万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

国際社会の法秩序のために北方領土全島の返還を

2012年03月09日 15時24分05秒 | 国際政治
首相「2島では引き分けでない」 プーチン氏発言に言及(朝日新聞) - goo ニュース
 日本国の野田首相は、ロシアのプーチン大統領が北方領土の解決に積極的な姿勢を見せたことを受けて、二島返還論を牽制するためか、”二島では引き分けでない”と発言したようです。この発言、国際社会に対して、誤ったメッセージを送ることになるのではないかと心配になります。

 引き分け論から推測される野田首相の解決案は、”島の数ではなく、面積において等分すべき”というものです。しかしながら、この問題は、折半すればよし、という性質のものではないと思うのです。そもそも、戦争における領土拡張を最初に否定したのは、レーニンであったのですが、第一次世界大戦後、領土の武力による一方的な併合は、”侵略”と見なされるようになります。このため、大二次世界大戦を引き起こしたナチス・ドイツによるポーランド侵攻もまた”侵略”と見なされ(ソ連邦は共犯国…)、連合国側は、強欲な“侵略国家”と闘うことを戦争目的に掲げるのです。この際、連合国側は、不拡大方針を宣言し、自らは、戦争の結果として領土を併合することを否定しています。この一連の流れを経て、戦後、国際社会には、曲がりなりにも、武力による他国の領土併合を禁止行為とする国際法がおよそ成立するに至るのですが、ロシアは、ソ連邦が崩壊した今でも、自らの”侵略”を正当化しようとしています。

 日本国政府が、占領地の半分であれ、武力で侵略した側の権利を認めることは、国際社会における法の支配の流れを逆戻りさせることになります。軍事力に優る国が他国の領土を奪うことはあってはならず、日本国政府は、国際社会の良き未来ためにも、北方領土全島の返還を求め続けるべきであると思うのです。

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