夏の夕方。辺りが暗くなり灰色の空が強い風と共に迫ってきた。ロクマルのフロントガラスにぽつぽつと雫が落ち始めてから1分も過ぎない内にダーッという音と共に強雨に襲われた。先程まで車中を包んでいた快適な音楽はボンネットや屋根の鉄板を叩く大雨の音に消され代わりに緊張感に包まれる。車内には4人のゲストが搭乗しているが、大雨ゆえに仕方なく窓を閉め切っている。8月中旬の夏の夕方の車内は蒸し暑い。居心地が悪いので多少濡れるのを我慢して5センチ程運転席の窓をあけたら、同時に皆がそれぞれの窓を同じ様に開けてくれた。2週間前のオイルチェンジの時に交換した新しいワイパーは激しく左右に動き視界を保っていてくれた。
その時、目の前で異変が起こった、何かが突然変わった。
急だったのでこの異変を自覚するのに数秒の時間を要した。目の前のフロントウインドウの水を拭うべきワイパーがいきなり無くなってしまったのだった。直ぐにハザードを点滅させて停止した。運転席の窓を開けて頭を出し来た道を振り返った。ギアをバックに入れてランクルをゆっくりとバックさせながら路上に落ちているであろうワイパーを探した。ワイパーは中央分離線を越えて対向車線の中央に落ちていた。幸い走行車は少なかったので安全を確認し大雨の下ワイパーを拾いに走った。拾ったワイパーを再び付け直そうとしたが上手く付かないし雨がひどいので諦め、パッセンジャーサイドのワイパーのみで雷雨の中帰路を急いだ。
新しいワイパーは寒冷地仕様で雪がワイパーの胴体に付着しにくくデザインされた物であった。しかしワイパーの柄の部分がワイパーの肩のプラスチックに干渉しそのプラスチックが割れた事がワイパーの外れた原因の様子だ。幸いまだ周りが明るかった故に雨の中でも視界を保つ事が出来たが、こういったトラブルの時はパッセンジャー側のワイパーを運転席側に付け替える応急対策をしなければならない!と同乗者に説明している自分。しかし、激しく降る雨の中でそれをやるのは辛い事である。結局同乗者達は同情者となり、大雨の中でのランクルドライブを楽しんで頂いたのである。