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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮の核開発を批判しない大江健三郎氏

2012年03月20日 16時07分40秒 | 国際政治
原子炉「二度と稼働させるな」=書籍展で大江氏講演―パリ(時事通信) - goo ニュース
 大江健三郎氏は、進歩的文化人として知られ、ノーベル文学賞を受賞した作家でもあります。社会的な影響力も強いのですが、氏の主張には、どこかに自己欺瞞があるように思えるのです。

 フランスで開催されている書籍展において、大江氏は、原発の再稼働に反対する講演を行ったそうです。かなり厳しい口調の話しぶりであったらしく、「二度と稼働させないようあらゆる手段を尽くすことが、私たちが破滅を免れ、生きていくための唯一の手段だ」と訴えたそうです。しかしながら、よく考えてみますと、今後、再び福島第一原発のような原発事故が再発する確率と、北朝鮮から核攻撃を受ける確率では、後者の方がはるかに高いのではないかと思うのです。原爆は兵器ですが、原発は、ライフラインである電力供給を担い、産業や国民生活を支えております。しかも、原子力発電を継続しても、必ずしも100%、”私たち”が破滅するわけでもなく、原子力のリスクは、人類の努力、すなわち、技術開発によって乗り越えることもできるのです。にも拘らず、原子力の危険性を人類滅亡への道として、高みから全否定する一方で、大江氏は、隣国の危うい核開発については逃げ腰なのです。

 折も折、北朝鮮は、来月、長距離の核攻撃を可能とするミサイル実験を敢行すると宣言しています(衛星発射の名の下で…)。大江氏のみならず、”命の大切さ”をスローガンに反・脱原発運動を唱えるならば、北朝鮮に対しこそ、強く抗議すべきです。そして、書籍展で北朝鮮、イラン、シリアといった核開発を止めない諸国に対して、正面から批判できなかったところに、左翼知識人としての大江氏の限界を見るのです。

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