそれは利根の渓流であろう。「大河源流の街」だけあって、四季折々の渓谷美はもちろん、急流を利用してのラフティングなど、アウトドアを楽しめる温泉郷として人気が高まっているらしい。これは私が群馬暮らしをしていた40年前には耳にすることがなかったことで、街をあげての誘客活動は、元気な温泉郷といった心地よい響きがある。
「みなかみ町」は2005年、月夜野町、水上町、新治村が合併、人口23000人で新たに出発した。新町名は若山牧水の『みなかみ紀行』が意識されたのかもしれない。標高300メートルから2000メートルまでの、群馬県で最も面積が広い豪雪の町である。東京からは日立市や静岡市と同じ150キロ圏だそうで、大自然に身を委ね、地球規模の大地生成を考えるに格好の土地だ。まさに「利根流域の元締め」なのである。(2010.10.16-17)
(10年前の同級会を思い出し、書いている。コロナのせいで、ここしばらく開催されていないが、我がトモガキは息災なりや?)
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