万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

トゥンベリさんは‘ジャンヌ・ダルク’?‘紅衛兵’?子役?

2019年09月24日 14時48分08秒 | 国際政治
9月23日、アメリカのニューヨークの国連本部では、「世界気候行動サミット」が開催されました。今年の会議で注目されたのは、環境少女の名で知られるスェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんです。

 僅か16歳の少女の突然の出現に、中世の百年戦争に際してフランスを救ったオルレアンの少女、ジャンヌ・ダルクの姿を重ねた方も少なくないかもしれません。敗北寸前の危機にあったフランスではなく、地球を救うために。トゥンベリさんが神のお告げを聴いたとは伝わりませんが、どこか、我を忘れているような‘神がかり’的な雰囲気があります。

とは申しますものの、トゥンベリさんの姿や言動を見ておりますと、ジャンヌ・ダルクというよりも、文化大革命において大人達を吊し上げた‘紅衛兵’のリーダーにも見えてきます(演台では、奇しくも赤系統の色の服に身を包んでいる…)。同会議での演説でも、出席していた各国首脳や参加者を前にして「温暖化対策に失敗すれば、あなたたちを決して許さない」と脅したと言うのですから。上述した神がかり的な雰囲気は、あるいは、自らが理想とみなした目的に向かって猪突猛進するイデオロギー上の狂信によるものであるのかもしれません。紅衛兵のみならず、ヒトラー・ユーゲントも存在したように、十分な判断力が育っていない十代の少年少女には、特に集団ヒステリーに陥りやすい傾向があります。

 一方、トゥンベリさんを環境活動家として一躍有名にしたのは、その人並外れた行動力です。「炭素排出量ゼロ」と云う名のヨットで大西洋を横断し、9月20日には全世界規模で発生した‘学校ストライキ’の火付け役ともなりました。市井の一少女が誰にも知られずに行動したのではその拡散効果は限られていますので、国際ニュースとして大々的に報じたマスメディアも協力したのでしょう。否、マスメディア、あるいは、メディアをも支配する国際組織こそ、トゥンベリさんの登場をお膳立てした影の演出者であった可能性もあります。大西洋横断から晴れの舞台である「世界気候行動サミット」までの一連のスケジュールは既に出来上がっており、トゥンベリさんは、この台本に従って演技をした‘子役’ということになりしょう。

 果たして、トゥンベリさんは、現代のジャンヌ・ダルクなのでしょうか、それとも、‘紅衛兵’、あるいは、‘子役’なのでしょうか。トゥンベリさん出現の経緯を見ますと、不自然な点が多々ありますので、おそらく、‘紅衛兵’、あるいは、‘子役’である可能性は相当に高いように思えます。特に社会・共産主義者は‘行動’を重視する傾向にあり、同サミットの名称も、まさしく「世界気候‘行動’サミット」です。トゥンベリさんの言動はこの行動主義のコンセプトに見事なまでに一致します。つまり、トゥンベリさんの活動はすべて同会議に向けたプロモーションであり、念密に計画されていたと推測されるのです。主催者のグテレス国連事務総長も一枚からんでいるのかもしれません。

 そして、トゥンベリさんが‘紅衛兵’、または、‘子役’である疑いをさらに強めているのが、全ての諸国に対して炭素排出量のゼロを迫っている点です。ところが、現実において最も問題とすべきは、毎年、大量の石炭を消費し、かつ、今や‘世界の工場’とも称されるに至った中国です。しかも中国は、自らは大量に二酸化炭素を排出しながら、太陽光パネルや風力発電装置の最大の輸出国であり、最も狡賢い環境政策を国家戦略として遂行しています。環境政策の‘フリーライダー’とも言うべき中国の問題行動を直視すれば、トゥンベリさんは、その鋭い舌鋒で中国を名指しで批判すべきでした。

 香港では、若者が自由と民主主義のために闘っておりますが、トゥンベリさんの活動は、あるいは、‘世界の若者’が、香港問題、さらには、ITの普及に伴う自由主義国における全体主義化の危機から関心を逸らすことを目的にしているのかもしれません。子供や青少年の政治利用は全体主義者の常套手段ですが、今般の‘環境少女’の登場もまた、どこか怪しいように思えてくるのです。

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コメント (6)
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