大規模災害時に、負傷者に、ゴム紐に荷札のようなものを右手につけられることがあります。
「トリアージ・タグ」というもので、医療者は、そのタグを見ながら、搬送や治療の優先順位を決めます(トリアージ)。
一般のかたには、阪神淡路大震災頃から、言葉としては、耳にするようになっているものだと思います。(同震災を契機に、トリアージタグの規格が、全国統一されました。)
すべての負傷者を、平等に一気に搬送し、一斉に治療を開始できることが、理想ですが、いつ、どこで、どのような災害・テロ・事故が起きるかわからないなかで、理想ばかりを言っていられません。
その時に提供できる医療を、最大限有効に使い、できる限り多くの命を救うことが求められるのであって、そのための手法が、「トリアージ」です。
なお、具体的な「(医学的)診断」ではない点を、理解する必要があります。
〇赤色の印は、生命の危険があり、すぐにでも治療を開始しなければならない重症者を意味します(緊急治療群)。
〇黄色の印は、すぐではないけれども、放っておいては、危険な方向に進む中等症(準緊急)の症状のかたを意味します(準緊急治療群)。
〇緑の印は、生命の危険はなく、歩行が可能であって、しかし、手当てが必要な軽症者を意味します(非緊急治療群)。
災害弱者(こども、高齢者、障がいのあるかた、妊婦)は、上記印を、一ランクレベルを挙げて判定されます。
もちろん、傷病者数や医療提供体制によって、判断基準は、当然に変わって来ます。
負傷をしたけが人、だれもが、ご本人にとっては、自分が一番に治療を受けさせてほしいとお思いになるものですが、例えば、タグが、緑に判定されることは、待たされることはあったとしても、それは逆に、今は生命に危険が及ばないとの見立てがされたことでもあって、安心して救助の順番を待っていただきたいと考えます。
すなわち、トリアージとは、軽症者に対して、重症者の搬送や医療提供のために順番待ちをお願いする譲り合いの仕組みであり、「トリアージタグ」は、別称、「共助タグ」というべきものです。
あわせて、トリアージは、一度だけ(一次トリアージ)で終えるのではなく、何度もなされ(再トリアージ)、その時間的経過の中で、黄色の準緊急から赤色にタグが変わったり、緑色の軽症から黄色に重症度が進んだ判定を受けるなど、見落しがないような仕組みになっています。
なお、トリアージをできるのは、医師だけでなく、救急救命士、歯科医師、薬剤師など医療関係者ら、誰もができるのであり、逆を言えば、都心直下型大震災やテロに際し、その役割を担うことが求められています。
医療者にとって、「START式トリアージ(Simple Triage And Rapid Treatment)」の手法が有用な学習知識だと思います。
↓
日本国憲法27条(と28条)。
労働基本権に関する規定です。
これら条項もまた、とても大切だと思います。
自分は、27条を理解するに当たり、まず、大事なことは、「働けるということは、義務の前に権利である」ということだと考えます。(以前のブログ:http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/8c35694366b639cd2f81c9d726c6e573 )
私たちのまさに自己実現の形のひとつが、働けることじゃないでしょうか。
国は、働ける環境整備を、鋭意行っていかねばなりません。
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日本国憲法
第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。
自民党案
(勤労の権利及び義務等)
第二十七条 全て国民は、勤労の権利を有し、義務を負う。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める。
3 何人も、児童を酷使してはならない。
日本国憲法
第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
自民党案
(勤労者の団結権等)
第二十八条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、保障する。
2 公務員については、全体の奉仕者であることに鑑み、法律の定めるところにより、前項に規定する権利の全部又は一部を制限することができる。この場合においては、公務員の勤労条件を改善するため、必要な措置が講じられなければならない。〔新設〕
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自民党案は、日本国憲法とほぼ同じ内容であることがわかります。文体や格調の高さからは、日本国憲法のほうが優れています。この点改憲する必要はありません。
大きな点は、自民党案では、28条に2項を新設しています。
この新設に関しては、28条のことなので、28条の説明の際に述べます。
以下、27条、28条に関する基礎知識。
19世紀の資本主義の発達の過程において、労働者は、失業や劣悪な労働条件のために厳しい生活を余儀なくされました。労働者の生活を向上させるために、労働者を保護し、労働運動を容認する立法が制定することとなりました。
日本国憲法は、27条で勤労の権利(勤労権、労働権)を保障し、勤労が国民の義務(ただし、勤労が義務とはいえ、法律により勤労を国民に強制することができるという意味ではありません。)であることを宣言し、かつ、勤労条件の法定(勤労条件法定主義)を定めています。
28条で労働基本権(団結権、団体交渉権、団体行動権・争議権の労働三権)を保障しています。
27条3項の児童の酷使の禁止は、子どもが過酷な労働環境で働くことを強制された歴史を繰り返すことのないよう、子どもの権利を守るための規定です。
この規定から、
〇児童(満15歳後の最初の3月31日が終了するまで)を労働者として使用することの原則禁止(労働基準法56条)
〇児童(18歳未満)を午後10時から午前5時までの間に働かせる深夜業の原則禁止(同法61条)
〇児童(18歳未満)の危険有害業務に関する就業制限(同法62条)
〇児童(18歳未満)の坑内労働の禁止(同法63条)
が定められています。
以下、関連法律の該当箇所を抜粋します。
*******関連法律 抜粋***********************
<労働基準法>
第六章 年少者
(最低年齢)
第五十六条 使用者は、児童が満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまで、これを使用してはならない。
○2 前項の規定にかかわらず、別表第一第一号から第五号までに掲げる事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満十三歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満十三歳に満たない児童についても、同様とする。
(年少者の証明書)
第五十七条 使用者は、満十八才に満たない者について、その年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければならない。
○2 使用者は、前条第二項の規定によつて使用する児童については、修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書及び親権者又は後見人の同意書を事業場に備え付けなければならない。
(未成年者の労働契約)
第五十八条 親権者又は後見人は、未成年者に代つて労働契約を締結してはならない。
○2 親権者若しくは後見人又は行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては、将来に向つてこれを解除することができる。
第五十九条 未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代つて受け取つてはならない。
(労働時間及び休日)
第六十条 第三十二条の二から第三十二条の五まで、第三十六条及び第四十条の規定は、満十八才に満たない者については、これを適用しない。
○2 第五十六条第二項の規定によつて使用する児童についての第三十二条の規定の適用については、同条第一項中「一週間について四十時間」とあるのは「、修学時間を通算して一週間について四十時間」と、同条第二項中「一日について八時間」とあるのは「、修学時間を通算して一日について七時間」とする。
○3 使用者は、第三十二条の規定にかかわらず、満十五歳以上で満十八歳に満たない者については、満十八歳に達するまでの間(満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日までの間を除く。)、次に定めるところにより、労働させることができる。
一 一週間の労働時間が第三十二条第一項の労働時間を超えない範囲内において、一週間のうち一日の労働時間を四時間以内に短縮する場合において、他の日の労働時間を十時間まで延長すること。
二 一週間について四十八時間以下の範囲内で厚生労働省令で定める時間、一日について八時間を超えない範囲内において、第三十二条の二又は第三十二条の四及び第三十二条の四の二の規定の例により労働させること。
(深夜業)
第六十一条 使用者は、満十八才に満たない者を午後十時から午前五時までの間において使用してはならない。ただし、交替制によつて使用する満十六才以上の男性については、この限りでない。
○2 厚生労働大臣は、必要であると認める場合においては、前項の時刻を、地域又は期間を限つて、午後十一時及び午前六時とすることができる。
○3 交替制によつて労働させる事業については、行政官庁の許可を受けて、第一項の規定にかかわらず午後十時三十分まで労働させ、又は前項の規定にかかわらず午前五時三十分から労働させることができる。
○4 前三項の規定は、第三十三条第一項の規定によつて労働時間を延長し、若しくは休日に労働させる場合又は別表第一第六号、第七号若しくは第十三号に掲げる事業若しくは電話交換の業務については、適用しない。
○5 第一項及び第二項の時刻は、第五十六条第二項の規定によつて使用する児童については、第一項の時刻は、午後八時及び午前五時とし、第二項の時刻は、午後九時及び午前六時とする。
(危険有害業務の就業制限)
第六十二条 使用者は、満十八才に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
○2 使用者は、満十八才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。
○3 前項に規定する業務の範囲は、厚生労働省令で定める。
(坑内労働の禁止)
第六十三条 使用者は、満十八才に満たない者を坑内で労働させてはならない。
(帰郷旅費)
第六十四条 満十八才に満たない者が解雇の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。ただし、満十八才に満たない者がその責めに帰すべき事由に基づいて解雇され、使用者がその事由について行政官庁の認定を受けたときは、この限りでない。
<児童福祉法>
第八節 雑則
第三十四条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 身体に障害又は形態上の異常がある児童を公衆の観覧に供する行為
二 児童にこじきをさせ、又は児童を利用してこじきをする行為
三 公衆の娯楽を目的として、満十五歳に満たない児童にかるわざ又は曲馬をさせる行為
四 満十五歳に満たない児童に戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で歌謡、遊芸その他の演技を業務としてさせる行為
四の二 児童に午後十時から午前三時までの間、戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務としてさせる行為
四の三 戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務として行う満十五歳に満たない児童を、当該業務を行うために、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 (昭和二十三年法律第百二十二号)第二条第四項 の接待飲食等営業、同条第六項 の店舗型性風俗特殊営業及び同条第九項 の店舗型電話異性紹介営業に該当する営業を営む場所に立ち入らせる行為
五 満十五歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為
六 児童に淫行をさせる行為
七 前各号に掲げる行為をするおそれのある者その他児童に対し、刑罰法令に触れる行為をなすおそれのある者に、情を知つて、児童を引き渡す行為及び当該引渡し行為のなされるおそれがあるの情を知つて、他人に児童を引き渡す行為
八 成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が、営利を目的として、児童の養育をあつせんする行為
九 児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもつて、これを自己の支配下に置く行為
○2 児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター又は児童自立支援施設においては、それぞれ第四十一条から第四十三条まで及び第四十四条に規定する目的に反して、入所した児童を酷使してはならない。
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日本国憲法26条。
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日本国憲法
第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
自民党案
(教育に関する権利及び義務等)
第二十六条 全て国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、等しく教育を受ける権利を有する。
2 全て国民は、法律の定めるところにより、その保護する子に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、無償とする。
3 国は、教育が国の未来を切り拓(ひら)く上で欠くことのできないものであることに鑑み、教育環境の整備に努めなければならない。〔新設〕
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教育を受ける権利を保障するとても重要な条文です。
子ども達にとって、最も重要な条文といってもよいかもしれません。
念のため、書きますが、この条文が義務として定めているのは、子ども達が義務で勉強しなければならないことや学校へ行って勉強する義務ではありません。
子ども達に教育を受けさせる義務、勉強できる機会をつくる義務が、親や国にあることを定めています。
そのことを、憲法学者故芦部先生は、
「教育を受ける権利は、その性質上、子どもに対して保障される。その権利の内容は、子どもの学習権を保障したものと解される。
子どもの教育を受ける権利に対応して、子どもに教育を受ける責務を負うのは、第一次的には親ないしは親権者である。26条2項が、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ」と定めているのは、そのことを明示している。また、教育を受ける権利の社会権としての側面として、国は、教育制度を維持し、教育条件を整備すべき義務を負う。この要請を受けて、教育基本法および学校教育法等が定められ、小・中学校の義務教育を中心とする教育制度が設けられている。」(『憲法第5版』岩波書店 264ページ)と書かれています。
教育権の所在については、教育内容について国が関与・決定する権能を有するとする説(国家の教育権説)と、子どもの教育について責任を負うのは、親およびその付託を受けた教師を中心とする国民全体であり、国は教育の条件整備の任務を負うにとどまるとする説(国民の教育権説)の争いがあります。
最高裁判例は、両説「極端かつ一方的」であるとして否定し、教師に一定の範囲の教育の自由の保障があることを肯定しながら、その自由を完全に認めることは、1)児童生徒には教育内容を批判する能力がなく、2)教師に強い影響力があること、3)子どもの側に学校・教師を選択する余地が乏しいこと、4)全国的に一定の水準を確保すべき要請が強いことなどから、許されないとし、結論としては、教育内容について、「必要かつ相当と認められる範囲において」決定するという、広汎な国の介入権を肯定しています(学説の批判有り)。(旭川学力テスト事件最高裁大法廷判決昭和51.5.21)
憲法26条2項で謳う、義務教育の無償については、一般に、「授業料不徴収」の意味であると解されています。1963年以降、教科書は無償で配布されています。
憲法上、よく問題になるのは、義務教育や高校教育ですが、26条は、生涯教育、家庭教育、社会教育も含んでいます。
さて、自民党案との比較、自民党案は、1項と2項は大きく変えてはいませんが、3項を新設しています。
この条項の新設は、本当によいのでしょうか?
教育の目的を、自民党は、はき違えていないでしょうか?
何のための教育ですか?国のための教育ですか?
日本のひとりひとりの子どもが、その子の個性や可能性を十分に伸ばし、人生に役立つ知識技能を身に着ける教育をすることが大切なのではないでしょうか。
ですから、まず、鑑みるべきことは、「教育が、個人が人格を形成し、社会において有意義な生活を送るために不可欠であること」でしょう。
日本の学校で教育を受けた優秀な人材が、国の未来を切り拓いたとしても、それは結果論であり、そのことを直接に期待するのは、教育の目的をはき違えていると、私は、思います。
資源のない日本が世界で太刀打ちするためには、教育こそ大切なことはわかるとしても、そのことを憲法の条文に盛り込む前に、もっともっと大切な個人の人格形成に寄与する教育についてをこそ、盛り込むべきだと考えます。
小中高と、国のために勉強した経験のあるかた、どれだけおられるでしょうか。
築地市場の移転問題。
土壌汚染の問題が、クリアーされなければ、市場認可がおりないことは、明白なはず。
しかし、いまだに、地下水モニタリングがなされている最中。
⇒ http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/c/153dfc99cbaa001a8c866f5264f8340a
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http://www.iza.ne.jp/kiji/life/news/160816/lif16081620480009-n1.html
http://www.iza.ne.jp/topics/economy/economy-9264-m.html
揺れる築地市場移転 小池百合子東京都知事視察「リオ後に判断」
2016.8.16 20:48
東京都の小池百合子知事は16日、築地市場(中央区)と移転先の豊洲市場(江東区)を視察し、一部業者が要望する移転延期について「リオ出張(18~24日)から帰国後、総合的に判断したい」と早期に結論を出す考えを示した。だが、3カ月後の開場に向けて業者は移転の準備を進めており、「延期は混乱をもたらす」と懸念も広がっている。
「世界でもまれにみる新しい市場で、施設も最高級といっていい」。豊洲市場を視察した小池氏はこう評価したが、直後には「(地下水の汚染)モニタリングの調査が終わっていないのに、11月7日の(開場)日程を決めたのはどういう理由なのか。改めて確認したい」と疑問を口にした。
豊洲市場では敷地の土壌や地下水の汚染が確認され、都は汚染物質の除去など対策を進めてきた。開場に向けて11月18日まで2年間の日程で地下水の調査を実施し、都は環境基準を超える数値は出ていないとしているが、小池氏は調査期間の終了前に開業日を迎えることを疑問視した。矛先は事業費にも向けられた。平成23年度は3926億円だったが、資材高騰などを理由に28年度には5884億円に増えた。「どうして増えたのか都政改革本部で調べる」とし、「決まった日程を第一に考えず、皆さんの納得、安心を優先させたい」と強調した。
老朽化が進む築地市場をめぐっては都はいったん、現地での再整備を決定したが、財政難などを理由に頓挫。都と市場の団体との話し合いの中で豊洲への移転が決まり、整備が進んだ。しかし、今年7月の都知事選で「一歩立ち止まって考えなければならない」と訴えた小池氏が当選。反対派の間では移転延期への期待が高まった。
一方で予定通りの移転を望む声も根強い。築地東京青果物商業協同組合の泉未紀夫(みきお)理事長によると、豊洲市場で使う店舗の内装工事や冷蔵庫のリースなどの契約を結んだ業者が多い。泉氏は「延期の場合はその期間のリース費用などを誰が負担するのか。引っ越しの計画も練り直すので混乱する」と訴える。
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農林水産省 審議会資料
http://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokusan/bukai_08/pdf/ref_data04.pdf
企画部企画財政課を中心に、区の職員の皆様には、策定作業に向けての事務管理の多大な作業を、日々、たいへんお疲れ様でございます。
大事な規定を作成しているところで、この『中央区基本構想』に、今後20年間、中央区政は縛られることになります。
重要であればこそ、その策定手続きに、少しの誤りがあっても許されません。
その策定手続きにおいて、昨日の会合で、やや不安な点が、見えたため、重大な瑕疵にならぬよう問題提起をさせていただきます。
昨日8月24日(水)の第三回審議会において、起草委員会が設置されることになりました。
その法的根拠がないのではと、審議会委員の一人から指摘がなされましたが、十分な回答が、事務局からなされず、会長からも、法的根拠を明らかにするように苦言が出されました。
法的根拠が不明確な起草委員会を、今後、公正中立な運営を担保するためには、公開でなされる必要があると考えるところです。
昨日、当然に公開であると問い合わせると、非公開との回答を区の職員からいただき、審議会終了後に開催された第1回起草委員会を傍聴することを断られました。
公開にすることで、委員が学識経験者で構成される起草委員会に、副区長ら区の関係者も参加するという状況において、区の意向が恣意的に強く反映されたものとならないことを区民がチェックすることが可能になります。
昨日の審議会で、ある委員から「専門部会での内容が、それぞれにその担当する分野の専門部会だけでなく、他の専門部会と関連する内容があり、それら関連する内容を専門部会を超えて議論する場として、ある意味、“横串”をさすということで、起草委員会の重要な役割がある」という趣旨の意見が出され、起草委員会での審議も専門部会と同様の重要な審議がなされることが確認されました。
起草委員会で各委員がどのようなないようの発言をされ、それが、基本構想にどのように反映されていくかを区民に明らかにするためにも、公開が求められると考えます。
起草委員会が、公開で開催されることを、強く要望致します。
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○中央区基本構想審議会条例
平成二十七年十月十九日
条例第三十六号
中央区基本構想審議会条例
(設置)
第一条 中央区(以下「区」という。)における総合的かつ計画的な行政の運営を図るための基本構想(以下「基本構想」という。)を策定するため、区長の附属機関として、中央区基本構想審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(所掌事務)
第二条 審議会は、区長の諮問に応じ、基本構想の策定に関し必要な事項を調査審議し、答申する。
(組織)
第三条 審議会は、次に掲げる者のうちから区長が委嘱し、又は任命する四十人以内の委員をもって組織する。
一 学識経験を有する者
二 区議会議員
三 区民又は区の区域内の公共的団体の構成員
四 区の職員
(委員の任期)
第四条 委員の任期は、第二条の規定による答申の日までとする。
(会長及びその職務)
第五条 審議会に会長を置き、委員の互選によってこれを定める。
2 会長は、審議会を代表し、会務を総理する。
3 会長に事故があるときは、あらかじめ会長の指名する委員が、その職務を代理する。
(招集)
第六条 審議会は、会長が招集する。
(定足数及び表決)
第七条 審議会は、委員の半数以上が出席しなければ、会議を開くことができない。
2 審議会の議事は、出席した委員の過半数をもって決し、可否同数のときは、会長の決するところによる。
(関係者の出席等)
第八条 審議会は、必要があると認めるときは、学識経験を有する者、関係行政機関の職員その他の関係者の出席を求めて、その意見又は説明を聴くことができる。
(専門員)
第九条 審議会に、専門員を置くことができる。
2 専門員は、学識経験を有する者のうちから区長が委嘱する。
3 専門員は、会長の命を受けて専門事項を調査する。
4 専門員の任期は、前項の規定による専門事項の調査が終了した日までとする。
(専門部会)
第十条 審議会は、その所掌事務を分掌させるため、専門部会(以下「部会」という。)を置くことができる。
2 部会は、会長が指名する委員をもって組織する。
3 部会に部会長を置き、会長が指名する委員をもって充てる。
4 部会長は、部会の事務を掌理し、部会における調査審議の経過及び結果を審議会に報告する。
5 前各項に定めるもののほか、部会の運営に関し必要な事項は、部会長が定める。
(幹事)
第十一条 審議会に幹事を置き、区の職員のうちから区長が任命する。
2 幹事は、会長の命を受けて審議会の調査審議を補佐する。
(委員の報酬)
第十二条 委員(区の職員である者を除く。以下同じ。)には、別表に定める額の報酬を支給する。
2 報酬は、月の初日からその月の末日までの間における勤務日数により計算した総額を、翌月十日までに支給する。
(委員の費用弁償)
第十三条 委員が職務のため旅行したときは、順路により、その費用を弁償する。
2 費用弁償の種類は、鉄道賃、船賃、航空賃、車賃、旅行雑費、宿泊料及び食卓料の七種とし、その額は、別表に定めるところによる。
3 前二項の規定にかかわらず、委員が職務のため特別区の存する区域内を旅行したときは、費用弁償として一日につき二千五百円を支給する。
第十四条 委員が招集に応じて会議に出席したときは、費用弁償として一日につき二千五百円を支給する。ただし、当該日について前条の規定による費用弁償を受けるときは、この限りでない。
2 前項の規定にかかわらず、特別の事情がある場合の費用弁償は、鉄道賃、船賃、航空賃、車賃及び宿泊料の五種とし、その額は、別表に定めるところによる。
(関係者の費用弁償)
第十五条 第八条の規定により審議会に出席した者に対しては、その費用を弁償する。ただし、区の常勤の職員である者がその職務に関連して審議会に出席したときは、この限りでない。
2 費用弁償の種類は、鉄道賃、船賃、航空賃、車賃、旅行雑費、宿泊料及び食卓料の七種とし、その額は、中央区職員の旅費に関する条例(昭和二十七年二月中央区条例第三号)に規定する額とする。
(支給方法)
第十六条 費用弁償の支給方法は、区職員の例による。
(委任)
第十七条 この条例に定めるもののほか、審議会に関し必要な事項は、区規則で定める。
附 則
1 この条例は、公布の日から施行する。
2 この条例は、第二条の規定による答申の日限り、その効力を失う。
別表(第十二条―第十四条関係)
区分
報酬の額
費用弁償の額
会長
日額 二三、○○○円
中央区長等の給料等に関する条例(昭和四十八年十二月中央区条例第二十七号)に規定する副区長相当額
○中央区基本構想審議会条例施行規則
平成二十七年十月十九日
規則第五十二号
中央区基本構想審議会条例施行規則
(趣旨)
第一条 この規則は、中央区基本構想審議会条例(平成二十七年十月中央区条例第三十六号。以下「条例」という。)第十七条の規定に基づき、中央区基本構想審議会(以下「審議会」という。)に関し必要な事項を定めるものとする。
(委員の公募等)
第二条 区長は、条例第三条第三号に掲げる区民のうちから委嘱する委員を公募し、選考することができる。
(招集の通知)
第三条 会長は、審議会を招集しようとするときは、日時、場所、議題その他必要な事項を開催の日前五日までに委員に通知しなければならない。ただし、緊急を要する場合は、この限りでない。
(欠席の申出)
第四条 委員は、審議会に出席できないときは、あらかじめ、その旨を会長に申し出なければならない。
(会議の公開)
第五条 審議会の会議は、公開とする。ただし、会長が適当でないと認めるときは、この限りでない。
2 会長は、傍聴人の数を制限することができる。
(会議録)
第六条 会長は、次に掲げる事項を記載した会議録を作成し、保存するものとする。
一 開催年月日
二 出席者の氏名
三 提出資料の件名
四 議事の概要
五 審議の経過
(庶務)
第七条 審議会の庶務は、企画部企画財政課において処理する。
(委任)
第八条 この規則に定めるもののほか、審議会に関し必要な事項は、区長が定める。
附 則
1 この規則は、公布の日から施行する。
2 この規則は、条例第二条の規定による答申の日限り、その効力を失う。
日本国憲法25条。
本日25条、おそらく、「生存権」という名と共に、社会科でも何度も出てきて、最も親しみの持てる条項ではないでしょうか。
その分、とても重要な条項です。
25条から、26、27、28と社会権が保障されています。
社会権とはなにか、憲法学者の故芦部先生の解説を読みます。
「日本国憲法は、生存権(25条)、教育を受ける権利(26条)、勤労の権利(27条)、労働基本権(28条)という社会権を保障している。社会権は、20世紀になって、社会国家(福祉国家)の理念に基づき、とくに社会的・経済的弱者を保護し実質的平等を実現するために保障されるに至った人権である。その内容は、国民が人間に値する生活を営むことを保障するものであり、法的にみると、それは国に対して一定の行為を要求する権利(作為請求権)である。この点で、国の介入の排除を目的とする権利(不作為請求権)である自由権とは性質をことにする。もっとも、社会権にも自由権的側面がある。
社会権が保障されたことにより、国は社会国家として国民の社会権の実現に努力すべき義務を負う。たとえば、憲法25条2項が、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定するのは、その趣旨である。」
(『憲法第5版』岩波書店 258頁)
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日本国憲法
第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
自民党案
(生存権等)
第二十五条 全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、国民生活のあらゆる側面において、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
(環境保全の責務)
第二十五条の二 国は、国民と協力して、国民が良好な環境を享受することができるようにその保全に努めなければならない。〔新設〕
(在外国民の保護)
第二十五条の三 国は、国外において緊急事態が生じたときは、在外国民の保護に努めなければならない。〔新設〕
(犯罪被害者等への配慮)
第二十五条の四 国は、犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮しなければならない。〔新設〕
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自民党案は、日本国憲法とほぼ同じといえるでしょうか。
憲法「すべての生活部面」が自民案「国民生活のあらゆる側面」となっています。
これも同じとみてよいでしょうか。
内容が狭まっていなければよいと思います。
あと、自民党案では、25条の2、25条の3、25条の4が新設されています。
これら新設された内容は、方向性としてはよいと思います。
文面は、検討の余地が多分にあり。自民案は、すべて文言が弱すぎる。そのような文面で、本当に国は、それら新たな人権を守る気があるのかと思いたくなります。
例えば、自民党案25条の4「犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇に配慮」ではなく、犯罪被害者及びその家族の人権及び処遇を「保障する」レベルまでの表現はほしいと思います。
まずは、自民案に頼るのではなく、これら条文の文面をよく練り、適正手続きのもと、憲法に入れていくべきか、法律の規定を充実させることで済むのか、議論を深めることこそが求められていると思います。
一番やってはならないことは、これら条文に飛びついて、自民党案の負の部分に目をつぶってしまうことです。
日本国憲法24条。
憲法24条1項で、婚姻の自由と夫婦の権利の同等をうたい、2項で、家族に関する立法は、「個人の尊厳と両性の本質的平等」に基づくべきであると定めています。
GHQ民政局のペアテ・シロタ・ゴードンの意欲で起草され、GHQ内部や日本政府による数多の修正を受けながら、現在の形で残ったものだそうです。
民法(家族法)の基本原理・最高法規という色彩が強く、「法の下の平等」を保障する14条の特別条項と位置付けられています。
すなわち、13条の個人の尊厳や14条の両性の平等の意義を再確認し徹底化することを求めた規定です。(参照『判例憲法2』第一法規 85ページ)
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日本国憲法
第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
自民党改憲案
(家族、婚姻等に関する基本原則)
第二十四条 家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。〔新設〕
2 婚姻は、両性の合意に基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
3 家族、扶養、後見、婚姻及び離婚、財産権、相続並びに親族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
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まず、自民案は、いろいろな点を変えようとしているため、なぜ、そのように変えるのか、自民党の解説を読みます。
*****自民党パンフ******
http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf
Q家族に関する規定は、どのように変えたのですか?
答
家族は、社会の極めて重要な存在ですが、昨今、家族の絆が薄くなってきて
いると言われています。こうしたことに鑑みて、24 条1 項に家族の規定を新
設し、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、
互いに助け合わなければならない。」と規定しました。なお、前段については、世界人
権宣言16 条3 項も参考にしました。
党内議論では、「親子の扶養義務についても明文の規定を置くべきである。」との意見
もありましたが、それは基本的に法律事項であることや、「家族は、互いに助け合わな
ければならない」という規定を置いたことから、採用しませんでした。
(参考)世界人権宣言16 条3 項
家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利
を有する。
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自民党案の問題点を挙げます。
問題点1 世界人権宣言16条3項を、自民党案は、反映しているとはいえない。
1項を自民党案は、世界人権宣言16条3項を参考に新設したといいますが、結果、自民案は、「家族は、尊重される」と漠然と述べているにすぎません。
世界人権宣言16条3項を参考にしたと言うのであれば、「家族は、国による保護を受ける権利を有する」とはっきりと述べるべきでしょう。
問題点2 憲法に価値観を持ち込んでよいか。
新設された部分には、マスコミも取り上げ、問題提起がなされていました。
もちろん、ひととしては当然の内容ではあるものの、憲法への価値観の持ち込みは問題があります。
また、本来、社会全体で支えるべきところに関してまで、逆に、家族に全部責任を押し付ける根拠ともされる危険性があるのではないかと危惧します。
問題点3 なぜ、「のみ」を省く?
自民党案では、重要な文言を削除する、文言を置き換えるということが、多数なされており、注意深く自民案を読む必要があります。
ここでも、決して削除してはならない「のみ」が削除されています。
自民党案作成者にお伺いしたいところですが、そのほかに、どんな結婚の成立を想定されて、「のみ」を落とすのでしょうか?
憲法:婚姻は、両性の合意のみに基いて成立
自民党案:婚姻は、両性の合意に基づいて成立
問題点4 憲法「家族に関するその他の事項」から自民案「親族に関するその他の事項」へ文言の置き換え
自民党案では、その他の事項の修飾のされる用語を変えています。
保護されるべきひとが保護されないことになっています。
親族の定義に入らないが、家族はいるはずであり、自民党案では、それら家族を保護する法制化をし辛くさせるような変更です。
問題点5 憲法が保護する「住居の選定」が自民党案で、削除されています。
など
以上
日本国憲法23条。
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日本国憲法
第二十三条 学問の自由は、これを保障する。
自民党案
(学問の自由)
第二十三条 学問の自由は、保障する。
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日本国憲法は、補則まで入れると全部で103条有りますが、ひとつ好きな条文を選べと言われると、私は、迷わずこの23条を選びます。
「学問の自由は、これを保障する」
その規定の重要性とともに、五七五の調子で日本語が並べられた美しい日本語の文体であるからです。
日本国憲法全体が、美しい文体で格調高く構成されておりますが、そのことを象徴するような条文です。
学問の自由を保障する規定は、明治憲法にはなく、また、諸外国の憲法においても、学問の自由を独自の条項で保障する例は多くないといいます。
明治憲法時代に、学問の自由ないし学説の内容が、直接に国家権力に侵害された歴史(例、1933年滝川事件、1935年天皇機関説事件)を踏まえて、特に規定されました。
学問の自由の内容としては、1)学問研究の自由、2)研究発表の自由、3)教授の自由の三つのものがあります。
1)学問研究の自由
真理の発見・探求を目的とする研究の自由、内面的精神活動の自由であり、思想の自由の一部を構成します。
2)研究発表の自由
1)でいう研究の結果を発表することができないならば、研究自体が無意味に帰するので、学問の自由は、当然に研究発表の自由を含みます。
外面的精神活動の自由である表現の自由(21条)の一部であるが、憲法23条によっても保障されています。
3)教授の自由
大学その他の高等学術研究教育機関における教授の自由(これら“のみ”とするのが従来の通説・判例「東大ポポロ事件最高裁判決」)、および大きな議論が有るところではありますが、初等中等教育機関における教育の自由(今日において支配的見解)。
ただし、普通教育においても、「一定の範囲における教授の自由が保障される」ことをみとめるが、教育の機会均等と全国的な教育水準を確保する要請などがあるから、「完全な教授の自由を認めることは、とうてい許されない」とされています(旭川学テ事件最高裁判決昭和51・5・21)
(以上、参照『憲法 第5版』芦部信喜 164−165頁)
ところで、自民党案は、ほぼ、同じと言えます。
ただ、冒頭のべましたが、私は、私の好きな条文の美しい日本語の五七五リズムを失った自民党案は、個人的には認めることはできません。
さて、学問の自由は、明治憲法下で、国家権力により侵害された歴史が有り、正しい真理の追究が国に都合が悪ければ、いつなんどき、国が介入するかもしれず、表現の自由とともにまもらねばならない大切な大切な規定です。
今でさえ、見えない形の国の介入はあるのかもしれません。
例えば、原子力研究で、国の意向に添う研究に多額の研究開発費が、国及び電力会社から与えれること、或いは、データをねつ造してまで、薬の効果をよくみせること(副作用がないようにみせかけること)で、製薬会社からの研究開発費を得ようとすることなど、ありうる話かもしれません。
もうひとつ注意せねばならないことは、「学問の自由は保障する」のであって、憲法19条内心の自由で見た「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」のような「学問の自由は侵害されない」ではないということです。(ちなみに、残念ながら自民案19条「思想及び良心の自由は、保障する。」)
どんな研究でもやってよいかというとそうではなく、「公共の福祉」と調和のとれた研究が求められることはいうまでもありません。
例えば、医学分野では、生命と直結するためその倫理性が問われることが常です。最先端研究が周囲の住民に危害を加えるリスクがある場合なども考えられます。
学問の自由の保障は、とても大切です。
8月14日の幕張メッセでおこなわれたジャスティン・ビーバーの大規模コンサートに、麻しんを発病したままで参加した若者がいました。
8月26日あたりが最長の潜伏期間と考えられます。…
以下文面が、医療機関に回っています。
麻疹は、感染力が強く、かつ、子ども達にとって、死に至ることもある重症疾患です。
感染の広がりにご注意願います。
日本国憲法22条。
経済的自由にも関連した重要条文です。
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日本国憲法
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
自民党案
(居住、移転及び職業選択等の自由等)
第二十二条 何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 全て国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有する。
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自民党案では、22条1項において、「公共の福祉に反しない限り」という文言が削除されています。
いままでは、「公共の福祉」を削除して、その部分に「公益及び公の秩序」という文言を置き換えでしたが、ここでは逆の手法です。
「公共の福祉に反しない限り」の文言の重要性は、憲法学者故芦部先生も、以下、述べられています。
「経済的自由は、精神的自由と比較して、より強度の規制を受ける(「二重の基準」の理論参照)。憲法22条が、とくに「公共の福祉に反しない限り」という留保をつけているのも、公権力による規制の要請が強いという趣旨を示したものである。それは、一つには、職業は性質上、社会的相互関連性が大きいので、無制限な職業活動を許すと、社会生活に不可欠な公共の安全と秩序の維持を脅かす事態が生じるおそれが大きいことになるが、それにとどまらず、現代社会の要請する社会国家の理念を実現するためには、政策的な配慮(たとえば、中小企業の保護)に基づいて積極的な規制を加えることが必要とされる場合が少なくないからである。」(『憲法 第5版』216-217頁)
経済活動の規制の手段は、二つに大別されます。
○消極目的規制(警察的規制):主として国民の生命および健康に対する危険を防止もしくは除去ないし緩和するために課せられる規制。
○積極目的規制:福祉国家の理念に基づいて、経済の調和のとれた発展を確保し、とくに社会的・経済的弱者を保護するためになされる規制であり、社会・経済政策の一環としてとられる規制。
これら、規制すべきを規制するには、「公共の福祉に反しない限り」という文言は必要です。
自民党案は、安易に削除していますが、経済を自由奔放にまかせ、本当に大丈夫とお考えなのでしょうか?
次に、22条2項は、侵害されてはならないものを、「有する」という文言に置き換え問題です。
国籍は特定の国家に所属することを表す資格であり、それを個人の自由意志で離脱することは、明治憲法時代の国籍法では許されず、原則として政府の許可を必要としました。その意味で、憲法22条が国籍離脱の自由を認めたことは、一つの画期と言えました。
その自由を侵害されないものとしていたところ、単に自由が有るという文言に、自民案は置き換えています。国籍離脱の自由について、自民党は、本気で保障する気があるのでしょうか。 大日本帝国憲法の方向へ、回帰させることのないように願います。
日本国憲法21条。
自民党改憲案は、一条にひとつ以上の問題点や課題があり、どれも看過できないものですが、この21条もまた、最も重大な問題点の一つを含んでいます。
21条に関連して以前のブログhttp://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/b0a5bca6b92855718d565701d5e8b0eaで、表現の自由についての知識の整理を記載しました。最後に再掲します。
表現の自由は、思想・情報を発表し伝達する自由でありますが、知る権利もまた、保障しています。
知る権利について、憲法学者の故芦部先生は、
「知る権利は、「国家からの自由」という伝統的な自由権であるが、それにとどまらず、参政権(国家への自由)的な役割を演ずる。個人はさまざまな事実や意見を知ることによって、はじめて政治に有効に参加することができるからである。」と知る権利の法的性格を述べられています。
表現の自由、知る権利が保障されなければ、政治に有効に参加できなくなる、まさに、民主主義の根幹にかかわる権利を、憲法21条は保障しています。
ところが、この21条を、自民案は、大きく変貌させようとしています。
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日本国憲法
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
自民党案
(表現の自由)
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。〔新設〕
3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。
(国政上の行為に関する説明の責務)
第二十一条の二 国は、国政上の行為につき国民に説明する責務を負う。〔新設〕
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自民案は、現行憲法21条とほぼ同じ文言をおいていますが、実は、2項を新設しています。
この2項が、現行憲法21条1項を完全に骨抜きにしています。
よく見ていただきたいのですが、自民案は、1項で、表現の自由を保障すると言っておきながら、2項で、「前項の規定にかかわらず」、「公益及び公の秩序」すなわち、「国家のため、国家の都合で」制限すると言い切っているのです。
もちろん、表現の自由があるからといって、何を言っても良いというわけではなく、すでに現行憲法上、「公共の福祉」による制限を、表現の形態、規制の目的・手段等を具体的に検討し、表現内容を最大限尊重し、報道の自由を十分に守りつつ、表現の自由により侵される権利、例えばプライバシー、名誉、青少年の健全育成、嘘の情報被害などを、現状に置いても厳しく審査をできている状態にあり、「公益及び公の秩序」を持ち出す必要性はまったくありません。
表現の自由と知る権利は、政治が有効に機能するかどうかにつながっていくわけであり、それを、国家のため、国家の都合で制限されるとなると、正しい政治が営まれなくなります。さすれば、ますます、政府に都合の良い情報だけが国民に伝えられ、都合の悪い情報は排除され、それにより政治がさらにゆがめられる結果となります。
一旦、表現の自由と知る権利がゆがめられてしまうと、悪循環の陥り、自己回復できない状態になります。
だからこそ、憲法21条は、絶対に守らねばならない権利です。
なにがなんでも、守らねばなりません。
民主主義の危機が、今、訪れようとしています。
かつて、ワイマール憲法から、ナチスの台頭へと歴史が動いたように。
ジャーナリストの皆様は、すでにご承知のところであり、記事としても何度も取り上げらているところではありますが、自民案21条で、日本のジャーナリズムは危機に瀕することになるのではないでしょうか?
*******表現の自由の理解のために*******
以下、表現の自由に関する問答集をつくってみました。
想定として、中央区立A小学校の6年生B君と、同校社会科C先生の会話です。
C先生:憲法21条を読んでみてください。
B君:
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2項 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
憲法21条の表現の自由には、どんな大切な価値が含まれているのですか?
C先生:憲法21条で謳われている表現の自由は、とても大切な条文です。
そして、その自由には、3つの価値を含んでいます。
自己実現、自己統治、思想の自由市場の3つです。
B君:それぞれ、どんな内容なんですか?
まず、表現の自由が、自己実現につながるのは、どうしてですか。
C先生:自己実現ですね。
私たちは、話したり、表現したりすることを通じて、自分自身を成長させることができることができます。
皆さんも、ひとと話す、コミュニケーションをとるそのやり取りで、毎日成長しています。
時には、批判され反省の念を感じつつ、成長します。難しい言い方では、人格を形成するのです。
また、自由研究で皆さんも調べものをすると思いますが、いろんな情報を集め、分析することで、難しい問題にぶつかっても、先生に教えてもらうことなく、自分で判断できるようになります。自己決定をすることができるようになるのです。
皆さんも、漫画家になりたいと思うひともいると思います。小説家になりたいと思うひともいるでしょう。
クリエイティブな活動をする職業の方は、表現の自由が有るからこそ、それが自分の職業にもなるし、自己実現にも直結しています。
B君:表現の自由は、作家や漫画家、画家、表現活動をされる職業のかたのみを対象にするのですか。
C先生:いいえ。
B君自身にも、私たち、ひとりひとりにあてはまります。
次に、自己統治ですが、これは、私たちの社会の大切な仕組みである、民主主義を支えるとても大切な価値です。
自己実現でも述べましたが、ひとりひとりが、社会に起きている事柄について、情報を集め、分析することで、社会がどうあるべきかについての意見を自己決定することができます。
話し合いに参加し、議論/討論し、そして、結論を出し、社会がどんな形であったらみんなが幸せになることができるかを決めるのです。
自分たちの地域のことは、そのような話し合いで解決して行きますが、区市町村、都道府県、国という風に、もっと範囲が大きくなると、政治家という代表者を選び、その代表者が、区市町村議会、都道府県議会、国会でそれぞれ議会を開き、そこで決定します。
そこに出る政治家を、選挙を通じて選びますが、その時に、ひとり一票持ち、投票によって選ぶことになります。
皆さんも、18歳になると、ひとり一票の選挙権を持つことができるようになります。
だれを選ぶかは、表現の自由がきちんと守られた社会であるからこそ、正しい情報を得て、政治家を選ぶことができるのです。
政治家を選び、その政治家が、私たちの未来の社会を決めるのですから、その判断材料となる情報は、とても大切であることが分かりますよね。
表現の自由の中でも、この政治にかかわる情報は、一番手厚い保護を与えて行かねばならないと考えられています。
B君:政治に関する情報や、知的レベルの高い表現活動にだけ手厚い保護を与えられるってことですか。
C先生:いいえ。
そうではありません。原則として、あらゆる情報を保護することが求められるし、国が表現内容に対する規制は、原則してはなりません。
よい情報か、悪い情報かは、国民自身が決めればよいのです。
このことは、三つ目の思想の自由市場とも関係することです。
表現の自由が認められていれば、社会の中で、よい考え方、意見が残り、悪い考え方、意見は、取捨選択されていきます。
古い考え方は、新しいよい考え方に更新されて行きます。
B君:思想の自由市場ということは、私たちは小学校で、いろんな意見、考え方があることを教わっているのですか?
C先生:とても大切な質問ですね。
小学校では、いろんなことが、基本的には、「答えがひとつ」として、教わっています。
一方、社会には、いろんな意見、考え方があって、今述べている思想の自由市場で、どれが本当によい意見、考え方であるか、見え隠れすることでしょう。
それらを皆さんが、小中学校で学んできた知識をもとに、自分がよいと思う意見や考え方を持てばよいのです。
小学校で使われる教科書は、教科書検定を通過したものの中で、教育委員会で選ばれたものを使用しています。
ある意味、ひとつの正しさを国が決める仕組みになっています。
本来ならあらゆる考え方を書けばよいのですが、そうすれば、教科書はものすごく分厚いものになることでしょう。
限られた時間内で教えきれるように、分量を減らさねばなりません。
高校、大学で入試がありますから、そのための基準となる知識は統一する必要もあります。
皆さんの脳は、素直に、いろんなことを吸収する能力が有ります。
素直に吸収されるからこそ、逆に、私たち教える側でも慎重には慎重を期さなくてはならないと思っています。
大学等高等教育では、教わる側で、教わる先生を選択できますが、皆さんには、そのような選択することもできません。
なおさら、教わる内容、指導法は、一定水準以上をどこでも確保されるように慎重を期さねばならないところです。
B君:早く、大きくなって、いろんなことをもっと学びたいな。
C先生:そうだね。
大きくなると、いろんな考え方があることが分かって、もっともっと学ぶことが楽しくなるよ。
そして、そこでは、憲法23条(学問の自由)「学問の自由は、これを保障する。」が、皆さんが学ぶこと、自由な研究活動を保障してくれます。
がんばってくださいね。
以上
<補足>
表現の自由、知る自由を最高裁では、どう判事しているか。
*****最高裁判例より******
損害賠償請求事件
【事件番号】 最高裁判所大法廷判決/昭和52年(オ)第927号
【判決日付】 昭和58年6月22日
およそ各人が、自由に、さまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取する機会をもつことは、その者が個人として自己の思想及び人格を形成・発展させ、社会生活の中にこれを反映させていくうえにおいて欠くことのできないものであり、また、民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達、交流の確保という基本的原理を真に実効あるものたらしめるためにも、必要なところである。それゆえ、これらの意見、知識、情報の伝達の媒体である新聞紙、図書等の閲読の自由が憲法上保障されるべきことは、思想及び良心の自由の不可侵を定めた憲法一九条の規定や、表現の自由を保障した憲法二一条の規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれるところであり、また、すべて国民は個人として尊重される旨を定めた憲法一三条の規定の趣旨に沿うゆえんでもあると考えられる。
********************************
メモ採取不許可国家賠償請求事件
【事件番号】 最高裁判所大法廷判決/昭和63年(オ)第436号
【判決日付】 平成元年3月8日
憲法二一条一項の規定は、表現の自由を保障している。そうして、各人が自由にさまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取する機会をもつことは、その者が個人として自己の思想及び人格を形成、発展させ、社会生活の中にこれを反映させていく上において欠くことのできないものであり、民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達、交流の確保という基本的原理を真に実効あるものたらしめるためにも必要であつて、このような情報等に接し、これを摂取する自由は、右規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれるところである(最高裁昭和五二年(オ)第九二七号同五八年六月二二日大法廷判決・民集三七巻五号七九三頁参照)。市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「人権規約」という。)一九条二項の規定も、同様の趣旨にほかならない。
日本国憲法第20条。
憲法20条は、信教の自由と、政教分離を規定しています。
*************
日本国憲法
第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
自民案
(信教の自由)
第二十条 信教の自由は、保障する。国は、いかなる宗教団体に対しても、特権を与えてはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及び地方自治体その他の公共団体は、特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない。
*************
政教分離において大事なことは、「個人の信教の自由を厚く保障するとともに、国家と宗教の分離を明確化」することです。
それは、明治憲法の下、国粋主義の台頭とともに、神社に与えられた国教的地位とその教義は、国家主義や軍国主義の精神的な支柱となった」苦い歴史に基づいてのことです。
(「 」は、憲法学者故芦部先生『憲法 第5版』150-151ページ)
最高裁もその経過を、「わが国では、過去において、大日本帝国憲法(以下「旧憲法」という。)に信教の自由を保障する規定(二八条)を設けていたものの、その保障は「安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ」という同条自体の制限を伴つていたばかりでなく、国家神道に対し事実上国教的な地位が与えられ、ときとして、それに対する信仰が要請され、あるいは一部の宗教団体に対しきびしい迫害が加えられた等のこともあつて、旧憲法のもとにおける信教の自由の保障は不完全なものであることを免れなかつた。」と述べています(津地鎮祭事件最高裁判例S52.7.13)。
自民案を見るに当たり、大事なことは、1)信教の自由が果たして保障されるのか、という視点と、2)政教分離が約束されるのかという視点です。
以下、自民案と現行憲法の比較ですが、両者1)2)が自民案では、保障されません。
1)自民案で、信教の自由が果たして保障されるのか
信教の自由で大事な20条1項後段において、自民案は、宗教団体の「政治上の権力を行使してはならない。」との文言が削除されています。
宗教団体が、「政治上の権力」を行使できるようにするためではないでしょうか。
結果、明治憲法下で、そうであったように、政治上の権力を行使しうる宗教団体が出る一方で、弾圧される宗教も同時に生じることになります。
2)自民案で、政教分離が果たして約束されるのか
政教分離で大事な20条3項において、
現行憲法:宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない
自民案:特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りでない
自民案では、二つの意味で国家が宗教活動をすることを可能にしています。
ひとつは、「特定の宗教のための教育」とわざわざ現行憲法では「宗教教育」だったものを、「特定の」という文言を付し限定的に書いています。特定された以外のある種の国による宗教教育は、許されることにならないだろうか?
もうひとつは、「ただし書」を付け加え、堂々と国家が宗教活動できる場合を導入したことです。現行憲法下でも、習俗的行為が行えているにも関わらずです。今後は、「社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないもの」という漠然不明確な文言を利用して、国の解釈を広げることで、国が行える宗教活動が拡げられていく可能性があるのではないでしょうか?
以上、自民案20条にすることは、たいへん危険なことだと思います。
宗教団体の皆さん、国民の皆さん、本当に自民案でよいですか?
自民案になれば、「政治的権力を行使」してくる結果、宗教弾圧が生じることが目に見えています。
冒頭にも趣旨を述べましたが、宗教とよからぬものが結び付くと、戦争への歴史の繰り返しです。
日本国憲法第19条。
第三章の人権規定に入り、重要な条文が続いています。
19条以下条文の規定内容がより具体的になりさらに重要性が増します。
***********
日本国憲法
第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
自民党案
(思想及び良心の自由)
第十九条 思想及び良心の自由は、保障する。
***********
19条、「思想及び良心の自由」、思想と良心を合わせて「内心の自由」についての規定で、とても重要です。
重要であるからこそ、「侵してはならない」と強い表現で、規定が置かれています。
特に、明治憲法下において、治安維持法の運用にみられるように、特定の思想を反国家的なものとして弾圧するという、内心の自由そのものが侵害される事例が少なくありませんでした。日本国憲法が、精神的自由に関する諸規定の冒頭において、思想・良心の自由をとくに保障した意義は、そこにあります。(『憲法 第5版』芦部信喜 147ページ)
「思想及び良心」とは、世界観、人生観、主義、主張など個人の人格的な内面的精神作用を広く含むものと解されます。
思想・良心の自由を「侵してはならない」とは、憲法学者故芦部先生は、以下、説明されています。(『憲法 第5版』芦部信喜 147-148ページ)
「このような思想・良心の自由を「侵してはならない」とは、第一に、国民がいかなる国家観、世界観、人生観をもとうとも、それが内心の領域にとどまる限りは絶対的に自由であり、国家権力は、内心の思想に基づいて不利益を課したり、あるいは、特定の思想を抱くことを禁止することができない、ということである。
(中略)
第二の意味は、国民がいかなる思想を抱いているかについて、国家権力が露顕を強制することは許されないこと、すなわち、思想について沈黙の自由が保障されることである。国家権力は、個人が内心において抱いている思想について、直接または間接に、訊ねることも許されないのである。」
さて、このような大事な19条を、自民案は、「侵してはならない」という文言を、「保障する」に置き換えています。
「侵してはならない」とはっきりと断言をするべきもので、「保障する」と表現を弱めては決してならないと考えます。
*****文言を同様に置き換えることで、保障の程度を弱めてしまっている例と弱めなかった例******
〇財産権の29条1項
日本国憲法
第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
自民案
(財産権)
第二十九条 財産権は、保障する。
2 財産権の内容は、公益及び公の秩序に適合するように、法律で定める。この場合において、知的財産権については、国民の知的創造力の向上に資するように配慮しなければならない。
3 私有財産は、正当な補償の下に、公共のために用いることができる。
〇22条2項
日本国憲法
第二十二条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。
(居住、移転及び職業選択等の自由等)
第二十二条 何人も、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2 全て国民は、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を有する。
〇自民案でも、保障の程度をゆるめなかった例、憲法21条2項検閲
日本国憲法
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
自民案
(表現の自由)
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。〔新設〕
3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。
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あと、自民党案では、19条の2を下記のように新しいものを新設しています。
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自民党案
(個人情報の不当取得の禁止等)
第十九条の二 何人も、個人に関する情報を不当に取得し、保有し、又は利用してはならない。〔新設〕
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憲法の考え方(参照 日本国憲法99条)で規定を置くならば、主語が逆です。
「国民が、○○してはならない。」ではなく、「国民が、○○されないよう、国が○○しなければならない。」と書くべきで、
すなわち、
「何人も、個人に関する情報が不当に取得され、保有され、又は利用されてはならない。」のような言い回しが、少なくとも必要です。
守られるべきは、国民の個人情報で、遵守すべき主体は、国民よりもまずは、国だからです。
日本国憲法18条。
18条は、人権保障の基本とも言うべき奴隷的拘束からの自由を定めた重要規定です。
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日本国憲法
第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
自民党案
(身体の拘束及び苦役からの自由)
第十八条 何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない。
2 何人も、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
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憲法学者故芦部先生は、「憲法18条は、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」と定め、人間の尊厳に反する非人道的な自由の拘束の廃絶をうたっている。
(中略)
「その意に反する苦役」とは、広く本人の意思に反して強制される労役(たとえば、強制的な土木工事への従事)を言う。もっとも、消防、水防、救助その他災害の発生を防御し、その拡大を防止するため緊急の必要があると認められる応急措置の業務への従事は、本条に反しない(災害対策基本法65条・71条、災害救助法24条・25条等参照)。しかし、徴兵制は「本人の意思に反して強制される労役」であることは否定できないであろう。」と説明されています。(『憲法 第5版』岩波書店 234-235ページ)
憲法18条は、徴兵制を否定する重要な条文でもあることがわかります。
その18条において、自民党案がなぜ、「いかなる」という文言を削除して、「社会的又は経済的関係において」という、漠然不明確な文言に置き換えたたのか、意味不明です。
自民党改憲案Q&Aを見ても、「社会的又は経済的関係において」という内容について書かれていませんでした。
憲法18条の適用の範囲を、自民党案では、 「社会的又は経済的関係において」と、身体を拘束されない場面を限定的に書くことによって、巧みに狭めているのではないでしょうか?
例えば、「政治的関係」では、拘束が許される?
徴兵制をも否定する基本的人権の重要規定の適用範囲を狭めては絶対にならないと考えます。
徴兵制復活に繋がりかねません。
(芦部先生の引用文内にあった法律の条文)
*****災害対策基本法65条、71条*********
第六十五条 市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、応急措置を実施するため緊急の必要があると認めるときは、当該市町村の区域内の住民又は当該応急措置を実施すべき現場にある者を当該応急措置の業務に従事させることができる。
2 第六十三条第二項の規定は、前項の場合について準用する。
3 第一項の規定は、市町村長その他同項に規定する市町村長の職権を行うことができる者がその場にいない場合に限り、災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官の職務の執行について準用する。この場合において、同項に規定する措置をとつたときは、当該災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官は、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。
(都道府県知事の従事命令等)
第七十一条 都道府県知事は、当該都道府県の地域に係る災害が発生した場合において、第五十条第一項第四号から第九号までに掲げる事項について応急措置を実施するため特に必要があると認めるときは、災害救助法 (昭和二十二年法律第百十八号)第二十四条 から第二十七条 までの規定の例により、従事命令、協力命令若しくは保管命令を発し、施設、土地、家屋若しくは物資を管理し、使用し、若しくは収用し、又はその職員に施設、土地、家屋若しくは物資の所在する場所若しくは物資を保管させる場所に立ち入り検査をさせ、若しくは物資を保管させた者から必要な報告を取ることができる。
2 前項の規定による都道府県知事の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、その一部を市町村長が行うこととすることができる。
*****災害救助法24条、25条***********
第二十四条 都道府県知事は、救助を行うため、特に必要があると認めるときは、医療、土木建築工事又は輸送関係者を、第三十一条の規定に基く厚生労働大臣の指示を実施するため、必要があると認めるときは、医療又は土木建築工事関係者を、救助に関する業務に従事させることができる。
○2 地方運輸局長(運輸監理部長を含む。)は、都道府県知事が第三十一条の規定に基づく厚生労働大臣の指示を実施するため、必要があると認めて要求したときは、輸送関係者を救助に関する業務に従事させることができる。
○3 第一項及び第二項に規定する医療、土木建築工事及び輸送関係者の範囲は、政令でこれを定める。
○4 第二十三条の二第二項の規定は、第一項及び第二項の場合に、これを準用する。
○5 第一項又は第二項の規定により救助に従事させる場合においては、その実費を弁償しなければならない。
第二十五条 都道府県知事は、救助を要する者及びその近隣の者を救助に関する業務に協力させることができる。