大阪市長による大阪市職員に対するアンケート。
http://homepage1.nifty.com/osaka-shiro-so/data/120209enquete.pdf
様々なところから、異論が出ています。
大阪弁護士会長声明にもありますが、
職員の思想信条の自由や政治活動の自由
職員の労働組合活動の自由
これらは、決して侵してはならない大事なことがらだと思います。
*****大阪弁護士会ホームページより****
http://www.osakaben.or.jp/web/03_speak/kanri/db/info/2012/2012_4f39fa7f540d8_0.pdf
大阪市職員に対する労使関係に関するアンケート調査の中止を求める会長声明
報道等によれば、大阪市は、去る2月9日、大阪市職員に対して、「労使関係に関する職員のアンケート調査」(以下「本件アンケート調査」という。)を、2月16日を回答期限として実施するとの指示を所属長に発したとのことである。
本アンケート調査は、橋下徹市長の職員への回答要請文書に、「市長の業務命令として、全職員に、真実を正確に回答していただくことを求めます。正確な回答がなされない場合には処分の対象となりえます。」と明記されており、職員は、その氏名を表示し、使用者に対して回答をすることが強制されている。
本アンケート調査は、市の職員による違法ないし不適切と思われる政治活動、組合活動などについて調査することを目的としているとされる。しかしながら、地方公務員は、公職選挙法により公務員の地位利用による選挙運動が禁止されるほかは、非現業の地方公務員について、地方公務員法により政党その他の政治団体の結成関与や役員就任等、勤務区域における選挙運動などが限定的に禁止されているにすぎない。それ以外の場合には、地方公務員といえども、一般国民と同様に憲法に保障された、思想信条の自由、政治活動の自由及び労働基本権を有している。
本アンケート調査で回答を強制されている内容は、多くの問題を含んでいるが、とりわけ、次の点で看過することができない。
第一に、職員の思想信条の自由や政治活動の自由を侵害する項目がある。
「あなたは、この2年間、特定の政治家を応援する活動(求めに応じて、知り合いの住
所等を知らせたり、街頭演説を聞いたりする活動も含む。)に参加したことがありますか」との質問をし、「自分の意思で参加したか、誘われて参加したか」「誘った人は誰か」「誘われた場所と時間帯は」との選択肢への回答を求めている(Q7)。
これは、勤務時間外に参加した正当な政治活動や選挙活動の内容についても回答を強制するものであり、それは、当該職員の支持する政党や政治家、政治に関する関心などの回答を求めることにつながり、職員の思想信条の自由や政治活動の自由を正面から侵害するものである。
第二に、職員の労働組合活動の自由を侵害する項目がある。
「あなたは、これまで大阪市役所の組合が行う労働条件に関する組合活動に参加したことがありますか。」として「自分の意思で参加したか、誘われて参加したか」「誘った人は誰か」「誘われた場所と時間帯は」との選択肢への回答を求めている(Q6)。
ここでも、勤務時間外に行われた正当な組合活動の内容や参加状況についても回答を強制しており、また当該職員の組合活動への参加意欲や組合への帰属意識、人間関係を調査するものである。したがって、その回答如何では、使用者からの処遇に影響を受ける危惧を抱く職員に労働組合活動への参加を抑制し、その組合活動の自由を侵害することとなる。
また、使用者が正当な組合活動への参加状況を業務命令をもって逐一調査することは、使用者から独立して活動する自由が保障された労働組合の運営に使用者として支配介入するものにほかならず、許されない。
以上のとおり、本アンケート調査は、大阪市職員の思想信条の自由、政治活動の自由、労働基本権などを侵害する調査項目について職務命令、処分等の威嚇力を利用して職員に回答を強制するものであり、到底許されるものではない。
したがって、当会は、大阪市に対して、本アンケート調査の実施を直ちに中止することを求める。
2012年(平成24年)2月14日
大阪弁護士会
会 長 中 本 和 洋
*****東京弁護士会ホームページ*****
http://www.toben.or.jp/message/seimei/post-265.html
大阪市のアンケートの実施に反対する会長声明
2012年02月15日
東京弁護士会 会長 竹之内 明
大阪市は本年2月9日,市職員宛てに政治活動・組合活動等についてアンケートを実施した。このアンケートは,回答者に実名を記載させるものであり,市長はこのアンケートにつき,業務命令として職員に回答を義務づけるものであって,正確な回答をしない場合には処分の対象となりうることも表明している。
本アンケートの内容は,組合活動や政治活動への参加歴,これらの活動への参加を勧誘した者の氏名,組合活動や選挙運動に関する意見等の回答を求めるものであり,更に,前記勧誘者の氏名については,回答を義務づけない一方で無記名での通報を勧誘している。
このように,職員らに対し組合活動や選挙運動に関する意見等の回答を強いることは,職員らの内心の自由を著しく侵害するものであり,断じて許されるものではない。
また,同アンケートが,組合活動に関して市が職員にその参加歴等を問い,業務命令をもって実名での回答を義務づけることは,憲法の保障する労働基本権に対する著しい侵害である。公務員に対する労働基本権の制限の合憲性については周知の通り古くから疑問が提示されているが,大阪市の本アンケートは,一般の公務員について異論の余地なく承認されている団結権までをも明らかに侵すものであるといわざるを得ない。
更に,政治活動への参加歴の告白など政治的行為についてのアンケートに回答を強制することは,政治活動の自由に対する許された限度を超えた制約である。まして,地方公務員法においても政治的行為を行なった地方公務員に対する罰則が用意されていないことを考えれば,本アンケートは明らかに過度に広範な制約である。
加えて,勧誘者の氏名の通報を勧誘することは,労働基本権及び政治活動の自由の行使に対する深刻な萎縮効果をもたらすものであり,労働者間の連帯を断ち切り孤立化させたり,本来許されるべき活動についてまで事実上の制約を課したりするものであり,これもまた到底看過できない。
本アンケートはこのように幾重にも憲法上の問題があるものであり,広範かつ重大な人権侵害を伴う。橋下徹大阪市長が,このようなアンケートに対する回答を,職員全員に強要することは,公務員の人権を侵害するものであり到底容認できない。
したがって,当会は,大阪市に対し,このような重大な人権侵害を伴うアンケート調査を,直ちに中止することを求めるものである。
*****東京新聞*****
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2012021502000041.html
筆洗
2012年2月15日
橋下徹大阪市長が代表を務める「大阪維新の会」の政治塾への応募者が三千三百二十六人に達したという。応募したのは現役の官僚や弁護士、医師、大学教授、地方議員などの面々▼現職の民主党の国会議員もいたというから驚きである。この中から次期衆院選の候補者が選ばれるだけに、橋下人気に便乗したいという思惑が透けて見える▼維新の会は、次期衆院選の公約となる「維新八策」の骨子も発表。既成政党からすり寄られるほど存在感が大きくなった橋下市長だが、大阪市の職員に実施している「思想調査」の内容はあまり大きく報じられていない▼市職員の組合活動を徹底的に調査し、実態を解明するという名目だ。アンケートの中身を読んでいて怖くなった。活動に誘った人物や特定の政治家を応援したことがあるかなど、組合活動を詳細に問う質問がずらりと並ぶ▼職場で選挙が話題になったことがあるか、組合に加入しないと不利益があると思うか、組合にはどんな力があると思うか-など計二十二項目。任意の調査ではなく、市長の業務命令なので、記名の回答を拒否したら処分の対象になるという▼「中央集権型の政治を変える」という橋下市長の意気込みと手腕には、期待したい気持ちはある。しかし、いくら問題の多い役所としても、密告を奨励するアンケートを強行する人権感覚には慄然(りつぜん)とする。