「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

子宮頸がん、インフルエンザ菌b型(ヒブ)、小児用肺炎球菌の3ワクチン接種の無料接種、恒久化

2012-12-31 10:50:44 | 小児医療
 子宮頸がん、インフルエンザ菌b型(ヒブ)、小児用肺炎球菌の3ワクチン接種の無料接種、恒久化。

 日本のワクチン行政を世界標準へ。

 それに少し近づきましたが、まだまだ、不十分です。

 水ぼうそう、おたふくかぜ、B型肝炎、成人用肺炎球菌が、なぜか落ちた状態です。

 以前、書きました。
 http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/cbb867532e157f8e617bfa27af6d4e61

 
○7ワクチン(ヒブ、小児肺炎球菌、水ぼうそう、おたふくかぜ、B型肝炎、子宮頸がん、成人用肺炎球菌)の定期接種化(予防接種の自治体間格差を解消→地方分権といっても国が責任をもって財源措置をすること)


****共同通信(2012/12/29)*****
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/kyodo-2012122801001705/1.htm
3ワクチンの無料接種、恒久化へ

2012年12月29日(土)2時0分配信 共同通信

 政府は28日、子宮頸がん、インフルエンザ菌b型(ヒブ)、小児用肺炎球菌の3ワクチン接種について、大半の人が来年3月まで無料で受けられる現行の時限的措置を2013年度から恒久化する方針を固めた。予防接種法を改正し、希望者全員への接種を市町村に義務付け、原則無料となっている「定期接種」の対象に含める。これに伴い現在の国の負担分も市町村負担となるため、年少扶養控除廃止による地方増収分を財源に充てる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日経新聞「東京都、築地市場の移転1年延期 土壌対策に時間」、いや無期延期では?

2012-12-31 09:21:54 | 築地を守る、築地市場現在地再整備

 私たちが主張してきたことが、本当になってきました。

 あの場所、すなわち「日本最大規模の土壌汚染地」である豊洲6丁目東京ガス工場跡地は、生鮮食料品を扱う市場には、適した場所ではありません。

 土壌汚染対策は、その前提としての不透水層の連続性に大きな疑義があります。
 汚染は、不透水層以下に、広く深く及んでいます。
 連続した不透水層がないものをあるとして来た東京都の汚染対策が破たんを来していることが考えられます。

 現在、土壌汚染対策法上の「土壌汚染指定区域」となっています。
 その場所への卸売市場の開設は、法律で禁じられています。
 あと一年ではなく、正直に、無期延期を宣言すべきではないでしょうか。


 ものすごく、許せないことがひとつあります。(いままでも数えきれないくらいありましたが。)
 このような大幅な変更は、12月31日ではなく、もっと前にわかっていたはずです。
 東京都は、なにもなかったように、土壌汚染対策は順調に進んでいるふりをして、11月27日新市場建設協議会を開催しました。
 本来なら、土壌汚染対策は、順調に進んでいないことを、この場で、説明すべきでした。
 土壌汚染対策の質問が出されたのにも関わらず、それでもなにも説明をしませんでした。
 なぜ、説明しなかったのか。
 11月27日、このタイミングでの新市場建設協議会開催、11月29日告示の都知事選挙直前に当ててきた甲斐がなくなるからの情報の隠ぺいが考えられます。
 都知事選挙での土壌汚染問題が争点化されるのを避けるために。
 東京都の隠ぺい体質は、なんら改善されていません。
 
 東京都は、いつになったらこの隠ぺい体質を改善くださるのでしょうか。
 憤りを感じています。
 


****日経新聞(2012/12/31)第1面****
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFB25084_Q2A231C1MM8000/
東京都、築地市場の移転1年延期 土壌対策に時間
2012/12/31 1:29

 東京都は築地市場(東京・中央)を江東区豊洲に移転する時期を1年延期する方針を固めた。2014年度中の移転を目指していたが、新市場予定地の土壌汚染対策が長引き、新たな施設を計画通りに建設するのは困難と判断した。都は編成中の13年度予算案に、工事完成を延期する計画を盛り込む。

 移転延期に伴って、都は12年度中に実施する予定だった新施設の工事発注を13年度に先送りする。

 新市場予定地では08年に国の環…


****東京都中央卸売市場ホームページ****
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/press/24/11_22.html

第14回 新市場建設協議会の開催について


平成24年11月22日
中央卸売市場

 中央卸売市場は、豊洲新市場建設事業の円滑な推進を図るため、東京都と築地市場業界との協議機関として新市場建設協議会を設置しています。
 このたび、下記のとおり第14回会議を開催しますので、お知らせします。
 
 

1 日  時
  平成24年11月27日(火) 13時から(1時間程度)


2 場  所
  東京都中央区築地五丁目2番1号 築地市場講堂(水産物部本館3階)

 
3 議  題
  (1) 協議事項:豊洲新市場の施設計画について
  (2) 報告事項:千客万来施設事業基本方針案について


4 協議会委員
  別紙のとおり


5 会議の傍聴
  会議は公開とします。会議の傍聴を希望する方は、当日、12時30分から会場入口前で
 受付(定員100名)を行います。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「法学未修者教育についての法曹養成制度検討会議委員 意見」に思うこと

2012-12-30 12:34:59 | 教育
 自分も法科大学院生のひとりです。
 それもそのうちの「法学未修者」にあたります。

 まさに、自分が受けている教育に関しての意見が出されていました。

 意見に書かれている部分、もし、以下のような教育がなされていたなら、その法科大学院の学生は、とても苦労するのではないかと思います。
 それは、既修/未修に関わらず、問題があるように思います。

 ただ、憲法学は、違法審査基準は、とても教えるのが難しい分野。
 憲法学の学者先生でないと教えきらないのではないでしょうか。



****抜粋****
例えば、

○憲法のある教員は、憲法の30時間の講義の中で、 国会についての講義は1時間のみで、また憲法の分野できわめて重要な違憲審 査基準も教えなかった、という。

○また、民法のある教員は、民法総則の講義で、 その時間の多くをテーマの一つにすぎない錯誤に使い、期末試験でも繰り返し 錯誤から出題していた、というし、

○民事訴訟法のある教員は、これも民事訴訟 法の分野できわめて重要な多数当事者訴訟の制度を全く取り上げなかった、と いう。
**********

 法科大学院の教育に望むことは、既修/未修の枠にとらわれず、多様な学部から学べるような場にし、結果、多様な分野に法律を理解したひとを増やすのが必要ではないかと思います。
 特に社会人でも、法律を学ぶ機会をつくるため、夜間の法科大学院を全国展開するのがよいと思います。
 


****法務省ホームページより*****
http://www.moj.go.jp/content/000105359.pdf

法学未修者教育についての意見

平成24年12月25日 法曹養成制度検討会議委員 和田吉弘

前回(第5回)の会議のテーマであった法学未修者教育について、補足的に意 見を述べさせていただきたいと思う。

1 現状について
 一般に、適切な教育のことは表に出やすいのに対して、不適切な教育のことは表に出にくいものである。ただ、私のところには、法学未修者教育の不適切 さについて、以前お伝えした話以外にもいろいろな話が伝わってきている。と くに、それぞれの科目の全範囲にわたって授業をすることが期待されているの にその一部しか扱わない、という不満が学生の間に多い。これは、前回丸島委 員からお話のあった法学部と同様のことであるが、法科大学院制度創設の際、 法学部から法科大学院へ移籍した多くの教員に、きちんと法曹養成をするとい う抜本的な意識改革が残念ながらなかったためである、と思われる。

 具体的な例をさらに挙げさせていただければ、多少法律の内容の話になって 恐縮ではあるが、例えば、憲法のある教員は、憲法の30時間の講義の中で、 国会についての講義は1時間のみで、また憲法の分野できわめて重要な違憲審 査基準も教えなかった、という。また、民法のある教員は、民法総則の講義で、 その時間の多くをテーマの一つにすぎない錯誤に使い、期末試験でも繰り返し 錯誤から出題していた、というし、民事訴訟法のある教員は、これも民事訴訟 法の分野できわめて重要な多数当事者訴訟の制度を全く取り上げなかった、と いう。もし正しい実態調査をすることができるとすれば、これらと同様の数多 くの例が横行していることが明らかになるであろう。

 そもそも、初学者に分かりやすく教えることなど全くできないという教員や、 自分の狭い専門以外のところになると、学生に教える基本的な知識も不正確で 勉強の進んだ学生から間違いを指摘されることもある、という教員も珍しくは ないようで、これらについても学生の不満が大きい。いずれも司法試験に合格していない学者教員の話である。 もちろん適切な授業をしている学者教員も一部にいることは確かであるが、上の話には名の通った大学での話もあり、平均的な学生の本音の声に耳を傾け れば、上のような話が決してごく一部の大学のみのことというわけではないこ とが分かると思う。他方で、実務家であれば当然にいい教育ができるわけでは ないことも確かであるが、それは、運転免許が教習所のいい指導員になるため の必要条件ではあっても十分条件ではないのと同様のことである。

 なお、上のような実態が、授業評価アンケート、認証評価その他でチェック されたり是正されたりしていないというのも、制度として重大な問題であると 思う。


2 中教審のワーキンググループの2つの案について

 中教審のワーキンググループが考えているような共通到達度確認試験を導入した場合には、教員も学生がその試験でよい点を取れるような授業を行わざる を得ないようになるであろうし、その限りで試験対策も行われるようになるで あろうから、私としてはその案に賛成したいと思う。もし本当にうまく運用で きるのであれば、上のような話も解消されることが期待できるであろう。

 ただ、私は、教員にそのような確認試験の導入に耐えられだけの教育力があ るかというと、一部の法科大学院を除き、多くの法科大学院では難しいように 思う。自分自身がそのような確認試験に十分答えられないという教員も相当程 度いると思う。なお、そのような確認試験の試験対策となる授業は歓迎されな がら、司法試験の試験対策となる授業は禁止されるという矛盾も、改めて浮き 彫りになるであろう。

 1年次は憲法・民法・刑法などの基本的な法律科目をより重点的に教育する という案についても、基本的に賛成であり、なぜ法科大学院制度が創設された 初めの段階からそのように考えられなかったのか不思議にさえ思う。ちなみに、 ある法科大学院では、かつて、未修者コースの1年次の前期に行政法を配置し ていたが、民法や民事訴訟法を学習する前に行政法を学習させるというのはあ まりにも無茶な話で、その法科大学院は、法律の学習にも合理的な積み重ね方があるということを全く理解していない、と思った次第である。 ただ、1年次は憲法・民法・刑法などを教育するという案でも、2年次3年 次のカリキュラムは、そこでの科目を大幅に減らさない限り相当な過密になる わけで、3年間で純粋未修の学生について司法試験の問題に答えられるだけの力を付けさせることができるかというと、やはり困難であるように思う。


3 抜本的な改革の提案について

 私は、中教審のワーキンググループによるこれらの2つの案について反対するつもりはないが、いずれにしても、未修者コースの教育を抜本的に改善する ことを考えるべきであると思う。

 法科大学院についての抜本的な改革の一つとして、未修者コースを廃止して 既修者コースのみとすることも考えられると思う。そうすれば、法科大学院の 入試として法律科目の試験をすることができ、法律に向いていない人は、その ような早期の時点で他の道に進むことができることにもなろう。

 もう一つは、反対に、全部を未修者コースとするもので、具体的には、法科 大学院を学部段階に下ろすというものも考えられるように思う。その場合には、 法学部と別に法曹養成学部というようなものを作るか、法学部の中に法曹養成 学科というようなものを作るかということが考えられるが、いずれにしても4 年制では足りず、少なくとも5年制にはする必要があろう。大学に進学しよう とする人にとっては、学部の卒業までの時間と費用は予定されているから、現 在のように学部卒業後に時間と費用をさらにかけないと法曹になれないという 負担を減らすことができ、多くの人に法曹を志望してもらえるようになるので はないかと思う。ただ、全員未修者コースとなると、教員の教育力がまさに問 われることになるから、基本科目の合理的な積み上げによるカリキュラムの作 成と法曹を養成する人の養成について、改めて根本から考える必要があること になるとは思う。

以上
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ゆっくりした時間に住む街の課題を思ってみて。中央区でも重要計画のパブコメ募集中

2012-12-29 23:00:00 | マニフェスト2011参考資料
 ゆっくりした時間に、私たちの住む街の課題を思ってみて下さい。

 基礎自治体がどのような計画を立てているか、それは、皆さんの生活に直結しています。

 中央区でもこの先10年の計画『基本計画2013』のパブコメ募集中。
 〆切は、1月10日木曜日です。

 この計画を良くしておかねば、行政側から、「すでに決まったことですから。」ということの根拠とされる場合が有ります。

 


*****中央区のホームページより*****
http://www.city.chuo.lg.jp/kusei/paburikku/boshuuankenn/rousqu_kihonkousoukihonhoushin/index.html

「基本計画2013」の策定にあたり区民の皆さんのご意見を募集します

 平成20年2月に策定した現行の「基本計画2008」は、平成24年度をもって前期5カ年が終了します。区では、これまでの状況変化や中長期的に予測される変化をとらえた施策の直しを行い、今後10年間を見据えた新たな基本計画「基本計画2013」の策定を進めています。
 このたび、「基本計画2013(素案)」を取りまとめましたので、広く区民の皆さんのご意見を募集します。
 いただいたご意見は、検討の上、計画に反映していきます。

1 意見の提出期間
 平成24年12月14日(金曜日)~平成25年1月10日(木曜日)
 なお、提出期限を超過してお寄せいただいたご意見は受理できない場合がありますのでご注意ください。

2 意見の提出方法および提出先
住所、氏名(団体の場合は団体名と代表者名)を明記し、区役所2階企画財政課に持参、郵送、区のホームページからの入力、Eメールまたはファクシミリでお寄せください。

<提出先>
 郵便 〒104-8404
    東京都中央区築地1-1-1
    中央区企画部企画財政課企画主査
 ファクス 03-3546-2095
 メールアドレス shinkeikaku@city.chuo.lg.jp
またはこちらにご意見をお願いします(クリックしてください)
基本計画2013(素案)はこちらからご覧になれます。

「基本計画2013(素案)」(全 編) PDF・4,735KB
→http://www.city.chuo.lg.jp/kusei/paburikku/boshuuankenn/rousqu_kihonkousoukihonhoushin/files/1(whole).pdf

「基本計画2013(素案)」(総論編) PDF・3,374KB
 総 論 編
 第1章 計画の基本的考え方
 第2章 中央区の目指す方向
 第3章 中央区の現状と今後の動向
 第4章 10 年後の中央区
 第5章 計画推進のための区政運営の考え方
 第6章 計画の体系
「基本計画2013(素案)」(各論編・附属資料) PDF・1,515KB
 各 論 編
  第7章 基本目標への取組
  第1節 思いやりのある 安心できるまちをめざして
   第2節 うるおいのある安全で 快適なまちをめざして
   第3節 にぎわいとふれあいのある 躍動するまちをめざして
 付 属 資 料
   付属資料1 中央区基本構想


区の基本計画

「基本計画2008」
「基本計画2008」(平成20年2月)はこちらからご覧になれます。

【問合せ先】
企画財政課企画主査
電話 03-3546-5212 ファクス 03-3546-2095
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『大都市制度についての専門小委員会中間報告』(H24.12.20 地方制度調査会専門小委員会)

2012-12-28 17:23:05 | 地方分権改革
 基礎自治体の大きさをどうするか、その事務の負担をどの程度にするか、自治体間の調整はどうするか、そこで暮らす住民にも大きな影響を及ぼす話です。

 ただ、抽象論になりがちで、わかりづらいところもあります。
 個々に事務の内容が変わるわけであり、一概に言えない点もあります。
 うまく配分しないと、「二重行政」の無駄を生むことにもつながります。

 『大都市制度についての専門小委員会中間報告』(H24.12.20 地方制度調査会専門小委員会)が出されましたので、見ておきます。
 

 当然ではありますが、方向性として、

*基礎自治体は小さいほうがよい

*基礎自治体間格差はでないようにしなければならない

*住民自治が強まるようにする

*二重行政の無駄がでないようにする

*自治体間の調整ができるようにする

*国、都道府県、区市町村の力関係は、同等である

*事務権限を委譲すると、それに見合った財源も委譲する

*住民目線で、事務権限移譲を行う

 がきちんとなされ、結論を導く必要があります。

 ある程度、政治主導も必要かもしれません。



**********総務省ホームページより*****
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/singi/chihou_seido/02gyosei01_03000128.html

第30次地方制度調査会第26回専門小委員会


日時

平成24年12月20日(木)

場所

全国都市会館 第1会議室(3階)

議事次第

1.開会
2.議題
(1)大都市のあり方について
 ・大都市制度についての専門小委員会中間報告(案)について
(2)その他
3.閉会

配付資料


・【資料】大都市制度についての専門小委員会中間報告(案)
・【資料】大都市制度についての専門小委員会中間報告(案)(見え消し版)


(下線は、小坂による)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000193237.pdf

大都市制度についての専門小委員会中間報告

平成24年12月20日
地方制度調査会専門小委員会


大都市制度についての専門小委員会中間報告

まえがき

当専門小委員会は、平成24年1月17日の第3回総会以降、諮問事項の一つである社会経済、地域社会などの変容に対応した大都市制度のあり方について、関係団体からの意見聴取を含め、第6回から第26回まで計21回の会議を開き、審議を行った。

人口減少社会に入り、社会経済や地域社会の状況は大きく変容している。人々の暮らしを支える対人サービスの重要性は益々高まっており、その主要な供給主体である基礎自治体のあり方そのものが問われている。また、都市構造や土地利用のあり方についても、基礎自治体が果たすべき役割が問われている。当専門小委員会は、基礎自治体のうち、まず大都市等をめぐる課題について、地方自治制度の改革によって対応すべき点を検証し、具体的な方策について調査審議を進め、ここに中間的な報告を行うものである。

言うまでもなく、大都市はひとり大都市のみで存立できるものではない。他の基礎自治体と相互依存することで成り立っている。また、大都市等のあり方の見直しは、基礎自治体そのものや広域自治体のあり方にも大きく影響するものである。

当専門小委員会としては、この中間報告に対する各方面の意見を踏まえ、残された諮問事項である基礎自治体のあり方と併せて最終的な答申に向けて調査審議を続けていく所存である。



第1 大都市等をめぐる現状と課題
(我が国における大都市等の位置付け)
少子高齢化が進行し、我が国が人口減少社会となったことは否定できない事実である。このことを前提にして、これからの我が国のあり方を真剣に考えていくことが必要である。人口減少下にあっても、経済を持続可能なものとし、国民が全国で安心して快適な暮らしを営んでいけるような国づくりが必要となっている。

このためには、国民の暮らしを支え、経済をけん引していくのにふさわしい核となる都市やその圏域を戦略的に形成していくことが必要である。

人口減少社会に入った我が国において、三大都市圏の人口の比重は再び高まっていく見込みである。

三大都市圏や地方の中枢都市を核とする圏域は、経済の成熟化、グローバル化の進展など、構造的な転換期を迎える中で、引き続き我が国の経済をけん引する役割を果たすことが必要である。


(大都市圏の抱える課題)
大都市圏、とりわけ三大都市圏は、これまで地方圏に比べて高齢化の進行が緩やかであったが、団塊の世代を中心に今後急速に高齢化が進行していく。これまで地方圏がその高齢化の進行に応じて徐々に対応してきた行政課題について、大都市圏、とりわけ三大都市圏においては今後極めて短期間のうちに対策を講じることが必要である。また、高齢者医療、介護や生活保護などの行政需要が急増することへの対応や、独居老人や老老介護の問題など、家族やコミュニティの機能の低下への対応も必要になる。一方で、人口減少に歯止めを掛けるためには、出生率を回復することが必要となる。大都市圏には若い世代が比較的多いことを踏まえると、大都市圏は少子化対策においても果たすべき役割が大きい。

大都市圏においては、人を支えるコミュニティの機能が低下し、人と人とのつながりが希薄化している。人々の暮らしを支える対人サービスの重要性が高まる中で、住民の視点から公共サービスを考えていくためにも、住民自治を拡充していくことが重要である

また、高度経済成長期に整備した社会資本が一斉に更新時期にきており、これまでと同様の社会資本を維持し続けるのかどうかなど、社会資本整備のあり方の見直しも問われている。東日本大震災を教訓として、人口・産業が集中している大都市圏においては、大規模災害時における住民の避難のあり方、生活機能や経済機能の維持等への対策を講じていくことも必要である。

さらに、三大都市圏のように通勤、通学、経済活動等の範囲が、行政区域をはるかに超えている大都市圏においては、大都市圏域を前提とした行政サービスの提供やその調整などが必要である。


(地方の中枢都市圏の抱える課題)
地方の中枢都市を核とする圏域は、三大都市圏に先行して、すでに高齢化や人口減少といった課題に直面してきた。地域住民が快適で安心して暮らせる都市環境を確保するとともに、三大都市圏から人の流れを作るためにも、地域を支える拠点の構築が課題となる。

このためには、地方の中枢都市を核に、都市機能、生活機能を確保するとともに、都市構造の集約化と都市機能のネットワーク化を図っていくことが必要になる。


(地方自治制度の改革による対応)
大都市等に関する地方自治制度としては、昭和31年に特別市制度に代えて指定都市制度が創設された後、指定都市に準ずる規模の都市に規模・能力に応じた事務移譲を進めるため、平成6年、11年にそれぞれ中核市制度、特例市制度が創設された。その後、中核市については人口要件以外の要件が撤廃され、指定都市については合併団体に対する運用上の人口要件が一時緩和された。現在、指定都市、中核市、特例市に指定されている市の数は、それぞれ20、41、40に増加している。

その結果、指定都市、中核市、特例市に指定されている都市も多様になり、各制度において一律に決められる事項と各都市のそれぞれの状況に対応しなければならない事項とが生じている。

また、都区制度は、昭和18年以降東京のみに適用されており、累次の改革において特別区への事務移譲等が進められてきた。

先に述べた三大都市圏や地方の中枢都市圏の抱える課題に対しては、規制等に係る個別法の見直しや、重点的な社会資本整備など様々な対策を国として戦略的に実施することが必要である。これと並んで、大都市等に関する地方自治制度のあり方を議論することが必要な時期が到来している。

このような中で、新たな大都市制度や、現行の指定都市、中核市、特例市、特別区に係る制度の見直しについて、各方面から様々な提案が行われている。

この際、大都市等における効率的・効果的な行政体制の整備や住民の意思がより適切に行政に反映される仕組みづくりについて、地方自治制度の改革によって対応すべき点を検証し、その解決方策を示すことが必要である。

また、このことは、明治以来の区域を継承している都道府県についての議論、ひいては広域自治体のあり方の議論にもつながっていくものとなる。



第2 現行制度の見直し
1.指定都市制度
(1)指定都市制度の現状
指定都市は、地方自治法制定時に制度上存在したが実際には適用されなかった特別市に代わる制度として、昭和31年に創設された。以来、現在に至るまで、50年以上にわたり制度の基本的な枠組みは変更されていない。

(効率的・効果的な行政体制の整備)
この間、指定都市と都道府県との実際の行政運営の中で、いわゆる「二重行政」の問題が顕在化している。大都市における効率的・効果的な行政体制の整備のためには、この「二重行政」の解消を図ることが必要である。

もとより「二重行政」は、必ずしも指定都市と都道府県の間に固有の課題ではないが、指定都市の規模能力が高く、都道府県庁所在地であることも多いこと等から、特に指定都市と都道府県の間で深刻化してきたものと考えられる。

「二重行政」を解消するためには、指定都市の存する区域においてはできる限り同種の事務を処理する主体を一元化するとともに、事務処理に際しての指定都市と都道府県との間の調整のあり方を検討することが必要である。


(住民意思の的確な反映)
指定都市においては、市役所の組織が大規模化し、そのカバーするサービスも幅広くなるため、個々の住民との距離は遠くなる傾向にある。このため、住民に身近な行政サービスを適切に提供することや、住民の意思を行政運営に的確に反映させることが課題となっている。

指定都市においては、住民に身近な行政サービスを住民により近い組織において提供することや、住民がより積極的に行政に参画しやすい仕組みを検討することが必要である。少なくとも、指定都市のうち特に人口規模が大きい都市については、住民に身近な行政区の役割を強化し、明確にすることについて検討することが必要である。


(2)具体的な方策
①「二重行政」の解消を図るための見直し
(事務移譲及び税財源の配分)
指定都市と都道府県との「二重行政」の解消を図るためには、まず、法定事務を中心に、都道府県が指定都市の存する区域において処理している事務全般について検討し、指定都市が処理できるものについては、できるだけ指定都市に移譲することによって、同種の事務を処理する主体を極力一元化することが必要である。

都道府県から指定都市に移譲する事務としては、都市計画と農地等の土地利用の分野や、福祉、医療分野、教育等の対人サービスの分野を中心として検討すべきであるその際、少なくとも、県費負担教職員の給与負担や、都市計画区域の整備、開発及び保全の方針に関する都市計画決定など、既に地方分権改革推進委員会第1次勧告によって都道府県から指定都市等へ移譲対象とされたにもかかわらず移譲されていない事務は移譲することを基本として検討を進めるべきである。

事務の移譲により指定都市に新たに生じる財政負担については、適切な財政措置を講じる必要があり、県費負担教職員の給与負担等まとまった財政負担が生じる場合には、税源の配分(税源移譲や税交付金など)も含めて財政措置のあり方を検討すべきである。


(指定都市と都道府県の協議会)
これまで言われてきた「二重行政」を解消するためには、このような事務の移譲及び税財源の配分に加え、指定都市と都道府県が公式に政策を調整する場を設置することが必要である。このため、任意事務を中心に指定都市と都道府県が同種の事務を処理する場合等に適切に連絡調整を行う協議会を設置し、協議を行うことを制度化し、公の施設の適正配置や効率的・効果的な事務処理を図ることを検討すべきである。

協議会においては、例えば、都道府県による指定都市の区域内における公の施設の設置や指定都市と都道府県が処理している同種の事務のうち指定都市又は都道府県が協議を求めた事項等について協議の対象とすることを検討すべきである。また、指定都市と都道府県が処理している同種の事務のうち協議会で定めたものについてお互いに処理状況を報告することもこれに併せて検討すべきである。

協議会の構成員としては、指定都市と都道府県の執行機関と議会が共に参画することが協議の実効性を高める上で重要である。例えば、会長は市長又は知事とし、委員は、市長又は知事と各議長を充てるほか、その他の議員又は職員から選任することを検討すべきである。

協議会において、協議が調わない事項が生じた場合には、現行制度上、自治紛争処理委員による調停を利用することが可能である。しかしながら、調停は全ての当事者が受諾することが必要であるため、それでも解決が見込まれない場合を想定した何らかの新しい裁定等の仕組みを設けることを検討すべきである。


②「都市内分権」により住民自治を強化するための見直し
指定都市、とりわけ人口が非常に多い指定都市において、住民に身近な行政サービスについて住民により近い単位で提供する「都市内分権」により住民自治を強化するため、区の役割を拡充することを検討すべきである。

区の役割を拡充する方法としては、まず、条例で、市の事務の一部を区が専ら所管する事務と定めることを検討すべきである。また、区長が市長から独立した人事や予算等の権限、例えば、区の職員の任命権、歳入歳出予算のうち専ら区に関わるものに係る市長への提案権、市長が管理する財産のうち専ら区に関わるものの管理権などを持つこととすることを検討すべきである。

このように、区長に独自の権限を持たせる場合には、現在は一般の職員のうちから命ずることとされている区長について、例えば副市長並みに、市長が議会の同意を得て選任する任期4年の特別職とし、任期中の解職や再任も可能とすることを検討すべきである。また、区長を公選とすべきかどうかについても引き続き検討する。さらに、区単位の行政運営を強化する方法として、区地域協議会や地域自治区等の仕組みをこれまで以上に活用することも検討すべきである。

なお、現在、区には区の事務所の長(区長)、区の選挙管理委員会、区会計管理者を置くこととされているが、これに加え、現行の教育委員会制度を前提とする場合には、小中学校の設置管理等をできる限り区で処理できるようにする観点から、条例で、区に教育委員会や区単位の市教育委員会の事務局を置くことを可能にすることを検討すべきである。区の教育委員会等は、小中学校の設置管理など、必ずしも市で一体的に処理する必要がない事務のうち条例で定めるものを処理することとすることを検討すべきである。

以上のような新たな区の位置付けを踏まえ、区を単位とする住民自治の機能を強化すべきである。区単位の議会の活動を推進するため、市議会内に区選出市議会議員を構成員とし、一又は複数の区を単位とする常任委員会を置き、区長の権限に関する事務の調査や区に係る議案、請願等の審査を行うこととすることを検討すべきである。



2.中核市・特例市制度
(1)中核市・特例市制度の現状
中核市と特例市は、市町村への権限移譲を規模能力に応じて段階的に進めるため、それぞれ平成6年と平成11年に設けられた制度である。これまで、住民に身近な権限を適切に行使するとともに、地域の中心的な都市として地域を支える役割を果たしてきたものと評価できる。

その後、平成23年8月に公布された義務付け・枠付けの見直し等に関する第2次一括法(地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律)等により、まちづくりや環境規制の分野において一般市への事務の移譲が進展した。これを踏まえて、特例市に対して更なる事務の移譲を進めることが必要である。


(2)具体的な方策
①両制度の統合
人口20万以上であれば保健所を設置することにより中核市となるという形で、中核市・特例市の両制度を統合することにより、一層の事務の移譲を可能とすることを検討すべきである。その際には、現在の特例市については、少なくとも引き続きこれまで処理してきた事務を処理し続けることとすることを前提として検討すべきである。


②都道府県からの事務移譲
今後、都道府県から中核市・特例市に移譲すべき事務としては、例えば児童相談所の事務などが考えられるが、中核市・特例市が多様である現状を踏まえると、一定の事務の移譲は法令で行うが、その他については条例による事務処理特例制度を活用することについて検討すべきである。

条例による事務処理特例制度は、本来都道府県から市町村に事務の移譲を行う際に、両者間で適切に協議を行い、事務処理に必要な財源を適切に措置することにより、各市町村の規模・能力や地域の実情に応じた事務の移譲を行うことを企図した制度である。

しかしながら、移譲事務の内容については都道府県の意向が強く反映されているのではないか、また、事務移譲に伴う財源措置が不十分なのではないかとの懸念も存在する。このような懸念を払拭するため、市町村の事情を十分踏まえて移譲が行われるようにするための方策について、引き続き検討する。


③住民自治の拡充
中核市・特例市においても住民自治の拡充は重要な視点であり、地域自治区等の仕組みを地域の実情に応じて活用することについて検討すべきである。

また、中核市・特例市の市議会議員の選挙区は、指定都市では区の区域をもって選挙区とされているのに対して、特に条例で選挙区を設けない限り市域全体とされている。より地域に密着し、住民との結び付きの深い市議会議員を選出する観点から、選挙区を設けるべきかどうかについて、引き続き検討する。その際には、選挙区の設定方法をどのように考えるかといった視点が必要である。


④中核市・特例市をはじめとする地方の中枢都市の役割の強化
中核市・特例市のうち、地方の拠点である都市については、周辺市町村と適切な役割分担を行い、圏域全体の連携を進めるため、定住自立圏の考え方が有効である。このような都市をはじめとする地方の中枢的な都市の担うべき役割とそれに伴う財政措置について検討すべきである。

また、定住自立圏の中心市と周辺市町村との間における都市機能の分担をはじめ、自治体間での柔軟な連携を可能とする仕組みについて、制度化する方法を基礎自治体についての議論と併せて検討する。


3.都区制度
(1)都区制度の現状
特別区は、昭和39年の福祉事務所等の事務移譲や課税権の法定化、昭和49年の保健所等の事務移譲、区長公選制の復活や都からの配属職員制度の廃止、平成10年の一般廃棄物の収集等の事務移譲や都区財政調整制度の見直しなど、累次の都区制度改革により、平成10年の地方自治法改正後は、「基礎的な地方公共団体」として、都が一体的に処理することが必要な事務を除き、一般的に市町村が処理する事務を処理している。

都区制度は概ね円滑に運営されているが、平成10年以降も、特別区への更なる事務移譲について、都区間で議論が行われている状況である。


(2)具体的な方策
①都から特別区への事務移譲
今後、都から特別区への更なる事務移譲について検討する際には、特別区の区域の再編と関連付ける議論もあるが、特別区の高い財政力や一部の特別区の間での共同処理の可能性等を踏まえると、一般的に人口規模のみを捉えて基準にする必要はないものと考えられる。

都から特別区に移譲すべき事務としては、例えば児童相談所の事務などが考えられるが、専門職を適切に確保する等の観点から小規模な区の間では連携するといった工夫を講じつつ、移譲を検討すべきである。

また、特別区の規模が多様であることから、一定の事務の移譲は法令で行うが、その他についてはそれぞれの事務に必要な規模・能力を踏まえて移譲を進めることとし、その際には、都とそれぞれの特別区の協議により、条例による事務処理特例制度を活用する方向で検討すべきである。


②特別区の区域の見直し
一方、今後の高齢化の進展や公共施設の更新需要の増加など、社会経済情勢の変化を踏まえると、特別区の区域の見直しについても検討することが必要である。


③都区協議会
都区財政調整制度等に関する都区協議会における調整について、仮に協議が調わない事項が生じた場合に備え、現行の自治紛争処理委員による調停に加え、指定都市と都道府県の場合と同様に何らかの新しい裁定等の仕組みを設けることの必要性について引き続き検討する。

④住民自治の拡充
特別区の中には人口が相当多い区もあることから、地域自治区等の仕組みを地域の実情に応じて活用し、住民自治の拡充を図ることについて検討すべきである。

また、特別区の区議会議員についても、中核市・特例市の市議会議員と同様の課題があるため、より地域に密着した区議会議員を選出する観点から、選挙区を設けるべきかどうか、引き続き検討する。その際には、選挙区の設定方法をどのように考えるかといった視点が必要である。



第3 新たな大都市制度
1.特別区の他地域への適用
(1)大都市地域特別区設置法の制定
現行の特別区制度は、一般制度ではあるものの、制度創設時には東京都以外の地域に適用することは想定外であった。仮に東京都以外の地域に特別区制度を適用する場合には、人口の集中度合いや経済圏の実情など、社会経済情勢が現在の東京都の特別区に近い地域、例えば大阪市の存する区域に適用することが考えられる。

そのような中、本年8月に、議員立法により「大都市地域における特別区の設置に関する法律」(以下「大都市地域特別区設置法」という。)が制定され、大阪市など、東京都以外の人口200万以上の区域に特別区を設置する場合の手続が確定した。

そこで、大都市地域特別区設置法において総務大臣との協議事項とされている事務分担、税源配分及び財政調整を中心に、同法に基づき特別区を設置する際に留意すべき点を明らかにしておくことが必要である。


(2)具体的な留意点
①総括的な留意点
大都市地域特別区設置法に基づく特別区の設置に当たっては、各地域の判断に委ねられる部分が多いが、いわゆる「二重行政」の排除や行政の効率化といった住民の期待に応じたものとするよう留意すべきである。

また、長年存在してきた指定都市を特別区に分割することにより、分割される事務の処理に係る費用や、特別区間や道府県と特別区の間の調整に係る費用が増大するといった懸念には的確に対応するよう留意すべきである。

さらに、道府県における特別区の設置によって、国や他の地方自治体の財政に影響が生じないよう特に留意すべきである。


②事務分担
事務分担については、指定都市で一体的に処理してきた事務のうち、行政の一体性及び統一性の確保の観点から基礎自治体の事務でありながら都が処理することとされているものについては、道府県の事務とすることを基本とし、専門職員の確保、保険財政の安定等の観点からさらに道府県において処理すべきものがあるかという点にも留意すべきである。

また、特別区において処理すべき事務については、仮に、道府県の特別区が中核市並みの事務を処理することとした場合、現在都の特別区が処理していない事務も処理することとなり、円滑に事務処理を行うことができるかどうかについて特に留意すべきである。

なお、特別区を設置しようとする指定都市の区で現に処理している事務を出発点として、これにどの程度の事務を加えれば特別区を設置したことが意義あるものと考えることができるのかという観点にも留意すべきである。東京都の特別区においては、長期間にわたり段階的に所掌事務を増加してきたことにも留意すべきである。


③税源配分及び財政調整
税源配分及び財政調整については、道府県と特別区が分担する事務の規模に応じて、税財源が適切に配分されることが必要である。その際、税源の偏在がある中で特別区において適切に行政サービスを提供できるよう、税源の配分と道府県と特別区の間の財政調整の仕組みを適切に組み合わせるとともに、特別区間で偏在度の大きい税を道府県と特別区の間の財政調整の財源とすることが基本である。

税源の配分に当たっては、目的税とその使途との関係にも留意すべきである。また、現在指定都市が処理している任意事務についても、道府県と特別区との間の事務分担に応じた財源上の配慮が必要である。

指定都市を特別区に分割した場合、現行制度と同様に、地方交付税の算定については、特別区を一つの市とみなすことが必要である。さらに、道府県と特別区の事務の分担や税源の配分が一般の道府県と市町村と異なることから、現行の都区合算制度と同様の仕組みによることが基本となることに留意すべきである。

特別区において処理すべき事務が多いほど、また、特別区の規模が小さいほど、分割される事務の処理に要する費用が増加するとともに、特別区の間で行うべき財政調整の規模が大きくなることに留意すべきである。

特別区が処理すべき事務や特別区の規模によっては、現行の都区財政調整制度における調整3税以外の何らかの財源を調整財源として活用することが必要となる場合があることに留意すべきである。


④財産処分及び職員の移管
特別区の設置に伴う財産処分及び職員の移管に当たっては、事務の分担に応じることを基本に検討すべきである。その際、市町村合併について、合併関係市町村の職員が合併市町村の職員としての身分を保有するよう措置するとともに、合併市町村が職員の身分取扱いに関して職員のすべてに通じて公正に処理しなければならないとされていることとの均衡にも留意すべきである。

なお、東京都と特別区の間では、都職員がその身分を有したまま特別区に配属される制度が昭和49年まで存在したが、これは当時の特別区が都の内部団体的性格を持っていたことの表れであることに留意すべきである。


⑤道府県に置かれる特別区の性格
道府県に置かれる特別区は、道府県と特別区の事務分担や税源配分、財政調整等のあり方によっては、平成10年の地方自治法改正で「基礎的な地方公共団体」と位置付けられた都の特別区とは性格が異なってしまう可能性もあることに留意すべきである。


2.特別市(仮称)
(1)特別市(仮称)を検討する意義
特別市(仮称)は、全ての都道府県、市町村の事務を処理することから、その区域内においてはいわゆる「二重行政」が完全に解消され、今後の大都市地域における高齢化や社会資本の老朽化に備えた効率的・効果的な行政体制の整備に資する点で大きな意義を有する。

また、大規模な都市が日本全体の経済発展を支えるため、一元的な行政権限を獲得し、政策選択の自由度が高まるという点にも意義がある。


(2)特別市(仮称)について更に検討すべき課題
一方で、特別市(仮称)については、以下のように更に検討すべき課題が存在する。

一層制の大都市制度である特別市(仮称)について、法人格を有し、公選の長、議会を備えた区を設置して実質的に二層制とすることが必要とまでは言い切れないが、現行の指定都市の区と同様のものを設置することでは不十分であり、少なくとも、過去の特別市制度に公選の区長が存在していたように、何らかの住民代表機能を持つ区が必要である。

また、特別市(仮称)は全ての都道府県、市町村の事務を処理するため、例えば警察事務についても特別市の区域とそれ以外の区域に分割することとなるが、その場合、組織犯罪等の広域犯罪への対応に懸念がある。

さらに、特別市(仮称)は全ての道府県税、市町村税を賦課徴収することとなるため、周辺自治体に対する都道府県の行政サービスの提供に影響するという懸念もある。

なお、現在の全ての指定都市を特別市(仮称)制度の対象とする場合、現在47の広域自治体が最大67に増加する可能性がある。大都市地域特別区設置法の対象区域と同様に人口200万以上とするなど、一定以上の人口の指定都市に対象を限定する必要がある。


(3)当面の対応
まずは、都道府県から指定都市への事務と税財源の移譲を可能な限り進め、実質的に特別市(仮称)に近づけることを目指すこととし、特別市(仮称)という新たな大都市のカテゴリーを創設する場合の様々な課題については、引き続き検討を進めていく。



3.大都市圏域の調整
三大都市圏においては、社会経済的に一体性のある圏域(例えば通勤・通学10%圏)の広がりは、市町村のみならず都道府県の行政区域も超えているが、地方ブロックほどの広がりとはなっていない。

例えば交通体系の整備や防災対策といった大都市圏域における共通した行政課題に関する連絡調整や、そのような行政課題に関する大都市圏域全体の計画策定を行うための協議会等の枠組みを設けるべきかどうかについて引き続き検討する。

その際、どのような行政課題についての調整を行うべきか、九都県市首脳会議や関西広域連合といった既存の任意の枠組みが果たしている役割との関係をどうするかといった点についてさらに検討する。

仮に新たな枠組みを設ける場合には、大都市圏域計画の実効性を担保するための尊重義務を構成団体に課すことや、国との調整を図るために、必要に応じて、国の関係行政機関に対して、職員の出席及び説明並びに必要な資料の提出を求めることができるようにすることなどについても検討する必要がある。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

12月28日午後2時半IWJにて岩上安身氏、澤藤統一郎弁護士、梓澤和幸弁護士 自民党改憲草案の詳しい分析

2012-12-27 12:29:35 | 国政レベルでなすべきこと

 以下、梓澤和幸弁護士からのお知らせです。

 ぜひ、ご覧ください。

 IWJ⇒ http://iwj.co.jp/




 この国を、そこに生きるひとを守るために・・・
 


 このような憲法改正案で、本当によいのですか?

 自民党の憲法改正案
 ⇒『日本国憲法改正草案(平成24年4月27日決定)』 http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf 




****以下、梓澤先生****

梓澤和幸‏@momocute2006

12*28午後2時半IWJにて岩上安身さん、澤藤統一郎弁護士、梓澤和幸にて自民党改憲草案の詳しい分析。 梓澤は中学1年にわかる話を目指す。易しく話すことは 話す者の理解のレベルを上げること。 本当?

 政治部、社会部記者、テレビの制作担当、市民メディア、そして中1の君へ。ご覧を。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

政治家の皆さん、今、分裂のときですか?今、離党のときですか?

2012-12-27 11:18:23 | 国政レベルでなすべきこと
 日本のエネルギー政策を、転換するために生まれてきた党。

 日本の国のありかたを、真に根底から正すために生まれてきた党。日本が真に独立した国になるために。


 今、分裂のときですか?今、離党のときですか?

 これで喜ぶのは、既得の権益のありかたを続けようとする勢力。

 おそらくは、この離党の分裂も、その勢力の策略でないかとさえ、思いたくなる。
 政治や統治の基本は、まず相手を分断させること。そのような差し金にまんまとのるのも、いかがなものかと。


 大勝した者は、将来の禍根を取り除くことにまずは、力を注ぐはず。
 敵方は、その子どもまでも、ひとりのこらず、無くしてしまったのは、昔からのやりかた。


 日本や世界の将来を考えれば、いまの、争いは、小さすぎませんか?

 




 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

科学的証拠 それは、その前提・仮定を正しく理解したうえで用いること

2012-12-27 09:27:32 | メディア・リテラシー
 科学的証拠を有効に使って、事実を間違いなく検証いただきたいと思います。

 これは、犯罪だけではなく、原子力発電、土壌汚染対策、街づくりなどあらゆる政策にも通じるところではあります。

 科学は、その前提、仮定を誤ると、間違った結論を容易に導くことが可能です。


******産経新聞(2012/12/27)*****
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121227/trl12122700250000-n1.htm

科学的証拠「過信は禁物」 DNA型鑑定など 司法研修所が報告書
2012.12.27 00:23
 最高裁の司法研修所は26日、DNA型鑑定など科学的証拠の刑事裁判での取り扱い方をまとめた司法研究報告書を公表した。報告書は「科学的証拠は客観的・中立的で極めて安定性が高い」として自白や証言への依存を減らす意味でも積極活用を促す一方、「正しい判断をするためには、限界を理解することが不可欠で、過信・過大評価してはならない」としている。

 司法研究は刑事裁判官3人と大学教授1人が担当。平成22年に再審無罪が確定した「足利事件」などを受けたもので、誤判を未然に防ぐための法曹三者に向けた指針となりそうだ。

 報告書は、関係者証言などには認識、記憶の程度といった不確実さがあるのに対し、科学的証拠は「信頼性が高く、有罪方向にも無罪方向にも大きな意味を持ちうる」と評価。特に、別人とDNA型が一致する確率(個人識別精度)が「約4兆7千億人に1人」とされる、現在主流のSTR型検査は「既に究極の域に達している」としている

 ただ、そのためには鑑定が正しく行われることが重要で、科学的証拠の信頼性を検証する上で、弁護人へ関連データを開示することも求めた。

 その上で報告書は、証拠を評価する際の留意点として「証拠が示す事実」と「他の証拠を合わせると推認できる事実」を明確に区別するよう指摘。事件現場の遺留物から検出されたDNA型の鑑定結果は、それが被告に由来しているのかどうかを示しているにすぎず、「被告=犯人」とまでいえるかは、現場の状況など他の様々な証拠と合わせて「個別具体的に検討されなければならない」としている。

 裁判員にも共通の意識を持ってもらうため、評議での説明に加え、検察官や弁護人にも主張の中で明確に区別するよう求めている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール でも、お気軽にご相談を。

2012-12-26 23:00:00 | 小児医療

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール(PDF)

http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_110427_1.pdf



ご確認のうえ、予防接種を実施してください。
ただ、あまり悩まずに、お気軽に、ご相談ください。

たとえ、スケジュールを立てたとしても、子どもは風邪ひくし、
予定通りにはいかないものです。


がちがちに考えないで、お気軽に、ご相談を!
考えることは、ほかにも山ほどありますし・・・



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

企画続行!「築地を守る朝食会」12月28日金午前7時築地四丁目交差点ジョナサン前

2012-12-25 23:00:00 | 築地を守る、築地市場現在地再整備
 これからも、やっていきます!「築地を守る朝食会」

 歳末の買い出しついでの参加もありかと思います。


「築地を守る朝食会」

集合:12月28日金 午前7時 築地四丁目交差点、ジョナサン前。

ご参加される方は、お電話03-5547-1191、fax03-5547-1166 「築地を守る市民会議 事務局宛て」まで。


 皆さん、力を合わせて、この築地、守りましょう!

 いろいろな方が、参加されるご連絡いただいております。


 この企画は、これからも、続きます。
 もちろん、一月も。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

こども元気クリニック・病児保育室(中央区月島℡03-5547-1191)年末は12/31まで年始は1/4から。

2012-12-24 23:00:00 | 小児医療
 2001年開業以来、毎年のことですが、年末は、12月31日まで開けています。

 安心の年越しができますこと、願っています。

 聞くところ、弁護士さん達も、年末はたいへんお忙しいとのこと。
 和解が成立するのは、年末が多いといいます。
 争いごとも、けりをつけて、心機一転の新年にする気持ちからのことでしょうか。



 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

会社における「取締役」に関する着目点。

2012-12-23 22:33:52 | シチズンシップ教育
 取締役に関する考え方、その注意点を書きます。
 
 あくまで、ひとつの考え方です!
 ご参考までに。

*役割のちがい:街の個人商店と、大会社とでは、「取締役」の役割が全く違います。「機関」かそうでないかという点で。

 街の個人商店は、取締役会非設置会社であります。

取締役会非設置会社:独任性の「機関」

取締役会設置会社:業務執行の意思決定機関である取締役会の構成員にすぎない。取締役自体は、会社の「機関」ではない。


*取締役を何人置くか:取締役会非設置会社 一人にすべし

 会社法上の規定では、

 取締役会設置会社:3人以上(会社法331条4項「取締役会設置会社においては、取締役は、三人以上でなければならない。」)

 取締役会非設置会社:一人でも可(会社法331条4項の反対解釈及び326条1項)

 よって、取締役会非設置会社では、重い責任を負う人は、一人で良いのかもしれません。
 万が一、会社が倒れたときに、取締役へのきつい責任追及がありえます。


*取締役 選任の方法:「累積投票」で選ぶべし(少数派から取締役を出すことができる投票制度)

 株主総会で選任されます。(会社法329条1項)
 それは、普通決議によります。(309条1項。ただし、341条に注意)
 多くの会社は、「累積投票」(会社法342条)を排除しています(定款で排除規定を置くことが可能ゆえ)が、この「累積投票」を可能にしておくと、少数派から取締役を出すことを可能にすることができます。
 

 「累積投票」とは、例えば、三人選ぶ場合、一議決権に三票をもたすやりかたです。三人の枠のひとりひとりを各枠全て多数決にすると、多数派の通りの専任になります。
 少数派が、その三票をひとりに集中すれば、選任可能なはず。

****会社法342条*****
(累積投票による取締役の選任)
第三百四十二条  株主総会の目的である事項が二人以上の取締役の選任である場合には、株主(取締役の選任について議決権を行使することができる株主に限る。以下この条において同じ。)は、定款に別段の定めがあるときを除き、株式会社に対し、第三項から第五項までに規定するところにより取締役を選任すべきことを請求することができる。
2  前項の規定による請求は、同項の株主総会の日の五日前までにしなければならない。
3  第三百八条第一項の規定にかかわらず、第一項の規定による請求があった場合には、取締役の選任の決議については、株主は、その有する株式一株(単元株式数を定款で定めている場合にあっては、一単元の株式)につき、当該株主総会において選任する取締役の数と同数の議決権を有する。この場合においては、株主は、一人のみに投票し、又は二人以上に投票して、その議決権を行使することができる。
4  前項の場合には、投票の最多数を得た者から順次取締役に選任されたものとする。
5  前二項に定めるもののほか、第一項の規定による請求があった場合における取締役の選任に関し必要な事項は、法務省令で定める。
6  前条の規定は、前三項に規定するところにより選任された取締役の解任の決議については、適用しない。



*取締役 解任

 株主総会の決議によって解任可能(339条、341条)

 解任の理由に制限はありません。理由のない解任も可能ということです

 ただし、339条2項で、「正当な理由」なくして解任した場合、会社は、損害賠償を支払う必要が生じます。

 ちなみに、「正当な理由」とは、
○背信行為が有った
○無為無能である
○違法行為
○故意の信任義務違反
○任務懈怠
○はなはだしい不適任
○取締役の地位そのものと相容れない作為・不作為がある

 経営に失敗したことが、「正当な理由」となるかは、争いの有るところ。これを許すと、危ない橋を渡らなくなる。ただ、認めないとよい経営をしようとするサンクションにならない。

****会社法339条****
(解任)
第三百三十九条  役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
2  前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。



*取締役 解任の訴えは、854条で可能

 株主総会で解任できなくとも、裁判で解任することも可能。

*****会社法854条、855条*****
(株式会社の役員の解任の訴え)
第八百五十四条  役員(第三百二十九条第一項に規定する役員をいう。以下この節において同じ。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が第三百二十三条の規定によりその効力を生じないときは、次に掲げる株主は、当該株主総会の日から三十日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。
一  総株主(次に掲げる株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)
イ 当該役員を解任する旨の議案について議決権を行使することができない株主
ロ 当該請求に係る役員である株主
二  発行済株式(次に掲げる株主の有する株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主(次に掲げる株主を除く。)
イ 当該株式会社である株主
ロ 当該請求に係る役員である株主
2  公開会社でない株式会社における前項各号の規定の適用については、これらの規定中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3  第百八条第一項第九号に掲げる事項(取締役に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行している場合における第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第三百四十七条第一項の規定により読み替えて適用する第三百三十九条第一項の種類株主総会を含む。)」とする。
4  第百八条第一項第九号に掲げる事項(監査役に関するものに限る。)についての定めがある種類の株式を発行している場合における第一項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「株主総会(第三百四十七条第二項の規定により読み替えて適用する第三百三十九条第一項の種類株主総会を含む。)」とする。

(被告)
第八百五十五条  前条第一項の訴え(次条及び第九百三十七条第一項第一号ヌにおいて「株式会社の役員の解任の訴え」という。)については、当該株式会社及び前条第一項の役員を被告とする。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

判決の既判力の及ぶ範囲について、一部請求後(特に前訴で敗訴後)の残額請求の可否

2012-12-23 16:59:20 | シチズンシップ教育
 前訴の既判力が及ぶ範囲の問題です。

 一部請求後の残部請求の可否は、いかに判断すれば良いのでしょうか。

 申立事項が、金銭その他の不特定物の給付を目的とする債権に基づく給付訴訟において、原告が債権のうちの一部の数額についてのみ給付を申し立てる請求(一部請求)が認容され、確定された場合、その後、別訴を提起して残額を請求することが許されるか。
 全体と一部の関係の明示が有る場合に限って、別訴提起が可能であるとするのが、最高裁が取る立場です。

 では、逆に、認容ではなくて、一部請求が棄却された場合は、どうか。

 既判力を持ち出して、判断するのではなく、信義則の考え方で、最高裁は判断していますが、私もそれが妥当であると考えます。
 


【事案】
 Xは、不動産売買を目的とする会社である。Xは、YからA市所在の本件土地を買収すること及び同土地が市街化区域に編入されるよう行政当局に働きかけを行うこと等の業務委託(以下、「本件業務委託規約」という。)を受けた。そして昭和57年10月28日に本件業務委託契約の報酬の一部として、Yが本件土地を宅地造成して販売造成するときには造成された宅地の1割をXに販売または斡旋させる旨の本件合意がなされた。
 しかし、結局、Yは宅地造成を行わず、平成3年3月5日、A市開発公社に本件土地を売却した。
 また、Yは平成3年12月5日、Xの債務不履行を理由として本件業務委託契約を解除した。
 そこで、Xは、Yからの業務委託契約に基づいて本件土地の買収等の業務を行い、3億円の報酬請求権を取得したとして、うち1億円の支払を求める訴え(前訴)を提起したが、平成7年10月13日、上記請求を棄却する旨の判決が確定した。
 Xは、前訴判決確定後、平成8年1月11日、本件合意に基づく報酬請求権のうち前訴で請求した1億円を除く残額が2億円であると主張してその支払を求める(後訴)を提起した。

(最高裁判例 平成10年6月12日、『民事訴訟法主要判例集』199事件)



 一部請求後の残額請求の可否の問題で、一部請求が棄却された場合の考え方。

(1)本問における法的問題点。
 一部請求訴訟で敗訴した後に残額請求を行うことは許されるかどうかが法的問題点である。

(2)(1)における問題点の指摘の根拠となる事実の事案の中からの指摘。
 Xは、YからA市所在の本件土地を買収すること及び同土地が市街化区域に編入されるよう行政当局に働きかけを行うこと等の業務委託(以下、「本件業務委託規約」という。)を受けた。
 しかし、結局、Yは本件業務委託契約を解除した。
 そこで、Xは、Yからの業務委託契約に基づいて本件土地の買収等の業務を行い、3億円の報酬請求権を取得したとして、うち1億円の支払を求める訴え(前訴)を提起したが、上記請求を棄却する旨の判決が確定した。Xは、前訴判決確定後、報酬請求権のうち前訴で請求した1億円を除く残額が2億円であると主張してその支払を求める(後訴)を提起した。
 裁判所は、後訴について本案の審理をし、判決を下すことができるかどうかが問題である。

(3)民事訴訟法の第何条、または、いかなる理論の適用が問題であるか。
 民事訴訟法114条1項、既判力の及ぶ範囲が問題となっている。

(4)(3)で挙げた条文のどの文言の解釈、あるいは、理論の要件が問題となっているか。
 申立事項が、金銭その他の不特定物の給付を目的とする債権に基づく給付訴訟において、原告が債権のうちの一部の数額についてのみ給付を申し立てる請求(一部請求)が棄却され、確定された場合、その後、別訴を提起して残額を請求することが許されるかという問題に関して、前訴の既判力が及ぶことで、遮断されるかどうかが問題となっている。

(5)この問題について、自分と反対の結論となり得る考え方。
 一部の債権が存在しない以上、論理的に債権全体の不存在が確定され、残部請求は既判力によって遮断されるとして、一部請求訴訟で敗訴した後に残額請求を行うことは否定するという見解。

(6)上記の自分と反対の結論となり得る考え方の問題点。
 あくまで、既判力は、訴訟物に及ぶものであり、この場合は、一部請求の1億円のはずである。
 残額2億円にまで既判力が及ぶということは、前訴の訴訟物でないものにまで、既判力を及ばせており、審判は求められた訴訟物たる権利についてなされ、そのことに既判力が及ぶということと矛盾することとなる。

(7)この問題についての自分の結論と根拠。
 1個の金銭債権の数量的一部請求は、当該債権が存在しその額は一定額を下回らないことを主張してその限度で請求するものであり、債権の特定の一部を請求するものでないから、このような請求の当否を判断するためには、おのずから債権の全部について判断することが必要になる。すなわち、裁判所は、当該債権の全部について当事者の主張する発生、消滅の原因事実の存否を判断し、債権の一部の消滅が認められるときは債権の総額からこれを控除して口頭弁論終結時における債権の現存額を確定し、現存額が一部請求の額以上であるときは請求を認容し、現存額が請求額に満たないときは、現存額の限度でこれを認容し、債権が全く現存しないときは、請求を棄却するのであって、当事者双方の主張立証の範囲、程度も、通常は債権の全部が請求されている場合と変わるところはない。数量的一部請求を全部又は一部棄却する旨の判決は、このように債権の全部ついて行われた審理の結果に基づいて、当該債権が全く現存しないか又は一部として請求された額に満たない額しか現存しないとの判断を示すものであって、言い換えれば、後に残部として請求しうる部分が存在しないとの判断を示すものにほかならない。したがって、この判決が確定した後に原告が残部請求の訴えを提起することは、実質的には前訴で認められたかった請求及び主張を蒸し返すものであり、前訴の確定判決によって当該債権の全部について紛争が解決されたとの被告の合理的期待に反し、被告に二重の応訴の負担を強いるものというべきである。以上の点に照らすと、金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは特段の事情がない限り、信義則に反して許されない(民事訴訟法2条)と解するのが相当である。
 これを本件についていると、Xの請求は、前訴で数量的一部を請求して棄却判決を受けた各報酬請求権につき、その残部を請求するものであり、特段の事情の認められない本件においては、残額請求に係る訴えの提起は、訴訟上の信義則に反して許されず、したがって、その訴えを不適法として却下すべきである
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

民事訴訟において違法収集証拠に証拠能力を認めるべきか

2012-12-23 14:33:17 | シチズンシップ教育
 刑事訴訟法では、許されない話であるが、民事訴訟において違法収集証拠に証拠能力を認めるべきか。

 ひとつの考え方をご紹介します。

【事案】
Xは、Yに対する損害賠償請求が1審で敗訴したのは、Yの被用者Aの不利な供述によるものと考え、Aから有利な証言を得ようと企て、Aに酒食を提供した席上で、同人に秘して、同人との会話を録音した上、第2審において、その録音テープ及び反訳書を証拠として提出した。
 これに対して、Yが、上記録音は、被録音者Aの人格権を侵害し、詐欺的に録取されたもので、信義則、公序良俗に反し、証拠能力を有しない違法証拠であるなどとして争った。

(東京高裁判昭和52・7・15、『民事訴訟法主要判例集』判例425)

 刑事訴訟では、一切認められない話ですが、民事訴訟では、どのように考えるべきでしょうか。
 以下、民事訴訟における違法収集証拠の問題の考え方。


(1)本事案における法的問題点。
 いわゆる違法収集証拠である無断録音にも証拠能力を認めて、証拠調べの対象とすべきかどうかが法的問題点である。

(2)(1)における問題点の指摘の根拠となる事実を、事案の中からの指摘。
 第1審で敗訴したXは、敗訴の原因が、Y側の証人であるAの証言にあると考え、知人でありAの友人であるBを利用し、Aに酒食を饗応して、誘導的な質問等によってXに有利な会話をするように仕向け、それを別室から密かに録音した。その上で、Xは、控訴を提起し、当該テープを録音証拠として申請した。この録音テープ(以下、「本件録音テープ」という。)に証拠能力を肯定することが許されるかどうかが問題点となっている。

(3)民事訴訟法の第何条、または、いかなる理論の適用が問題であるか。
 民事訴訟法247条、自由心証主義の制限についてが問題となっている。

(4)(3)で挙げた条文のどの文言の解釈、あるいは、理論の要件が問題となっているか。
 裁判所が、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果を自由に評価し、これによって形成された心証に基づいて判決の基礎となる事実を認定することができるという原則(自由心証主義)が、民事訴訟法247条に、規定されている。
 心証形成のための資料の範囲は、証拠の方法の無制限と弁論の全趣旨の斟酌からなされ、証拠方法は、無制限とされている。
 しかし、自由心証主義にも制限が有り、証拠方法の制限のひとつとして、違法収集証拠をどのように制限すべきかが問題となっている。

(5)この問題について、自分と反対の結論となり得る考え方の紹介。
 証拠方法の取得や使用に実体法上の違法があっても、損害賠償の問題を生じるだけで、訴訟法上の評価は自由心証に委ねられるとする見解。

(6)自分と反対の結論となり得る考え方の問題点の指摘。
 無制約に証拠方法が認められるとすると、違法な方法を含め、裁判に勝つためならなりふり構わぬ証拠収集がなされることになり、その証拠収集から人格権を侵害される被害が多発することが考えられる。
 人格権侵害を起こさない一定程度の制限は必要であると考える。

(7)この問題についての自分の結論と根拠。
 民事訴訟法は、いわゆる証拠能力に関しては何ら規定するところがなく、当事者が挙証の用に供する証拠は、一般的に証拠価値はともかく、その証拠能力はこれを肯定すべきものと解すべきことはいうまでもないところであるが、その証拠が、著しく反社会的な手段を用いて、人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって採取されたものであるときは、それ自体違法の評価を受け、その証拠能力を否定されてもやむを得ないものというべきである。そして、話者の同意なくしてなされた録音テープは、通常話者の一般的人格権の侵害となり得ることは明らかであるから、その証拠能力の適否に当たっては、その録音の手段不法が著しく反社会的と認められるか否かを基準とすべきものと解するのが相当であり、これを本件についてみるに、本件録音は、酒席におけるAらの発言供述を、単に同人ら不知の間に録取したものであるにとどまり、同人らの人格権を著しく反社会的な手段方法で侵害したものということはできないから、本件録音テープは、証拠能力を有するものと認めるべきである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

感染症動向2010~12年と今後のあるべき方向性

2012-12-22 23:34:33 | 小児医療

 川崎市衛生研究所長岡部信彦先生(国立感染症研究所感染症情報センターの充実にご貢献された先生)の恒例のご講演http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/b7f895ab6f887373b7ababc88e3382b8を聴講し、書きます。

 感染症は、小児科診療でも重要部分を占めます。
 さらなる体制の充実が望まれるところです。

 

<2013年の期待される動きなど 小坂の私見>

○7ワクチン(ヒブ、小児肺炎球菌、水ぼうそう、おたふくかぜ、B型肝炎、子宮頸がん、成人用肺炎球菌)の定期接種化(予防接種の自治体間格差を解消→地方分権といっても国が責任をもって財源措置をすること)

○ロタウイルスワクチンの評価

○予防接種後の有害事象の評価体制の充実
 (検案体制の充実、連携)

○予防接種に関する評価・検討組織の整備(日本版ACIP)

○麻疹撲滅

○風疹流行対応

○地方衛生研究所

 

 



<2012年の感染症の話題>

*インフルエンザ 新型インフルエンザ等特別措置法制定
http://law.e-gov.go.jp/announce/H24HO031.html

*ポリオ不活化ワクチン本格導入

*IPV接種後死亡例、日本脳炎ワクチン接種後死亡例→ワクチン接種との関連性なし

*腸管出血性大腸炎O157 浅漬けによる多発

*麻疹排除:特定予防指針改正
 「麻しんに関する特定感染症予防指針について」

*学校保健安全法実施例改定(登校基準変更等)
→学校保健安全法施行規則http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%8A%77%8D%5a%95%DB%8C%92&H_NAME_YOMI=%82%A0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S33F03501000018&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1
(出席停止の期間の基準)
第十九条  令第六条第二項 の出席停止の期間の基準は、前条の感染症の種類に従い、次のとおりとする。
一  第一種の感染症にかかつた者については、治癒するまで。
二  第二種の感染症(結核及び髄膜炎菌性髄膜炎を除く。)にかかつた者については、次の期間。ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りでない。
イ インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H五N一)及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)にあつては、発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日(幼児にあつては、三日)を経過するまで。
ロ 百日咳にあつては、特有の咳が消失するまで又は五日間の適正な抗菌性物質製剤による治療が終了するまで。
ハ 麻しんにあつては、解熱した後三日を経過するまで。
ニ 流行性耳下腺炎にあつては、耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹 が発現した後五日を経過し、かつ、全身状態が良好になるまで。
ホ 風しんにあつては、発しんが消失するまで。
ヘ 水痘にあつては、すべての発しんが痂皮化するまで。
ト 咽頭結膜熱にあつては、主要症状が消退した後二日を経過するまで。
三  結核、髄膜炎菌性髄膜炎及び第三種の感染症にかかつた者については、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで。
四  第一種若しくは第二種の感染症患者のある家に居住する者又はこれらの感染症にかかつている疑いがある者については、予防処置の施行の状況その他の事情により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで。
五  第一種又は第二種の感染症が発生した地域から通学する者については、その発生状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間。
六  第一種又は第二種の感染症の流行地を旅行した者については、その状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間。

*RSウイルス、ノロウイルス流行

*予防接種法改正なるか
「予防接種制度の見直しにちて(第二次提言)」平成24年5月23日
厚生科学審議会 感染症分科会 予防接種部会

*インドでのポリオフリー

*新コロナウイルスの出現

*米国での変異型ブタインフルエンザH3N2のヒト感染例増加


<2011年の感染症の話題>
*新型インフルエンザ→季節性インフルエンザ
 行動計画改定、ガイドライン改定

*ヒブ、肺炎球菌接種後死亡例、接種見合わせ→関連性なしとして接種再開

*東日本大震災

*腸管出血性大腸炎O111→ユッケ消える

*ポリオ根絶10年(タジキスタンでの野生ポリオ発生)
 →中国での野生ポリオ発生
 →国内ではIPV切り替え前のポリオワクチン接種者低下

*麻疹排除:国内からこれまでの国内流行株D5の消失

*手足口病大流行(症状に変化)

*マイコプラズマ大流行(マクロライド耐性株の増加)

*髄膜炎菌性髄膜炎の集団流行

*予防接種法改正の動き


<2010年の感染症の話題>
*新型インフルエンザ
 流行から流行後(post-pandemic)
 鳥インフルエンザH5N1(島根県、鳥取県、宮崎県など)

*口蹄疫発生(ヒトでなく動物)

*ワクチンの流れの変化
 日本脳炎ワクチンの接種勧奨再開、
 ヒブ、肺炎球菌、子宮頸がんの公的補助(特別基金)
 定期対象疾患のみなおし、予防接種法改正、ACIP構想

*ポリオ根絶10年(タジキスタンでの野生ポリオ発生)

*麻疹排除はどこまで

*アシネトバクター、NDM1等多剤耐性菌感染

*A型肝炎多発

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする