万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ノウルズ氏の環境少女批判は正当なのでは?

2019年09月26日 14時55分08秒 | 国際政治
先日、アメリカのテレビ局FOXに出演していた政治評論家マイケル・ノウルズ氏は、「世界気候行動サミット」で演説したグレタ・トゥンベリさんを批判して降板させられる事件が発生しました。問題視された発言とは、「精神的に病んでいる。両親や国際的な左翼に利用されている」というものです。

 この発言に責任を感じたのか、ノウルズ氏に出演を依頼したFOXも謝罪したのですが、同局の対応は、言論の自由を侵害しているように思えます。同氏の発言には嘘がなく、少なくとも世論誘導を狙ったフェイクニュースではないからです。トゥンベリさんが自閉症であることは既に報道機関が報じていますし、トゥンベリさんの両親も環境活動家あるいはそのサポーターなのでしょう。資金や組織の面において、両親や親族、あるいは、環境保護団体等の強いバックアップがなければ、16歳の少女が莫大な費用を要する大西洋のヨット横断を実行できるはずもありません。トゥンベリさんが環境圧力団体の‘広告塔’である可能性については、ノウルズ氏のみならず、多くの人々がうすうす感じ取っているのではないでしょうか(トゥンベリさんが、16歳にしては10代始めくらいに見える幼さを宿すルックスであるのは、子供の宣伝効果を狙って抜擢されたからかもしれない…)。

 自閉症とは、その名の通り、精神面において自己の内側の世界に閉じこもる傾向が強く、思考の基本的なスタンスが自己中心となりやすいとされます。トゥンベリさんへの批判には、自閉症の人々に対する配慮が足りないというものもあるのでしょうが、実のところ、自閉症の人々もまた、自分以外の他者の立場や気持ちを慮ったり、場の空気を読むのが苦手です(その反面、並外れた自己集中によって、科学などの分野では天才的な能力を発揮することも…)。もしかしますと、当人は、当人を利用しようとする周囲の大人たちの思惑にも気が付いていないかもしれません。トゥンベリさんの主張に違和感があるのも、「炭素排出量ゼロ」を金科玉条とするその思い込みの強さに由来しており、この頑迷さは、それが自己の内に閉じられた世界における絶対善であるからなのでしょう(人類も、呼吸によって二酸化炭素を排出しておりますし、植物にとっては、二酸化炭素は酸素をつくるために必要であることにも、恐らく気づいていないのでは?)。‘精神的に病んでいる’とするノウルズ氏の指摘は、自閉症に見られる特有の思考バイアスの問題として理解されるのです。

 自閉症を原因とするのかどうかは分かりませんが、トゥンベリさんが抑えきれない怒りを以って迫る2050年までに炭素排出をゼロにする目標―「炭素排出ゼロ」―も、あまりにも自己中心的です。同目標よりも、古来、人々を苦しめてきた犯罪を撲滅する「犯罪ゼロ」の目標の方が遥かに利他的です。何故ならば、「犯罪ゼロ」の社会では、全ての人類の生存を可能とする食糧生産量が確保されており、かつ、産業の発展と共に様々な職業が叢生しているために、犯罪者達は他のまっとうな職業に就いていることを意味しているのですから。しかも、犯罪者がゼロとなれば、社会の安全性も高まり、人々の活動範囲も飛躍的に高まるのですから、この目標には誰もが反対をしないことでしょう。

その一方で、「炭素排出ゼロ」の目標については、今のところ、化石燃料に完全に代替し得るエネルギー源がありません。代替先が存在しないにも拘わらず、この目標を無理にでも強引に達成しようとすれば、犯罪者ではない一般の人々が負の影響を蒙り、犠牲者となるかもしれないのです。人々の安全を害する犯罪者に対して、純真な少女が涙を浮かべて加害行為を止めるように訴えるのは分かりますが、「炭素排出ゼロ」目標に懐疑的な人々を一方的に‘犯罪者’扱いして糾弾する態度については、批判の声があってもおかしくはありません。

地球温暖化説には異論や反論がある点を考慮しますと、ノウルズ氏の言い分に耳を傾けてこそ、バランスのとれた議論と言えまししょう。また、仮に十分な検証や議論なくして「炭素排出ゼロ」に邁進した結果、将来において地球の寒冷化に拍車をかけることになったならば、一体、誰が、責任をとるのでしょうか。排出権規制を伴う地球温暖化問題は、人類全体に多大なる影響を与え、一人一人がその当事者にもなるのですから、民主主義の観点からもオープンな議論を尽くすべきであり、むしろ、一人の少女の感情的な演説によって方向性が決められることはあってはならないのではないかと思うのです。

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コメント (4)
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