「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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土壌汚染地売買等の瑕疵担保責任 瑕疵判断基準:主観説、瑕疵の判断基準時:売買契約締結当時

2015-01-23 11:17:51 | 民法 債権総論
 土壌汚染に関する民法重要判例(H22.6.1):売買目的物の土地の土壌に基準値を超えたふっ素が含まれていた場合における瑕疵担保責任


小坂の疑問:売買当時、その土地に存在するとは知らなかった物質が後に存在がわかったか、あるいは、その物質が後に土壌汚染物質と法定されたとしても、その物質が売買した土地に含まれることは、その土地に瑕疵があると考えてよい。この判例は、そこまでは除外していないと考えるが、どうか?


〇判決の規範的意義(判例タイムズ、加藤新太郎氏)

 瑕疵判断の基準につき、原判決は、客観説に立ちつつ、瑕疵担保責任が売主の無過失責任であることを理由として、瑕疵を肯定し、請求を一部認容した。

 これに、対して、本判決は、①主観説を採用することを明示し、②売買契約締結当時の取引観念を重視し、その時点を瑕疵の判断基準時としたものである。

〇判決の規範外のもの(最初に書いたように、小坂の疑問のところ)

①土地の土壌に実際には有害物質が含まれていたが、売買契約当時は取引上相当な注意を払っても発見することができず、その後に契約当時から当該有害物質が人の生命、身体、健康を損なう危険がないと認められる限度を超えて含まれていたことが判明した場合には、目的物である土地における上記有害物質の存在は、隠れた瑕疵に当たる。

②土壌中の物質が売買契約当時の取引観念上は有害であると社会的に認識されていなかったが、売買契約後に有害であると社会的に認識された場合において、土地の土壌に当該物質が人の生命、身体、健康を損なう危険がないと認められる限度を超えて含まれていたことが判明した場合にも、そのような有害物質が限度を超えて含まれていないことという、上記売買契約の目的物である土地が通常備えるべき品質、性能を欠くというべきであり、①の場合と同様に、有害物質の存在は、隠れた瑕疵に当たる。



〇判決を受けて、今後の取引実務(金判、松村弓彦氏)

 本判決を前提として、情報開示と残余リスク・費用の負担を契約条項に織り込むことが賢明であろう。


******最高裁(H22.6.1)**************************
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/250/080250_hanrei.pdf

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主文
1 原判決中,上告人敗訴部分を破棄する。
2 前項の部分につき,被上告人の控訴を棄却する。
3 被上告人は,上告人に対し,4億5962万158
7円及びこれに対する平成20年11月27日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 控訴費用,上告費用及び前項の裁判に関する費用
は,被上告人の負担とする。


理由
第1 上告代理人小澤英明ほかの上告受理申立て理由第2及び第3について
1 本件は,上告人との間で売買契約を締結して土地を買い受けた被上告人が,
上告人に対し,上記土地の土壌に,それが土壌に含まれることに起因して人の健康
に係る被害を生ずるおそれがあるものとして上記売買契約締結後に法令に基づく規
制の対象となったふっ素が基準値を超えて含まれていたことから,このことが民法
570条にいう瑕疵に当たると主張して,瑕疵担保による損害賠償を求める事案で
ある。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 被上告人は,平成3年3月15日,上告人から,第1審判決別紙物件目録
記載の土地(以下「本件土地」という。)を買い受けた(以下,この契約を「本件
売買契約」という。)。本件土地の土壌には,本件売買契約締結当時からふっ素が
含まれていたが,その当時,土壌に含まれるふっ素については,法令に基づく規制
の対象となっていなかったし,取引観念上も,ふっ素が土壌に含まれることに起因
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して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されておらず,被上告人の
担当者もそのような認識を有していなかった。
(2) 平成13年3月28日,環境基本法16条1項に基づき,人の健康を保護
し,及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として定められた
平成3年8月環境庁告示第46号(土壌の汚染に係る環境基準について)の改正に
より,土壌に含まれるふっ素についての環境基準が新たに告示された。
平成15年2月15日,土壌汚染対策法及び土壌汚染対策法施行令が施行され
た。同法2条1項は,「特定有害物質」とは,鉛,砒素,トリクロロエチレンその
他の物質(放射性物質を除く。)であって,それが土壌に含まれることに起因して
人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう旨を
定めるところ,ふっ素及びその化合物は,同令1条21号において,同法2条1項
に規定する特定有害物質と定められ,上記特定有害物質については,同法(平成2
1年法律第23号による改正前のもの)5条1項所定の環境省令で定める基準とし
て,土壌汚染対策法施行規則(平成22年環境省令第1号による改正前のもの)1
8条,別表第2及び第3において,土壌に水を加えた場合に溶出する量に関する基
準値(以下「溶出量基準値」という。)及び土壌に含まれる量に関する基準値(以
下「含有量基準値」という。)が定められた。そして,土壌汚染対策法の施行に伴
い,都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(平成12年東京都条例第21
5号)115条2項に基づき,汚染土壌処理基準として定められた都民の健康と安
全を確保する環境に関する条例施行規則(平成13年東京都規則第34号)56条
及び別表第12が改正され,同条例2条12号に規定された有害物質であるふっ素
及びその化合物に係る汚染土壌処理基準として上記と同一の溶出量基準値及び含有
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量基準値が定められた。
(3) 本件土地につき,上記条例117条2項に基づく土壌の汚染状況の調査が
行われた結果,平成17年11月2日ころ,その土壌に上記の溶出量基準値及び含
有量基準値のいずれをも超えるふっ素が含まれていることが判明した。

3 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,被上告人の請求
を一部認容した。
居住その他の土地の通常の利用を目的として締結される売買契約の目的物である
土地の土壌に,人の健康を損なう危険のある有害物質が上記の危険がないと認めら
れる限度を超えて含まれていないことは,上記土地が通常備えるべき品質,性能に
当たるというべきであるから,売買契約の目的物である土地の土壌に含まれていた
物質が,売買契約締結当時の取引観念上は有害であると認識されていなかったが,
その後,有害であると社会的に認識されたため,新たに法令に基づく規制の対象と
なった場合であっても,当該物質が上記の限度を超えて上記土地の土壌に含まれて
いたことは,民法570条にいう瑕疵に当たると解するのが相当である。したがっ
て,本件土地の土壌にふっ素が上記の限度を超えて含まれていたことは,上記瑕疵
に当たるというべきである。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次
のとおりである。
売買契約の当事者間において目的物がどのような品質・性能を有することが予定
されていたかについては,売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断すべ
きところ,前記事実関係によれば,本件売買契約締結当時,取引観念上,ふっ素が
土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識
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されておらず,被上告人の担当者もそのような認識を有していなかったのであり,
ふっ素が,それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそ
れがあるなどの有害物質として,法令に基づく規制の対象となったのは,本件売買
契約締結後であったというのである。そして,本件売買契約の当事者間において,
本件土地が備えるべき属性として,その土壌に,ふっ素が含まれていないことや,
本件売買契約締結当時に有害性が認識されていたか否かにかかわらず,人の健康に
係る被害を生ずるおそれのある一切の物質が含まれていないことが,特に予定され
ていたとみるべき事情もうかがわれない。そうすると,本件売買契約締結当時の取
引観念上,それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそ
れがあるとは認識されていなかったふっ素について,本件売買契約の当事者間にお
いて,それが人の健康を損なう限度を超えて本件土地の土壌に含まれていないこと
が予定されていたものとみることはできず,本件土地の土壌に溶出量基準値及び含
有量基準値のいずれをも超えるふっ素が含まれていたとしても,そのことは,民法
570条にいう瑕疵には当たらないというべきである。

5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違
反がある。論旨は理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そし
て,被上告人の請求は理由がなく,これを棄却した第1審判決は正当であるから,
被上告人の控訴を棄却すべきである。

第2 上告人の民訴法260条2項の裁判を求める申立てについて
上告人が上記申立ての理由として主張する事実関係は,別紙「仮執行の原状回復
及び損害賠償を命ずる裁判の申立書」(写し)記載のとおりであり,被上告人は,
これを争わない。上記事実関係によれば,上告人は,平成20年11月26日,被
- 5 -
上告人に対し,原判決に付された仮執行の宣言に基づき4億5962万1587円
を給付したものというべきである。そして,原判決中上告人敗訴部分が破棄を免れ
ないことは前記説示のとおりであるから,原判決に付された仮執行の宣言はその効
力を失うことになる。そうすると,被上告人に対し,4億5962万1587円及
びこれに対する給付の日の翌日である平成20年11月27日から支払済みまで民
法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める上告人の申立ては,正当と
して認容すべきである。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官堀籠幸男裁判官那須弘平裁判官田原睦夫裁判官
近藤崇晴)
コメント

危険負担を買主に負わせるのであれば、果実もまた買主に帰属させることが、論理的帰結であるように感じる。

2014-08-07 09:30:54 | 民法 債権総論
 民法534条

 売主が、保管義務を尽くしたが、売主の責めに帰すべき理由なく、売買契約の目的物が滅失した場合、その負担は、買主が負う。すなわち、それでもやはり、商品を受け取れなかったとしても、買主は、売主に、期限に代金を支払う義務がある(危険負担、リスク負担は、買主にあり。危険負担の債権者主義)。


 その代わりに、ローマ法では、バランスを取る意味で、果実収取権は、買主にある
 このことで、代金支払い義務はあっても、果実分を控除できるようにしている。

 日本では、民法575条で、果実収取権は、売主にある
 おそらく、計算が面倒になることを避けたのであろう。


 危険負担を、買主に負わせるのであれば、果実もまた、買主に帰属させることが、論理的帰結であったように、感じる。



 現行解釈では、商品を管理できることができたかどうかで、危険負担を分けており、それはそれで、実際は、問題ないことではるが。

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民法

(債権者の危険負担)
第五百三十四条  特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
2  不特定物に関する契約については、第四百一条第二項の規定によりその物が確定した時から、前項の規定を適用する。


(果実の帰属及び代金の利息の支払)
第五百七十五条  まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。
2  買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない。
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