万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中台平和統一の甘言と脅迫

2011年10月10日 15時33分25秒 | アジア
江沢民前主席が公の場に=重病説払拭、影響力示す―辛亥革命100年大会・中国(時事通信) - goo ニュース
 上海閥の強面で知られる江沢民前主席が、死亡説が囁かれていたにも拘わらず、健在な姿を現したことで、昨日開催された辛亥革命100年大会は、メディアの注目を集めることになりました。この大会、メディアの反応も計算に入れながら、台湾に対してメッセージを発信することを目的に演出されているのではないでしょうか。

 そもそも、中国共産党が、辛亥革命を記念した大会を開くこと自体が、不自然なことでもあります。何故ならば、”革命の父”とされる孫文が尽力して建国した中華民国を、国共内戦の末に台湾に追いやったのは、他でもない、共産党であるからです。胡主席は、この大会での演説で、女真族の王朝であった清国を滅ぼしたという意味において、国共の”漢人”として民族の共通性を強調し、中台の平和統一を訴えていました(この論理からすれば、チベットも東トルキスタンも独立できるはず…)。実際には、中華民国の正当性は台湾に引き継がれているのですから、今回の大会で、共産党が、辛亥革命の直系として自らをアピールしたことには、台湾の吸収をも正当化しようとする野心が垣間見えるのです。もちろん、”中台の平和統一”とは、台湾の共産化と中華人民共和国への併合に他ならないのですが…。

 胡主席の平和統一の呼びかけと江前主席の存在誇示は、台湾に対して、甘言と脅迫の硬軟両面における揺さぶりと捉えることができます。政治的な演出を得意とする中共のことですから、台湾をはじめ、周辺諸国は、武力行使を辞さない中国に対する警戒と防備を強めるべきではないかと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする