万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

”社会矛盾”を解決できない共産主義の中国

2012年03月18日 15時41分08秒 | アジア
世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」 治安維持費が軍事費を上回る中国社会 海外メディアの報道に反駁も、その実態は(日経ビジネスオンライン) - goo ニュース
 中国の予算では、増加傾向にある軍事費よりも、さらに”公共安全費”の総額が上回っているそうです。この異常な予算は、中国という国の行き詰まりをも現わしていると思うのです。

 中国政府は、巨額の”公共安全費”について、司法、消費者保護、食品安全などのための費用も含まれていると弁明しています。たとえこの説明が事実であるとしても、それは、中国では犯罪が蔓延し、商品や食品の危険性が高いことを認めることになるのですが、この”公共安全費”なるもの、他の諸国から見ますと、明らかに”治安維持”の名における国民の抗議行動などの弾圧費と考えられます。近年、政府腐敗や”社会矛盾”に対する集団抗議運動は後を絶たず、チベットや東ウイグルでも分離・独立運動が活発になっているからです。中国政府は、こうした運動を力で抑え込もうとしており、実際に、公表された”公共安全費”の内訳では、武装警察と公安のための予算が大半を占めています。

 弾圧という方法ではなく、国民の声を聴くために民主的な手法を取り入れたり、国民に対して自由の範囲を広げたり、社会保障費を増やしたりするれば、国民の不満も下がるかもしれません。また、”公共安全費”の使い道も、国民の弾圧ではなく、腐敗や汚職の温床となっている党や政府の取り締まりに費やせば、国民の不満の原因を取り除くこともできます。にもかかわらず、中国政府は、こうした対応を採ろうとはしていません。共産主義の暴力革命は、理論とは裏腹に”社会矛盾”を解消することはできませんでしたが、共産党が今なお率いる中国は、この問題を、一体、どのような方法で”解決しようとしているのでしょうか(共産党が共産革命を訴えると、第二の文化大革命になるが、それでも、”社会矛盾”は解決しない…)。

 実のところ、現代の中国は、”社会矛盾”を解決するためには共産主義を放棄しなければならないという―自己否定―、デッドロック状態にあるのではないかと思うのです(民主化や自由化でも、完全には”社会矛盾”を解決はしないけれども、緩和することができる…)。己を捨てて万民を活かすことが、現代の中国共産党にはできるのでしょうか。

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コメント (2)
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