仙台から石巻に向かうには、多賀城と塩釜の二つの街を通過する。6年前のほぼ同じ日、私は同じ街を訪れて「古代」を感じていい気持ちになったものだった。その気分が懐かしくてまた多賀城跡にやって来た。近くに、6年前にはなかった東北歴史博物館が出現していて、東北全体の歴史がおさらいできる。なかでも興味深かったのは巨大なナマハゲの面で、血走った眼を見開いた憤怒の相は、怒りより哀しみを湛えているように見えた。 . . . 本文を読む
東日本大震災から2年半になる秋の初め、仙台から釜石まで海岸線を北上した。いつものように旅の記憶を留めておこうと思うのだけれど、帰って3ヶ月になるというのに何も書けないでいる。それはあまりの被害の甚大さに打ちのめされた私に、「お前に何が書ける」と現実が迫って来るようで、私の内が混乱しているからだろう。確かに私は傍観者に過ぎず、被災地に何の手助けもできないでいる。それでも私は見ておきたかったのだ。 . . . 本文を読む