今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

159 駒ヶ根(長野県)・・・アルプスを財産にして空青し

2008-08-20 21:49:45 | 新潟・長野

《駒ヶ根》と聞いた時、不覚にも私はその街の位置を特定することができなかった。伊那は知っている、飯田も行ったことはないが場所は分かる。しかしその中間に、駒ヶ根市という街があることはまるで認識していなかった。私は元々地理が好きだし、取り組んで来た仕事の関係もあって、国内の地名には詳しいと自認していた。しかし「市」という単位の街を知らなかったのだから、私も「まだまだ」である。

駒ヶ根とは、駒ヶ岳の麓=根といった意味なのだろうか、中央アルプス・駒ヶ岳(2956m)の玄関のような街らしい。JR飯田線の駒ヶ根駅から緩やかな坂を登って、旧来の中心街らしき通りに出たものの人影は少ない。夏は駒ヶ岳観光の書き入れ時らしく、街の賑わいも観光案内所も、そっくり駒ヶ根高原・菅の台バスセンター界隈に引っ越しているのだった。

そこで私も菅の台に行ってみた。バスを降りたのは私だけで、ほとんどの座席は埋まったたまま、さらに大勢の乗客がどやどやと乗り込んでいる。「中央アルプスの至宝」と詠う《千畳敷カール》を目指し、駒ヶ岳ロープウエイに乗ろうという人たちである。家族連れらしいマイカーが次々と登って来て駐車場に誘導されている。この先はマイカー規制が敷かれているのだ。

人はなぜ、1点を目指すのか。私はそうした人の流れから落ちこぼれたかのように菅の台を彷徨する。スイス・レマン湖を模したような噴水が上がる池があった。木々の向こうには、これも疑似スイスっぽい白いチャペル様のホテルが見え隠れして、その背後には雄大な山塊がそびえている。美しいといえば美しい景色だが、どこか写真で見たことがある風景のミニチュアの中にいる気分だ。

そういえば《日本アルプス》という呼称自体、本場アルプスのイミテーションだ。だが、みんながそれで気分がいいのなら、異論を唱えることはない。「アルプスがふたつ映えるまち」のキャッチフレーズで、駒ヶ根が「アルプスの街」で生きて行こうとしていることには、大いに声援を送りたい。

例えばこんな努力も見た。大沼湖という小さな溜池の堤防には桜が植樹され、それぞれに「東京駒ヶ根会」の名札が下がっている。「故郷に桜の森を作ろう」といった運動があるのだろうか、100年も続けば《高遠》と並ぶ花の名所になるかもしれない。

緑陰濃い道を下って行くと、昔の役場を移転した郷土館があった。小振りながらなかなかいい建物である。さらに下ると南信一の名刹なのだという光前寺に行き着いた。杉木立の奥に配置された堂宇が蝉時雨に濡れている。拝観料とは無縁に散策できるところがいい。

寺の隣に美術館があった。入館料を1000円に設定しているだけあって、草間弥生、池田満寿夫、藤原新也を常設展示する強い個性を隠さない美術館だった。ゴヤやルオーまで並んでいて混乱させられたが、浜田知明はもっと観たかった。地元の建設会社が設立した財団による運営だということだが、地方でこれだけの私立美術館を運営するのは苦労が多いだろう。

名物だという《ソースカツ丼》を食してみた。トンカツ定食を丼に盛り替えただけともいえる料理だったが、カツをソースにどっぷりと漬け込んだ福井のソースかつ丼より、私には食べやすかった。(2008.8.10-11)
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